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『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』ネタバレ解説

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※今回の記事には映画『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』に関するネタバレがあるので、未見の人はご注意ください。


本日、金曜ロードショーで『22年目の告白 ―私が殺人犯です―』が放送される。


あらすじは

「1995年に発生した5件の連続絞殺事件が時効を迎えたものの、

事件から22年後に突然”犯人”が名乗り出て本を出版。

その告発本が一躍ベストセラーになってしまった。

いったい何の目的でこんなことを…?

”犯人”の謎の行動に日本中が翻弄される中、驚愕の真相が明らかに…!」

というもの。


本作で”犯人”の曾根崎雅人を演じたのは、

毎回エキセントリックな芝居を熱演することでお馴染みの藤原竜也。

彼の「気合いの入り過ぎた演技」は

お笑い芸人にネタにされるほどインパクトが強く、

さらに近年は『デスノート』の夜神月や『カイジ』の伊藤開司、

『るろうに剣心』の志々雄真実、『藁の楯』の清丸国秀など

なぜか「人間性にかなり問題のあるキャラクター」ばかりをオファーされ、

本人も「クズの役しか来なくなった」と嘆いているらしい。

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そして22年前の事件で最愛の妹を殺され、

時効になっても執拗に犯人を追いかける刑事:牧村航を演じるのは、

『海猿』シリーズで主演を務めて以降、

すっかり”正義感の強いキャラ”が印象付いた伊藤英明である。

三池崇史監督の『悪の教典』では

極悪非道なサイコパスを演じたこともあるが

基本的なイメージは今でも「熱血ヒーロー」なのだろう。


本作は主にこの二人を中心として、

22年前に起きた連続殺人事件の謎に迫る猟奇ミステリーである。

そんな『22年目の告白』だが、映画を観る前の予想としては

「曾根崎がわざわざ出て来た理由は事件の真相を解明するため。

つまり、真犯人は別にいるに違いないッ!」というものだった。


まあ、この辺までは予想していた人も多いだろうし、

実際、真犯人はニュースキャスターの仙堂(仲村トオル)だったんだけど、

驚いたのは、牧村刑事もグルだったこと。

しかもそれだけでなく、22年前に殺された被害者の家族たちが

真犯人を見つけるために協力していたのである。


これには僕もビックリした。

なぜなら、事前に公開された予告編では全然印象が違っていたからだ。

以下の予告編を見ると曾根崎が牧村刑事に向かって

「あんたがどんくさいから5人も死んだんだよ」と言うシーンが出てくる(48秒辺り)。

ところが、実際に本編を観てみるとこのシーンでセリフは聞こえないのだ。

曾根崎が口元を隠して牧村刑事に何かを話しかけ、

その直後に「テメェこの野郎!」と叫んで殴りかかる場面が映るのみで

「何か激怒するようなことを言ったのだろう」ぐらいしか判断できない。


なので僕は普通に予告編の内容を信じ、「曾根崎と牧村は敵同士」

と思い込んでいたのだが、そうではなかった。

実はこの時、曾根崎は牧村刑事の耳元で「自分を殴ってください」

と頼んでいたのだ。

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後で分かることだが、曾根崎の正体は牧村の妹の婚約者で、

彼女を殺した真犯人を何としても捕まえようと、

整形手術で顔を変えて自ら”犯人”として名乗り出ることを計画。

そして世間の目を欺くために、マスコミが大勢いる前で

わざと牧村刑事に自分を殴らせたのである。


では、「あんたがどんくさいから…」というセリフは何なのか?というと

全く別のシーン(テレビ局)で喋ったセリフを切り取って使っていたのだ。

そうすることによって、「こいつは刑事と敵対してるんだな」と

予告編を見た人に勘違いさせたのである。すごい発想!


だが、予告編の作りとしてはどうなのか?

「フェアかアンフェアか」で意見がわかれるかもしれない。

なんせ、製作者が意図的にミスリードしているのだから。


まあ、確かに”映画の予告編”というものは、

見せ方次第でいくらでも本編と異なる印象を与えることができるだろう。

編集を変えたり、音楽を変えたり、

または「本編には出て来ないカット」を敢えて使ったり。


そうすることによって観客の興味や好奇心を煽り、

一人でも多くの人に劇場へ来てもらえるようアピールするのだ。

しかし、あまりにも本編とかけ離れた予告編は批判の的になりやすく

状況によってはクレームが発生する場合もある。


では、今回の予告編はどうだろう?

ミステリー映画でこういう改変は少々強引ではあるが、

映像やセリフはちゃんと本編に使われているものだし

個人的にはギリギリセーフかなと思う。

逆に「こういう騙し方があるのか…」と感心したぐらいだ。

今後も「予告編を使ったミスリード」のパターンを色々見てみたいなあ(^_^)


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●こちらは原作映画。『22年目の告白』よりもアクション性が強い↓

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『ガメラ 大怪獣空中決戦』が画期的な理由

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本日、テレビ(TOKYO MX2)で『ガメラ 大怪獣空中決戦』が放送される。

なぜ今ガメラなのか?

理由はよくわからないが、物語の中では本日6月10日に

ガメラが初めて日本(福岡)に上陸したことになっているらしい。


さて、『ガメラ 大怪獣空中決戦』が劇場公開されたのは1995年。

今から23年前だが、当時の怪獣映画ファンの反応は凄かった。

分かりやすく言うと、「初めて『シン・ゴジラ』を観た時の衝撃」に

近いものがあったのではないだろうか?


本作が画期的だった理由を具体的に挙げると


・子供向け要素を極力排したハードなトラマ展開

・「もし現実に怪獣が現れたら…」というリアルな世界観

・陸・海・空の自衛隊が全面協力したド迫力のミリタリー描写

・緻密なミニチュアを作って屋外で撮った見事な特撮効果


などになると思う。


特に、それまでの怪獣映画には無かったリアリティ溢れるストーリーは

ある種の「災害シミュレーション」的な圧倒的な現実味をもって描かれ、

「こういう怪獣映画を観たかったんだよ!」とファンから絶賛されたのだ。


2016年の『シン・ゴジラ』でも、

「自衛隊に攻撃を要請する政治家たちの会話がリアルだ」

と話題になったが、20年以上前に公開された『ガメラ 大怪獣空中決戦』でも

「防衛出動ではないのでガメラに対して武力を行使できない」

「自衛隊の基本戦術は専守防衛。こちらから先に攻撃できない」

などリアルなやり取りがしっかり描かれている。

(ちなみに登場する自衛隊を演じているのは本物の自衛官)


また、『シン・ゴジラ』の庵野秀明総監督はアニメの監督だが、

『ガメラ』の脚本を書いた伊藤和典も『うる星やつら』や『機動警察パトレイバー』など

アニメ作品を数多く手掛けてきた脚本家だ。

ちなみに監督の金子修介も押井守の依頼で『うる星やつら』に関わったり

『魔法の天使クリィミーマミ』の脚本を書いたりしていたらしい。

さらに特技監督を務めた樋口真嗣も、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』

『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』、『新世紀エヴァンゲリオン』など

数々のアニメ作品で絵コンテ等を担当し、『シン・ゴジラ』にも参加している。

つまり『ガメラ』は、アニメのテイストや方法論を実写映画に持ち込んだ最初の作品であり、

「その発展型が『シン・ゴジラ』」と言えるのかもしれない。


他にも、庵野監督が東宝から

「感動的なドラマや恋愛要素を入れてくれ」と言われた際

「だったら僕が監督する意味がないので降板する」と言って自分の主張を貫き通したのに対し、

金子監督も大映から様々な要求を突き付けられた際、

「その要求を飲んだら、僕が映画を撮る必然性がなくなる」と突っぱね、

あくまでもリアルな怪獣映画にこだわったなど、『シン・ゴジラ』との共通点が多々見受けられる。


中でも、樋口真嗣の果たした功績は非常に大きいと言えるだろう。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』の制作時は予算が6億円しかなかったため、

「スタジオにミニチュアをいっぱい並べて撮影する」という従来の方法がとれなかった。

そこで樋口監督は最初にレイアウト(画面構成)を決め、

「カメラを覗いた時に見える範囲しかミニチュアを設置しない」という方法を考案。


このやり方なら(カメラアングルをちょっとでも外れると画にならないが)

決まった構図で撮れば少ないミニチュアでも十分に効果的で、

なおかつミニチュア1個あたりの精度を高められるので、よりリアルな映像を作成できるのだ。


さらに樋口監督はミニチュアを屋外へ持ち出し、自然光を利用したオープン撮影を実行。

これが絶大な効果を発揮し、太陽に照らされたミニチュアはまるで本物のビルのように見え、

それらが破壊されるシーンが凄まじい迫力を生み出したのである。

何よりも素晴らしかったのは「壊れた東京タワーに降り立つギャオス」で、

まさに怪獣映画史に残る名場面!

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樋口真嗣は「『風と共に去りぬ』とかデビッド・リーンの映画をイメージしていた」らしく、

「東京が死の街になってしまったという恐ろしい状況を、動きの無い美しい画で見せて

”静かな恐怖感”を表現したかった」とこのシーンについて語っている。


なお、綺麗な夕焼けが撮れたのは偶然で、「太陽が傾き、沈むにつれて空がだんだんと

自分のイメージに近付き、凌駕していくのに興奮してわめきなががらカメラを廻していた」

という。今見ても実に見事なシーンだよねえ(^_^)

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『ガメラ2 レギオン襲来』の素晴らしさを語ってみた

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本日、テレビ「キネマ麹町」(TOKYO MX2)で『ガメラ2 レギオン襲来』が放送される。前作『ガメラ 大怪獣空中決戦』の翌年(1996年)に公開された「平成ガメラ三部作」の2作目だ。


1作目でリアリティ溢れる描写とカッコ良すぎる特撮映像で「こういう怪獣映画を待っていた!」と絶賛された映画の続編であるが故に、公開前から相当期待されていたであろう本作。

だが、その期待を裏切ることなく、何倍もパワーアップした作劇になっていて驚いた。


というわけで本日は、映画『ガメラ2 レギオン襲来』は何が素晴らしいのか、その魅力についてキャラクターやストーリーなど具体的に語ってみたいと思う。


●キャラクターについて

普通、「続編映画」は前作の登場人物が引き続き出て来るパターンが多いのだが、本作は1作目の主人公だった米森(伊藤剛志)や長峰(中山忍)は出て来ない。

代わりに渡良(永島敏行)と穂波(水野美紀)が新たな主役として活躍している。

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中でもヒロインの水野美紀に関しては監督の金子修介がメチャクチャに惚れこみ、なんと彼女が所属していた事務所の社長に直接出演依頼の手紙を書き、周囲の反対を押し切って強引にキャスティングしたらしい。


そして「美しい部分はきちんとフィルムに収めなければ!」と張り切り、ひたすら水野美紀にミニスカートを履かせることにこだわり続け、その美脚を色んな角度からカメラで撮りまくったそうだ。

そのおかげで劇中では不自然なぐらいに穂波のミニスカ映像が溢れているが、氷点下の中で素足を晒しっぱなしの水野美紀は震え上がっていたらしい。

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ちなみにガメラと心を通わせることができる少女:草薙浅黄(藤谷文子)と、なぜか毎回怪獣と遭遇する大迫力(螢雪次朗)が本作にも再登場(三部作全てに出演しているのはこの2人と、あとは自衛隊員の渡辺裕之ぐらいか)。

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なお、『ガメラ2』はゲスト出演者が非常に多いことも特徴で、内閣官房長官役を徳間書店の社長が務めていたり(セリフが結構長い!)、獣医学部の教授役が作家の養老孟司だったり、色んな人が出ていて面白い。

中でも特に有名なのが、近年は俳優として大活躍している大泉洋だろう。


『ガメラ2』の北海道ロケは1996年1月だが、『水曜どうでしょう』の放送開始が96年の10月なので、まだ大泉洋の名前が広く世間に知られる前に撮影されたのだ。

『ガメラ2』には他にもTEAM NACSの安田顕が隕石落下の急報を伝える自衛隊員役で、『水曜どうでしょう』の”ミスター”こと鈴井貴之が札幌市職員役でそれぞれ出演している。

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しかし、この2人に比べて大泉の役は「地下鉄の中で逃げ惑う乗客」という完全なエキストラ。

電車内が暗くて顔もはっきり映らず、セリフも一切無し。

おまけに、鈴井の手違いでエンドクレジットに名前すら載っていない。

この件をずっと根に持っていた大泉は、20年後に『シン・ゴジラ』のイベントで樋口真嗣と会った際、

「『ガメラ2』が僕の映画デビューだったのに、画面が暗すぎて影しか映ってないんですよ!」

などと不満をぶつけると、「影だけでも大泉さんって分かりますよ」と言われたらしい。

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●ストーリーについて

今回の敵は「宇宙怪獣」ということで、ストーリーにもSF要素が目立つ。脚本を書いた伊藤和典は「リアリティを持たせるためにレギオンの生態をきっちり考えた」とのこと。


レギオンが北海道を飛び去った後、穂波(水野美紀)の部屋に渡良(永島敏行)と帯津(吹越満)が集まって以下のような会話を繰り広げる。


「レギオンの体組織が半導体にそっくり」 → 「半導体はシリコンで出来ている」 → 「シリコンは土を分解して生成」 → 「その過程で酸素が発生する」 → 「レギオンは酸素を発生させることで草体を育て、同時に地球の生態系を狂わせるつもりか」 → 「シリコンをエサにしているからレギオンの体は半導体みたいな組織に進化したのだろう」 → 「この体の構造だと、レギオンは電磁波でコミュニケーションしているのかも」 → 「だから電磁波の強い場所を狙って攻撃してくるのか」 → 「もしそうなら、レギオンは大都市を目指す可能性が高い」


まさにSF小説ばりの緻密な設定だが、難しくて出演者の多くは理解できず、このシーンを撮影していた水野美紀は「今のセリフの意味が分かった人、いますか〜?」と周りのスタッフに問いかけたらしい(笑)。


なお、この部屋のセットには金子監督の私物も持ち込まれていたようで、本棚には萩尾望都の『アロイス』や、アーシュラ・K・ル=グウィンの『ゲド戦記』シリーズなど、ファンタジー作品が多く並んでいる。

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金子監督曰く、「穂波はこういう本が好きなんですよ。…いや、こういう本が好きな女の子がいたらいいなあって(笑)」とのこと(監督の願望だったらしい)。


なお前半の展開は、北海道に隕石が墜落した直後から通信障害など謎の事件が次々と起こり、

やがて「すすきの」に巨大な植物(草体)が出現し、街がパニックに!

そこへガメラがやって来て、草体を破壊し退却。その後、地下からレギオンが現れ、夜空に飛び去る。

そして仙台市街地に新たな草体が出現し、再びガメラがこれを破壊しようとするも間に合わず、

爆発の威力で仙台が消滅…という感じで進んで行く。

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「仙台消滅」のシーンは今観ると色々問題がありそうだが、当時は仙台市民から喜ばれたそうだ。それどころか青森の観客から「なんで青森に来ないんだ?札幌の次は青森だろ!」と苦情が出たらしい。


そして物語はこれ以降、急激にミリタリー色を強めていく。

金子監督自身も「脚本を読んだ段階で”これは戦争映画だ!”と思った」とコメントしているし、前作以上にミリタリー・テイストが全開になっている点が本作の特徴だろう。


90式戦車、87式偵察警戒車、F-15J戦闘機、AH-1S対戦車ヘリコプター、CH-47J大型輸送ヘリコプターなど、自衛隊の全面協力による”本物”を使った戦闘描写は圧巻だ。


市街地を爆走する戦車もミニチュアではなく、自衛隊の演習場敷地内に電話ボックスや道路標識を設置して撮影している。

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ちなみにこのシーン、当初は押井守監督に依頼していたが、『攻殻機動隊』の仕事が忙しくて参加できなかった(その後、押井監督は「俺が撮っていればもっと美しいアングルになったのに…」と愚痴っていたらしい)。


●特撮について

『ガメラ2』の特撮を担当したのは、前作に引き続いて樋口真嗣である。

『ガメラ 大怪獣空中決戦』で観客の度肝を抜きまくった超絶的なミニチュア技術が今回も炸裂している。

中でも、オープンで撮影したすすきのデパート破壊シーンは、「本当にミニチュアか?」と思うほど迫力満点!

破片が偶然カメラに当たるところとか、何度観ても素晴らしい!

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他にもレギオンとガメラの対決シーンや、レギオンの攻撃で大爆発するビルや戦車など、特撮的な見どころは数え切れない。


そんな中で特に僕のお気に入りシーンは、「仙台へやって来たガメラが市街地を歩いている時に渡良の車とすれ違う」という場面だ。↓

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実は、これとほぼ同じシーンが『シン・ゴジラ』にも出て来る(たぶんオマージュ?)。

しかし、『シン・ゴジラ』が「本物の風景を撮影してCGのゴジラを合成」しているのに対し、『ガメラ2』の方はCGを一切使っていない。


では、いったいどうやってこんなシーンを撮ったのか?その秘密は、アニメの撮影で使われる「マルチプレーン」という手法だ。


マルチプレーンとは、背景画の上にいくつかのセルを重ね、それぞれを違う速度でスライドさせることで2Dの映像に奥行きや立体的な効果を与える手法のことだ。

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アニメではセルに「電柱」や「看板」や「ビル」などの絵を描き、それを動かして撮影しているのだが、『ガメラ2』ではそれらを全てミニチュアでやっているのが凄い!


具体的な撮影方法は、まずガメラ(着ぐるみ)をでかいターンテーブルの上に乗せ、ゆっくり回転させながら撮影カメラを近づけていく。


同時に、「電柱」や「看板」や「ビル」などのミニチュアの速度を変えながら(手前の電柱は速く、奥のビルはゆっくりと)動かし、あたかも「車とガメラがすれ違っているように」見せているのだ。


僕は最初にこのシーンを観た時、「さすがアニメの世界で生きてきた人は発想が違う!」と非常に驚いたのだが、樋口監督は次のようにコメントしている。

手前のものほど早く動いて、奥のものほどゆっくり動くという実際の現象を分解して、これをセットの中で再現するにはどうすればいいのか…と考えたんですよ。

単純にセットを組んでその中で動かすと不自然に見える。それがすごく嫌だったんで、まず奥の方のスピードを変えて、次に手前の電柱を速く動かして…。

スピードをコントロールしているうちに段々「あ、こんな感じかな?」と。試行錯誤していたら最終的にああいう形になっていたという。

スタッフからは「立体アニメみたいだな」って言われて、自分でも「確かにそうだな」と思いました。でもそれは結果的にそうなっただけで、アニメのやり方を意識していたわけではありません。

う〜む、自分の中のイメージを具現化しようと色々試していたらこうなった、ということか…。いや、それはそれで凄いことだけど(^_^;)

というわけで、『ガメラ2 レギオン襲来』についてあれこれ語ってみたが、改めて観ても非常に完成度が高く、まさに「怪獣映画の傑作」と言わざるを得ない。ぜひとも続編を…というか『シン・ガメラ』を作って下さい!


『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』とは何だったのか?

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本日、テレビ「キネマ麹町」(TOKYO MX2)で『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』が放送される。前作『ガメラ2 レギオン襲来』の3年後(1999年)に公開された「平成ガメラ三部作」の完結編だ。

ただしこの映画、正式に制作が決定するまで、割と時間がかかっている。

『1』の公開時は評価・話題性共に高く、早い段階から『2』を作ることが決まっていたのに対し、『2』の時は「配収10億円を超えるのでは?」と言われながら7億円止まりだったため、次回作を作るべきかどうか大映側も悩んでいたからだ。

さらに、『ガメラ1』が評判になったことで金子修介監督や特技監督の樋口真嗣も仕事が忙しくなり、なかなか両者のスケジュールが合わなかったことも理由の一つと言われている。

なので会社側は「別の人に特技監督を依頼したら?」と提案したようだが、金子監督は「ガメラには樋口氏が乗り移っている。特技監督を変えると、ガメラの大切な要素まで失われてしまう」と拒否。

それで結局、樋口真嗣のスケジュールが空くのを待ってから制作に取り掛かったらしい。

というわけで本日は、『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』について思うことを色々書いてみたい。


●キャラクターについて

本作はシリーズ初登場の比良坂綾奈(前田愛)を中心に話が進んでいくが、1作目のヒロイン:長峰真弓(中山忍)と草薙浅黄(藤谷文子)も再登場し、ドラマを引っ張っている。

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また、1作目から出ている大迫力(螢雪次朗)の出番が前作以上に増えており、しかもギャオスによって植え付けられたトラウマを克服する”大迫の成長物語”みたいな感じになっているのが面白い。

なお、本作にも生瀬勝久、八嶋智人、伊集院光、鴻上尚史、上川隆也、草野仁、津川雅彦など多彩なゲストが出演していて、「隠れキャラ捜し」も楽しめる。

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「隠れキャラ」といえば、京都駅で長峰や草薙とすれ違う「黄色のシャツの少女」に気付いた人はいるだろうか?実はこの人、前田愛なのだ!

先に自分の出番が終わった前田愛が「私も京都駅のエキストラをやっていいですか?」と監督に頼み込み、比良坂綾奈ではなく「その他大勢の乗客」を演じていたのである(わかるわけないだろw)。

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あと、石橋保や田口トモロヲや前田亜紀など、前作に出ていた役者が何人か再登場しているが、キャラクターの繋がりは一切なく、完全に別人としてゲスト出演しているとのこと。

そんなゲストの中でも特に有名なのが仲間由紀恵だろう。イリスに襲われてミイラになってしまう役だが、仲間由紀恵が現場に来た時はスタッフ全員「わ〜!仲間由紀恵だ!」とハイになり、しかもスタッフの数も普段より増えていたらしい。

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そして「平成ガメラといえば自衛隊」というぐらい自衛官の登場頻度が高いわけだが、今回も防衛省の全面協力により、本物の自衛隊員が至る所に出演している(イリスに戦闘機で攻撃をしかけているのは航空自衛隊のパイロット)。

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さらに森の中でイリスの攻撃するシーンでは、なんと本物の陸上自衛隊が本物の銃を使って空砲を撃っているのだ!「リアル」という意味ではこれほどリアルなシーンも滅多にないだろうが、1万発以上撃ちまくったため、撮影後に薬莢を拾い集めるのが大変だったらしい。

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●ストーリーについて

『ガメラ3』のストーリーはちょっと特殊で、映画の冒頭に『ガメラ1』の映像を流していることから分かるように、「3作目だけど1作目の続編」というスタイルなのだ。

『ガメラ1』で倒したはずのギャオスが再び現れ、1作目の主人公(長峰)が調査を開始。さらにガメラとギャオスの戦闘に巻き込まれて家族を失った少女がガメラに恨みを抱き…という展開は完全に『1』の続きである。

そのため、本来シリーズ物は『1』 → 『2』 → 『3』という時系列で話が進んでいくのに対し、本作の場合はむしろ『1』 → 『3』で観た方が流れを把握しやすくなっている。

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また、平成ガメラシリーズの特徴として、1作ごとに作風が異なっている点も面白い。

1作目は「王道怪獣映画」 + 「災害シミュレーション」、2作目は「SF映画」 + 「本格ミリタリー」、そして3作目は「恋愛映画」 + 「伝奇ファンタジー」という具合に、全てイメージが違うのだ。

ただ前2作が割とハードな展開で盛り上げていたのとは対照的に、3作目でいきなりソフトな恋愛ドラマへ舵を切ったことに対する観客の”戸惑い”みたいなものはあっただろう。

今回、ガメラに恋愛要素を入れたのは金子・伊藤・樋口の共通した意見だが、怪獣映画にウェットかつファンタジックな要素を加えた独特のムードは、ファンの間でも賛否両論真っ二つだったらしい。

あと、「大量のギャオスが迫り来る中、それに立ち向かおうとするガメラ」という”俺達の戦いはこれからだエンド”で終わっているため、白黒ハッキリした結末を求めている観客には少々ウケが悪かったようだ。


●特撮について

「精巧なミニチュアセット」と「派手な爆発」は相変わらず素晴らしく、「さすが平成ガメラだ!」と感心するしかない。さらに本作では「リアルなCG映像」まで加わっているのだからファンにはたまらない。

特に、中盤の「ガメラとイリスの空中戦」は背景に至るまでコンピュータ作画の”フルCG”で作られており、『1』『2』に比べて格段の進化を感じさせる名シーンだ。

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そして、最大の見どころは何と言っても「渋谷の大爆発シーン」だろう。「今回は本物の街並みを完全再現することにこだわった」と樋口氏が語っている通り、特撮のレベルが尋常じゃない。

実は、『1』の”東京タワー”や『2』の”すすきのビル”などの場合、東京タワー(あるいはビル)という目立つランドマークさえ置いておけば、たとえ周りの建物が多少違っていても「東京タワー周辺」に見えるのだ(そういう意味では「完全再現」とは言い難い)。

しかし、『ガメラ3』の渋谷は「実際の渋谷の風景」に合わせ、全ての建物を完璧にマッチングさせている。つまり、本物の渋谷を完全コピーしているのだ。

その渋谷のミニチュアを爆破する映像が、これまた凄まじい!

なにしろ、東横店のミニチュア内部にナパーム6本、駅前広場にベタ置きのナパームを16本設置。計22本のナパームを20リットル以上のガソリンで爆破したというド迫力シーンである。

この爆破を撮るためにスタッフは大変な苦労を強いられたらしく、撮影が始まる前から何度もテストを繰り返し、本番当日は朝からナパームやミニチュアをセットし始め、実際に爆破したのは夜の9時。

映画では一瞬だが、この一瞬にとんでもない手間暇がかかっているのだ。

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●イリスについて

今回ガメラと戦う新怪獣イリスは、劇中で「ギャオスの変異体」と呼ばれており、その他大勢のギャオスを統括するラスボスのような存在として描かれている。

その姿は、いわゆる”怪獣”の体型というよりも人間型に近く、シャープでスマートな、ある種のヒーロー性をも備えている(「エヴァンゲリオンみたいだ」という意見も)。

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イリスのデザインは『シン・ゴジラ』でもデザインを担当した前田真宏で、しかも「第1形態」 → 「第2形態」 → 「第3形態」と成長していくところもシン・ゴジラと同じだ。

なお、イリスのスーツには発光させるための電飾が仕込まれているのだが、熱と光量がメチャクチャ強くて、撮影中にスーツから煙が噴き出してしまった。このため8秒以上は連続で点灯できなかったらしい。

余談だが、僕は『ガメラ3』の公開当時に開催されていたイベントを見に行った際、”本物のイリス”に触ったことがある。

そのイベントでは、会場に『ガメラ3』の撮影で使われたミニチュアや小道具や着ぐるみ等が多数展示され、セットを再現したジオラマまで飾ってあった。

もちろん展示物には触ることが出来ないんだけど、なぜかイリスの着ぐるみだけが手の届く場所に置いてあり、みんな触っていたのである。なので僕も触ってみた。

イリスのスーツは意外と柔らかく、特に触手の部分は発砲ウレタン製でフニャフニャしていた。どうやらシーンに合わせて「硬いスーツ」と「柔らかいスーツ」の2種類が作られ、ガメラとのアクションシーンでは柔らかい方を使用していたらしい。

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●GAMERA1999について

『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』を語る際、『GAMERA1999』に触れないわけにはいかないだろう。

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『GAMERA1999』とは、『ガメラ3』の公開時に発売されたメイキングビデオで、総監督は庵野秀明、カメラマンは『エヴァ』で作画を担当したアニメーターの摩砂雪、『エヴァ新劇場版』の監督の鶴巻和哉など。

その内容は極めて特殊で、一応「映画のメイキング」という体裁をとってはいるが、実態は「金子修介監督と樋口真嗣特技監督の確執を赤裸々に描いた衝撃のドキュメンタリー」である。

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『ガメラ3』の制作が決まった時、当初は草薙浅黄(藤谷文子)が登場しないストーリーになっていたのだが、金子監督がそれに猛反対。

樋口真嗣は「ガメラと浅黄の関係性は『ガメラ2』で決着したんだから、『3』に出て来る必然性がないでしょう」と主張したものの、金子監督が「絶対に嫌だ!」と断固拒否したのである。

そのため、脚本家の伊藤和典は「草薙浅黄が登場するバージョン」のストーリーを新たに考えることになり、特撮班がクランクインした時点でもまだシナリオが完成していないという非常事態に!

なので樋口氏はミニチュアセットを撮影しながら、現場で必死に絵コンテを直したり削ったりするはめになってしまった。時間がない中、懸命に頑張る特撮スタッフたち。

やがて、少しずつ金子監督と樋口氏の間に不穏な空気が漂い始め…


プロデューサー:「やっぱ樋口ちゃんが金子さんとしっかり話をしなきゃダメだよ」

神谷誠(特撮スタッフ):「でも、金子さんに物事を伝えるのって難しいよね」

樋口真嗣:「す〜〜〜〜っごい難しいよ!」


みたいなネガティブな会話が何度も繰り返されるようになっていく。

要は、映画の内容や仕事の進め方をめぐって「本編班」と「特撮班」との間で意見が対立していたわけだが、そういう不満を抱えたまま『ガメラ3』の撮影は続けられたのである。

『GAMERA1999』の映像を見ると、全体打ち合わせ会議みたいな場所で大勢のスタッフを前に、金子監督と樋口氏が互いの意見を言い合う場面が出て来る。

しかし、映画全体の方向性を決定するのはあくまでも金子監督であり、樋口氏が撮った特撮映像をどういう風に使うのか(あるいはカットするのか)、その判断は全て金子監督に一任されているのだ。

なので、金子監督から「俺はこっちの方がいいと思う」と言われた樋口氏は「う〜ん、そうですか…」と納得できない気持ちを抱えながらも受け入れざるを得ない。

日本の特撮映画は、円谷英二が本編監督と特撮監督という「二班体制」を生み出したことで大いに発展したものの、同時に「一つの映画に二人の監督がいる」という歪んだシステムを定着させてしまった。

それでも昔は「人間ドラマ」と「特撮シーン」が明確にわかれていたため、作業する上で特に問題はなかった。

しかし近年は(特に『ガメラ3』は)人間の役者と特撮部分が絡むシーンが非常に多くなっており、特撮監督が演出に関わる機会も増えている。

そのため「どちらの監督が主導権を握るのか?」という本質的な問題が表面化してしまったのだ。

もちろん、両者の意見が合致していれば監督が二人いても問題ないのかもしれないが、残念ながら『ガメラ3』では上手くいかなかったらしい。この件に関して樋口氏は以下のようにコメントしている。

今と昔では映画を作る環境が全く異なってるんです。毎週新作が何本も封切られていた頃っていうのは、本編監督も特撮監督もすべて映画会社の社員だったんですよ。二班編成っていうのはそういう時代に作られたシステムだった。


でも今は全然違います。スポンサーがついて企画が通って、それからフリーのスタッフを集めるんです。それが今の映画の作り方なんです。そうなると、昔とは監督の権限とかが違うわけですよ。そういう環境を背景として見た時、初めて違いがわかる。


昔の監督には、”社員として”の監督の在り方というものがありました。でも今は、”作家として”の意識が明確でないと演出家はやれない。だから本質的には映画作りのシステムが変わってしまっているのに、表面上はかつてのシステムに乗っかっていると。その矛盾が一番表面化しやすいのかもしれませんね。


つまり特技監督って、今のシステムに入り込めないんですよ。自分の場合は純粋に”過去への情景”でその肩書を名乗っていますが、現実はキビシイっスね。

という具合に当時の樋口真嗣はかなりのストレスを感じていたようだが、一つ注意したいのは、『GAMERA1999』はあくまでも「樋口真嗣の友人の庵野秀明が撮ったドキュメンタリーである」という点だ。

そのため、主な映像は「樋口氏の側から見た主張」に偏っており、決して公平な取材に基づくドキュメントとは言えない。

金子監督には金子監督の言い分があるだろうし、そもそも『ガメラ3』を作る際に「樋口さんがいなければガメラは撮れない」とまで言って会社を説得したのは金子監督なのだ。

したがって、あまりにも樋口真嗣の肩を持つような編集の仕方は「ちょっとどうだろう?」という気がしなくもない。

しかしながら、樋口氏が『ガメラ3』の制作時に不満を抱いていたのは事実だし、これをきっかけとして本編監督を目指すようになったのも間違いない。

そういう意味では、『ガメラ3』のメイキングとしても、樋口真嗣の葛藤を描いたドキュメンタリーとしても、非常に楽しめる映像だと思う。残念ながら現在ソフト化されていないので、ぜひブルーレイ(またはDVD)を発売して欲しい(^_^)


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『レディ・プレイヤー1』ブルーレイ&DVD発売決定

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世界中で大ヒットを記録したスティーブン・スピルバーグ監督の最新作『レディ・プレイヤー1』が早くもBD&DVD化されることになりました。

この映画には一瞬しか画面に映らないような「隠れキャラ」が大量に登場するため、劇場で観た人も家でじっくり鑑賞して”イースター・エッグ”を探す楽しみを味わえるでしょう(^_^)

なお、原作者のアーネスト・クラインは、映画化が決まった時には嬉しさと同時に不安も感じていたそうです。以下、インタビュー記事より一部抜粋。

映画化が決まって心配したのが、劇中に登場しているキャラクターたちだよ。ポップカルチャーのアイコンが登場する作品なのに、それが出来なければ意味がない。でも、世界で最も尊敬されている監督であるスティーブン・スピルバーグの作品にキャラクターを出せるのは嬉しいと、権利を持つ人たちは快諾してくれたよ。


映画に出せなくて悲しかったのがウルトラマン。僕は『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』が大好きなんだけどね。どうしても許可が下りなかった。その代りじゃないけど、原作の中では小さい扱いだった『機動戦士ガンダム』のRX-78-2をフィーチャーして活躍してもらったよ。

う〜ん、ウルトラマンがダメだったので、逆にガンダムの活躍があんなに目立つことになったわけか…。他にもエヴァンゲリオンがNGだったり、キャラクターの権利関係は色々難しい部分があったようですねえ。

しかしその反面、原作には出て来ない、映画版だけに登場するキャラクターがいたりするので、それはそれで楽しいかもしれませんね(^_^)




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『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』ネタバレ感想

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遅ればせながら『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の感想を書いてみる。

公開前にアンソニー&ジョー・ルッソ監督が「絶対にネタバレしないでくれ!」とネット上で懇願していたため、多くの観客が自重していたようだが、劇場上映も終了したのでそろそろいいだろう。

ただ、その前に解決しておかなければならない問題が一つ。そう、「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)はどれを観ればいいのか?問題」である。

MCUシリーズは過去作の内容を踏まえた上で次のストーリーを展開しているため、出来れば事前に全作品を観ていることが望ましい。

しかし、2008年の『アイアンマン』から始まったこのMCUは、最新作の『インフィニティ・ウォー』に至るまで実に18作品にも達する長大なシリーズだ。

そのため、よほどのアメコミ映画ファンでもない限り、全作品を制覇している人は多くないだろう。それを示したものが以下の興行成績グラフである。

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これを見ると『アイアンマン』や『インクレディブル・ハルク』の頃は今一つパッとしてないものの、「1」の『アベンジャーズ』で突然の大ヒットを記録!

だが、その後はまた急激に落ち込み、「2」の『アベンジャーズ2』で再び大ヒット…みたいなパターンを繰り返していることが分かる。

つまり”大ヒット”と呼べるものは1作目の『アベンジャーズ』と2作目の『エイジ・オブ・ウルトロン』、あとは『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』と『スパイダーマン・ホームカミング』ぐらいしかないのだ。

それ以外はだいたい10億円前後をウロウロしていて、『ザ・ファースト・アベンジャー』に至っては3億円程度しか稼げていない(ちなみに同時期に公開された三谷幸喜監督の『ステキな金縛り』は42億円!)。

これはすなわち、「日本の観客はソーとかハルクなどにあまり興味がなく、『アベンジャーズ』シリーズしか観ていない」ということなのではないだろうか?

僕が気になったのはまさにこの点で、「他のヒーローがどんな活躍をしているのか知らないのに、『アベンジャーズ』だけ観て楽しめるの?」ってことだ。

実際、『インフィニティ・ウォー』を批判している人の中には「キャラや設定の詳しい説明がないのでストーリーが全くわからなかった」という意見もあったようだが、「当り前だよ!」としか言いようがない。

「三部作の『パート3』からいきなり観る」とかならともかく、過去18作品の集大成的な『インフィニティ・ウォー』を予備知識なしで観てわかるわけがないだろう。

じゃあ、どれを観ればいいのか?ってことに関して(もちろん正解なんてないのだが)、僕の独断と偏見で選んでみると…

まず、最初に『アイアンマン』。この映画は全ての始まりの物語であり、『アベンジャーズ』シリーズ全般においてもかなり重要なポジションを占めているので外すわけにはいかない。

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そして『アベンジャーズ』と『ウィンター・ソルジャー』と『エイジ・オブ・ウルトロン』と『シビル・ウォー』も、後のストーリーに関わる重要なエピソードが含まれているので必須だ。

あとは『マイティ・ソー バトルロイヤル』も観ておいた方がいいだろう(なにしろ、『バトルロイヤル』のエンディングがそのまま『インフィニティ・ウォー』のオープニングに繋がっているので)。

もちろん、全作品を観るのが一番いいのは言うまでもないが、最低限この辺を抑えておけば「何が何やらさっぱりわからん」という事態は避けられると思う。


では、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の話へ。


『マイティ・ソー バトルロイヤル』のラストで、アスガルドの民と共に宇宙船に乗って旅立ったソーだが、なんと『インフィニティ・ウォー』の冒頭でいきなりボロボロにされるという衝撃的な幕開け!

圧倒的な強さを発揮するサノスの前に、あのハルクでさえあっさりやられてしまい、ヘイムダルやロキまで瞬殺だ(ヴァルキリーはどうなったんだろう?)。

アベンジャーズのメンバーの中ではかなり強いと思われるソーとハルクですら全く歯が立たない状況を目の当たりにし、オープニングから絶望的な雰囲気が漂う。

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ここでサノスはパワー・ストーンとスペース・ストーンを手に入れ、タイム・ストーンやマインド・ストーンを奪うために部下(ブラックオーダー)を地球へ向かわせた。

その後、宇宙を漂っていたソーはガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのメンバーに助けられ、ロケットとグルートと一緒にニダベリアへ。スターロードは、リアリティ・ストーンがある惑星ノーウェアへガモーラたちと共に向かう。

ガーディアンズは今回アベンジャーズに初参戦で、「あのノーテンキなキャラがメンバーに加わって大丈夫なのか…?」と少々不安だったものの、意外と違和感がなかった(笑)。

噂によると、ガーディアンズのシーンだけ1作目と2作目(『リミックス』)を撮ったジェームズ・ガン監督が演出しているらしいが、「上手くトーンを合わせたなあ」と感心するしかない。

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一方、地球ではアイアンマンとドクター・ストレンジとスパイダーマンが、サノスの部下(ブラック・ドワーフ&エボニー・マウ)とタイムストーンをめぐって激しいバトルを繰り広げる。

この3人が共闘するシーンは「ついに来たか…!」という感じで、長くシリーズを観てきた人ほどテンションが上がったはず。アイアンマンとドクターのやり取りも面白かった(その後、3人は宇宙船に乗って宇宙へ)。

そして別の場所では、身を潜めていたヴィジョンとスカーレット・ウィッチの前に、マインドストーンを奪うためにコーヴァス・グレイヴとプロキシマ・ミッドナイトが出現。

ただこのシーン、ヴィジョンが明らかに弱くなってるような気がしたんだけど、気のせいかな?『エイジ・オブ・ウルトロン』と『シビル・ウォー』の時はもっと強かったような…。

しかし、苦戦しているヴィジョンたちの前に颯爽と現れ敵を蹴散らすキャプテン・アメリカの、なんたるカッコ良さ!まさに「ヒーロー見参!」って感じで大興奮。序盤で一番盛り上がったシーンは間違いなくここだろう。

その後、ヴィジョンはキャップたちと共にトニー・スタークの基地へ行き、ブルース・バナーとブラックウィドウが再会。ローディとファルコンも合流し、ヴィジョンのマインドストーンを取り除くためにワカンダへ。

ワカンダではブラック・パンサーとウィンター・ソルジャーが加わり、この辺でほぼ全てのキャラが出揃う(なお、ホークアイとアントマンは出ない)。

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一方、宇宙ではアイアンマンたちとガーディアンズが出会い、サノスを相手に苦戦を強いられ、ソーはムジョルニアに代わる新たな武器:ストームブレイカーを手に入れる。

そして、ワカンダでキャップたちが、マインドストーンを奪いに来たサノスの軍団を相手に壮絶な死闘を繰り広げる中、轟く雷鳴と共にソーが登場!ストームブレイカーを地面に叩きつけながら渾身の雄叫びを上げる!

「サノスを呼んで来い!」

このシーンは本当に痺れた。『マイティ・ソー』『ダーク・ワールド』『バトルロイヤル』と続いてきたソーの人生は、父が死に、姉が死に、弟が死に、アスガルドの民が死に、ついでに彼女にも振られるという、まさに不幸の連続だった。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』は、そんな逆境から再びソーが立ち上がる姿を描いた”復活の物語”でもあったのだ。

なので、普通のヒーロー物の定石ならば、この後「ラスボスが最後の重要なアイテムを手に入れる寸前に主人公たちがそれを奪って大逆転」という”お約束の展開”を予想するだろう。

だが、違った。

サノスは最後の一つ、マインドストーンをヴィジョンから奪い、6つのインフィニティ・ストーンを全て手に入れ、ソーが止める間もなく指を鳴らしてしまうのだ。

その瞬間、仲間たちの姿が消え始める。

ヴィジョン、スカーレット・ウィッチ、ブラックパンサー、ドクター・ストレンジ、スパイダーマン、ウィンター・ソルジャー、ファルコン、スター・ロード…

まるで塵のように人体が崩れていく様は、『新世紀エヴァンゲリオン』旧劇場版のラストシーンの如き不気味さで、観る者すべてを絶望の淵へ叩き落としたに違いない。


「これが本当にヒーロー映画の結末なのか?」と。


そう、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の凄さとは、大作映画にありがちな「衝撃のラストシーン!」という使い古された常套句が”本当に衝撃だった”、という点なのである。

もちろん、物語はこれで終わりではない。2019年5月3日に続編となる『アベンジャーズ4』の公開が決定しているからだ。

「どうしてドクター・ストレンジはタイム・ストーンをサノスに渡してしまったのか?」「”こうするしかなかった”とはどういう意味なのか?」など、謎や疑問もいくつか残っている。

なので次回作では、生き残ったアイアンマン、キャプテン・アメリカ、ハルク、ソー、ブラック・ウィドウたちに加え、今回出番のなかったホークアイやアントマン、さらにニック・フューリーが消える間際に呼び出そうとしていたキャプテン・マーベルらが一致団結してサノスを倒す…!に違いない。

なお、「死んでしまったヒーローたちはどうなるのか?」については、『アベンジャーズ4』以降も『スパイダーマン』や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の続編が公開予定となっているので、たぶん何らかの方法で生き返るのだろう(やっぱタイム・ストーンを使うのかなあ?)。


『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』Blu-ray&DVD発売決定!

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全世界で驚異的な大ヒットを記録した『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が、早くもブルーレイ&DVD化決定!これに合わせてアベンジャーズとサノスの本編バトルシーンが公開されました。

今回、公開となった本編クリップ映像は、アイアンマン、スパイダーマン、ドクター・ストレンジたちが、最凶最悪のヴィラン:サノスと闘うバトルシーン。

ドクター・ストレンジが魔術を使い、スパイダーマンが縦横無尽にキックし、アイアンマンが奇襲攻撃を仕掛ける!しかし、サノスの圧倒的なパワーに、3人がたちまちピンチに追い込まれる様子が映し出されています。

『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』が凄いのは、ラスボスのサノスが「ワハハハ!この宇宙は俺のものだ!」みたいなステレオタイプの悪人じゃなくて、”信念を持って行動している”という点なのです。

サノスはサノスなりに「宇宙の危機を救おう」と考え、そのためにインフィニティ・ストーンを集めているわけですが、アベンジャーズたちヒーローは「全生命の半分を消滅させる」というサノスの行動を容認できません。

果たしてアベンジャーズたちはサノスを倒し、その野望を阻止できるのか?ファンの度肝を抜いた”衝撃のラスト”を自宅でじっくりご堪能ください。

なお、今回のMovieNEXの発売決定を記念し、本日7月11日の日没から24時まで、横浜マリンタワーがインフィニティ・ストーンをイメージした6色にライトアップされるそうです(^_^)















『ジュラシック・ワールド』の日本語吹替え版に関する大問題!

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本日、金曜ロードショーで『ジュラシック・ワールド』が放送される。

世界中で大ヒットした『ジュラシック・パーク』シリーズの4作目で、公開中の続編『ジュラシック・ワールド/炎の王国』を宣伝するためなのだが、日本語吹替え版をめぐってちょっとした騒ぎが起きていたのをご存じだろうか?

まず、2015年に『ジュラシック・ワールド』が劇場で公開された際、俳優の玉木宏が主役のオーウェン(クリス・プラット)、木村佳乃がヒロインのクレア(ブライス・ダラス・ハワード)の声を吹替えたものの、例によって映画ファンから批判が殺到。

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「キャラクターのイメージと全然合ってない!」「なぜプロの声優を起用しないんだ!」などのクレームが続出したらしい(個人的には玉木宏のアフレコが下手とは感じなかったけど、クリス・プラットのワイルドな風貌に玉木のクールな声は合わないと思う)。

ただ、この日本語吹替えは後にブルーレイにも収録される、いわば”公式版”とも言える吹替えだ。

にもかかわらず、2017年8月に金曜ロードショーで放送することが決まった際、なんと日本テレビは「違う俳優で作り直そう」と決断したのである。こうして、新たに山本耕史と仲間由紀恵を起用した「金ロー版吹替え」を独自に制作、テレビで放送された。

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ところが、事実上の“失格”の烙印を押される形になった玉木と木村の両事務所は「そんなにウチの俳優が気に入らないのか!?」と大激怒。日テレ側との間に険悪なムードが漂うことになってしまった。

しかも、この時点で2018年に『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が公開されることが決まっており、日本の配給会社や宣伝担当者は「う〜ん困った!次回作は誰に吹替えを頼めばいいんだ?」と大弱り(この人たちには「プロの声優を使う」という発想はないのだろうか?)。

そんなゴタゴタがありつつも、結局は前作に引き続いて玉木宏と木村佳乃が吹替えを担当することになり、配給会社は一安心。ただ、そうなると気になるのが金曜ロードショーだ。

当然、『炎の王国』が公開されるタイミングで『ジュラシック・ワールド』を放送するはずだが、その際にどちらの吹替えを放送するのか?

結果は………なんと劇場公開版!つまり「玉木&木村版吹替え」を放送することに決定!えええええ!?これは”日テレ側が事務所や配給会社に配慮した”ってことなのだろうか?う〜む…

理由は良くわからないが、とにかく日テレがわざわざ時間と費用をかけて作った「金ロー版」は放送しないという決断を下したわけで、恐らく今後二度と「山本&仲間版吹替え」を観る機会もないだろう。

なぜなら、金曜ロードショーが作った吹替え版を他のテレビ局が放送することはあり得ないし、今後ブルーレイやDVDに収録される可能性もほぼ無いからだ。

つまり「山本耕史と仲間由紀恵の日本語吹替え」は”封印作品”になってしまったのである(2017年に放送された金ロー版を録画している人は「お宝映像」になるかもしれないので持っていた方がいいぞw)。

まあ、個人的には特にこだわりもないんだけど、「せっかく作った吹替えを封印するなら作らなきゃいいのに…」とか、「山本と仲間の立場はどうなる?」とか、「そもそもちゃんとした声優を使えよ!」とか、色んな意味でモヤる案件だなあ(^_^;)


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NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2018-03-27)

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「アニメ史上最も作画がすごいシーン」の定義とは?

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先日、「アニメ史上最も作画がすごいシーンはここだ」というツイートが話題になっていた。

ツイ主が挙げていたのは『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』の第7話で、確かに美麗かつ緻密な作画が印象的である。

これに対して、「いやいや、アニメ史上最も作画がすごいシーンならこれだろ!」と色んな人が様々なタイトルを挙げていたのが興味深い。

まあ、こういうのは観る人の主観によって意見が異なるんだろうけど、そもそも「アニメ史上最も作画がすごいシーン」とは、どういう条件に基づいて選出しているのだろうか?

「すごい」の定義も人によって解釈がわかれると思うが、例えば僕の中では「すごい作画」を大きく以下のように分類している。


1:ディテールがすごい

2:動きがすごい


まず1は「絵の緻密さ」を比べたもので、「キャラのディテール」や「背景のディテール」など、「画面の密度がどれだけ高いか?」を評価基準にしたものだ。

「キャラのディテール」に関しては、80年代頃までは3段影や4段影を付けまくり「ひたすら画面の密度を上げる方向」に進化していたが、90年代以降は逆に「影なし」というシンプルなキャラへと変わっていった。

一方、「背景のディテール」に関しては、90年代以降もどんどん描き込みが増していき、最近では新海誠のように写真からトレースするパターンも定着し、「キャラがシンプルで背景はリアル」という状況がトレンドになっている。

つまり、「すごい作画」=「ディテールがすごいアニメ」と解釈している人は、近年流行りの「丁寧に描き込まれた緻密な作画」を好む傾向があるのかもしれない。

劇場アニメーション 『言の葉の庭』 (サウンドトラックCD付) [Blu-ray]
東宝 (2013-06-21)

新海誠のアニメはどれも異常なぐらいに画面が美しい

そして2の「すごい動き」に関しては、さらに3つぐらいの要素に分類できる。

●派手なアクション

まず1つ目は、メリハリの効いた派手な動きで観客を驚かせる「金田系のアニメ」だ。

70年〜80年代に活躍した伝説的なアニメーター:金田伊功が生み出した奇抜なアクションは、他の多くのアニメーターに絶大な影響を与えた。

みんなが金田の「すごい動き」をマネしたため、いつしか金田系の作画スタイルが業界を席巻していったのである。

現在でも今石洋之、小池健、新井淳ら凄腕アニメーターたちが金田系アニメを継承しているが、やはり「すごい作画」を選ぶとすれば、その源流の『バース』になるだろう。

バース [DVD]
ビクターエンタテインメント (2000-12-16)

これぞ作画アニメ!という開き直りが潔いw

●ぬるぬる動く

そんな金田系のシャキシャキした動きに対し、もっと柔らかくなめらかな作画を追及したアニメが、所謂「ぬるぬる動く」というやつだ。

元々、ディズニーアニメなどは1秒で24枚の絵を描く「フルアニメ」が主流なのだが、日本の場合は経費と時間を節約するため1秒で8枚(3コマ打ち)の「リミテッドアニメ」が多い。

そんな中、海外と同じく1秒24枚(1コマ打ち)や12枚(2コマ打ち)で作られたアニメを見ると、「おお!ぬるぬる動いてる!」「すごい作画だ!」となってしまうわけだ。

もちろん「作画枚数が多い方がいいアニメ」という意味では決してない。ただ、「すごい作画は何がどうすごいのか?」と問われた時、その根拠を示す上で「ぬるぬる動く」という表現は分かりやすいのだろう。

AKIRA 〈Blu-ray〉
ジェネオン・ユニバーサル (2011-06-22)

『AKIRA』は基本2コマ打ちで全てが「ぬるぬる動く」わけではないのだが、”すごい作画”には違いない

●芝居がリアル

派手なアクションがあるわけではなく、1コマでぬるぬる動いているわけでもない。でも、キャラクターの動きが自然でとんでもなくリアル!

そんなアニメも「すごい作画」と言われているが、数はあまり多くない。なぜなら、人間の自然な芝居を完璧に描けるような優れたアニメーターは限られているからだ。

昔、宮崎駿が『となりのトトロ』を作る際に「リアリティ溢れる芝居を描けるのは近藤喜文しかいない」と考え、アニメーターの近藤を作画監督に指名したところ、高畑勲も『火垂るの墓』に近藤を参加させようとしたため、両者の間で熾烈な”引き抜き合戦”が起きたのは有名な話である。

結局、近藤は『火垂るの墓』に参加することになるのだが、米を茶碗によそう時の、手首に付着した米粒を舐め食べる動作など、高畑アニメが追究する繊細でリアルな描写の実現は、天才アニメーター:近藤喜文の強く鋭い感受性があって初めて可能だったのだ。

他にも、沖浦啓之や安藤雅司や井上俊之や本田雄など、「芝居を上手く描けるアニメーター」は存在するが、派手なアクションに比べると見た目が地味なので、あまり目立たないのが残念である。

人狼 JIN-ROH [Blu-ray]
バンダイビジュアル (2008-07-25)

沖浦啓之初監督作品。作画はすごいが内容が地味!そこがもったいない

というわけで、「作画がすごいアニメは?」と問われた場合、大抵「ディテールがすごい」とか「動きがすごい」とか、自分の嗜好に合った”すごさ”を基準に選んでいると思われ、そのタイトルは当然バラバラになるだろう。

ただ、「アニメ史上最も作画がすごいシーンはここだ」というツイートに対するコメントを見てみると、『AKIRA』(前半のバイクシーン)、『オネアミスの翼』(ロケット発射シーン)、『マクロスプラス劇場版』(板野サーカス)などを挙げている人が多く、「すごい作画」のイメージもある程度は共通しているのかもしれない。

『太陽を盗んだ男』の撮影現場がすごすぎる件

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現在発売中の『キネマ旬報』8月上旬特別号で、創刊100年特別企画として「1970年代 日本映画 ベスト・テン」が発表され、沢田研二主演・長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』が第1位に選ばれた。

『太陽を盗んだ男』とは、1979年に公開されたサスペンス・アクション映画で、「中学校の教師が原子爆弾を作って日本政府を脅迫する」というブッ飛んだ内容が当時話題になった。

興行的には芳しくなかったものの、キネ旬の「オールタイム・ベスト映画遺産200(日本映画編)」では歴代第7位に選ばれるなど、現在に至るまで多くの映画ファンや映画関係者に影響を与え続けている。

そんな『太陽を盗んだ男』、エキサイティングな内容に負けず劣らず制作環境も破天荒そのもので、常軌を逸した撮影現場の混乱ぶりは、いまだに語り草になっているほどだ。

というわけで本日は、伝説の日本映画『太陽を盗んだ男』の前代未聞のストーリーと衝撃的な撮影エピソードについて書いてみたい。


※以下、ネタバレしているので未見の人はご注意ください


映画は主人公の城戸誠(沢田研二)が満員電車に揺られるシーンからスタート。表情に覇気がなく、堂々と学校に遅刻するなど、全くやる気が感じられない。

彼は退屈な日常に飽き飽きしており、「何かデカいことをやって世間をあっと言わせてやろう」と目論んでいた。そのために原子爆弾の製造を計画。

問題はプルトニウムの入手方法だが、まず老人に変装した城戸は交番へ行って、道を尋ねるフリをしながら警官にスプレーを噴射し、拳銃を奪う。

その後、茨城県東海村の原子力発電所に侵入。奪った拳銃を使って所員を脅し、まんまと液体プルトニウムを強奪するのだが、この原子力発電所のセットが安っぽくて妙にSFチックなのだ。

長谷川和彦監督によると「申し訳ないことに、クランクインの直前に予算が5000万円ぐらい減ったもんだから、そのしわ寄せが全部美術の方へ行っちゃたんだよね」とのこと。

「東海村の原発にもロケに行ったんだけど、当然建物の中に入れてくれるわけがない。それで、どうせウソなんだから、床がピカピカ光る、ディスコのステージみたいなハイなもんにしてしまおうと」

こうして完成した原子力発電所のセットは、主人公が侵入すると警報の代わりに床がピカピカ点滅するという、B級SFみたいな映像になってしまった(これはこれで面白いけどw)。

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一方、菅原文太演じる丸の内警察署捜査一課の山下警部が、とあるバスジャック事件の現場へ駆けつけたところ、なんと主人公と生徒たちが乗っているバスだった(ここで二人が初対面)。

バスジャック犯が「天皇陛下に会わせろ!」と要求したため、城戸たちを乗せたバスは皇居へ向かうのだが、当然ながら撮影許可など降りるわけがない。

そこで監督は、皇居前広場に無許可でバスを突っ込ませるゲリラ撮影を実行!撮影後にスタッフが何人か逮捕されたものの、みんな留置所行きを覚悟していたらしく、予め歯ブラシや着替えを持参していたという(ヒドイ話だw)。

アパートへ戻った城戸は、いよいよ原爆作りに取り掛かる。手製の防護服を着てバイク用ヘルメットをかぶり、部屋はペラペラのビニールみたいなものでガードするという「そんなので放射能を防げるのかよ?」という頼りない装備だが、このシーンは実に緊張感があって面白い。

秋葉原や金物屋で買ってきた部品を組み立て、プルトニウムが入った容器を缶詰を開けるような要領で開けていくなど、原爆を作る過程がとても丁寧に描かれている。

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長谷川監督曰く、「黒板に書いてある数式は全部本物だ。このシーンをリアルに撮るために、みんな必死で勉強したからね。スタッフたちの原子力に関する知識もかなり蓄積され、材料さえあれば実際に原爆を作ることも可能だろう」とのこと。

なお、このシーンで「部屋に入ってきた猫がプルトニウムを食べて死ぬ」という場面を撮影しようとしたら、猫を用意した業者が「似たような猫は何匹もいるんで、殺してもいいですよ」と言ったため監督激怒。

実は長谷川監督は「高校生の頃に飼っていた犬が死んだ時、人生で一番泣いた」というぐらいの動物好きだったので、「絶対に猫は殺さない!」と言い張り、何度も何度も撮り直すことに。

助監督の相米慎二が担当したものの、「絶対に殺すなよ!殺したらぶん殴るからな!」と監督に脅されたため慎重にならざるを得なかったらしい(最終的にマタタビを使ってフラフラ状態になった猫をハイスピードカメラで撮影)。

こうして、ついに原爆が完成した。テンションの上がった城戸がガイガーカウンターをマイク代わりにして歌い踊るシーンは沢田研二のアドリブ。この時、ボブ・マーリーの「Get Up Stand Up」が流れるんだけど、無許可で使用していたため、楽曲提供の交渉を内田裕也に頼んだら余計にややこしくなったらしい(笑)。

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そして、日本政府を脅すために原爆のダミーを持った主人公が、妊娠中の女性に変装して国会議事堂へ向かう。このシーンも撮影許可が下りずゲリラ撮影で、しかも沢田研二本人がやっているのが凄い!長谷川監督は以下のように語っている。

沢田は変装が似合うやつだと思っていた。だから老人や妊婦に変装させたんだけど、まさか妊婦があんなに似合うとは思わなかった(笑)。国会議事堂のシーンはぶっつけ本番の撮影で、いくらなんでもバレるだろうと思ったんだけど、バレなかったね。


ただ、周りのスタッフは緊張したよ。望遠で撮ってるから映り込んでも大丈夫なように、みんなサラリーマン風の格好をしたりして。俺も背広を着て沢田の側を歩いてたんだけど、ヤクザにしか見えない(苦笑)。相米なんてクアラルンプールのハイジャック犯みたいでさ(笑)。俺らは、こういう恰好をする方が怪しいんだな、ということが良くわかった。

国会議事堂のトイレに原爆のダミーを置いた城戸は警察に電話をかけ、バスジャック事件の時に助けてくれた山下警部(菅原文太)を指名する。そして「プロ野球のナイター中継を最後まで見せろ」と要求。

『太陽を盗んだ男』の面白さの一つは、まさにこういう部分だと思う。普通、テロリストは何らかの目的を持ち、それを実行するために武器を調達するものだが、本作の主人公は原爆を作ってから「さて、何をしようか?」と悩むのだ。

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色々考えた城戸はラジオの公開放送に電話をかけ、「俺は原爆を持っている。何をやって欲しいか言え」と質問する。多数のリスナーからリクエストを聞いた結果、「ローリン・ストーンズのコンサート」に決定。

そして警察に「ローリン・ストーンズの日本公演を実施しろ」と要求。世間の反響の大きさに有頂天になる城戸だったが、原爆の製造費をサラ金から借りていたため、借金返済のために3番目の要求は「現金5億円」になってしまう。

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色々あった後、「デパートの屋上から5億円をばら撒く」というシーンになるんだけど、この撮影がまた大変で、無許可で1万円札(ニセモノ)をばら撒いたもんだから現場はパニック状態になり、またしてもスタッフが逮捕される事態に。

一方、映画のストーリーはここからさらに破天荒な展開へと突入していく。

5億円の入手に失敗し、原爆も警察に押収された主人公は、なんと『ダイ・ハード』のジョン・マクレーンみたいにロープにぶら下がって警察署の窓ガラスをぶち破り署内へ侵入(部屋は4階なんだが…)。原爆を取り戻した後、再びロープを使って脱出するという離れ業をやってのける。

映画を観ていると「そんなことが可能なのか?」と思わざるを得ないのだが、監督自身も同様の心境だったらしく「あのロープがどこから出ていたのか、俺にもわからない」とコメント。

原爆を持ったまま逃げる城戸の車を、10数台のパトカーが追跡!このカーチェイスの撮影が最も大変だったらしく、当時、相米慎二の下で制作を担当していた黒沢清は以下のように語っている。

首都高のカーチェイスは、測道にスタント用のパトカーを待機させ、沢田研二さんの車が来たタイミングで「今だ!」と合図したんですが、一般の車が来てたらどうなったんだろうと。首都高を全面封鎖してるわけじゃないですからね。全く無許可で撮影してたので。まあ首都高だから、そもそも許可なんて取りようがないんだけど(笑)。

確かに、黒沢清が担当していた場面には一般車両は映っていないようだが、ではいったい、どうやってこんなシーンを撮ったのか?

実は遥か手前の路上で、別のスタッフが複数台の車を停車し、強引に一般車両の進入を阻止していたのである。当然ながら、現場では大変なトラブルが勃発!以下、カースタントを指揮した三石千尋の証言より。

僕は最初、トラックとか大きい車を3台用意してくれって担当者にお願いしたんですよ。なんでトラックかと言うと、後ろに別の車が来てもトラックなら前方が見えないから、何をやってるか分からないでしょ?そしたら、予算の都合で小型車が4台来ちゃったんですよ。これは困りましたね。前が空いてるのが丸分かりだから。


しかも監督が、「まだ撮影の準備が出来てないからそこで止まってろ」って言うんですよ。で、4台の車で強引に道を塞いじゃったんです。そしたら、もの凄い大渋滞になって、車から人が降りて来て「俺たちはこれから仕事に行かなきゃならねえんだよ!今すぐ通せ!」って怒鳴られて。それで、「我々もこれが仕事なんです!」と言いながらスタッフ全員で土下座して…。もうムチャクチャな撮影でしたよ(笑)。

しかし大変なシーンはこれだけで終わらない。首都高を下りた城戸の車(RX-7)の前に、突然大型トラックが立ち塞がる。次の瞬間、トラックを飛び越えて宙を舞うRX-7!

実はこのシーン、本来はこんなにジャンプする予定ではなかったそうだ。スピードが出すぎて15キロぐらい速度オーバーした結果、予想していた着地点より8メートルも先に落ちてしまったのである。飛んだ高さも凄まじく、運転していたスタントマンは信号機が車の下に見えた瞬間、「あ、ヤベぇ…」と思ったらしい(笑)。

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なお、本作のカーチェイスシーンは基本的にスタントマンが運転しているが、主人公の顔が見えるカットは沢田研二が自らハンドルを握っている。果たして沢田の運転技術はどんな感じだったのか?以下、長谷川監督のコメントより。

度胸はあったよね。あり過ぎるぐらいだった。当時、沢田は免許を取りたてだったんだけど、港のすぐ近くで運手するシーンを撮ってる時に「出来るだけスピードを上げろ」って言ったの。ただ、その先は堤防で海だから、コンテナを過ぎたらブレーキ踏めよと。


そしたら、俺もうっかりしてたんだけど、気付いたらコンテナを通り過ぎてたんだよ。慌てて「おいブレーキ!」って叫んで。ギリギリで止まったけど、タイヤがもう1回転してたら海に落ちてたね(笑)。その時も、俺は青ざめてるのに、沢田は笑ってるんだよ。「いや〜、間一髪でしたね〜」とか言ってさ(笑)。あいつは基本的にヤバいことが好きなんだろうな。だから、このキャラクターに合ってたんだよ。

そんな沢田研二に対し、山下警部こと菅原文太は割と大変な目に遭わされていたらしい。例えば、城戸の車を追いかけるシーンで、山下の車が大破し、フロントガラスが吹っ飛んで顔に当たりそうになるのだが、これは完全にアクシデントだそうだ。

長谷川監督曰く、「あれは狙って撮ったんじゃないんだよ。偶然なんだよね。ラッシュを見て”やった!”と思った。すごくいいカットなんだよ、リアルで。ただ、文句言うスター俳優ならあれで撮影中止になってる。だって危ないからね。でも、文太さんはそのまま撮影を続行させた。さすが菅原文太だなと思ったよ」とのこと。

また、山下警部がヘリコプターにしがみ付いて城戸を追いかけるシーンでは、なんと菅原文太本人がヘリにぶら下がっているのだ(もちろん遠景シーンはスタントマンだが、顔が見えるシーンだけ本人が演じたらしい)。

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ただ、菅原文太は高所恐怖症で「監督、俺は2メートル以上の高さはダメだから!」と言っていたのに、長谷川監督は「たった2メートルじゃアオリの画が撮れない」と考え、勝手に7メートル以上もヘリを上昇させたのである(最後までやり切った菅原文太はすごい!)。

さらに、山下警部の車が爆発・炎上するシーンでは、ワザと打ち合わせよりも早いタイミングで爆破のスイッチを入れている。そのため、菅原文太のすぐ近くで大爆発が起こり、直後に「オイ、なんかタイミングが早かったんじゃないか!?」と文句を言っていたらしい。

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長谷川監督はこのシーンについて「迫力あるいいシーンが撮れた。実際、ギリギリの距離で爆破してるからね。文太さんは腰を痛めたらしいけど、ギリギリを探らせてもらうのがこっちの仕事みたいなもんだから」と満足そう。撮影終了後、菅原文太は「もう当分、こういう映画はやりたくない」と言っていたらしい。以下、菅原本人のコメントより。

まあ、映画監督ってのは割とみんな残酷だから。サディストだからね。無理な注文を出してくるもんなんだよ。そういう意味でも、『太陽を盗んだ男』の撮影は今までの役者人生の中で5本の指に入るぐらいしんどかったなあ。

物語はこの後、城戸と山下警部の直接対決シーンへと移る。山下警部に銃を突き付けた城戸は一緒に屋上へ上がり、「原爆はあと30分で爆発する」と宣言。

「この街はもう死んでいる。死んでいるものを殺して、何の罪になると言うんだ!」と叫ぶ城戸に「ふざけるな!」と憤る山下警部。

城戸は手にした銃で山下警部を撃ちまくる。だが、至近距離から何発も撃たれているのに死なない(不死身か!?)。最終的に屋上から転落。そして……

という具合に、『太陽を盗んだ男』は最初から最後まで破天荒な内容で、その撮影現場は逮捕者が続出するほどの狂った状況だったのである。なお数年後、黒沢清は当時の様子を以下のように語っている。

撮影日数が1日や2日じゃなくて何カ月もオーバーするっていうのは、やっぱり特殊な現場だったんでしょうね。まあ、その伝統が後に相米さんに受け継がれていくんですが(笑)。問題は、スタッフが付いて来れないってことです。決められた期間で撮影が終わらないと、契約が切れる人が出て来るわけですから。


まあ現場は混乱してたんでしょうね。当時、僕は50万とか100万のお金を持ってB班の相米さんの制作主任になってたんだけど、その時まだ学生ですからね!僕がお金を持って逃げたらどうするんだろうと思いましたけど(笑)。


色んな意味ですごすぎる映画だなあ(^_^;)


激安DVDを買ってきた

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最近、近所の古本屋が攻めまくっている。


全国展開している例の有名チェーン店なんだけど、週末になると「コミック全品50%オフ」とか、頻繁に何らかのセールを実施しているのだ。

今日は「500円以上の本が全品500円」というセールをやっていた。

どういう内容なのか?というと、例えば値札に1,000円と表記されている本がレジで500円になるという意味だ(税込で)。

しかしこれ、高い本になればなるほど店側にとって損じゃないのか?と気になったので店員に聞いてみた。

僕:「あの〜、このセールって値段の上限はないの?」

店員:「はい、ありません」

僕:「1万円の本を買っても500円ってこと?」

店員:「そうです」

すごいセールだ。正気の沙汰とは思えない。

しかし、よく店内を見てみたら、そもそも3,000円以上の本があまり置いていないので、そこまで大変なことにはならないのかもしれない(ちなみに専門書や写真集みたいな本は対象外)。

結局、色々物色して3,000円分(6冊)の古本を購入した。家に帰って定価を確認したところ、合計12,740円程だった(かなりのお得感である)。

ただ、こういうセールは値段に釣られて大して欲しくもない本まで買ってしまうこともあるので、注意が必要だろう。

なお、店内には中古DVDのコーナーがあって普段は古本よりもそっちをチェックしてるんだけど、最近になって「100円DVD」のコーナーが出来ているのを発見(厳密に言うと100円から300円まで値段は色々)。

「500円DVD」は以前からあったのだが、円盤のデフレ化がどんどん進行してるってことなのだろうか?というわけで、今回は本と一緒に以下のDVDをゲットした。


●『デイ・アフター・トゥモロー』2枚組特別編 100円

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●『マイノリティ・リポート』2枚組特別編 100円

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●『X-MEN:ファイナルディシジョン』2枚組特別編 100円

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●『ファイト・クラブ』プレミアム・エディション 150円

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正直、上の3本は「まあ、こんなもんだろう」という感じなのだが、『ファイト・クラブ』がこの値段で売られていたのは意外だった。傑作映画だと思うんだけど…


●『セブン』プラチナム・エディション 200円

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商品の状態はいいし、ディスク2枚組で特典映像が130分もあるし、非常に素晴らしいソフトなのにこの値段。解せぬ。


●『Mr.&Mrs.スミス』プレミアム・エディション 250円

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なぜかブラッド・ピットの出演作が軒並み安くなっているような気が…。なぜだ!?


●『ブラックホーク・ダウン』コレクターズ・ボックス 500円

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これは500円コーナーで見つけたんだけど、500円でも全然安い。ディスク3枚組で、特典ディスク1には約3時間20分、ディスク2には約3時間53分のメイキング映像が収録されている(正直、特典が多すぎて全部観れる気がしないw)。


●『ミッドナイトイーグル』プレミアム・エディション 250円

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この作品に関しては、人気度や世間の評価を考えても「まあ妥当な価格かな」という感じである(笑)。ただ、商品の状態が非常に綺麗で、パンフレットの縮刷版が付いている等「250円にしては満足度が高い」と言えるだろう。


というわけで、DVDの代金は1,450円プラス消費税116円=計1,566円。

古本と合わせて今日は4,566円も使ってしまった。でも、後悔はしていない(好きな映画を買えたから)。

敢えて不安点を挙げるなら、観てないDVDがどんどん溜まっていくということか。いつ観ようかなあ…(-_-;)

鈴木敏夫、高畑勲について語る

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最近、以下の記事が話題になっていたので読んでみた。


鈴木敏夫が語る高畑勲


いや〜、これはすごい!

今年4月に亡くなった高畑勲監督について、ジブリのプロデューサーの鈴木敏夫氏が過去のエピソードを交えながら「高畑勲と付き合うことがいかに大変だったか」を語っているのだが、どれもこれも凄まじい内容ばかりで戦慄させられること間違いなし!

「高畑監督は良い作品を作るために多くの人を壊してきた」と告白し、『火垂るの墓』などで作画監督を務めたアニメーターの近藤喜文氏が「高畑さんは僕を殺そうとした」と泣きながら訴えたとか、恐ろしい逸話が満載だ(なお、近藤喜文氏は高畑監督と仕事をした後、47歳の若さで亡くなっている)。

まあ、具体的な内容は実際に本文を読んでもらうとして、今回はこの記事に書かれていること以外の「高畑勲監督が行った数々の驚くべき所業」についてざっくりと書いてみたい。



鈴木氏が高畑監督と組んで作った映画は『火垂るの墓』『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョ となりの山田くん』『かぐや姫の物語』の計5本。

しかし、その全てで「監督 vs プロデューサー」の激しい戦いが繰り広げられ、1作目の『火垂るの墓』では高畑監督のこだわりが強すぎて制作が大幅に遅れ、ついに未完成のまま映画を公開する非常事態となってしまう。

2作目の『おもひでぽろぽろ』の時にはさらに遅延状態が悪化し、とうとう宮崎駿が「高畑監督の方針に従って映画を作っていたら絶対に公開日まで間に合わない!今すぐやり方を変えろ!」と大激怒。

高畑監督は人物のリアルな動きにこだわり、極めて繊細な作画を指示していたのだが、そのやり方では「いつまで経っても終わらない」というのだ(ちなみに、宮崎監督はこの時あまりにも大声で怒鳴ったため体の震えが止まらなくなり、その後3日間眠れなかったらしい)。

3作目の『平成狸合戦ぽんぽこ』の時には、さすがに鈴木氏も「今まで通りではダメだ」と考え、本当は夏の公開なのに「春に公開します」と”嘘の予定日”を高畑監督に伝える作戦を実行(わざと締め切りを三カ月前倒しした)。

ところが「これで間に会うだろう」と思っていたら、なんと高畑監督は春の締め切りを余裕でぶっちぎり、サバを読んだはずの「夏公開」にも間に合わないという想定外の事態が勃発!

これには鈴木氏も困り果て、監督と相談した結果、絵コンテから10分カットすることで作業を短縮し、何とか解決。しかし、それから数カ月間、高畑監督から毎日「鈴木さんがカットしたせいで映画がガタガタになった」と言われ続けるはめに…(鈴木氏曰く「ノイローゼになりそうだった」とのこと)。

そして4作目の『ホーホケキョ となりの山田くん』の頃になると、もはや鈴木氏も開き直り、「製作は順調に遅れています」という自虐的な予告編をバンバン流す有様。

さらには宣伝のキャッチコピーまで「日本の名匠、高畑勲監督の”とりあえず”の最高傑作誕生!テーマは適当(てきとー)」という、かなりふざけた感じになってしまった。

こうした宣伝方針に対して、高畑監督は一切文句を言わなかったものの、スタッフとして参加していた某ベテランアニメーターが「『もののけ姫』であれほど真面目に”生きろ”って言ってた人が、今回は”てきとー”ってどういうことですか!?」と真剣な顔で抗議に来たらしい。

そして遺作となった『かぐや姫の物語』。鈴木氏が関わった5作品の中では最も難産で、完成までなんと8年を費やし、製作費も50億円(劇場用アニメとしては日本映画史上最大)を突破するなど、多くのスタッフが苦労を強いられた超大作映画である。

例によって現場ではトラブルが続出し、あまりにも仕事がキツすぎてアニメーターから苦情が出るわ、高畑監督は脚本をなかなか書かないわ、絶望的な制作進捗表を見せられた鈴木敏夫氏は「吐き気がする」と言ってトイレに駆け込むわ、ムチャクチャな状況だったらしい(詳しい内容は下の記事をご覧ください↓)。


スタッフ号泣!高畑勲監督『かぐや姫の物語』の舞台裏が凄すぎる!


というわけで、今回の鈴木氏の告白を読んだ多くの人が衝撃を受けたらしく、「高畑勲ってこんなにひどい人だったのか」「完全にブラック企業じゃん!」などの批判が殺到している模様。

しかしその一方、高畑監督が生み出したアニメーション作品における表現の革新性や、後進のクリエイターたちに与えた影響の大きさは計り知れないものがある。

富野由悠季監督は「『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』や『赤毛のアン』のような作品が先になければ、日本のアニメは絶対に今の形にはならなかった。だから僕が『機動戦士ガンダム』に辿り着けたのも、高畑作品で修業したおかげというのは認めざるを得ない」とコメント。

また安彦良和は「個人的には、高畑さんの最良の仕事は『母をたずねて三千里』だと思っている。当時”TVのリミテッドアニメでもやり方次第でこんなにクオリティの高いものが出来るんだ”ということを見せつけられ、本当にショックを受けた。今でも、3カットくらい見ただけで涙が出そうになる」と告白。

人物に対する批判と作品に対する称賛が、くっきりわかれているのが面白い。果たして高畑勲監督の評価はどちらが正しいのだろうか?


●関連記事

宮崎駿、高畑勲の『かぐや姫の物語』について語る

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高畑勲監督について

「好きな女優を見るために映画館へ行く男性はいない」って本当?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです

先日、以下の記事が話題になっていたので読んでみました。


何で男の人は好きな女優の映画を見に行かないのだろう


NTTコムが実施したアンケート調査によると、女性客はどの映画を観るか決める際、「自分の好きな俳優やタレントが出演している」という理由で選ぶパターンが圧倒的に多いらしい(ほぼ1位を独占↓)。

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一方、男性客は好きなジャンルや好きな原作の映画化、好きなシリーズの続編などを求めるパターンが多く、好きな女優さんを目当てに映画を観に行く人はほとんどいないようです。

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かなり明確に意見がわかれているようですが、この差はいったいなぜなのでしょう?

映画が娯楽の王様だった昭和初期の時代は、高倉健、三船敏郎、石原裕次郎、吉永小百合、原節子、高峰秀子など、「好きな映画スターを見るために映画館へ行く」という風潮が確かにあったと思います。

当然、この頃には男女の差は見られません。「テレビが一般に普及していなかった」という事情はあったにせよ、元々「映画とはそういう娯楽(スターを見ることが目的)だった」からでしょう。

そして僕の個人的な経験で言うと、この傾向は1980年代の頃にもまだあったような気がします。当時、映画界に新規参入したばかりの角川映画は、薬師丸ひろ子や原田知世など魅力的な新人女優を次々とデビューさせており、「薬師丸ひろ子が出ているから『セーラー服と機関銃』を観に行こう!」というファンも大勢いたのですよ。

ところが90年代後半になると、『タイタニック』や『アルマゲドン』みたいな超大作映画が次々と公開され、観客の興味は「作り込まれた派手な映像」へとシフトしていきました。

97年に大ヒットした『タイタニック』の場合も、女性客が当時人気スターだったレオナルド・ディカプリオを見て歓声を上げていたのに対し、男性客は豪華絢爛かつ迫力満点の映像効果に圧倒されたのです。

タイタニック <2枚組> [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2013-10-25)

もちろん「ヒロインのケイト・ウィンスレットを目当てに観に行った」という男性客もいたでしょうけど、一般的な傾向としてはNTTコムの調査結果の通りなのではないかな〜と(つまり、女性の観客は好きな俳優を見るために映画館へ行く場合が多い)。

ただ問題は、近年の日本映画がこういうデータを重視しすぎて、「女性客を呼び込むためには、女性に人気のある役者やアイドルを起用すればいいじゃん!」みたいなパターンがどんどん増えている、という点でしょう。

そのため、映画ファンの中には「邦画は女性客の好みばかりを優先するから海外で受けないんだ!」「映画の質がどんどん下がっている!」と考える人まで現れているらしい↓


映画館の男女別の客のデータは正直見ないほうがいい


まあ、この意見が合っているかどうかはともかく、多くの映画館でメンズデーが廃止されてレディースデーだけになっているのは今後の映画界のことも考えて、どうにかして欲しいなあと思いますね。

『メアリと魔女の花』はこうして生まれた

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本日「金曜ロードSHOW!」で『メアリと魔女の花』が放送されます。ちなみに今月の金ローは『ハウルの動く城』、『となりのトトロ』、『猫の恩返し』を連続で放送しているので、本作も「スタジオジブリの作品?」と思っている人がいるかもしれません。

でも、このアニメは『借りぐらしのアリエッティ』や『思い出のマーニー』を作った米林宏昌監督の3作目であると同時に、ジブリ解散後、新たに立ち上げたスタジオポノックの第1作として、満を持して制作された長編映画なのです。

借りぐらしのアリエッティ [DVD]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2011-06-17)

思い出のマーニー [DVD]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2015-03-18)

米林宏昌監督といえば、2014年7月に『思い出のマーニー』が公開され、35億円の大ヒットを記録したものの、前年に宮崎駿監督が引退を表明していたため、残念ながら『マーニー』が(現時点で)スタジオジブリ最後の作品となってしまいました。

実は、ジブリのプロデューサーの鈴木敏夫さんは「高畑勲監督の『かぐや姫の物語』が完成したら、ジブリを解散しよう」と考えていたそうです。その発端は宮崎監督の発言らしい。

鈴木さんによると「宮さんは『風立ちぬ』を作っている頃から引退を決めてたんです。で、宮さんの方から”スタジオを休止しよう”って話を持ち出して来たんですよ。色んな意味でアニメの制作が難しい状況になっていたし、僕としても宮さんの意向に反対するつもりはなかったので」とのこと。

こうして2014年8月に制作部門の休止を発表。ちょうどその頃、米林監督は『思い出のマーニー』の宣伝キャンペーンで全国を回っていたのですが、スタジオに帰って来たらもう誰もいなくなっていたそうです。

ガランとした室内を見て米林監督は思いました。「とにかく次の映画を作らねば…!」と。その後、『マーニー』のプロデューサーを務めた西村義明さんと居酒屋で”新しいアニメスタジオ”について話し合い、2015年4月にスタジオポノックを設立したのです。

こうして新作映画の企画を考え始めたわけですが、実は米林監督も西村さんも、1本の映画を企画から立ち上げた経験がありませんでした(今までは宮崎監督や鈴木さんから「これをやれ」と言われてやっていたので)。

そこでまず米林監督は、以前からアニメ化したいと考えていたメーテルリンクの『青い鳥』を提案。しかし「冒頭に、帽子に付いた小さなダイアモンドを回すと部屋の中のあらゆるものが動き出すという場面があって、卵とパンと砂糖がお供になるんです。”こういうのいいなあ、描きたいなあ”と思って企画を進めていたんですが、なかなか上手くいかなくて…」などと難航。

何度も検討を重ねているうちに時間がどんどん過ぎて行ったため、西村さんが一つの本を見つけて来ました。それがメアリー・スチュアートの児童小説『小さな魔法のほうき(原題:The Little Broomstick)』だったのです。

小さな魔法のほうき (fukkan.com)
メアリー スチュアート
復刊ドットコム

しかし当初、西村さんから本の内容を聞いた米林監督は拒否反応を示しました。「主人公は魔法使いの女の子で、ホウキに乗って空を飛んで、黒猫が友達って……それ完全に『魔女の宅急便』じゃないですか!」と(笑)。

同じ題材を扱ったら、必ず宮崎監督と比較されてしまう。それだけは嫌だ!と拒んだ米林監督でしたが、西村さんは「いや、むしろそれがいい!」と強引に推し進め、「魔女、ふたたび。」という明らかに『魔女の宅急便』を意識したキャッチコピーまで考え出す有様。

結局、渋々西村さんの提案を受け入れ、絵コンテを描き始めた米林監督ですが、いざとなったら「『思い出のマーニー』が静かな語り口だったので、今度は思い切り動き回る冒険ファンタジーで行こう!」とノリノリになったらしい(笑)。

ただ、米林監督が盛り上がったことで作画的に難しいシーンが次々と絵コンテに描き込まれ、現場のハードルはどんどん上がっていきました。

絵コンテは2016年7月に完成したものの、その時点で2017年7月の公開が決定していたため、「こんな大変なアニメをたったの1年で作れると本気で思ってるんですか!?」とスタッフから批判が殺到。その時の様子を西村さんは以下のように語っています。

大勢のスタッフが真顔で僕のところへ詰め寄って来ました。でも、そこに嬉しさもあったんですよ。高畑さんもそうですが、現場に迷惑をかけるのは良い作品を作る必須条件ですらあると思うんです。もちろん、現場にとっては悪夢でしょう。でも監督の熱量やこだわりを感じられないような映画だったら、それこそが悪夢です。今回、動物が大脱走するシーンのコンテを見て、僕自身「これ本当に完成するのかな?」と不安になりました。でも結果として映画は完成し、そのシーンは素晴らしい仕上がりになったんです。

なお、本作で作画監督を務めた稲村武志さんは『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』など数多くのジブリ作品で活躍したベテランアニメーターですが、そんな稲村さんですら本作のプロジェクトは「無謀だ」と感じていたらしい(以下、稲村さんのコメントより↓)。

絵コンテを見て「本当にやるの?」と思いました(笑)。ジブリのフルスペックと同等の作業量を、立ち上げたばかりのスタジオで本当にやれるのか?と。昨今の長編アニメはCGの力も借りて作画は5万枚前後と聞いていますが、『メアリと魔女の花』は10万枚近くあったんです。アニメーターも不足しているのに、どうやって実現しようかと悩みました。

かつてスタジオジブリの制作部門が稼働していた頃は、常時100人を超えるクリエイターが在籍していたので、いつでも長編アニメを作れる環境が整っていたそうです。

しかし制作部門を休止後、多くのアニメーターがフリーとなり、それぞれが仕事をかかえるようになると、再び彼らを呼び戻そうと思っても容易ではありません。

現在、アニメ業界は深刻な人材不足で、どこのスタジオもアニメーターを確保するのに必死だからです(優秀な原画マンは仕事の依頼が殺到し、2年先までスケジュールが埋まっているらしい)。

こういう状況で『メアリと魔女の花』を作れるのか…?作れたとしてもクオリティがボロボロになるんじゃないか…?そんな不安に包まれる中、ピンチを救ったのが元ジブリのアニメーターたちでした。

稲村武志、山下明彦、橋本晋治、大塚伸治、田中敦子、百瀬義行、安藤雅司、大平晋也、橋本敬史、山下高明、西田達三など(ジブリ出身でない人も混じってますけどw)、ちょっとやそっとでは集まらないような凄腕の原画マンが集結。

さらに、美術監督は新人の久保友孝ですが、『となりのトトロ』や『もののけ姫』で美術監督を務めた男鹿和雄や、『千と千尋の神隠し』や『ハウルの動く城』で美術監督を務めた武重洋二などが背景スタッフとして参加しているのが贅沢すぎる!

こうして、万全の体制で作業を開始したものの、いかんせん作画の分量が膨大すぎて、たちまち制作は難航。そんな状況を聞き付けた宮崎駿監督が米林監督のもとを訪ね、以下の手書きメモを渡したそうです。

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絵コンテを見ました。お助け原画には打ち合わせや設定資料を見せても描けません。それで打開策。1.マロ(米林監督)がレイアウトを描く。2.カットのスタートから「こう動くべし」というラフ原画を描く(原画より少なくていい)。その上で打ち合わせして渡せば何とかなる。


自分(宮崎)にも何度か経験があるが、急場で一番作品世界を理解しているのは演出である。何が必要で何がなくてもいいと判るのも演出である。現実に僕は『カリオストロ』から『もののけ』と急場をしのいできた。『カリオストロ』の時計塔の内部なんか、いくら打ち合わせしてもムダ。描いちまうのが一番速い。

このメモについて米林監督曰く、「まあ要するに”お前が描け”ってことなんですけど(笑)、これを読んで”いい加減なものは作れないな”と思いましたね」とのこと。

そんなこんなで、どうにか完成した『メアリと魔女の花』。キャスティングも杉咲花、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、満島ひかり、佐藤二朗、渡辺えり、遠藤憲一、大竹しのぶ、満島ひかりなど非常に豪華で、公開されるや33億円の大ヒットを記録しました。

ただし、観客の評価は賛否真っ二つにわかれたらしく、「とても楽しい映画でした」「まさに王道のファンタジー!」と絶賛する人から「キャラに魅力がない」「話も全然面白くない!」と酷評する人まで様々な意見が寄せられた模様。

特に、批判的な意見で多かったのが「過去のジブリ作品に似すぎている」というもので、参加メンバーのほとんどが元ジブリのクリエイターなので当然といえば当然なんですが、似ているが故に比較されてしまうことは避けられず、そうなると色々”足りないもの”が見えてしまったのでしょう。

そのせいで「宮崎アニメの劣化コピー」とか「ジェネリックジブリ」とか、厳しいコメントもチラホラと…(個人的にはエンドア大学の描写などが妙に薄っぺらく、架空の世界に説得力が感じられない点が残念でした)。

とはいうものの、スタジオジブリで長年作画を担当していたベテランのアニメーターたちが存分に腕を振るった映像表現は圧倒的に素晴らしく、「さすがだなあ!」と感心せざるを得ません。

現在、劇場ではスタジオポノックの短編アニメ『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』が公開されていますが、次回作の長編映画がどんな作品になるのか楽しみです(^_^)


『カメラを止めるな!』のネタバレはどこまでOKなのか?

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※今回の記事はネタバレしているので未見の人はご注意ください。


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

さて、みなさんはもう『カメラを止めるな!』を観ましたか?この映画はわずか300万円の超低予算で作られ、キャストは無名の役者ばかり…という完全なインディーズ映画です。

ところが、たった2館の公開からスタートしたにも関わらず、SNSや口コミで人気に火がつき、あっという間に全国累計269館に拡大!観客動員120万人、興行収入16億円を超える大ヒットを記録しました。

いったいどうしてこんなに成功したのか?と言えば、もちろん「ものすごく面白いから」なんですけど、それだけではありません。本作を観たほぼ全員が「これは絶対にネタバレしちゃダメだ!」と口を揃えて言ってるからなんですよ。

普通、面白そうな映画を人に薦めるときは、ある程度ストーリーを説明したりするものじゃないですか?でも『カメラを止めるな!』の場合はそういうこともNG。完全に「ネタバレ厳禁映画」なのです。

”ネタバレ厳禁”とはすなわち、映画の構成自体に何らかのサプライズが仕掛けられていることを意味し、それをバラされると面白さが激減する…、要はそういう類の映画なんですね。

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昔、ブルース・ウィリス主演の『シックス・センス』が公開された時も、「ネタバレ絶対ダメ!」と言われ、「何それ?」「どういう内容なの?」と気になった観客が劇場に押しかけ大ヒットしました。

つまり、人は「ネタバレするな」と言われると好奇心を刺激され、確認せずにはいられなくなってしまうわけですが、では”ネタバレ”とは、どの程度までがネタバレと定義されるのでしょうか?

僕が『カメラを止めるな!』を観て個人的に気になったのがこの部分で、人によってネタバレの許容範囲がバラバラなんですよ。

公式にアナウンスされているストーリーは「とある廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたスタッフたちが本物のゾンビに襲われる」という、たったこれだけです。

これだけなら普通にゾンビ映画の一種ですが、もちろんこれだけではありません。映画を観た人ならご存知の通り、前半の「ゾンビ映画パート」が終わってからがむしろ”本編”なのです。

つまり『カメラを止めるな!』は厳密に言うとゾンビ映画ではなく、「ワンカットでゾンビ映画を撮ろうと悪戦苦闘しているスタッフたちの姿を面白可笑しく描いたコメディ映画」なんですね。

僕は事前情報をほとんど何も入れない状態で観に行ったので「なるほど!そういうことだったのか!」と楽しめたんですが、鑑賞後に映画評論家の紹介記事などを読んだら、この辺を普通にバラしちゃってるんですよ。

「いやいや、それはネタバレじゃないの?」と。

某映画解説者は「ゾンビ映画のパートには不自然な”間”とか変なシーンがいくつもあるけれど、実はそれらは伏線で、後半のシーンでもう一度撮影現場の様子を見せながら全部の伏線を回収していく」と本作を紹介していましたが、そこまで言っちゃっていいのかなあ?

たとえば僕が初めてこの映画を観た時、ゾンビ映画のパートで確かに不自然さを感じたものの、その時点ではまだどういう方向に話が転がるのか分からないから真剣に観てるわけですよ。

で、”最初のエンディング”が流れて「1カ月前」のテロップが出たところで初めて「ああ、そういうことか!」と映画の構造に気付いたわけです。もしこのネタが事前に分かっていたら、サプライズを1個損することになるんじゃないですかね?

一応、映画解説者の言い分としては、「予告編でもこの辺について触れているし、別にネタバレじゃないだろう」ってことらしいんですが、そもそも予告編自体がネタバレしてると思うんですよ。

通常、映画の予告編は”専門の会社”が作成するため、必ずしも監督の意図が反映されるとは限りません。もし上田慎一郎監督が予告編を作っていたら、そこまでは見せていなかったでしょう。そういう意味でも「どこからどこまでをネタバレの範囲に含めるか?」は難しい問題だと思います。

ちなみに先日、上田監督が報道ステーションに出演した際、番組中に流れた予告編を見て、「映画を観てない人は分からないと思いますが、今のはちょっと危ないですね〜」と微妙な表情をしていたのが印象的でした(笑)。

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というわけで、『カメラを止めるな!』のネタバレについて色々考えてみたんですが、本作は「映画製作の裏側を描いたコメディ映画」という部分をネタバレされても十分に楽しめる作品であり、「笑って泣ける最高の娯楽映画」という本質に変わりはありません。

中でも僕が特に感激したのは、37分ワンカットの映像を本当にワンカットで撮っていることです。もちろん”長回し撮影”自体はよくある技法で、特に珍しいものじゃないんですよ。

でも、アルフレッド・ヒッチコックやブライアン・デ・パルマみたいに「人物がカメラ前を通り過ぎるタイミングでこっそりカットを割る」とか、そういう”疑似ワンカット”を使っている監督もいる中、実際にワンカットで撮影したことの意義は大きいと思います。

上田監督自身、撮影前は「あまりにも大変だからカットを割って”ワンカット風”に編集しようか…」などと弱気になっていたそうですが、スタッフから「何言ってるんですか!ワンカットで撮りましょう!」と言われて腹を括ったらしい。

そこには、「俺たち金は無いけど”やる気”と”根性”だけは誰にも負けないぜ!」という熱い心意気みたいなものが感じられ、そういう作り手たちの情熱が単なるフィクションを超えた”ドキュメンタリー”としての面白さすら生み出していたと思うのですよ。

無名の俳優や若手のスタッフたちが、血だらけ汗だらけになって必死に映画を撮っているその姿は、完全に映画の内容とシンクロしてるんです。全員が一丸となって頑張る、そのひたむきな姿に感動せずにはいられません!いや〜、本当に素晴らしい映画でした(^_^)


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週末になると台風が来るので家で映画を観てました

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

大型台風が各地に甚大な影響を及ぼしている昨今、皆さんいかがお過ごしでしょうか?僕のところは幸いにも大した被害はなかったんですけど、雨風が強くて外に出られないので、家に引きこもって映画を観てました。

なんか最近、AmazonプライムビデオやNetflixなどの動画配信サービスが便利になりすぎて、外へ映画を観に行く頻度が減ってきてるんですよね。

以前は「大きなスクリーンで観なければ映画の本当の魅力はわからないぞ!」とか言ってたのに、今は「やっぱ家で観てると楽でいいな〜」などとすっかり堕落している有様(苦笑)。

理由の一つとして、近所の大手シネコンでやらないような「メジャー系以外の小規模な作品」をちょこちょこ観るようになったことがあると思います。

多くの映画館では「製作費300億円の超大作!」みたいなメジャー作品が話題になりがちですが、「低予算で目立たないけど良い映画」も当然あるわけですよ。大ヒットした『カメラを止めるな!』も、元々はたった2館の劇場からスタートしてますからね。

でも、残念ながらそういう映画はなかなか僕が住んでいるような田舎では上映されません(こういう”地域格差”を早くネットで解消してくれないかな〜)。

このため最近は、「少し前に公開された小規模な作品」をチョイスして家で観る機会が多くなっています(本当は映画館で観たかったんですけどね…)。

というわけで本日は、「決して超大作ではないけれど印象に残った小規模作品」をいくつかご紹介しますよ。



●『ゲット・アウト』

つい最近、Amazonプライムビデオに入ってきたので観ている人も多いかもしれませんが、わずか450万ドルの低予算で作られたにもかかわらず、全世界で2億5000万ドル以上を売り上げ大ヒットしたホラー映画です。

本作の見どころは、なんと言っても”アカデミー脚本賞を受賞した見事なストーリー”でしょう。主人公の黒人青年が恋人の実家へ挨拶しに行くんですが、そこで「とんでもなく奇妙な出来事」に遭遇するんですよ。

ただし、「家に幽霊が出る」とか、「凶悪なモンスターが襲ってくる」とか、そういう派手な話ではありません。むしろ「何が起きているのかわからないけれど、言葉にできない違和感がずっと漂っている」という状況そのものが不気味で怖いのです。

一見すると良くある日常の風景なのに、その日常がジワジワと非日常に侵食されていく恐怖感がすごい!ちなみに僕は『ジョジョの奇妙な冒険』が大好きなんですが、『ゲット・アウト』を観て「荒木飛呂彦の漫画みたいな雰囲気だな〜」と思いました(^.^)

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●『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』

田舎の小さなハンバーガー屋を世界最大のファーストフードチェーン店に成長させたレイ・クロック。そんな彼の奮闘ぶりを描いたサクセスストーリーなんですが、普通はこういう成功物語の場合、すごく感動的な話になりそうじゃないですか?

ところが本作は、マイケル・キートン演じる主人公があまりにも”嫌なヤツ”に描かれているため、全然共感できないんですよね(とにかく「商売を成功させること」しか考えてない)。

しかしその一方、マクドナルド兄弟が経営していたハンバーガー屋に目を付け、強引な手法でフランチャイズ化を推し進めるレイ・クロックのビジネス戦略は「見事!」としか言いようがありません。

つまり本作は、「嫌な主人公がビジネスマンとしての才能を存分に発揮して次々と事業を拡大していく様子」が痛快で抜群に面白い映画なのですよ。なお、美味しそうなハンバーガーの映像が頻繁に映るため、観たあと必ず腹が減るのでご注意ください(^.^)


●『セブン・シスターズ』

強制的な人口抑制が行われている近未来を舞台に、『ドラゴン・タトゥーの女』や『プロメテウス』のノオミ・ラパスが7つ子の姉妹を1人7役で演じるSFサスペンス映画です。

軽くネタバレすると、この映画では主人公が死にます。…みたいなことを書いたら「オイオイ、重要なネタバレじゃねえか!」と普通なら怒られるでしょうが、本作の場合は主人公が7人もいるので無問題(笑)。

そこが『セブン・シスターズ』の最大の特徴で、誰が死ぬのか(あるいは誰が生きるのか)というハラハラドキドキ感が最後までドラマを牽引し続けるのですよ。ウィレム・デフォーやグレン・クローズなど、さりげなく役者が豪華なところもポイント高し(^.^)


●『エル ELLE』

『ロボコップ』や『氷の微笑』など、下品で暴力的で倫理観の欠落した映画ばかりを撮っている印象が強いポール・バーホーベン監督の最新作と聞いてワクワクしながら観たんですが、相変わらず下品で暴力的で倫理観の欠落した映画でした(笑)。

主人公のミシェルを演じたイザベル・ユペールはフランスの有名な女優さんで、65歳なんですけど非常に美しく、本作の中でも常にエロい感じで描かれています(アカデミー主演女優賞にノミネートされた)。

面白いのはミシェルのキャラクターで、自宅に押し入ってきた強盗にレイプされても「やれやれ」みたいな感じで平然と風呂に入り、息子と寿司を食べながら普通に会話してるんですよ。

実は、彼女の父親は連続殺人犯として服役中で、幼い頃からメディアの執拗な報道を受け続けたミシェルは今でもそのことがトラウマになっているのです(だから警察にも通報しない)。

つまり本作は、そういう彼女の言動や彼女を取り巻く環境を楽しむ映画であり、「レイプ犯は誰なのか?」を突き止めるサスペンスじゃないんですね。そこが評価の分かれ目かなと。


●『ドリーム』

当初は『ドリーム 私たちのアポロ計画』という邦題でアナウンスされていたものの、「嘘つけ!マーキュリー計画じゃねえか!」と映画ファンから苦情が殺到したため、公開直前に急遽タイトルが変更されたという、いわく付きの映画です。

内容は、実在したNASAの女性技術者たちの活躍を描きつつ、1960年代の「黒人差別問題」にも深く切り込み、娯楽性と社会派ドラマをバランスよく共存させた良作で非常にオススメですよ(^.^)

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●『僕のワンダフル・ライフ』

ゴールデン・レトリバーのベイリーが、大好きな飼い主イーサンに再び会うために何度も何度も生まれ変わるという動物映画。もう設定だけで涙腺が緩みますね。犬好きは号泣必至でしょう(T_T)

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●『レディ・ガイ』

「ミシェル・ロドリゲスが整形手術で男になる」という、設定だけ聞くともの凄く面白そうなんですけど、実際に映画を観てみたら「…あれ?」って感じ。

いや、決してつまらなくはないんですが「求めていたのはこういうのじゃないんだよなあ」という印象がぬぐえない微妙な出来栄えだったのがちょっと残念。ウォルター・ヒル監督、どうした?


●『エンドレス 繰り返される悪夢』

天才外科医の主人公が海外出張から帰国し、久しぶりに娘と会う約束をする。ところが、その娘が目の前で車に轢かれて死亡!ショックを受ける主人公だったが、次の瞬間飛行機の席で目が覚める。

「夢だったのか…」と安心したのもつかの間、飛行機を降りたらさっき夢で見た状況が再び繰り返され、またしても娘が事故死する。

同じ一日を何度も何度もリピートしていることに気付いた主人公は、必死で娘を救おうとするものの、どうしても助けることが出来ない。

一体どうすればこのループから抜け出せるのか…。ところが、絶望的な気持ちになった主人公の前に一人の男が現れる。なんと、彼も同じ日をリピートしていたのだ!

やがて主人公は、このリピート現象が起きた”原因”へと辿り着く。その驚くべき真相とは…!?「タイムループもの」の一種ですが、なかなか良くできた韓国映画ですよ(^.^)


●『シンクロナイズドモンスター』

「酔っ払ったアン・ハサウェイが、なぜか韓国に現れた巨大怪獣とシンクロしてしまう」という、普通の発想ではなかなか思い付かない設定が面白い。

ただ、内容は意外とシリアスで、「アルコール依存症の問題」とか「過去のトラウマ」とか、割と重たいテーマを扱っていて、さらに「最後はそれらを克服してハッピーエンド」ってわけでもありません。

予告編を見ると「ダメなヒロインが巨大怪獣を操って世界を救う」的なアクション・コメディ映画のように見えますが、全然そんな映画じゃないので要注意!


●『レッドスパロー』

あのジェニファー・ローレンスが至る所でオッパイを出しまくり服を脱ぎまくるスパイ映画です(でも実際にオッパイが見えるシーンは少ない)。

しかも単にエロいだけじゃなく、様々な場面に細かい伏線が張り巡らされ、最後はそれらを綺麗に回収していく、実に手際のいいサスペンスでした(^.^)

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●『女神の見えざる手』

『ゼロ・ダーク・サーティ』、『インターステラー』、『オデッセイ』など、近年大作映画への出演が相次いでいるハリウッド女優ジェシカ・チャステイン。

そんな彼女が主役を演じた本作は、製作費わずか1800万ドルの低予算にもかかわらず、政治を影で動かす天才ロビイストの活躍を描いた堂々たる社会派サスペンスとして非常に見応えがありました。

なお、『キングスマン』でマーリンを演じたマーク・ストロングや、『リコシェ』『レイジング・ケイン』『クリフハンガー』などで印象的な悪役を演じたジョン・リスゴーも出演しています。


●『スリー・ビルボード』

本作は、娘をレイプされ殺された母親が7か月経っても手掛かりすら発見できない警察に不信感を抱き、犯行現場付近の看板広告に「なぜ犯人が捕まらないの?」など3つのメッセージを掲載する…という物語です。

この3枚の看板によって、小さな田舎町に様々な波乱が巻き起こるわけですが、最大の特徴は「犯人を捕まえるために必死で頑張る健気な母親の姿を描いた感動ストーリー」ではない、という点でしょう。

僕も観る前はそう思ってたんですが、主人公のキャラがとにかくブッ飛んでいて、他人に対して汚い言葉を投げかけるわ、警察署の署長がガンで余命わずかと知りながら名指しで批判するなど、観客の共感を拒みまくりなんですよ。

しかも署長は町中の住人から慕われているため、「早く犯人を捕まえなさいよッ!」と警察に対して憤る主人公は、”娘を殺された悲劇の被害者”という立場なのに皆から嫌われてしまうのです。

なので、この映画は賛否がわかれるでしょうね。実際、僕の周りでも「登場人物がクズすぎる!」「ラストが意味不明」「結局、真犯人は誰なんだ?」など、批判的な意見も少なくありません。

でも僕は非常に面白かったです。どこへ転がっていくかわからない予測不能なストーリーもさることながら、サム・ロックウェル演じるダメ警官のディクソン巡査が徐々に心情を変化させていくドラマ展開にグッときました。

なお本作は、第90回アカデミー賞で作品賞、脚本賞、作曲賞、編集賞など計6部門でノミネートされ、主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)と助演男優賞(サム・ロックウェル)を受賞しています。

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『三度目の殺人』ネタバレ解説/真犯人は誰?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

昨日、テレビで是枝裕和監督の『三度目の殺人』が放送されました。

30年前に殺人を犯して服役していた三隅(役所広司)が、出所後に勤めていた工場の社長を殺し、火をつけた容疑で逮捕され、犯行も自供し死刑はほぼ確実。

そんな状況の中、弁護を担当することになった重盛(福山雅治)は、何とか刑を軽くするために調査を始める。

しかし、三隅の供述はコロコロ変わるし、被害者の娘・咲江(広瀬すず)も何かを隠しているようだし、怪しいことが次々と…

果たして社長を殺したのは誰なのか?そして事件の真相とは…?という法廷サスペンスなんですが、放送後にテレビを見た人から「いったいどういうこと?」などと疑問の声が上がったらしい。

なぜなら、この映画は「最後に真犯人が判明して全ての謎がスッキリ解決!」みたいなストーリーでは全然ないからです。

そのため、最後まで観ても誰が社長を殺したのかわからないし、そもそも”三度目の殺人”って何なのか?など、モヤモヤばかりが残ってしまうのですよ。

では、どうしてこういう映画になったのか?というと、是枝監督が「社長を殺した犯人が三隅(役所広司)なのかどうかをハッキリ決めずに撮影を開始したから」だそうです。

是枝監督によると「たぶん三隅が殺してるんだろうけど、映画の中では”もしかしたら咲江(広瀬すず)かもしれない”という可能性も残している」とのこと。

実は、脚本を書いている段階では割とハッキリしてたんですが、撮影しているうちに「誰が犯人かわからない方が面白いんじゃないか?」と思えてきて、役所広司さんも「最後までよくわからないところがいいですね!」と言ってくれたので、最終的にそうなったと。

しかし、弁護士:重盛役の福山雅治さんは非常に気になったらしく、「本当に三隅が殺したんじゃないんですか?」と役所広司さんに直接聞いていたそうです(笑)。

でも、福山さんからそう質問された役所さんは、答えるどころか「福山くんはどう思う?」と逆に聞き返し、余計に福山さんのモヤモヤは充満していったらしい。

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まあ福山さんはやり辛かったようですが、是枝監督としては「目の前にいる殺人犯らしき男にどう接したらいいのかわからない…という重盛の心情をリアルに演じられて、逆に良かったんじゃないかな」とのこと。

つまり、この映画は監督が”そういう風に作っている”ので「良くわからない」という感想が当たり前なんですが、そんな中でもいくつかポイントになる映像が出て来ます。


●十字架

焼死した社長の燃え跡や、三隅が庭に作ったカナリアの墓など、本作には「十字架」を思わせる映像が何度も登場します。これはもちろんキリスト教的な隠喩であり、「罪を背負った者」を象徴しているのでしょう。

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●雪の中で寝転ぶ3人

三隅、咲江、重盛が雪の中で寝転ぶシーンをよく見ると、三隅と咲江は「十字架」の形になっていますが、重盛は足を開いて「大の字」で寝ています。つまり「この時点では重盛は何もしていないけれど、三隅と咲江はすでに罪を犯している」という意味なのではないかと。

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●頬をぬぐう仕草

三隅への判決が言い渡され、裁判所から出て来た重盛が右手で左の頬をぬぐうシーン。実はこれと全く同じ仕草を三隅と咲江もやっています。それは、社長を殺したときに浴びた返り血をぬぐう場面でした。

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つまり、重盛もこの瞬間(頬をぬぐった時)に誰かを殺して罪を背負ってしまった…ということを表しているのですよ。「誰か」とはもちろん死刑を言い渡された三隅のことです。

すなわち「一度目の殺人」は”30年前の事件”、「二度目の殺人」は”社長殺し”、そして「三度目の殺人」とは、”法律によって殺される三隅自身”のことだったのです。

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●ガラスに映る顔

映画の終盤、三隅と重盛が向かい合って最後の会話をしているシーンで、仕切りのガラスに重盛の顔が映り、三隅の顔と重なる場面があります。

このシーン、撮影中に是枝監督が偶然見つけて急遽追加したらしいのですが、「今まで弁護側にいた重盛が、三隅と同じポジション(罪を背負った者)に同調する」という意味だそうです。

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●十字架の中で佇む重盛

映画のラスト、道の真ん中で立ちすくむ重盛の姿が映りますが、よく見ると道が十字架(十字路)になってるんですよね。つまり、この映画は最後に重盛も十字架を背負ったところで終わっているのです。そこが非常に象徴的だなと思いました。

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なお、重盛と三隅が会話する接見室はセットなんですが、非常に気密性が高く、長時間撮影していると内部の酸素が足りなくなり、役者もスタッフも意識が朦朧としていたらしい。

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そのため、セットに酸素ボンベを持ち込んで、時々酸素を吸入しながら撮影していたそうです。大変だなあ(^^;)


『もののけ姫』のタタリ神はどうして手描きなのか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先日、金曜ロードショーで宮崎駿監督の大ヒット映画『もののけ姫』が放送されました。

「何度目だ?」と思うぐらい繰り返し放送されているので、今更内容について語ることは特にないんですが、テレビを見ながら何となく「タタリ神のシーンは作画が大変だったんだよね〜」などとツイッターでつぶやいたら、「あのシーンってCGじゃなかったの!?」ともの凄い反応が返って来たので逆に驚きました。

どうやら皆さん、「あんなに動きが複雑な物体を人間の手で描けるはずがない」「CGに違いない」と思っていたらしく、「こ…これが手描き…だと…?」と衝撃を受けたようです。

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確かに、最近のアニメならほぼ確実にCGで作画するようなシーンでしょう。しかし、『もののけ姫』が作られたのは1997年で、宮崎駿監督作品としてはCGが本格的に導入された最初の映画になるわけです。

そのため、当時はジブリ社内に新たにCG部門を開設し、「コンピュータを使うことでどんな表現が可能になるのか?」を日々試行錯誤しながらアニメを作っていたという。

そして当初は「冒頭に登場するタタリ神をすべて3DCGで作画する」という計画もあったらしいのですよ。

しかし、実際にテスト映像を作ってジブリ内部で検討したところ、宮崎監督が「ダメだ!こんなもの使えない!」と却下。

理由は、当時のCG技術が不十分で、タタリ神のグネグネした複雑な動きをリアルに再現できなかったこと。もう一つは、3秒の映像を作るのに3か月かかるなど「制作に時間がかかり過ぎる」ということでした。

こうしてタタリ神は手描きで作画することになったのですが、実はタタリ神本体の動きが2コマなのに対し、表面の”ヘビ状紋様”の動きは1コマ作画、つまり1秒間に24枚の絵が必要だったのです。これは大変な手間だ!

そこで、少しでもアニメーターの負担を減らすために「ヘビの動きは正確に1コマ1コマ繋げなくてもいい」と決めて作業することになりました。

しかし、アニメーターの習性なのか、描いているうちにどうしても1コマ1コマの動きを繋げようとしてしまい、宮崎監督から「せっかく負担を減らそうとしてるのに、わざわざ手間がかかるような作画をするな!」と怒られたらしい。

ところが、出来上がった映像はランダムに動いている部分があったり、順序よく綺麗に流れている部分があったり、とても不規則で奇妙な動きになっていたのです。

これは意図したものではなく、完全に”偶然の産物”なんですが、「誰も見たことがない、宮崎監督も見たことがない斬新な映像が出来上がった!」とスタッフの間で大盛り上がり。結果的に『もののけ姫』を代表する名シーンの一つとなりました。

なお、このシーンの原画を担当した笹木信作さんは「宮崎監督の意図する”勢い”とか、生物感のようなものを表現するのが難しかった。常に”これでいいのか?”という不安との闘いだった」とコメント。

また、動画を担当した鶴岡耕次郎さんは「どうしても変なクセが出てしまい、インスタントラーメンみたいな形になってしまった。描いているうちに何が正解かわからなくなり、どんどん泥沼にはまっていった」とのこと。

最終的に、わずか2分10秒のシーンを仕上げるのにかかった期間は1年7か月、動画枚数は5300枚も費やされました。しかし、そこまで大変な苦労と手間暇をかけ、1枚1枚コツコツと手描きで作画したからこそ、CGと見紛うような見事な映像が完成したのでしょう。

ちなみに『もののけ姫』の制作中、ジブリではほとんどのアニメーターがこのシーンを担当することを嫌がり、「仕事が遅いやつはタタリ神を描かせるぞ!」と”罰ゲーム”みたいな扱いになっていたそうです(笑)。


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なぜ『紅の豚』のヒロインの服はチェック柄なのか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、金曜ロードショーで宮崎駿監督の『紅の豚』が放送されます。

豚の姿をした主人公のポルコ・ロッソが、イタリアの空を舞台に愛用の飛行艇で存分に活躍する様を描いた本作は、配給収入27億円を超える大ヒットを記録しました。

まあ、内容については皆さんよくご存じだと思うので詳しく触れませんが、本日はどうしても言っておきたいことがありまして…。

それは「宮崎アニメのヒロインの衣装がダサい問題」です。

過去の宮崎アニメをちょっと思い出していただきたいのですが、『未来少年コナン』のラナや『魔女の宅急便』のキキなど、宮崎監督の作品に登場する女の子ってだいたい「無地で単色のワンピース」を着てますよね(ナウシカは除くw)。

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これには理由がありまして、アニメーションとは「1枚1枚形が異なる絵を連続で表示することで動いているように見せている」わけですから、描く線が1本増えただけでもアニメーターの負担が増大します。

例えば、キャラクターの服を”可愛い花柄”にした場合、その柄を1枚の絵に何個も描き込み、さらに同じような絵を何十枚〜何百枚も描かねばなりません。

しかも(今はデジタルで彩色できますが)当時は専門のスタッフが1枚1枚のセルに細かく色を塗っていたわけで、その手間を想像しただけでも「大変だなあ…」と実感できるでしょう。

そこで宮崎駿さんは、アニメーターや彩色スタッフの負担を少しでも軽くするために、キャラクターの衣装をできるだけ簡略化したのです。

特に登場シーンが多い(=描く枚数が多い)ヒロインは、作画が面倒な装飾品を一切つけず、シンプルな無地のデザインでボタンすら省略し、色もいちいち塗り分けしなくてもいいように紺やオレンジの”単色”で設定。

つまり、限界まで描く手間を省いて効率化を極めた結果、生み出された形が「宮崎アニメによく出てくる例のワンピース」だったのですよ。

ムスカ大佐が「流行りの服は嫌いですか?」と綺麗なドレスをシータに見せても着なかったのは、こういう理由があったからなんですね(笑)。

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ただ、アニメーターにとっては「描く手間が減って大助かり」と好評だったものの、観ている側は「宮崎アニメの女の子っていつも地味な服ばかり着てるなあ」と少々不満に思っていました。

ところがなんと!『紅の豚』のヒロイン:フィオは「白地に青色のチェック柄」という非常に華やかなシャツを着ているのですよ。おお〜!ようやく宮崎ヒロインがオシャレになった(笑)。

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しかし、当然ながらアニメーターからは苦情が殺到しました。見てわかる通り、縦・横に何本も線が入っていて描くのが大変、塗るのも大変なデザインだからです。

あまりにも作画の時間がかかりすぎるため、とうとうスタッフの一人が宮崎監督に「せめてラストシーンだけでも無地の服に変えてもらえませんか」と提案したところ、「ダメだ!」と即答。

その理由は……「フィオのシャツは花嫁衣装だから」

ええっ!花嫁衣装!?以下、『紅の豚』で動画チェックを担当した舘野仁美さんの証言より。

フィオをめぐってポルコとカーチスが決闘するシーンがありますが、宮崎さんの気持ちとしては、フィオのシャツは花嫁衣装のようなものだったんですね。つまり、手間のかかるチェック柄を描くことは、ウェディングドレスのレースを手間暇かけて編み上げるのと同じこと、そういう意味だと理解しました。 (「エンピツ戦記」より)

というわけで、宮崎監督が「花嫁衣装」を想定したおかげで、ヒロインの服がようやくオシャレになったんですが、”花嫁”…ってポルコはジーナと結婚するんじゃないのかな?でも原作にはジーナは出て来なくて、ポルコとフィオのカップルなんだよなあ。やっぱフィオが花嫁になるのか?う〜む(^^;)



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今年も残りあとわずかですが…

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

最近、更新が滞りがちになってて申し訳ありません(^^;)

ふと気づけば今年も残りあと1か月ちょいになっているにもかかわらず、観た映画の感想がほとんど書けていないという情けない有様です、トホホ。

正直、映画は観てるんですが、インプットに対してアウトプットが全く追い付いていないという状況なんですよね(単なる言い訳ですけどw)。

しかし「このままではいかん!」「何とかしなければ!」という気持ちはあるんですよ(気持ちだけは)。

というわけで、明日以降は今年観た映画の感想を頑張って少しずつアップしていこうと思います。どこまで書けるかわかりませんが、よろしくお願いします(^.^)

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