どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
先日、『パシフィック・リム:アップライジング』を観て来ました。
そう、「巨大ロボと巨大怪獣が壮絶な戦いを繰り広げる」という、ロボットアニメで良くあるストーリーを実写で再現した破天荒すぎるSFアクション映画『パシフィック・リム』の続編です。
何を隠そう(何も隠しませんが)僕は前作の『パシフィック・リム』が大好きで、本作も公開前からとても楽しみにしてたんですよ。
ところが…
『パシフィック・リム:アップライジング』が完成するまで、様々な困難と紆余曲折があったみたいなんですよねえ。まず、続編の制作が決定するまでが非常に長かったとか。
計画自体は早い段階から立ち上がっていたようですが、1作目が製作費1億9000万ドルに対してアメリカとカナダの興行収入が合わせて9700万ドルという微妙な結果だったため、「再検討した方がいいのでは?」となったらしい(全米興収だけなら完全に赤字だもんね)。
幸いにも、中国で大ヒットしたことで何とか制作は決まったものの、映画会社のレジェンダリー・ピクチャーズが中国の大手企業に買収されたり、脚本が大きく手直しされたり、予算を減らされたりした挙句、とうとうギレルモ・デル・トロ監督が降板してしまいました。
降板理由は「GOサインが出るまでに時間がかかり、スケジュールが延び延びになって『シェイプ・オブ・ウォーター』の撮影時期と重なってしまったから」とのことですが、この時点で十分不穏な空気が漂ってますよねえ(苦笑)。
その後も、監督がスティーヴン・S・デナイトに変わったり、レジェンダリーとユニバーサルの対立によって撮影が中断されたり、前作で主演を務めたチャーリー・ハナムが降板したり、公開予定日を3回も延期したり、次から次へとトラブルが勃発。
そんな感じでやっと完成した『パシフィック・リム:アップライジング』は、本国アメリカの成績が全然振るわず前作を下回る残念な結果となってしまいました(元々アメリカではヒットしてなかったので当然と言えば当然かもしれませんが…)。
さらに観客の評価もいまいちパッとしてないようで、前作を高く評価していたファンですら「俺たちが期待していた『パシフィック・リム』の続編はこんなんじゃない!」と批判している有様。
まあ、事前の情報があまりにもネガティブなものばかりで、逆にハードルが思い切り下がった状態で鑑賞できたから、僕はそんなにガッカリしなかったんですけどね(笑)。
とうわけで、以下ネタバレありで感想を書かせていただきます。
■あらすじ『人類とKAIJUUの死闘から10年が経過し、平穏な日々を取り戻していた地球。しかし、進化を遂げたKAIJUUが再び姿を現したことで、新たな戦いが勃発した。10年前に壮絶な死を遂げたスタッカー司令官の息子:ジェイク・ペントコスト(ジョン・ボイエガ)も新型イェーガーに乗り込み、人類のために立ち上がる。集結した若きパイロットたちは迫り来る危機を乗り越えることが出来るのか!?』
まず最初に結論から言ってしまうと、「続編映画としてはそれなりの完成度で、可もなく不可もなく」って感じでした(要は「良い部分もあれば悪い部分もある」という、極めて普通の感想w)。
ただし、色々言いたいことはありまして…
皆さんも心当たりがあると思いますが、基本的に「ヒットした映画の続編」って微妙な仕上がりのものが多いじゃないですか?では、どのような理由で微妙になってしまうのか?以下に「続編映画あるある」をいくつか書き出し、検証してみたいと思います。
1:主人公が変わった
普通、続編の主人公は前作の主人公がそのまま続投するパターンが多いですよね(『ダイ・ハード』シリーズの主人公は常にジョン・マクレーンだし、『ロッキー』シリーズの主人公はロッキーだし)。
そもそも観客は「前作の主人公の活躍をもう一度見たい」と思うからこそ続編の制作を望むわけで、その主人公を”変える”という選択は(基本的には)あり得ないはずなんです。
にもかかわらず、世の中には「諸事情で主人公が変えられてしまう」というパターンが割と存在するんですよ。そして(個人的な感覚ですが)そういう続編映画は前作に比べて面白さがダウンしている…ような気がします。
具体例を挙げると、大ヒットアクション映画『スピード』の続編は、前作の主人公だったキアヌ・リーブスが出演を断ったため、”同僚の警察官”という設定のアレックス(ジェイソン・パトリック)が主役になって大コケしました(コケた原因は諸説あり)。
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2010-06-25)
また最近では、『インデペンデンス・デイ』で主役を演じたウィル・スミスが『インデペンデンス・デイ:リサージェンス』に出演しなかったため、彼のキャラ(スティーヴン・ヒラー)は死んだことにされてしまい、前作のファンもガッカリした模様。
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2017-07-05)
もちろん、主人公が変わっても面白い続編はありますけどね。ただ「ストーリー上、特に理由もなく主人公が変わるような映画」は、本編自体に”何らかの不具合”が発生しているケースが少なくありません。
そして『パシフィック・リム:アップライジング』も、前作であんなに活躍していたローリー・ベケット(チャーリー・ハナム)が一切登場せず、まるで”最初からいなかった”かの如くスルーされているのですよ。
いやいや、10年前に地球を救った英雄の一人なのに全く触れられないってのは、いくら何でも不自然でしょう?チャーリー・ハナムがスケジュールの都合で出演できなかったのは仕方がないとしても、「10年の間に死亡していた」とか、何らかの形で彼のその後を伝えることは出来たと思うんですが…。
まあジョン・ボイエガが演じた新主人公(ジェイク・ペントコスト)は悪くなかったです。キャラも魅力的だし、ノーテンキな言動で映画の雰囲気も前作より明るくなっていました。しかし、前作のヒーローをないがしろにし過ぎている点は看過できないなあ(^_^;)
2:前作のキャラの扱いがひどい
「主人公の変更」にも通じるんですが、「前作のキャラが続編でどのように扱われるか?」に関してはファンなら気になるところでしょう。なんせ好きな映画のキャラクターにもう一度会えるわけですから。
しかし、前作で活躍したキャラが続編で不当な扱いを受けたとしたら…。内容によってはイヤ〜な気持ちになるんじゃないでしょうか?
例えば、デヴィッド・フィンチャー監督の『エイリアン3』の場合は、前作で生き残ったキャラクター(ヒックスとニュート)が映画の序盤でいきなり死亡したり、『キングスマン:ゴールデンサークル』でも同様の状況になったことで、「前作のキャラの扱いがひどい!」との批判が殺到しました。
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP) (2012-07-18)
そして『パシフィック・リム:アップライジング』も、前作で人類の危機を救った優秀なパイロットの森マコ(菊地凛子)が、大して活躍もしないうちに序盤であっさり死亡するなど、ファンの期待を裏切る展開が続出。
特に、ハーマン・ゴットリーブ博士(バーン・ゴーマン)とコンビを組んで怪獣の生態を解き明かしたニュートン・ガイズラー博士(チャーリー・デイ)が、今回は怪獣に操られて主人公たちを苦しめてるんですよね。
いや、そういう展開自体は悪くないと思うんですよ。「前作で味方だった人が続編では敵になっていた」という意外性が物語に変化をもたらせているし、「1作目と同じことをやってもしょうがない」という製作側の意図も理解できます。
ただ、そういう展開にするならキャラを最後まできちんと描いて欲しかった。前作との”キャラの繋がり”を重視するのであれば、ニュートンに善の心が残っていて怪獣と人類の狭間で悩み苦しむとか、ハーマンの友情溢れる活躍でニュートンが正気を取り戻すとか。そういう姿を見たかったなと。
しかし本作では、怪獣に意識を乗っ取られたニュートンはラスボスとの戦闘終了後もそのままの状態で、何も救われることなく映画が終わってしまうのです。これはちょっとあんまりではないかと。
せめてハーマンが「必ず君を助けてみせる。待っていろ!」とカッコいいセリフを言い放って締めくくっていれば、次回作(があるかどうか分かりませんけど)に期待を持たせることも出来たと思うんですが…。
3:監督が別の人になった
「1作目を撮った人とは違う監督が2作目を撮る」というのは割と良くあるパターンで、続編映画としては珍しくありません。ただ、「え〜、大丈夫かな〜?」と不安を感じるファンもいるでしょう。
例えば、『ターミネーター』『ターミネーター2』のジェームズ・キャメロン監督に代わって『ターミネーター3』の監督に抜擢されたジョナサン・モストウは、『T3』公開後に大変なバッシングを受けたそうです。
ジェネオン エンタテインメント (2009-06-05)
個人的には『T3』ってそんなに酷い映画とは思わないんですが、世間一般の評価として「ああ〜、ジェームズ・キャメロンが監督していればなあ…」みたいなガッカリ感を生じさせたことは否定できません。
それと同じように、「ああ〜、『パシフィック・リム:アップライジング』もギレルモ・デル・トロが監督していればなあ…」と思った観客が(僕を含めて)多数いたことは間違いないでしょう。
4:映像は凄いけど内容が残念
これはもう、典型的な「続編映画あるある」ですね(笑)。そもそも「続編を作る意義」っていうのは「観客に前作以上の驚きを与える」ってことですから、映像効果等をパワーアップするのは続編映画の方向性として完全に正しいわけです。
さらに「観客が求めているもの」もある程度わかっているので、「前作のストーリーを踏襲しつつ予算を増やして豪華な映画」を作ればヒットするのは自明の理…のはずなんですけど、なぜこうなってしまうのか(苦笑)。
僕が『パシフィック・リム:アップライジング』を観て一番ガッカリしたのも内容の部分で、特に前作で非常に盛り上がった”熱いドラマ展開”が控え目になっている点が残念でした。
『パシフィック・リム』を良く知らない人と話をすると、「パシリムって要するに巨大ロボと巨大怪獣が殴り合ってるだけの映画でしょ?」とか言われるんですが、いやいや!それだけじゃないんだよ!
過去の戦闘でボロボロに成り果てた主人公が再びパイロットとして立ち直る姿や、幼い頃のトラウマを克服して成長するヒロインや、自らの命と引き換えに怪獣を倒すスタッカー司令官など、胸が熱くなる見どころはいっぱいあるんだよ!
特に「切り札の核爆弾を失った主人公が、最後の手段として自分が操縦している巨大ロボの動力を爆破する」というクライマックスは、『トップをねらえ!』の最終話で「ブラックホール爆弾を起爆できなくなった主人公が、自分が操縦しているガンバスターの動力を使って爆破するシーン」を彷彿させる名場面でした。
その他、『マジンガーZ』や『エヴァンゲリオン』や『ジャイアント・ロボ』や『パトレイバー』や『ゲッターロボ』や『鋼鉄ジーグ』など、ロボット・アニメからの引用が至る所に見受けられたのですよ。
そんな熱すぎる1作目に対して、2作目は割と正攻法で作られ、日本のロボアニメ的なノリや”勢い”みたいなものがあまり感じられなかったのが残念でなりません(日本を舞台にしたり、明るい場所での戦闘シーンが多かったのは嬉しいんですけどねえ…)。
これはやっぱり、ギレルモ・デル・トロ監督の”フェチ”が圧倒的だったからでしょう。デル・トロ監督が自身のオタク魂を存分に炸裂させ、細かい部分までフェティシズムに満ち溢れていたからこそ、前作の『パシフィック・リム』はあれほどオタクの心に響いたんですよ。
スティーヴン・S・デナイト監督が作った続編にもロボット・アニメに対するリスペクトは感じられるんですが、いかんせんデル・トロ監督に比べると”フェチ”が足りない(苦笑)。その差が大きいと思います。
というわけで、「微妙な続編映画にありがちな要素」を4つ取り上げて検証してみました。まあ、大抵の続編映画にはこれらの要素が必ず1つや2つ入っているものです。でも『パシフィック・リム:アップライジング』の場合は4つ全部入ってるんですよね。それはさすがにマズいんじゃないかと(笑)。
ちなみに、本作を批判している人の意見で、「中国企業の女社長(ジン・ティエン)が目立ちすぎだろ!」っていうのがあったんですが、そもそも『パシフィック・リム』はアメリカよりも中国で大ヒットした映画なので、中国向けにアピールするのは”自然な流れ”と言えるでしょう(ロケも中国でしてるし)。
まあ確かに、クライマックスで女社長が自らロボットを操縦している姿には僕も度肝を抜かれましたけどね。あのシーンを観た瞬間、「えええ〜!ウソでしょ!?」「なぜ社長がそんなことを!?」と思わず声が出そうになりましたから(笑)。
あと、イェーガーの片腕にロケットを溶接して宇宙まで飛んで行き、そのまま富士山を登っている怪獣目がけて特攻する攻撃方法も爆笑しました(こんなバカバカしい倒し方見たことないw)。
そういう意味では「前作以上にバカ映画としての完成度が上がっている」とも言えるわけで、「これぞ『パシフィック・リム』の正統な続編だ!」と評価すべきなのかもしれません(^_^)
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