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『エヴァンゲリオン展』に行って来ました

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

長かったゴールデン・ウィークも終わってしまいましたが、皆さんどんな連休をお過ごしだったでしょうか?僕の方は、帰省していた友人たちと久しぶりに会い、話がはずんで夜の街を飲み歩き、うっかり終電を逃して朝までカラオケ屋で歌いまくるという、社会人とは思えぬダラけた休暇を過ごしてましたよ、トホホ。

そんな中、近所で『エヴァンゲリオン展』というイベントが開催されていたので、ちょっと行って来ました。元々、この展覧会は4〜5年前から東京や大阪などの主要都市を中心に全国を巡回してたんですが、僕の住んでいる田舎には今頃になってようやく回って来たわけです(今さらですけど悪しからずw)。

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さて、総監督の庵野秀明氏と製作会社カラーが監修したこのイベントでは、超人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(『新劇場版』も含む)で使用された原画や動画、絵コンテ、イメージボードなど、貴重な未公開資料を約300点も展示。

さらに、テレビシリーズのセル画や、キャラクターデザイナーの貞本善行氏が描いた漫画版『エヴァ』の複製原画まで展示しており、作品総数はなんと1300点以上という凄いボリューム!これら膨大な資料によって、大ヒットアニメが生み出された過程を詳しく知ることが出来る、というわけです。

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しかし、実際に見てみると予想していたよりも遥かにマニアックな内容で驚きました。普通、アニメの展覧会といえば、劇中のシーンを描いたイラストを展示するとか、あるいはセル画や背景画とか、せいぜいメカやキャラクターのフィギュアを飾る程度だろうと思ってたんですよ。

ところが、『エヴァンゲリオン展』では(セル画やイラストもありますが)大量の原画が壁一面にびっしりと貼り付けられてるんですね。これはビックリ!ちなみに「原画」とは、動きのポイントになる絵のことで、アニメーション制作において重要な役割を果たす工程です。

例えば、「座っている人の絵」と「立っている人の絵」を描き、2枚の絵を連続で見せれば残像効果で「座っている人が立ち上がる動き」を表現できるわけですよ(もの凄く大雑把ですけどw)。この2枚の絵を「原画」と呼び、原画と原画の間に入る絵を「動画(または中割り)」と呼びます。

今回の展覧会ではこの原画と動画を大量に展示していて、さらに作画監督がアニメーターの描いた絵を直した「修正原画」まで飾ってるんですよ。マニアックすぎる!いや、僕はアニメの作画が大好きなので、こういう展示は非常に嬉しかったんですが、普通の人が見ても良く分からないんじゃないかなあ(^_^;)

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ちなみに作監が原画を修正する場合、アニメーターが描いた絵の上にもう一枚紙を乗せて、「必要な個所だけ修正する」パターンが多く、例えばアスカの目だけを直すとなったら、修正原画には目のパーツだけが描かれているわけです(元の原画と比較することで「ああ、この部分を修正したのか」と分かる)。

しかし今回の資料では、修正箇所がかなり広範囲に及んでいて、パーツだけでなく1カットを全面的に描き直した「全修」の原画も数多く展示されていました。元の原画では幼い印象だったアスカの顔が、修正原画では大人っぽいシャープな表情になっていて「ずいぶん変わったんだな〜」と驚いたり。

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ただ、思っていたよりもキャラの絵が少なかったような気がします。物が爆発するエフェクト作画とか、「水飛沫」の原画を1枚1枚展示しているのを見て「なんて細かい作画なんだ!」と感心させられたりしたものの、意外とキャラの原画は多くなかったですねえ。

もっと碇シンジや綾波レイなどの絵が並んでいれば、キャラクターのファンも楽しめると思うんですよ。でも、「爆風で吹っ飛ばされる民家」の原画が何十枚も並んでいたり(屋根瓦も一個一個描き込まれた力作)、そういうのを見ても作画オタク以外は喜ばないんじゃないのかなと(笑)。

まあ、アニメーターが描いた原画を直接目にする機会は滅多にないので、個人的には大満足でした。普段あまり見ることが出来ないレイアウト用紙や、樋口真嗣氏が描いたイメージボードも確認できたし。さすがにタイムシートまで飾ってあったのにはビックリしたけど(^_^;)


※なお、会場内は撮影禁止のため、上記の写真は公式サイトの画像やイベント宣伝用として公開された素材を使用しております。


【スプリット】映画のネタバレはどこまでOKなのか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

今回の記事では、M・ナイト・シャマラン監督の最新作『スプリット』に関する”とある発言”を取り上げ、「ネタバレの許容範囲」について検証してみようと思います。

なお、映画本編の内容には一切触れていませんが、検証の過程でうっかりネタバレ情報に触れてしまう可能性も無きにしも非ずなので、まだ映画を観ていない人はご注意ください。

また、なるべく『スプリット』のネタバレをしないように配慮しているため、非常に回りくどい文章になっているかもしれません。悪しからずご了承ください。

さて、日本でもようやく上映が始まったM・ナイト・シャマラン監督の『スプリット』。待ちわびたファンの間で早くも話題になっているようですが、この映画に関して先日、映画評論家の町山智浩氏がツイッターに以下のような発言を投稿しました。

これはつまり、「映画『スプリット』にはシャマラン監督が過去に制作した”ある作品”に関わる内容が含まれているため、事前にその作品を観ていないと意味がわかりませんよ」という”忠告(あるいはアドバイス)”と思われます。

そして町山氏は、「そのタイトルを明らかにするとネタバレになってしまうため、『シックス・センス』『アンブレイカブル』『サイン』のうちどれか、ということしか言えません」と明言を避けていました。

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ところが、これに対して何人かの映画ファンが「ネタバレだ!」と批判したらしいのです。町山氏としては「わざわざネタバレにならないよう気を遣ったのに、これをネタバレと思うなら、もう今後一切私の映画紹介は見なくていい」とかなり立腹している様子。

その後、ネット上では「この程度の発言は別にネタバレじゃないだろ!」、「いや、十分ネタバレだ!」など騒ぎが広まり…とまあ、このような状況になっているわけですよ。果たして今回の件はネタバレか否か?

で、改めて町山氏のツイートを見てみると、ここから読み取れる情報としては「『シックス・センス』『アンブレイカブル』『サイン』のどれかが『スプリット』の内容に関連している」ということぐらいです。

もし仮に『シックス・センス』が関連しているとしたら(”例えば”の話ですよ)、それ自体が重大なサプライズになるわけだから、何も知らずに観た場合よりも驚きは少なくなるかもしれません。

ただ、関連することを事前に知ってしまったとしても、3本のうちのどれに該当するかまでは分からないので、実際に観た際に「ああ、なるほど。あの映画か」と納得は出来るはずです。

逆に、3本とも観たことがない人は”そのシーン”の意味が理解できず、映画を十分に楽しめないかもしれません。そうなると「事前にこれだけは観ておいた方がいい」という町山氏のアドバイスは、非常に”適切”な気もしますね。

ではいったい、今回の発言の問題点はどこなのか?と考えた場合、一番被害を受けそうなパターンに該当する人は、やはり「過去作を全部観ているM・ナイト・シャマラン監督のファン」でしょう。

そういう人たちは「過去作と関連がある」という情報すら知りたくない、あるいは「劇場で観て初めて知る”驚き”」を最も重視しており、それ故に「余計なマネすんな!」と憤慨しているわけです(「関連がある」という情報自体が”驚き”だから)。

つまり、この問題の本質は「何も知らなければ当然得られるはずだったサプライズが無くなったこと」に対する批判であって、本編の内容に触れていようがいまいが「立派なネタバレだ」との理屈が成り立ってしまうのですよ。

ついでに言うと、年季の入ったシャマラン・ファンなら、先の三作品を挙げた時点で「もしかしてアレじゃないかな…?」というのは何となく想像がついてしまうんですよね(苦笑)。

なのでまあ、そういう人が怒る気持ちも分からなくはありません。しかし、「映画評論家が監督の過去作に言及する」のは当たり前の行為で、しかもタイトルをボカしているのにそこまで非難されるのは、ちょっと酷じゃないのかな〜と。

「作品名を限定しなければ良かったのでは?」という意見もあるようですが、シャマラン監督の作品は『シックス・センス』以降9作品もあるので、さすがに全部観るのはしんどいでしょう(今さら『エアベンダー』観ろっていうのもアレだしw)。

結局のところ、どこまでのネタバレを”良し”とするかは個人の主観に大きく左右されるため、一般的にはネタバレと思えないような情報でも、本人がネタバレと感じればネタバレになってしまう場合があるわけです(う〜ん、難しい…)。

なので、もし本気でネタバレを避けたいなら、予告編や映画サイトやSNSなど一切の情報をシャットダウンし、映画が公開されたら最速で観に行く。これしかありません。Wikipediaなんて絶対に見ちゃダメ!ヘタしたらグーグルで検索しただけで関連ワードでネタバレを食らう危険性があるので、十分にご注意ください(^_^)

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月収6万円!台所で暮らす現役アニメーターの過酷な実態とは!?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先日、NHKの番組『オイコノミア』で「マンガとアニメ 熱〜い現場の経済学」という特集が放送されました。お笑い芸人ピースの又吉さんが、現役アニメーターの家を訪ねてそのリアルな生活をリポートするという、なかなか民放では見られないような内容でしたよ(笑)。

現在、日本は空前のアニメブームで、制作本数や市場規模も2010年以降右肩上がり。ところが、制作現場ではある深刻な問題が起きているという。そこで又吉さんが噂の現場へ向かったところ、衝撃の事実が発覚…!というわけで本日は、番組内で取り上げられた「アニメーターの実態」を検証してみたいと思います。

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まず又吉さんは、アニメ制作会社が多いことで知られる杉並区の一軒家を訪れました。そこでは、数人の若者が共同生活しており、普通の家とはちょっと様子が違う感じ。「どういう場所なんですか?」と又吉さんが尋ねると、「ここは新人アニメーターの寮なんです」とのこと。

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なんと、NPO法人の支援を受け、3年前から運営している「新人アニメーター寮」だったのですよ(築47年の古い一軒家に、5人の若手アニメーターが共同で暮らしている)。しかし、部屋の中を案内してもらった又吉さんはビックリ仰天!

「え?ちょっと待って下さい!ここで生活してるんですか!?」

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どうやら、もともと台所だったスペースを無理やり「部屋」として使用しているらしく、どう考えても人が暮らすには不向きです。「まさか、ここで寝たりはしないですよね?」「いえ、寝てます」「え?ここで?」と又吉さんも驚きを隠せません。

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このアニメーター寮は、電気・ガス・水道・インターネット代込みで家賃が月3万円という激安物件なんですが、「台所部屋」に関しては条件が悪いためにさらに値引きされ、なんと月2万5000円という超激安設定に!

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でも、いくら安いとはいえ、台所に住むってどうなのか?さすがに又吉さんも「これはもう、”ちょっと状況が悪い”ってレベルじゃないと思うんですけど…」と呆れ顔。なんせ、部屋を仕切る「壁」がないため、大きな布(カーテン?)を天井に画鋲で留めて「壁」の代わりにしているぐらいですからねえ(苦笑)。

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しかし、実際にこの部屋に住んでいる人は、「アニメーターって家に帰ったら寝るだけという生活になりがちなので、寝る場所さえあれば全然平気ですよ」と全く気にしている様子はありません。

それを聞いて又吉さん、「まあ僕も若手の頃は風呂なしのアパートとかに住んでましたけど…。でも、さすがにこういう所で寝たことは…。今まで見た中で一番すごいかも…」と衝撃を受けていました(笑)。

しかし、いったいなぜここまで安い家賃の部屋に住まなければならないのでしょうか?NPO法人代表の菅原さん曰く、「仕事を始めて3年目までの新人アニメーターは、本当に”食べられない”という状況なので、生活費を抑えるために安い部屋に住むしかないんですよ」とのこと。

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アニメーターは、「1枚絵を描いていくら」という単価で仕事をしてるんですが、その1枚がだいたい200円ぐらいなんです。で、新人の場合はすごく絵を描くのが早い人でも、1ヶ月に300枚描ければいい方なんですよ。そうすると、単価200円で月に300枚描いたとしても、月収は6万円にしかならないんです。なので、なかなかそれで食べていくのは難しい。

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菅原さんの説明を聞いて「過酷ですね、それは…」と驚愕する又吉さん。一昨年行われた調査によると、アニメーターの1日の平均労働時間はおよそ11時間だそうです。にもかかわらず、平均年収はわずか111万円。典型的なワーキングプアじゃないですか!

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「なぜそんなに賃金が低いんですか?」と又吉さんが尋ねると、「40〜50年ぐらい前は、動画マンでも家を建てたりできるほど高給取りの仕事だったようですが、時代と共にどんどんアニメの情報量が増えてきたんです。キャラクター一人の線の量が、以前に比べて3〜4倍ぐらいになった。そうなると、1枚描くのに3〜4倍の時間がかかってしまうんです」とのこと。

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つまり、昔のアニメの場合は、キャラクターがシンプルだから1枚の絵を描く時間も少なく、1ヶ月に1000枚や1200枚ぐらいは普通に描けていたんですね(仮に1000枚描いたとしたら、単価が200円でも月収20万円となり、十分に生活できる)。

しかし現在は、キャラクターのデザイン自体が複雑で写実的なものが多く、ユーザー側も「綺麗でハイクオリティな作画」を求めているため、絵の密度がムチャクチャ上がっているのです。そのため、1枚仕上げるのに5時間かかることもあり、新人アニメーターは「いったい自分は何をやっているのだろう…」と自信を失ってしまうらしい(「1枚5時間」と聞いて絶句する又吉さん↓)。

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お笑い芸人の場合は、そもそも仕事が無いんですよ。仕事が無いからお金が無いっていうのは、まあ分かるんですけど、アニメーターさんの場合は仕事を一生懸命しているのに、作業しているのにお金が無いっていう…大変ですよね。僕が思ってたより、ずっと大変な状況なんですね。

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こういう厳しい環境で働いていたら長続きするはずもなく、「新人アニメーターの3年以内の離職率は約80%」という非常に残念な調査結果が出ており、今回の番組でインタビューを受けた人も「僕の同期は僕以外全員辞めてしまいました」と告白。

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この後、番組内では「3DCGの制作現場」を取材していて、そちらの方は効率的な作業を追及し、従業員の給与も安定して支払われているのですが、その一方、手描きのアニメーターは相変わらず長時間労働で低賃金のままなんですよね。

これは今に始まったことではなく、もう何年も前からずっと言われ続けてるんですけど、一向に改善される兆しが見られません。もしかして、このまま手描きのアニメは衰退していってしまうのでしょうか?う〜ん、厳しいなあ…(-_-;)

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みたいなことを考えていたら、驚きのニュースが飛び込んできました。なんと宮崎駿監督が新作長編アニメーション映画を作るために、新人アニメーターの募集を開始したそうです。ええええ〜!?

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スタジオジブリ公式サイト(スタッフ募集告知)


宮崎監督といえば、2013年に「体力の衰え」などを理由に長編映画制作からの引退を発表したはずですが、今回「作るに値する題材を見出したから」という理由で引退を撤回することになったらしい。しかし、数年前にジブリの制作部門は無くなったためスタッフがいません。

そこで新たにアニメーターを募集しているようなんですけど、「給与:月額20万円以上」「賞与:年2回」「交通費:全額支給」「福利厚生:社会保険完備」など、破格の好条件を提示してるんですよ。これは凄い!

なにしろ普通の新人アニメーターの場合、「給与:完全出来高制(手取り6万円以下)」「賞与:なし」「交通費:自腹」「福利厚生:なし」などが当たり前ですから、それに比べるとまさに天国みたいな環境と言えるでしょう。

まあ宮崎監督の下で働くとなれば、当然、要求されるレベルはかなり高いと思われますが、滅多にない(というか、恐らく今後二度とない)貴重な機会なので、アニメーターを目指している人にとっては朗報なんじゃないでしょうか(^_^)


アニメーターが教えるキャラ描画の基本法則
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エムディエヌコーポレーション (2016-01-22)

期間限定セール!20世紀FOXのブルーレイが特別価格で販売中

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

現在、Amazonにて「20世紀FOX Blu-rayどれでも6枚3,090円」というセールを開催しているようなので、ちょっとお知らせ。最近はソフトの値段もだいぶ安くなってますけど、1枚あたり515円ってのは、なかなかお買い得なんじゃないでしょうか(割引は注文確定時に適用されるとのこと)。

20世紀FOXといえば、『タイタニック』、『ダイ・ハード』、『X-MEN』、『ホーム・アローン』、『プラダを着た悪魔』、『シザーハンズ』など、大ヒット作がたくさんありますが、今回はそれらの中から190作品ほどピックアップしているようです(詳しい内容はこちらをどうぞ↓)。


20世紀FOX作品6枚3,090円キャンペーン


ちなみに、今この辺の作品が売れているらしい↓

グランド・ブダペスト・ホテル [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2015-07-03)

タイタニック <2枚組> [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2013-10-25)

ファイト・クラブ [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2014-03-05)

なお、Amazon.co.jpが販売している商品のみがセール対象となり、マーケットプレイスの商品は対象外。さらに、5/24 00:00〜5/26 23:59の間のみ有効で、この期間以外、特別価格は適用されません。興味がある人はお早めにどうぞ(^_^)

『時計じかけのオレンジ』を好きと言ってはいけない理由に疑問

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

突然ですが、みなさんは『時計じかけのオレンジ』という映画をご存じでしょうか?1971年に公開されたスタンリー・キューブリック監督の作品で、映画に詳しくない人でも名前ぐらいは聞いたことがあるかもしれません。

時計じかけのオレンジ [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2010-04-21)

先日、そんな『時計じかけのオレンジ』について書かれた”とある記事”が、映画好きたちの間で話題になっていたので読んでみました(以下、「ロケットニュース24」へリンク↓)。


初対面で好きな映画を聞かれても『時計じかけのオレンジ』と答えない方がいい理由


内容はまあタイトルの通りで、もし初対面の人に「好きな映画は?」と聞かれても、『時計じかけのオレンジ』と答えてはいけない、その理由は…という記事です。ただ、”理由”を読んでビックリ!

「めんどくせえヤツだな」と感じてしまうから

えええ!?何ですか、その理由は!!!???

どうやらこの筆者、過去に同様の質問をして『時計じかけのオレンジ』という回答が返って来た際、「これくらい知ってるでしょ?」的なお高い感じと「あざとさ」を感じてしまったらしく、それ以来「『時計じかけのオレンジ』が好き」と答える人を「めんどくせえヤツ」と思うようになったそうです。

いやいや!どう思おうがその人の自由ですけど、それはあくまでも”個人の主観”であって、わざわざ文章を書いて広く一般に知らしめる必要があるんでしょうか?世の中の人がみんな筆者と同じ考えじゃないでしょ?

しかもこの人、『時計じかけのオレンジ』を一度も観たことがないんですよ。ええええ!?「『時計じかけのオレンジ』を観た自分自身が過去にこういう目に遭った」という話ならまだ分からなくもないですが、観てもいない映画をダシにして、よくこんな記事を書けるなあと。

案の定、これを読んだ映画ファンからは批判が殺到。「理由がおかしいだろ」「ふざけんな!」「好きな映画も言えないこんな世の中じゃ…」など、ネット上で異論・反論が噴出したようです。

というわけで、多くの映画ファンがこの記事を読んでイラっとしたようですが、例えばもしこれが「『時計じかけのオレンジ』を観たらメチャクチャつまらなかった」という話なら全然OKだと思うんですよ(映画の感想なので)。

でも、好きな映画を聞かれた時の答えを、こういう形で否定されると釈然としないものがありますねえ。実際に「『時計じかけのオレンジ』が大好き!」って人もいるだろうし、その人は自分の好きな映画を自由に言えないのか?と。正直、余計なお世話としか思えないんだよなあ(^_^;)

ジブリのアニメーター募集、月収が安すぎる?海外から批判殺到!

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

このブログでは時々「アニメーターの待遇」に関する記事を書いてて「またか」と思う人もいるでしょうけど(笑)、先日スタジオジブリの公式サイトに「アニメーター募集」の告知がアップされました。

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これは、宮崎駿監督が新作長編アニメを作ることになり、それに参加するスタッフを集めるためなんですが、「給与:月額20万円以上」「賞与:年2回」など、かなりいい条件を提示してるんですね。

なんせ、日本のアニメーター(動画マン)は「月収6万円〜9万円」「賞与なし」が当たり前で、食うや食わずの生活をしながら働いている人が大半だから、それに比べると天国みたいに素晴らしい待遇なわけです。

ところが、この告知を見た海外の人たちから「週給450ドル(約5万円)は問題だ」「あまりにも安すぎる」「十分な貯蓄がないとできないよ」などのコメントが相次いだらしい(以下「ハフィントンポスト」のリンク↓)。


ジブリの新人スタッフ、「給料安すぎる」と海外で指摘相次ぐ


きっかけとなったのは、アニメの最新ニュースを配信している『CARTOON BREW』の求人情報で、1ドル110円換算で約1800ドル(約20万円)、週給にして約450ドルという給与に対し、「あのジブリがこの程度しか出せないのか?」「LAの4分の1だぞ」と驚きの声が上がっているそうです。

この反応を見た日本人からは、「日本の貧しさを痛感する」「ホントに恥ずかしい」「日本のアニメーターはお買い得なんだよなぁ」などのツイートが殺到し、改めて日本のアニメ制作事情の厳しさを嘆いているらしい。

しかしその一方では、「いやいや、ジブリが明記しているのは”月額20万円以上”だから、働き方次第でそれ以上もらえるという意味だよ」「そもそも月に20万ってそんなに安いか?」「海外では社会保障等が全部自腹だから、それも考慮しないとね」「職種が全然違うのに比較しても意味がない」などの反対意見も出ているようです。

というわけで、「スタジオジブリのスタッフ募集要項」に関して、日本だけでなく海外からも様々な意見が上がっているようです。

果たしてジブリの月額20万円は高いのか安いのか?という問題はありますけど、その前に「そもそも新人アニメーターにこれだけの給与を払えるアニメ会社が、日本では他に存在しない」という問題をもっと深刻に考えるべきなんじゃないのかなあ。

なお、ハフィントンポスト日本版のスタッフがスタジオジブリの広報担当者に「給与20万円は安すぎないか?」という反応についてどう思うか問い合わせたところ、「コメントは差し控えさせていただきたい」との回答だったそうです。いや、それは別に聞かなくてもいいんじゃない?(^_^;)


スタジオジブリの歌 -増補盤-
アニメ主題歌
徳間ジャパンコミュニケーションズ (2015-11-25)


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なぜアニメーターは貧乏なのか?ブラックすぎる実態に批判殺到!

月収6万円!台所で暮らす現役アニメーターの過酷な実態とは!?

現場は大混乱!『スペシャルID 特殊身分』ネタバレ映画感想

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■あらすじ『黒社会を牛耳るホン(コリン・チョウ)の組織で潜入捜査を続けている香港警察のチェン・チー・ロン(ドニー・イェン)。ある時、組のブツを盗んだ兄弟分サニー(アンディ・オン)を捜し出すようホンから命じられ、彼を追って中国・広東省へ向かった。そこで中国警察の女刑事ジン(ジン・ティエン)と捜査協力をすることになったロン。やがてサニーと再会を果たしたものの、彼の命を狙う殺し屋が現れ大乱闘に!果たしてロンは事件を解決することが出来るのか?香港を代表する世界的アクション・スター、ドニー・イェンが壮絶アクションを繰り広げるクライム・サスペンス超大作!』

本日、TOKYO MXのテレビ番組「キネマ麹町」でドニー・イェン主演のアクション映画『スペシャルID 特殊身分』が放送されます(「キネマ麹町」についてはこちらをどうぞ→公式サイト)。

『イップ・マン 序章』〜『イップ・マン 継承』では華麗なカンフーを見せ、近年は『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』や『トリプルX:再起動』など、ハリウッド大作での活躍も目覚ましい世界的なアクション・スター:ドニー・イェン。

そんなドニーさんが主演した本作は、『SPL 狼よ静かに死ね』と『導火線 FLASH POINT』に続く「現代アクション三部作」の一つとして位置付けられ、MMA(総合格闘技)の要素を取り入れたリアルでハードなアクションが特徴です。

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高度なアクションを実現するため、ドニー自身がアクション監督を務め、さらにスタント・コーディネーターとして『るろうに剣心』の谷垣健治と『るろ剣』のスタントチームが参加し、次々と過激なスタントを炸裂!見応え十分なアクション映画に仕上がっています。

また共演には、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』でジャッキー・チェンと戦ったアンディ・オンが敵役を演じ、クライマックスではドニー・イェンを相手に壮絶なバトルを展開しています(『香港国際警察』のジャッキーVSアンディもオススメ!)。

そして『ポリス・ストーリー/レジェンド』でジャッキー・チェンの娘役を演じたジン・ティエンや、『酔拳2』のラストでジャッキー・チェンを苦しめたロー・ワイコン(ケネス・ロー)など、アジアで活躍中の人気俳優が多数出演している点も見どころでしょう(つーかジャッキーの共演者が多いなw)。

ちなみに、『導火線 FLASH POINT』の終盤でドニー・イェンと凄まじい死闘を繰り広げたコリン・チョウが本作で敵のボスを演じてるんですが、残念ながら今回ドニーとのバトルはありません。う〜ん、見たかったなあ(『導火線』のコリン・チョウ↓)。

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そんな感じで面白そうな要素が満載ではあるんですけど、内容がちょっと…いやかなり雑で散らかってる印象なんですよね。いったいどうしてこんな風になってしまったのか?実はこの映画、製作中にあり得ないほど様々なアクシデントが勃発し、苦労の末にようやく完成した作品だったのですよ。

まず、当初はドニー・イェンとジャッキー・チェン、ドニーと対決する敵役として『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ』シリーズのチウ・マンチェクが出演する予定でした。ところが、撮影開始前にジャッキーが降板。

そして監督のタン・ペンも、「有名なアメリカ映画のあのシーンをやりたい!」みたいな感じで全然面白そうな映画を撮れそうにないと判断され、これまた降板(というか解雇)。このため、大幅な脚本の手直しを余儀なくされました。

その後、チウ・マンチェクも降板したんですが、なんと彼は「ドニー・イェンが勝手に脚本を書き替えた!」「準主役級の扱いだったのに出番を減らされ、一方的に契約を解除された!」などとネットやメディアを通じて批判し始めたのです。

これに対してドニーと映画会社は「そんなことはない。チウ・マンチェクの方こそ、高級ホテルを要求したり、撮影に非協力的だったり、我儘がひどすぎるんだよ!」と猛反論。双方のファンを撒き込んで大論争に発展したのです。

さらに車両部のドライバー同士が酒を飲んでいるうちに口論となり、酔ってケンカを始めた結果、なんと一人が刺し殺されてしまうという悲惨な事件が発生!しかも、どういうわけか「ドニー・イェンの運転手がチウ・マンチェクの運転手を刺し殺した」と報道されてしまい、ますます状況が悪化する有様。

挙句の果てには「亡くなったドライバーの遺族」を名乗る人がロケ現場に現れ、「ドニーのせいでうちの息子が死んだ!」「どうしてくれる!」などと大騒ぎしたため撮影が中断されるなど、様々なトラブルが頻発したらしい。

このように、監督の解雇、脚本の大幅修正、出演者の降板、スタッフ死亡、撮影ストップ、最終的には解雇されたタン・ペン監督が「『特殊身分』の公開中止と損害賠償」を求めて提訴、ドニー・イェンも名誉棄損で監督を訴えるなど、大変な事態になったそうです(裁判はドニー側が勝訴し、映画は無事に公開された)。

結局のところ、今回の騒動は1997年の「香港返還」以降に目立ち始めた「中国人と香港市民の対立」が背景にあると考えられ、映画の合作をきっかけとしてそういう問題が一気に表面化したのでしょう。

いや〜、それにしても凄まじい話ですねえ。スタント・コーディネーターの谷垣さんも「20年以上この業界で働いているが、こんなにヒドい現場は初めてだ!」と驚いたそうですから、よっぽどヒドかったんでしょうね(笑)。

アクション映画バカ一代 (映画秘宝COLLECTION)
谷垣 健治
洋泉社

トラブルの詳細はこちらの本に詳しく書かれています

ただ、そんな状況の中でも、アンディ・オンやコリン・チョウやロー・ワイコンなど男気溢れる面々が「ドニーが困ってるなら助けよう!」とばかりに次々と集結し、そのおかげで逆にアクションのクオリティが上がったと考えれば、「災い転じて福と成す」なのかもしれません。

さて、そんな『スペシャルID 特殊身分』の見どころといえば当然アクションなわけですが、数あるアクションシーンの中でも個人的に好きな場面をいくつか取り上げてみたいと思います。


●ロー・ワイコン戦

映画序盤、ヤクザに拉致された舎弟を助けるために麻雀屋へやって来たドニー・イェンが、ロー・ワイコンと対決するシーン。「ムエタイ使い」という設定のロー・ワイコンは、もともと本物のムエタイ選手だったので説得力が有りまくり!

一方のドニーは、最初は普通に立って戦っていたものの、途中からロー・ワイコンの蹴り技に対抗すべく、床に寝転がって戦う「猪木VSアリ」スタイルに変更。この辺はまだコミカルな印象ですけど、ストーリーが進行するにつれてどんどんハードなアクションになっていきます。

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●ヤクザ軍団戦

映画中盤、ドニーが火鍋屋でヤクザの集団に襲われるシーン。たった一人のドニーが建物の中を移動しながら大勢の敵を次々と倒していくという、緊張感溢れるアクションです。狭い場所でいかに効果的に戦うか、素手のドニーが刃物を持ったヤクザ相手にどう立ち向かうかなど、非常に見応えがありました。

このシーンでは日本人のスタントマンが多数参加し、要所で見事なスタントを披露しているものの、ドニーの要求が厳しくて苦労したとか。なお、監督はクラレンス・フォクなんですけど、火鍋屋のシーンに関してはほぼドニー・イェンが監督していたそうです(そもそもクラレンス監督は他の映画の撮影に行っていて、現場にいなかったらしい)。

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●アンディ・オン戦

映画クライマックス、建設中の高速道路で繰り広げられるアンディ・オンとの激闘シーン。殴る・蹴るだけでなく、投げる・関節を極めるなど「打投極」を見事に連係させた名場面となっています。本作最大の見どころであり、現代格闘技を追及してきたドニー・イェン・アクションの、まさに”一つの到達点”と言えるでしょう。

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ひとつだけ不満を述べるなら、『導火線 FLASH POINT』で見られたような美しいモーション(いわゆる決めカット)があまりなかったこと。ただしこれはドニーが意図的にやっていたようで、谷垣さんによると、「”蹴り足が曲がってる”とドニーに言ったら、”本物の喧嘩でキックの形を気にするヤツがいるか?”って言われた」とのことなので、”綺麗なフォーム”よりも敢えて”粗い動き”を残すことにこだわったのでしょう。

個人的には『SPL』の「ウー・ジンとの対決シーン」や『導火線』のラストバトルの方が好みなんですが、本作のアクションは説明的なカットをわざと省き、段取り臭さを極力排除した「リアル志向の格闘技」を極めようとしており、そういう点に価値があるんですね。

なので、もし香港アクション映画に興味があるなら、『SPL』と『導火線』と『特殊身分』のバトルシーンをぜひ見比べてみてください。ブルース・リーやジャッキー・チェンなど、カンフー映画の先人たちによって築き上げられてきたアクションの進化系がそこに見出せると思います(^_^)

ヒュー・ジャックマン主演『ウルヴァリン:SAMURAI』ネタバレ感想

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■あらすじ『1945年の長崎。日本軍の捕虜となっていたウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)は原爆の衝撃から青年将校・ヤシダを助ける。それから数十年後、カナダの山奥で孤独に暮らしていたウルヴァリンのもとへユキオ(福島リラ)が現れた。彼女は大物実業家となったヤシダの使いで、誘いを受け日本を訪れることに。だがヤシダは病魔に冒されており、「お前を不老不死の生き地獄から解放してやろう」と告げ死去。そして葬儀の中、ヤクザ軍団の襲撃を受けたヤシダの孫娘マリコ(TAO)を守って、東京から長崎へ逃避行する。やがて愛し合う関係になったマリコとウルヴァリンだったが、ヤシダの言葉通りDr. グリーンによって体の回復能力を奪われ、本来の力が出せなくなってしまった。満身創痍のウルヴァリンの前に、マリコの父親シンゲン(真田広之)や忍者軍団、そして最強の「シルバーサムライ」が立ちはだかる。心身に凄まじいダメージを負ったウルヴァリンは、愛する人を守ることが出来るのか…?最新作「ローガン」のジェームズ・マンゴールド監督が贈るアクション超大作!』



どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、「金曜ロードSHOW!」で『ウルヴァリン:SAMURAI』が地上波で初放送されます。本作は、『X-MEN』シリーズの人気キャラ:ウルヴァリンを主人公にしたスピンオフ作品で、『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』に続く第2作目です。

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ただ、前作『X-MEN ZERO』が『X-MEN』(2000年)の前日譚だったのに対し、この『ウルヴァリン:SAMURAI』は時系列的に『X-MEN:ファイナル ディシジョン』の後の話になるため、少々ややこしいんですよね。

しかも『ファイナル ディシジョン』の最終決戦において、ウルヴァリンは愛するジーン(ファムケ・ヤンセン)を自らの手で殺さなければなりませんでした。その罪悪感に悩まされ、いつも以上に暗いキャラになっているのですよ。

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ちなみにこの『ウルヴァリン:SAMURAI』、当初は『ブラック・スワン』のダーレン・アロノフスキー監督が撮る予定で2011年3月から日本ロケを計画していたようですが、11日に発生した東日本大震災の影響で降板、代わってジェームズ・マンゴールド監督がメガホンをとることになりました。

その後、ヒュー・ジャックマンのスケジュールに合わせて計画が見直され、2012年8月から日本での撮影が始まったとのこと。そんな本作は、ウルヴァリンが戦時中に長崎で日本軍の捕虜になっているシーンからスタート。時は1945年、まさにB29から原爆が投下されたその瞬間、彼はヤシダという日本兵の命を助けます。

そして終戦後、大物実業家となったヤシダが「死ぬ前にもう一度会いたい」とウルヴァリンを日本へ招きました。来日してヤシダの大豪邸に着いたウルヴァリンは、いきなり風呂場へ連れて行かれ、2人のおばさんにゴシゴシと身体を洗われます。

海外映画を観ていると、「日本を訪れた外国人が美しい日本人女性たちに優しく身体を洗ってもらう」という描写が出て来ますが(『007は二度死ぬ』など)、ウルヴァリンの扱いは結構雑ですね(笑)。あまり気持ち良くなさそう(^_^;)

007は二度死ぬ [Blu-ray]
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久しぶりの再会も束の間、ヤシダが死亡し、葬儀のシーンは港区芝公園にある「増上寺」でロケ。当時はスタッフ・エキストラ含め400名以上の大規模な撮影隊が組まれ、非常にハードなスケジュールだったらしい。

このシーンでは、タトゥーだらけのお坊さんやヤクザ軍団に襲われ、ヤシダの娘マリコを守りながら必死で戦うウルヴァリンの姿や、福島リラ演じるユキオのアクションなどが描かれています。

増上寺から逃げ出したウルヴァリンとマリコは、パチンコ屋の店内を通って秋葉原や上野など、外国人にウケそうな街を歩き続け、いつの間にか新幹線に乗車(外国映画にはよくパチンコ屋が出て来るなあw)。

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しかし、そこへ追いかけて来たヤクザが現れ、ウルヴァリンと戦闘開始。猛スピードで走る新幹線の屋根の上で凄まじいバトルを繰り広げる二人の男!…ってウルヴァリンはミュータントだから分かるんですが、なんでヤクザがこんなに強いの?

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そしてどうにかヤクザを撃退し、新幹線を降りてマリコとラブホテルへ逃げ込むウルヴァリン。実は「ラブホテル」という施設は日本特有のものらしく、外国人にとっては珍しいそうです。

もちろん海外にもモーテルはありますが、普通の安宿と大差ありません。しかし、日本のラブホは外観や設備が一般のホテルと明らかに異なっており、こういうタイプの宿泊施設は外国ではほとんど見かけないらしい。それ故に関心が高いのでしょう。

その後、ウルヴァリンは長崎まで移動し、路線バスを乗り継ぎながらマリコの隠れ家へ辿り着きます。この辺の風景は、劇中では長崎になってますが、実際は広島県福山市の福山駅や鞆の浦などで撮影されたそうです。

しかし、滅多に有名人なんて来ない田舎町に突然ハリウッド俳優が現れたものだから、ロケ現場には大勢のギャラリーが押し寄せパニック状態に!福山市内を歩くヒュー・ジャックマンの姿が目撃され、様々な写真がネット上にアップされました。

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で、ウルヴァリンは拉致されたマリコを助けるために「忍者の里」へ向かいますが、山奥の村に着いたら一面に雪が積もってるんですよ。長崎では初夏の雰囲気だったのに、いったい季節はいつなんだ???

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色々あってシンゲン(真田広之)を倒したウルヴァリンは、死んだと見せかけてシルバーサムライになったヤシダと戦い、何とか勝利を収めました。そしてラストは、空港へやって来たウルヴァリンの前にマグニートー(イアン・マッケラン)とプロフェッサーX(パトリック・スチュワート)が現れ、次回作『X-MEN:フューチャー&パスト』の前フリをして以上終了。

ちなみに、この場面でウルヴァリンが驚いているのは前作(『X-MEN:ファイナル ディシジョン』)でマグニートーが能力を失い、プロフェッサーXは死んでいるから。そして、この2人に誘われたウルヴァリンは次回作の『フューチャー&パスト』で共に戦う…という流れになるわけで、その2作品を観ていないと意味がよく分からないんですよねえ(^_^;)

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というわけで『ウルヴァリン:SAMURAI』の印象を一言で表すと「ヘンな映画だなあ」としか言いようがないんですが(笑)、ヤクザ・忍者・パチンコ・ラブホテルなど、「外国人が思い描く日本の文化や風景」を忠実に映像化していて、これはこれで面白いと言えなくもありません。

それにしても、昔から「日本を舞台にした外国映画」はいくつも作られているのに、いつまで経ってもまともな日本が描かれないのは何故なんでしょうか?日本がどういう国か、そろそろ海外の人も分かってると思うんだけど…。こういうのって「もう仕方がない」と諦めるしかないんでしょうかねえ(^_^;)

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日本を舞台にしたヘンな外国映画は他にもありますw

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これも酷いw

『チョコレート・ファイター』ネタバレ映画感想/アクション解説

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■あらすじ『舞台はタイ。日本人ヤクザと現地最大のマフィア「ナンバー8」との抗争が激化している最中、ヤクザの大物:マサシ(阿部寛)はタイ人女性ジンと恋に落ちた。だが、ジンはナンバー8の女だったため、マサシの身を案じて姿を消してしまう。やがてマサシは日本へ帰国し、ジンは一人の子供を出産。ゼン(”ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン)と名付けられたその少女はチョコレートとアクション映画が大好きで、一度観た技をすぐにコピーできる特殊な能力を持っていた。そんなある日、かつてジンが所属していた組織「ナンバー8」に見つかってしまう。果たしてゼンの運命は…?最愛の家族のために、そして生きるために、いまゼンの壮絶な戦いが幕を開ける…!』



どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、洋画専門チャンネル「ザ・シネマ」で『チョコレート・ファイター』が放送されます。本作は、2003年にトニー・ジャー主演の『マッハ!』で衝撃的なムエタイ・アクションを世に送り出したプラッチャヤー・ピンゲーオ監督が、新たに”戦う美少女”を主人公にして作り上げた超絶アクション映画なのですよ。

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この映画でヒロインのゼンを演じたヤーニン・ウィサミタナン(愛称”ジージャー”)はそれまで全く無名の存在でしたが、本作の大ヒットによって注目を集め、いきなりトニー・ジャーと共にタイを代表する新世代のアクションスターとして全世界に名を轟かせることになったのです。

もともとジージャーは、『チョコレート・ファイター』のアクション監督(パンナー・リットグライ)が企画した『七人のマッハ!』(2004年)のオーディションを受けていて、そこでプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の目に止まり、「彼女を主人公にした映画を作ろう」と思い付いたそうです。

ところが、当初の予定では1年間ほど彼女を訓練して撮影に入る予定だったのに、トニー・ジャー主演『トム・ヤム・クン!』(2005年)の撮影が予想外に延びてしまい、さらにピンゲーオ監督が『マーキュリーマン』や『ゴースト・ナース』などのプロデュースで忙しかったため、気付けば4年間も訓練し続けるハメになってしまいました。

さて、そんな『チョコレート・ファイター』ですが、僕の大好きな映画『マッハ!』を撮ったプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の作品なので凄いアクションがあることを期待しつつ、「でも今回は池脇千鶴に良く似た華奢な女の子が主役だから、ちょっと迫力不足かもしれないな〜」などと思ってたんですよ。

だがしかし!その考えは甘かったです。ピンゲーオ監督は相手が女の子だろうと池脇千鶴だろうと、一切の妥協を許さぬ鬼畜のような監督でした。ええ、それはもう「凄まじい!」の一言に尽きますよ。恒例の”エンディング・テロップのNG集”が、もはや笑えないレベルに達しています。

「ノーワイヤー&ノーCG」を売りにしている本作ですが、あるシーンでは俳優の体をワイヤーで固定し、背景にCGを合成していました。どうやら「ビルの3階から人間が地面に落下するシーン」をそのまま撮ろうとした時に、「待てよ、これはもしかしたら人が死ぬかもしれないな」ということにようやく気付いたらしい。

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たしかに本作のメイキングを見ると、ワイヤーを付けて飛び降りたスタントマンが地面に激突し、首にコルセットを巻いて救急車で運ばれていく映像が映っていたので、ワイヤー無しで飛んでいたら確実に死人が出ていたと思われます。

昔テレビで、「危険なアクションを成功させるコツは何ですか?」という質問に対し、「ガマンです!」と胸を張って答えるジャッキー・チェンを見てひっくり返ったことがありましたが、ここのスタッフは皆、ジャッキーの言葉を真に受けて、体を張って実践しているとしか思えません。まさに”筋金入りのアクション・バカ”と言えるでしょう。

ちなみに、昔の香港映画の現場ではビルの屋上から飛び降りるシーンを撮影する時にも、「地面にダンボールを敷くだけ」という簡素な”安全対策”しか用意してもらえなかったそうです(通常はしっかりしたエアークッションなどを使う)。

以前、『天使行動』という映画に出演した西条秀樹が、同じような条件で「ビルから飛び降りるシーンをやってくれ」と現地スタッフから頼まれたため、「全力で拒否した」とのこと。やむを得ず、別の人が秀樹の代わりに飛んだら、着地に失敗して首から背骨が飛び出ていたそうです。恐ろしすぎる!

また、他の映画ではミシェル・ヨーが、立橋の上から飛び降りて下の道路を走っているトラックの荷台にカッコ良く着地しようとしたものの、トラックのスピードが速すぎてそのまま道路に「べちゃっ」と墜落。まるでギャグマンガのようですが、実写でこれをやってしまうところが香港映画の凄さでしょう(当然の如く、ミシェルは救急車で運ばれて行きました)。

さすがに最近の香港映画は、ここまで人権を無視したヒドい撮影はやっていないようですが、もしかするとピンゲーオ監督は破天荒なアクションを撮るため、逆に”80年代の危険で豪快な香港スタイル”を再現しようとしているのかもしれませんねえ。

実際、『チョコレートファイター』を観ると、「工場や倉庫での格闘シーン」とか「近くにある道具を武器にして敵を倒す」など、『ドラゴン危機一発』や『プロジェクトA 』に影響を受けたと思われるアクションが多数登場しています。

例えば、ゼンが母親の治療費を捻出するために、製氷工場を訪ねて行って戦う場面は、まさにブルース・リーが製氷工場で死闘を繰り広げた『ドラゴン危機一発』のオマージュでしょう(ちなみに『ドラゴン危機一発』もタイで長期ロケした作品)。

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また、広い倉庫で戦う場面では、ロッカールームのドアを利用して敵を倒したり、イスや机を駆使したトリッキーなアクションなど、ジャッキー・チェンの映画でお馴染みのコミカルかつアクロバティックな戦闘スタイルを堪能できますよ。

そしてクライマックスでジージャーと戦うのは、WBC世界バンタム級王者オー・シリモンコン、韓国のムエタイ・チャンピオン:イム・スジョン、オランダの女性格闘選手ソーミア・アバハイヤなど、世界中から集められた本物の格闘家たち。これらの強敵を倒すために、ゼンはヒザ蹴り&ヒジ撃ちなどのムエタイ技を繰り出します。

さらにその後、彼女の前に最強の敵が登場!「アディダスのジャージを着た坊主頭のメガネ男子」という、一見して全く強そうに見えないこの少年、実は格闘技とブレイクダンスをミックスした「Martial Arts Trickz」という技の使い手だったのですよ。

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どのタイミングで攻撃が飛んで来るのかわからない、変幻自在な格闘スタイルに翻弄されるゼン。しかし戦っているうちに相手の戦法をマスターし、彼女も「Martial Arts Trickz」で応戦するという凄い展開に!最終的には、相手を上回る技を叩き出してゼンが勝利します。

ちなみに「Martial Arts Trick」というテクニックは実在するんですけど、この映画とは異なり、回転系の足技を中心とした派手なパフォーマンスで、なかなかカッコいい動きなんですよね。こういうアクションも観てみたいなあ。

というわけで、”ジージャー”ことヤーニン・ウィサミタナンが初主演した『チョコレート・ファイター』は、2008年に本国タイで公開されるやいなや『マッハ!』を上回る大ヒットを記録し、香港・台湾・シンガポールなどアジア各国で封切られ、さらにアメリカやヨーロッパでも公開が実現。

そして待望の日本公開も好評で(上映館数が少なかったため興行的にはイマイチでしたが)、映画評論家の江戸木純氏は「ジージャーが『チョコレート・ファイター』で世界に与えた衝撃は、間違いなくアクション・ヒロインとしては映画史上最大のものである」と絶賛していました。

この言葉通り、本作が成功した要因は明らかに主演のジージャーにあるでしょう。幼少の頃からテコンドーを習い、14歳でインストラクターを務めるほどの実力の持ち主だったからこそ、本物の格闘アクションをリアリティたっぷりに見せることが出来たわけです。

しかし、この映画以降は目立った活躍をしていないのが残念ですね(一応、『チョコレート・ソルジャー』と『チョコレート・ガール』では主演だったが、映画の出来は微妙)。2011年4月から日本でのロケを予定していた『チョコレート・ファイター2』の撮影も、東日本大震災の影響で延期(中止?)になったみたいだし。

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近年はハリウッドでも、アンジェリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチのように「アクション映画で活躍する女優」が増えていますが、ジージャーみたいに「格闘技のスキルを持った女優が自らスタントまでこなす」というパターンはほとんどありません。

そういう意味でも、ジージャーの存在は「魅力的なアクション・ヒロイン」というカテゴリーにおいて極めて貴重なポジションを占めていたと思います。出来ることならぜひ再び、カッコいいアクションを見せて欲しいものですねえ。

なお、映画の終盤ではヤクザを演じる阿部寛が「日本刀で大勢の敵を切りまくる」というシーンがあるんですが、当初の脚本にはこんな場面は無かったそうです(阿部寛が殴られて終わりだった)。しかし、全ての撮影が終了してから1年半後に「やっぱり撮り直したい」と監督から連絡が来たという。

つまり撮影が完全に終わった後に、わざわざストーリーを変更してるんですね。普通の監督ならそんなことはしないし、役者の方も嫌がるはずですが、阿部さんは「1年半後に撮り直そうという、その妥協の無さに感激しました!」と喜んでタイへ飛んだそうです。エエ話やな〜(^_^)


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ジージャー衝撃のデビュー作!アクションも素晴らしい(^O^)/

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ジージャー主演第2弾で、”泥酔拳”という技を使って戦うアクション映画。内容は微妙ですがバトルはまあまあ(^_^)

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内容もアクションもだいぶ残念な感じ。ジージャーが好きな人ならどうぞ(^_^;)

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韓国のテコンドーがメインのアクション映画。タイトルやジャケットを見るとジージャーが主役のようですが主演ではありません。間違えて買わないように(-_-;)

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Happinet(SB)(D) (2015-09-02)

ジージャーとトニー・ジャー初共演!ゲスト出演ですが、『チョコレート・バトラー』よりも出番は多いです(^_^;)

アーノルド・シュワルツェネッガー『ラストスタンド』ネタバレ解説

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■あらすじ『元ロサンゼルス市警のエリート刑事だったレイ・オーウェンズ(アーノルド・シュワルツェネッガー)は現在、のどかな田舎町で保安官として静かな日々を送っていた。そんなある日、麻薬王にして警官殺しの凶悪犯コルテスが刑務所を脱走し、メキシコ国境へと逃亡。その知らせを受けたオーウェンズは、なんとしてもコルテスとその一味の逃亡をこの町で食い止めようと決意する。しかし手元にある武器は第二次大戦時の古びたコレクションだけ。果たして彼らは犯人の逃亡を阻止できるのか?「ターミネーター3」から10年、アーノルド・シュワルツェネッガーの主演復帰第一作!』



どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、午後のロードショーで『ラストスタンド』が放送されます。この映画、全米で有り得ないほど大コケしたとか、シュワルツェネッガー主演映画としては歴代ワーストの興行成績を記録したとか、全くいい話が聞こえてこなかったので期待してなかったんですが、意外と面白かったですよ。

内容を大雑把に説明すると、「警察に追われている犯罪者が、メキシコ国境近くの田舎町を通過して国外逃亡しようとしているのをシュワちゃん率いる保安官たちが全力で阻止する話」です。まあ『リオ・ブラボー』の現代版みたいな設定で、あまり新鮮味があるとは言えません。

リオ・ブラボー [DVD]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2011-10-05)

また、リアリティも非常に薄く、部下がボスを救出するために「でかい磁石に車をくっ付けて吊り下げる」というシーンを見た時は「コントか?」と思いました(笑)。笑えるシーンもいっぱいあるし、どちらかと言えばコメディ寄りの作風ですね。なので、シリアスなサスペンス・アクションを期待している人には、たぶん合わないと思います。

しかし、B級アクションが好きな人にはたまらない作品であり、派手な銃撃シーンも豊富で見応えたっぷり!特に、最新式の銃火器で完全武装した犯罪者集団と、博物館に展示してあった古臭い武器のみで立ち向かう田舎町の保安官という図式が戦闘の緊迫感を盛り上げています。

普通ならどう考えても勝ち目は無いんですけど、敵グループが強すぎず弱すぎず「ちょうどいい具合にバカ」なことが幸いし、結構互角の戦いを繰り広げてるんですよ(笑)。

また、銃のチョイスにもこだわりが見られ、シュワちゃん率いる保安官グループは、S&W Model 500、コルトMK IV 80、トンプソンM1921AC、レミントン1100、M870、モスバーグ590など、「とりあえず手持ちの武器を全部かき集めとけ感」が濃厚で、おまけに文字通り倉庫で埃を被っていたヴィッカース機関銃まで持ち出し、「そんな装備で大丈夫か?」という危機感を煽ります。

対する犯罪グループの方は、サイガ12K、H&K G36C、H&K MP5、コルトM4A1、ガリルMAR、Mk14 Mod EBR、シグブレイザーR93など、軍隊並みの最新兵器を大量に装備し、圧倒的な火力で保安官達を制圧しようと凄まじい銃撃戦を繰り広げます。白昼の街中で堂々とドンパチを繰り広げる西部劇風なバトルがたまりません!

なお、ここで気になったのは、ピーター・ストーメア演じるトーマス・ブレル(中ボス)が使用しているコルトM1851ネイビーという拳銃。周りで多弾装の機関銃を派手に連射しているのに、なぜかこの人だけパーカッション式のシングルアクション・リボルバーなんですよね(単なる趣味?)。

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さらに、この映画の面白さはアクションシーンだけではありません。シュワちゃん演じる年老いた保安官レイ・オーウェンズを筆頭に、ちょっとマヌケな若い副保安官ジェリーや真面目な女性副保安官サラ、ジェリーの親友でサラの元恋人フランク。

そして、デブで平和主義者だが正義感は強いフィギー副保安官や、街の工場に「武器博物館」を作って大量の武器を保管している武器マニアのルイスなど、登場するキャラクターが全員もの凄く魅力的に描かれているのですよ。特に、ジェリーの死を”戦う動機”にきちんと結びつけているところが上手いですねえ。

初登場時のジェリーは、「銃で遊んでいたら失敗して鼻血を出す男」みたいなボンクラ野郎として描写されていました。そんな彼が「LAに行ってもっと大活躍したい!」とシュワちゃんに相談した後、ボスを国外へ脱出させようとしていた手下達と遭遇し、殺されてしまいます。

しかし、序盤でたっぷりジェリーの人間性を描いたおかげで彼は”愛されキャラ”として認知され、そんなキャラクターが殺されたことで他の仲間たちは皆「犯人を許さない!」と心境が一致。これで映画を観ている観客も、「よっしゃ、やったれー!」と共感できたわけです。

昨今のアクション映画は、アクションシーンをかっこ良く描くことのみに注力しすぎて、「キャラクターの心情」や「アクションに至るまでの過程」を十分に描けていない作品が少なくありません。そういう意味で、本作は登場人物一人一人を丁寧に描写し、それぞれの関係性をしっかり見せているからこそ、これだけアクションシーンが盛り上がったのでしょう。

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そして何より、「引退間近の老保安官」という等身大の役柄を堂々と演じ切ったアーノルド・シュワルツェネッガーが素晴らしい。かつては『ターミネーター』や『コマンドー』で無類の強さを発揮していたシュワちゃんですが、さすがに近年は肉体的な衰えが著しく、以前のような無敵キャラを演じるのは少々無理があります。

そこで、年相応の役を演じることで非人間的な不自然さが無くなり、同時に「シュワちゃん頑張って〜!」と応援したくなる感じがヒシヒシ伝わってくるという、謎の相乗効果が生まれているのですよ(なんせ後半は戦い疲れてボロボロになってますからねw)。

また、ラスボスの麻薬王コルテスも、「メキシコの国境を越えるために盗んだスーパーカーで爆走する」という良く分からない行動を取りまくるなど、非常にいい味を出してました(普通はもっと目立たない方法で逃げるだろw)。

ラストのタイマンバトルも、いつも通りの力技で攻めてくるシュワちゃんに対し、なぜかグラップリングで対決するという謎のこだわりが面白かったです(なぜなんだw)。というわけで、オチまで含めて十分に楽しめる快作と言えるんじゃないでしょうか(^O^)/

M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』ネタバレ感想/解説

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■あらすじ『ある日、女子高生3人組が一人の男(ジェームズ・マカヴォイ)に拉致された。密室で目覚めた3人の少女はやがて、この男が”一人”ではないことを知る。神経質で潔癖症の青年や9歳の無邪気な少年、エレガントな女性…一人の人間の中で激しく入れ替わる分裂(スプリット)したキャラクター。そう、彼は23もの人格を持つ男だったのだ!鬼才:M・ナイト・シャマラン監督が放つ衝撃のスリラー!』


※この記事にはネタバレがあります。未見の方はご注意ください。


本日取り上げる映画は、M・ナイト・シャマラン監督の最新作『スプリット』。日本では5月12日の公開ですが、海外では1月20日に公開済みとなっており、そのためネット上では早くから様々な情報が飛び交い、うっかりそれを見てしまった人が「ネタバレだ!」と騒ぐなど、色々問題が巻き起こった問題作です(^_^;)

さすがに公開から1ヶ月以上も経過しているし、劇場での上映も終わっているのでネタバレしても怒られることはないでしょうけど、一応観ていない人への配慮として「ネタバレしてるよ!」「気を付けて!」としつこいぐらい警告させていただきます(これだけ言っとけば大丈夫やろw)。

さて、M・ナイト・シャマラン監督といえば『シックス・センス』の大ヒットによって「どんでん返しの名手」みたいに思われているところがあるかもしれませんが、シャマラン監督自身は別に「どんでん返しの名手」じゃないんですよね(観客が勝手にそういう映画を期待しているだけであって、監督本人にそういう意識はない)。

でも、映画を観る側としては『シックス・センス』のインパクトが大きすぎたために、「今回はどんな凄いオチが待ち受けているんだろう?」「もっと凄いサプライズを観たい!」という期待が高まってしまうことは避けられないでしょう。

それ故に、「観客が望むもの」と「監督が作りたいもの」の間にギャップが生じ、そのギャップが大きければ大きいほど作品の評価は下がってしまう。ここ数年のシャマラン監督は、まさにそういう状況に陥っているのではないだろうか…と個人的には思っていました。

実際、『シックス・センス』以降のシャマラン作品の興行成績はいまいちパッとしないものが多く、特に『エアベンダー』や『アフター・アース』あたりの低評価ぶりたるや、「この人なんでいまだに映画を撮り続けていられるんだろう?」「シャマランもう終わったな」など罵詈雑言の嵐。

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アフター・アース [SPE BEST] [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2015-12-25)

1億3000万ドルとか1億5000万ドルもかけた超大作映画が次々とコケ倒したため、さすがに映画会社も「これ以上シャマランに大金を使わせるのはマズい」と考えたのか、次の作品『ヴィジット』の製作費はたったの500万ドルに急降下!

『シックス・センス』の時は製作費が4000万ドルもあったのに、それから16年後の最新作では8分の1にダダ下がりしてしまったわけですよ。しかし、「いよいよシャマランも完全終了か…」と誰もが諦めかけたその時、超低予算映画『ヴィジット』がまさかのスマッシュヒットを記録しました(これは面白かったです。オススメ!)。

ヴィジット [Blu-ray]
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン (2016-10-05)

こうして、ギリギリ首の皮1枚で繋がった感のあるシャマラン監督が、起死回生の一作として作り上げた映画が『スプリット』なんですよ。これは期待せざるを得ないでしょう。製作費は相変わらずの低予算(900万ドル)ですけど(笑)。

さて、そんなM・ナイト・シャマラン監督ですが、まず最初にこれまでの作品歴をざっくり振り返ってみると、1999年の『シックス・センス』から前作の『ヴィジット』まで、自ら監督した映画は全部で9本あります。

この9本の映画を僕は全部鑑賞していて、さらに脚本のみで参加した『スチュアート・リトル』や、製作・原案で参加した『デビル』、そして製作総指揮を務めた連続ドラマ・シリーズの『ウェイワード・パインズ 出口のない街』も鑑賞しました(98年の『翼のない天使』は未見)。

デビル [Blu-ray]
ジェネオン・ユニバーサル (2012-06-20)

ウェイワード・パインズ 出口のない街 DVDコレクターズBOX
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2015-12-02)

そういう意味ではシャマラン映画に関しては割と観ている方……というか、むしろ「シャマラン・ファン」とすら言えるかもしれません。ところが、本物のシャマラン・ファンに話を聞くと、好きな映画の傾向にかなりの違いがあるんですよ。

例えば、僕自身は『シックス・センス』、『ヴィレッジ』、『デビル』、『ヴィジット』などが好きなんですよね。一方、シャマラン・ファンの好きな映画は、『アンブレイカブル』、『サイン』、『ハプニング』などが多かったりします。

また、世間一般のシャマラン作品に対する評価としても(あくまでもイメージですけど)、やはり『シックス・センス』が最も上位で、『アンブレイカブル』や『サイン』などはそれよりも下になると思われ、ファンとの乖離が著しい。

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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2010-12-22)

ハプニング [Blu-ray]
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つまり僕の好みは一般の人の感覚に近くて、世間でも「巧みなストーリー・テリング」とか「あっと驚く意外な結末」とか、そういうものを求めているんじゃないかなあと(ただし、一般の人もシャマラン・ファンも、『エアベンダー』だけは挙げていない模様w)。

で、『スプリット』はどっちなんだ?と言えば……シャマラン・ファンが大喜びの映画でした(苦笑)。確かに、「多重人格の誘拐犯」や「謎の施設から脱出する女子高生」など見どころもありますけど、最大のサプライズはラストのオチであり、これがもう「シャマラン・ファンでなければ絶対にわからないオチ」になってるんですよねえ。

ハッキリ書いてしまいますが、この映画は『アンブレイカブル』の続編で、ラストにブルース・ウィリス演じるデイヴィッド・ダンというキャラクターが出て来るんですよ(ダンは『アンブレイカブル』の主人公)。これを観て熱心なシャマラン・ファンは「あの映画と世界が繋がっていたのか!」と大興奮したわけです。

アンブレイカブル [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2010-12-22)

しかし、『アンブレイカブル』を知らない人には何のことか全く分からないし、仮に観ていたとしても17年も昔の映画の内容を覚えているのか?と(この状況を心配した映画評論家の町山智浩氏は、「『スプリット』を観る前にシャマランの過去作品を観ておいた方がいい」とツイッターで忠告 → 「ネタバレすんな!」と非難されるハメにw)。

映画のネタバレはどこまでOKなのか?検証してみた

まあ、僕自身は幸い『アンブレイカブル』を覚えていたので「おお、凄い!」となったんですが、それでもモヤモヤしたものが残りましたねえ。なぜなら、話が完結していないからです。実はこの映画、『アンブレイカブル』シリーズの2作目という位置付で、ストーリーは次回作の『Glass』が公開されるまで完結しないんですよ。

一人だけ助かったケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、あの後どうなったのか?24番目の人格が出現したケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)は何をやるつもりなのか?それが一番気になるのに、本作は「ヴィランが誕生するまでの物語」だから、「次回へ続く!」みたいな感じで終了してしまうんです。

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たぶん、普通の人にとってこの映画は「いったい何が言いたいんだろう?」「意味が分からない」って感じなんじゃないでしょうか?でも、熱烈なシャマラン・ファンにとっては「俺たちはこれを待ってたんだよ!」「よくぞやってくれた!」と大興奮間違い無しなわけで、「温度差が激しすぎる」と言わざるを得ません。

一応、サスペンス映画としては良く出来ているので、ハラハラドキドキ感は十分に味わうことが出来ました(さすがシャマラン、その辺は素晴らしい)。だから「全然面白くない」ってわけじゃないんですよ。ただ、最後まで観ても「主人公の境遇は好転していないし、敵は逃げちゃったし、結局何も解決してないじゃん…」という残尿感は残りましたね(^_^;)

しかし、次回作の『Glass』にはジェームズ・マカヴォイとアニャ・テイラー=ジョイに加え、ブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンも登場するらしいので、いよいよ本格的に「ヒーローとヴィランの対決場面」が描かれることになるのでしょう。期待して待ちたいと思います。

市長強すぎ!真面目なのに笑える『超強台風』ネタバレ感想

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■あらすじ『ある日、太平洋上に強力な台風が発生し、台湾を直撃して北上、さらに中国沿岸部の人口120万人の大都市へと迫っていた。責任の重さに行政担当者が尻込みする中、市長は人命を危険にさらしてはならないと、全市民の避難を決断する。そしてついに、かつてない猛烈な台風は街に上陸、想像以上の猛威を振るい始めるのだった…!史上空前の超大型台風に見舞われた中国沿岸の街を舞台に、市民の命を守るため自ら最前線に繰り出す熱血市長の活躍をド迫力の特撮シーン満載で描き出した、大災害パニック・ムービー!』


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです

台風3号が日本を通過し、全国各地に様々な影響を及ぼしているようですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?本日は、「中国が作った台風ムービーか〜」「まあ、どうせ良くある災害パニック映画なんだろうな〜」と思って鑑賞した映画が予想の斜め上を行きすぎててとんでもなかった、というお話です。そのタイトルは『超強台風』

普通、この手のディザスター・ムービーって、大統領とか市長が登場しても、大抵は目の前の大災害にうろたえたり、「地球はもうダメです!」的な演説をしたり、大勢いるキャラクターの一人として描かれる事が多いじゃないですか?そして、「一般市民の主人公がひたすら頑張る」っていうのが、今までの災害映画のセオリーでした。

イントゥ・ザ・ストーム [Blu-ray]
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2015-08-05)

これは竜巻の映画ですね。意外と台風映画って少ないかも…

でも、『超強台風』では市長自身が主人公なんですね。これはかなり珍しいパターンでしょう。しかも、この市長がやたら強くて、遠くから指示を出すだけじゃなく、自ら災害現場へ飛び込んで事態を解決しようと奮闘するんですよ。その活躍ぶりがあまりにも凄過ぎて、全編笑いが止まりません(笑)。

例えば、台風が近づいているので漁師さん達に避難を勧告するシーン。ここで「自分の船を守りたい」という人々が集まって暴動が起きそうになったため、現場で市長が説得することになるんですよ。

で、どうするのかと思ったら、なぜかいきなりコートを脱いで、「バッ!」と海へ放り投げるんです(意味不明)。物凄い暴風雨の中で舞い飛ぶコート!画面は突然スローモーション!そしてバックには大きな波がドーン!その波を背に市長が繰り出す渾身の土下座!

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「私は一人の犠牲者も出したくないんだ!」

「頼むから避難してくれッ!」

これを見て漁師たちは全員感動するっていう(笑)。「イヤイヤお前ら正気か?」と思わずにはいられないような凄まじいシチュエーションなわけですが、恐ろしいことに市長の活躍はこの後もどんどんパワーアップしていくのです。

「離島に残っている妻が死にそうなんだ!」という旦那の訴えを聞き付けるやいなや、軍隊に対して直接出動を命じる市長。ええ!?市長ってそんな権限まで持ってるの?

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当然、周りの皆は止めるわけですよ、「そんなこと出来ません」と。しかし市民の命が何より大切な市長は全く聞く耳を持たず、「無理でもやってくれ!」と強引に押し切ってしまいます。

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やがて台風が接近するにつれてますます風雨が強まり、家や車や漁船までもが片っ端から吹き飛ばされるという大惨事に!しかも良く見ると、小さな犬まで一緒に吹き飛ばされてるじゃありませんか!うわあああ〜!

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しかし「これは絶対に助からないだろ…」と思っていたのですが、ラストで何事も無かったかのように再登場してきたので仰天しました。

そしてついに台風が上陸し、大型タンクローリーが吹き飛ばされ、市民が車の下敷きに!それを見た市長、いきなり嵐の中をタンクローリーまで駆け寄り、「うおおおお!」と物凄い怪力で見事に市民を救出。

しかもその直後、タンクの燃料に火花が引火して大爆発!間一髪で脱出に成功する市長!まるで『西部警察』のようなワンシーン!画面はもちろんスローモーションです(笑)。

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さらに、建物が浸水して壁の穴からサメが侵入してくるという大変な状況に!もはや展開がメチャクチャです(笑)。しかしここでも、「俺にまかせろ!」と叫んで躊躇なく水に飛び込む市長。

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なにやら棒状のものを手に持って「うおおおお!」と叫びながらサメをボコりまくり、ついに撃退成功!何でこんなに強いの?驚く市民に向かって市長が満面のドヤ顔で一言。

「俺は昔、特殊部隊にいたんだよ!」

…ってなんなんだ、その唐突にも程がある設定は!もう面白すぎるwww

極めつけはラストシーン。台風の脅威が去って、船の残骸が散らばる浜辺で茫然と立ち尽くす漁師さん。すると、さっき台風で吹き飛ばされて死んだと思っていた犬が生きていた!

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「ポチ〜!(仮名)」

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「ワンワ〜ン!」

浜辺を走って来て「ヒシッ!」と抱き合う飼い主と犬をロングショットで映し出す、まるでメロドラマのようなワンシーン(画面がスローモーションなのは言うまでもありませんw)。ここで僕の腹筋は完全に崩壊しました(笑)。

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この映画、キメのシーンで必ずスローモーションになるんですよ。その安っぽい演出が完全にコントのノリなんですよね。しかも「笑わそう」と思って作ってるわけじゃないから、その真剣さが余計に可笑しいという(中国の人はこれを観て本気で感動してるのかなあ?)。

なお、本作はCGをほとんど使用せず、ミニチュアを使ったアナログ特撮がメインなんですが、出来映えは結構微妙でした(苦笑)。

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時々はいいシーンもあるんですけど、ほとんどミニチュア感丸出しだったり、巨大な船が重量を無視して空中を飛んだり、全体的にウソ臭いんですよ。そのチープな感じが画面内の「お笑い要素」を増幅させ、結果的にどんどんコメディ映画へ近付いているのではないかと(笑)。

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というわけで、本作の見どころはやはり「熱いドラマ」と「スーパー市長」ですね。ここまで笑えるディザスター・ムービーは前代未聞であり、何度観ても確実に爆笑できることは間違い無いでしょう(笑)。

ちなみに、日本版の予告編を見ると派手なBGMや大げさなテロップをバンバン入れまくり、さらにナレーションには藤岡弘、さんを起用するなど、完全に「笑わそう」としていることが分かります。悪意を感じるなあ(^_^;)


これはオススメ!傑作タイムトラベル映画ベスト10

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、テレビで藤原竜也さん主演の実写映画『僕だけがいない街』が放送されます。本作は、三部けいの同名漫画を実写化したもので、「リバイバル」と呼ばれるタイムリープ能力を持つ主人公が、過去に遡って謎の事件を解決するミステリータッチのSFサスペンス作品です。

今回の実写映画版はラストが原作とは異なっており、観た人の評価も賛否両論…というか否定的な意見の方が多かったようで、公開時には「終盤の展開が矛盾している」とか「あのラストはおかしい!」などの批判が噴出した模様。

僕自身は映画を観て、たしかに違和感があったものの後に原作を読み、「ああ、こういう話だったのか!」と本来の展開を知ることで、それなりに納得できました(映画版に疑問を感じた人は、ぜひ原作漫画版を読んでみてください)。

どうやら、この実写版を撮影している時はまだ原作が完結していなかったので、オリジナルの展開になったようですねえ。ちなみに本作を観て、「主人公が過去や未来に移動する映画」は古今東西色んなパターンが作られてるけど、意外と観逃してる作品も多いんじゃないかなーと思ったりしました。

そんなわけで本日は、「主人公が過去または未来に移動する映画」の中で「これは観ておいて損はないだろう」と個人的にオススメしたい映画をいくつか取り上げてみましたよ(なお、この手の映画の代表格『バック・トゥ・ザ・フューチャー』については、たぶん全人類が観ていると思うので(笑)、敢えて除外しています)。


●『バタフライ・エフェクト』

あらすじ「大学生のエヴァン(アシュトン・カッチャー)は、ある日、子供の頃に書いた日記を見つけ、自分にタイムリープ能力があることに気付く。その後、自殺した幼馴染のケイリー(エイミー・スマート)を救うために、何度でも過去へ戻るエヴァンだったが…」

タイムトラベル映画にはいくつかのバリエーションがあって、自分の肉体そのものが過去に移動する場合を「タイムスリップ」、そして心だけが過去の自分の体へ移動する場合を「タイムリープ」と呼ぶそうです(『僕だけがいない街』もこのパターン)。

そして『バタフライ・エフェクト』も、自分の犯した過ちのせいで不幸になってしまったヒロインを助けるために、主人公がタイムリープ能力を使って子供の頃の自分へ戻る物語です。ところが、なぜか何度やっても上手くいきません。

ヒロインを助けようとすれば他の誰かが不幸になり、それを修正するためにまた過去へ戻って…ということを何度も何度も繰り返すんですよ。そして度重なるタイムリープを経て、最後に主人公が下した決断とは…。まさに「最も切ないハッピーエンドの物語」というキャッチコピー通りの映画でした。


●『デジャヴ』

あらすじ「543名もの犠牲者を出した凄惨なフェリー爆破事件の謎を解明するため、捜査官ダグ(デンゼル・ワシントン)はある装置を使って”4日と6時間前の世界”を見ることに。そこで明かされる驚愕の事実とは…!」

この映画が面白いのは、前半が「フェリー爆破事件の犯人を捜す」という普通のサスペンス映画なのに、後半から突然「SF映画」に変わってしまう点でしょう。

”スノーホワイト”という最新鋭の監視システムを使って事件を捜査するところまではギリギリ現実性を維持していますが、それ以降の展開がいきなり非現実的な世界へシフトするんですよ。「1つの映画で2つのジャンルを楽しめる」という、ある意味楽しい作品です。

デジャヴ [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン (2010-09-22)


●『ミッション:8ミニッツ』

あらすじ「”ソースコード”と呼ばれる謎の装置に繋がれたコルター(ジェイク・ギレンホール)は、列車爆破テロの犯人を突き止めるため、爆発直前の8分前に戻って捜索していた。しかし、やがて彼はこの極秘ミッションに仕組まれた恐るべき真相に辿り着く…!」

『バタフライ・エフェクト』と同じく、「心だけが過去へ移動するタイムリープもの」なんですけど、面白いのは”他人の体”に移動している点。そしてもう一つのポイントは、「全く同じ時間へ何度も戻る」という点なのですよ。

列車を爆破した犯人を見つけようと必死で頑張る主人公ですが、時間がたったの8分間しかないため、失敗するとまた最初からやり直し。こうして何度も何度も同じ時間を繰り返すわけです。

しかし、主人公の行動によって周囲のリアクションが少しずつ変化していき、やがて予想外の結末を迎える…という展開は非常に見応えがありました。

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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2013-01-23)


●『LOOPER/ルーパー』

あらすじ「未来から送られて来た人間を始末する殺し屋”ルーパー”のジョー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、ある日、いつものようにターゲットを抹殺しようとしていた。だが送られて来た男は、なんと30年後のジョー(ブルース・ウィリス)だった!」

なぜか30年後の自分を殺さなければならなくなった主人公の葛藤を描いた本作。ジョセフ・ゴードン=レヴィットとブルース・ウィリスが同一キャラを演じてるんですが…似てるかなあ?w

それはともかく、「なぜそういう状況になってしまったのか?」を解き明かす過程が実に面白く、最終的に事態を解決する手段として主人公が選んだ方法に「おお〜!」となりました。


●『恋はデジャ・ブ』

あらすじ「TVの人気キャスターのフィル(ビル・マーレイ)は、ある日、目覚めると”昨日と全く同じ状況”が繰り返されていることに気付く。永遠に続く2月2日にうんざりするフィル。やがて彼は仕事仲間のリタ(アンディ・マクダウェル)に好意を抱き…」

『ミッション:8ミニッツ』と同じく「繰り返し系」の物語です。ただ、コメディなので気楽に楽しめる点と、ラブストーリー的にも優れている点が面白い。

恋はデジャ・ブ [SPE BEST] [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2015-12-25)


●『プリデスティネーション』

あらすじ「1970年、ニューヨークの酒場に現れた青年ジョン(サラ・スヌーク)がバーテンダー(イーサン・ホーク)に奇妙な身の上を語り始める。それは予測不可能なドラマの幕開けだった…。SF界の巨匠ロバート・A・ハインラインが仕掛けた究極のタイムパラドックス!」

いや〜、これは凄い映画ですよ!基本的にタイムトラベル映画はラストに意外な展開が待ち受けているものですが、本作の場合は意外すぎ&何を書いてもネタバレしそうで何も書けません(笑)。まだ観ていない人は、絶対にオチを知る前に観た方がいいでしょう。驚愕間違いなし!

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ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2016-09-16)


●『オール・ユー・ニード・イズ・キル』

あらすじ「謎の侵略者“ギタイ”からの激しい攻撃で全人類が滅亡寸前に追い込まれる中、最前線に送り込まれたケイジ(トム・クルーズ)は開戦5分であっさり死亡。ところが、目覚めると彼は出撃前日に戻っていた。同じ日を無限にループする能力を身に付けたケイジは、世界の危機を救うことが出来るのか…!」

『恋はデジャ・ブ』や『ミッション:8ミニッツ』と同じく「繰り返し系」の物語ですが、その頻度が凄まじい。主人公のケイジは、とある事情で「死んでも以前の状態からやり直すことが出来る能力」を身に付けました。

しかし敵が強すぎて全然攻略できず、何百回、何千回も死にまくるのですよ。まさに「残機一つのみで激ムズゲームをクリアーせよ」と命じられた孤独なゲームプレーヤーの心境じゃないでしょうか?普通なら、絶対に途中で心が折れるだろうなあ(苦笑)。

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ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2015-06-03)


●『プライマー』

あらすじ「偶然にもタイムマシンの開発に成功した2人の若者は、自分たち自身でタイムトラベルの実験を繰り返していた。しかし、次第にとんでもない状況が巻き起こり…」

『バタフライ・エフェクト』は、心だけが過去の自分の体に移動する「タイムリープ」でしたが、本作は自分自身が過去に移動する標準的(?)な「タイムスリップ」です。

良くある設定なんですけど、問題は話が非常にややこしいところ。例えば主人公がタイムマシンを使って数日前に戻ったら、そこには数日前の自分がいるわけです。

自分自身に出会うと色々問題が起こるので隠れながら行動するんですが、タイムマシンを使う度に”自分”がどんどん増えていくんですよ。果たして、画面に映っている主人公はどの時間軸の主人公なのか?最後まで観ても謎が深まるばかりでした(^_^;)


●『オーロラの彼方へ』

あらすじ「ニューヨーク市警察の刑事ジョン(ジム・カヴィーゼル)は、ある日、父フランク(デニス・クエイド)の形見の無線機を発見し、ある男と交信することに成功する。だが、その相手は何と30年前に死んだ父だった!」

この映画の特徴は、「登場人物が誰もタイムトラベルしてないところ」でしょう。現代に暮らす主人公が、無線機を通じて過去の父親と会話を交わし、その父の行動によって現代の息子に影響が出る…というストーリーなんですね。

だから、厳密に言えば「タイムトラベル映画」とは言えないのかもしれませんが、とにかく「親子のドラマ」「連続殺人事件にまつわるサスペンス」「過去と現代で展開するSF物語」など、エンタメ要素が目一杯つまった正真正銘の傑作娯楽映画です。必見!

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●『サマータイムマシン・ブルース』

あらすじ「とある大学の夏休み。“SF研究会”のメンバーはクーラーのリモコンを壊して途方に暮れていた。翌日、灼熱のSF研究室に突如タイムマシンが現れる。こうして”壊れる前のリモコン”を取りに過去へ向かった主人公たち。だが、予想もしない事態が彼らを待ち受け…」

日本のタイムトラベル映画といえば、『時をかける少女』が有名ですけど、こちらもかなり良く出来た映画ですよ。監督は『踊る大捜査線』シリーズの本広克行、出演者は瑛太、上野樹里、ムロツヨシ、真木よう子、佐々木蔵之介など、錚々たる面子がズラリ。

タイムトラベル映画にお約束の「あの時のアレはこういうことだったのか!」的な伏線回収もバッチリだし、もともと舞台劇だったストーリーを映画に移し替え、独特のゆる〜い雰囲気が漂うSFコメディに仕上げた点も見事!まさに誰でも楽しめる鉄板のエンターテインメントと言えるでしょう(^_^)

宮崎駿がいきなり乱入?『思い出のマーニー』映画制作裏話

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、金曜ロードSHOW!でスタジオジブリの劇場アニメ『思い出のマーニー』が放送されます。本作は、『借りぐらしのアリエッティ』を作った米林宏昌監督の長編第2作目で、2014年に公開され35億円の興行成績を記録しました。

そして現在は監督第3作目の『メアリと魔女の花』が全国の映画館で上映中です。そんな米林宏昌監督は、どのような状況の中で『思い出のマーニー』を作っていたのでしょうか?というわけで本日は、『思い出のマーニー』の制作裏話をいくつかご紹介しますよ。


●『借りぐらしのアリエッティ』の後

もともと米林さんはジブリのアニメーターで、「僕は今後もアニメーターを続けていきたい」「だから1作だけならやります」という条件で『アリエッティ』の監督を引き受けたそうです。このため、『アリエッティ』の作業を終えた後は、宮崎吾朗監督の『コクリコ坂から』に参加していました。

当時、『コクリコ坂から』の現場はスケジュールが切迫しまくり、修羅場と化していたらしい。なので会社から「すぐに手伝ってくれ!」と言われた米林さんは再びアニメーターとして参加したのです(終盤の「貨物船に飛び移った海ちゃんを俊くんが抱き止めるシーン」などを担当)。

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さらに『コクリコ坂から』が終わると、今度は宮崎駿監督の『風立ちぬ』のスタッフに加わりました。こうしてアニメーターとしての生活に戻った米林さんですが、しばらくすると徐々に「もう一度監督をやりたいなあ…」という気持ちが芽生えて来たそうです。

「『アリエッティ』を終えた直後は、全てを出し切ってやり切った感じがあったのですが、時間が経って振り返ってみると、”もう少し良いものに出来たんじゃないか?”ということを考えてしまい、また機会があれば監督をやりたいな、と思っていました」とのこと。

ちょうどそんな時、プロデューサーの鈴木敏夫さんから監督2作目の声が掛りました。「どう?もう1回監督やる気ある?」と聞かれた米林さんは反射的に「やります!」と答えたそうです。しかし、その時に鈴木さんから渡された原作がとんでもないクセモノで…。

新訳 思い出のマーニー (角川文庫)
ジョーン・G・ロビンソン
KADOKAWA/角川書店


●映像化不可能な原作

実はこの『思い出のマーニー』、宮崎駿監督も気に入っていたらしく、何年も前から映画化を検討していたらしいのですよ。しかし結局、「アニメ化するには極めて困難な題材」との結論に至り、断念せざるを得なかったそうです。

こうして米林さんのところへ話が回ってきたわけですが、宮崎駿ですら映画化を諦めたほどの難しい原作を、まだ経験が浅い米林監督に任せて大丈夫なの?という不安が…。この時の心境を、米林さんは以下のようにコメントしていました↓

文学作品としては面白い。でもアニメーションとして描くにはすごく難しい!鈴木さんは僕を潰そうとしてるのかと思いましたね(笑)。なんでこれを薦めたんだろうと。これは映像化は無理でしょうと。だから鈴木さんに言いましたよ。「僕はアニメーターなので、動かす作品の方がいいです」って。でも「ああ〜」って言うだけでしたね(笑)。 (「CUT 2014年8月号」のインタビューより)


●舞台を日本に変更

原作の『思い出のマーニー』は、イギリスが舞台になっていました。しかし、鈴木さんや宮崎さんから「日本を舞台にしよう」と言われ、米林監督自身も「イギリスのことはよく知らないので、イギリスを舞台に設定すると後々大変だろう」と思ったらしい。このため、早い段階から舞台を日本に変更することが決まったようです。

では、日本のどこを舞台にするか?について米林さんが色々悩んでいると、美術監督としてこの作品に加わった種田陽平さんから貴重なアドバイスをもらいました(種田さんは実写映画のロケで色んな場所を回っているので、画になるロケポイントをいくつも知っていたのです)。

米林監督は原作の挿絵に描かれているような「風車のある景色」を探していたのですが、日本にはイメージに合う風車がありません。そこで種田さんが「札幌にはサイロがたくさんあるよ」と薦めたところ、「「これなら風車の代わりにいけるかも!」と大喜び。こうして舞台は北海道に決まったそうです。


●ジブリの美術の秘密とは?

そんな種田さんは、普段は三谷幸喜監督の『THE 有頂天ホテル』や『ステキな金縛り』、クエンティン・タランティーノ監督の『キル・ビル』など、実写映画の美術を担当しています。そして、2004年に押井守監督の『イノセンス』でプロダクション・デザイナーを務め、その時プロデューサーだった鈴木さんと知り合ったらしい。

鈴木さんはその後、種田さんに会うたびに「アニメの美術やらない?」と言い続け、種田さんも「ぜひやりましょう!」と深く考えずに応えていたら、ある日『思い出のマーニー』の原作が送られて来たという。その時点ではまだ仕事を引き受けるかどうかも決めていなかったのですが、「気付いたらいつの間にか話が進んでいて、もう断れる状態ではなくなっていました(笑)」とのこと。強引なオファーだなあ(^_^;)

なお、種田さんはジブリの美術監督を担当して、あることが印象に残ったそうです。以下、種田さんのコメントより↓

今回、平原さんというジブリの美術部のベテランと”大岩家の部屋”を作っていた時のことです。やけに小物が多かったんですよ。「こんなに細かく描き込む必要があるのかな?」と思ってたんだけど、それを見た米林監督が「この棚の上の小物、可愛いですね〜!」と反応したんですよ。それを見た平原さんは「やった!」という感じで(笑)。


その時、物語の中で何か役割を果たすわけではないんだけど、きっとすごく重要なディテールになっているんだなと。つまり実写のときに美術監督がやる空間設計とは、全く違う発想があるんだな、と気が付いた。バックに可愛い小物が並んでいる必然性はないけれど、それがジブリ的空間の核の一つになってるんです。それは本当に予想外のことでしたが、とても勉強になりました。 (「思い出のマーニー ビジュアルガイド」より)


●宮崎駿登場!

さて、物語の舞台が北海道に決まり、「じゃあロケハンへ行こう」となったタイミングで現れたのが宮崎駿監督でした。もともと宮崎さんも『マーニー』にはかなり思い入れがあったらしく、なんと米林監督たちが打ち合わせをしている部屋にいきなり入って来て、「舞台は瀬戸内がいい」などと言い出したのですよ。

しかも、ホワイトボードに色んなことを書きながら「瀬戸内はこんな場所だ」ということを熱心にアピール。そして、散々「瀬戸内の良さ」を語った後、「じゃあ俺は戻るから」と言って出て行ってしまいました。残された米林さんたちはポカーン状態です(笑)。

当然、スタッフたちは「「ど、どうしよう?」「瀬戸内にした方がいいのかな?」とオロオロ。今までならほぼ確実に「宮崎監督の意向だし仕方ないか…」みたいな感じで瀬戸内になっていたでしょう。しかし、米林監督は「いや、北海道でいきます!」とキッパリ。

どうやら、ホワイトボードに描かれた絵が、どう見ても『崖の上のポニョ』だったらしい(笑)。結局、宮崎監督の意向を無視する形で制作が進められたそうです。米林監督曰く、「宮崎さんがどう思うか、そういうことは一切意識せずに作りました」とのこと。


●なぜ作画がすごいのか?

『思い出のマーニー』には、安藤雅司、山下明彦、稲村武志、田中敦子、賀川愛、二木真希子、大塚伸治、高坂希太郎、本田雄、近藤勝也、小西賢一、山下高明、沖浦啓之、橋本晋治など、業界屈指の凄腕アニメーターが多数集結しています。しかも『かぐや姫の物語』で活躍した田辺修もノンクレジットで参加しているのが凄い(田辺さん曰く、「『かぐや姫』で大量のカットを安藤さんに引き受けてもらった”借り”があるため断れなかった」とのことw)。

このため、『マーニー』の作画は信じられないほど高いクオリティになっているわけですが、いったいなぜこんなに大勢の凄腕アニメーターを確保できたのでしょうか?実は彼らは、もともと「某超大作アニメ」を作るために集められたメンバーだったのですよ。ところがそっちの制作がなかなか始まらず、結局『マーニー』の方を手伝うことになったのだそうです。以下、安藤雅司さんの証言より↓

今回はタイミング的に、皆さんの手が空いていたことが大きいです。他の劇場用作品に参加する予定で待機していたアニメーターが大勢いたのですが、その制作が始まらないので、始まるまでの間、少し手伝ってもらえないか?とお願いしたんですよ。結果としては、最後までその作品は動き出さなかったので、こちらとしては「やった!」という気持ちでした(笑)。 (「THE ART OF 思い出のマーニー」より)


●西村プロデューサーの想い

『思い出のマーニー』のプロデュースを担当したのは、『かぐや姫の物語』で高畑勲監督とタッグを組んだ西村義明さんです。西村さんが鈴木さんから『思い出のマーニー』への参加を打診されたのは2012年の秋頃。まさに『かぐや姫』の作業の真っ最中でした。

通常、長編アニメーションを2本同時にプロデュースするなんて事態はあり得ません。しかし西村さんは、この無謀とも思える提案に「やります!」と即答したらしい。以下、西村プロデューサーのコメントです↓

僕は『借りぐらしのアリエッティ』の初号試写を高畑さんと一緒に観たんです。その直後、喫茶店で「どうでした?」と高畑さんに聞いたら、開口一番「あの映画には、命をかけて作品を良くしようとする現場のプロデューサーがいない。そういう映画でした」と答えたんです。そのことは凄く記憶に残りました。


その後、麻呂さん(米林監督)とお酒を飲む機会があったんです。それまではほとんど話したこともなかったんですが、『アリエッティ』の感想や、僕が「ブーブー言いながら高畑さんと絵コンテやってるんですよ」と『かぐや姫』の愚痴を言っていたら、麻呂さんが「羨ましいですねえ」と。


「『アリエッティ』は一人でマンションに閉じこもりながら絵コンテを描いていた。すると自分が描いているものが本当にいいのかわからなくなる。そういう時に西村さんみたいな人が傍らにいて、あれこれ文句を言ってくれるのは心強いですよ。高畑さんも嬉しいんじゃないですかね」と言われたんです。


この高畑さんと麻呂さんの言葉が、鈴木さんに「やってみないか?」と言われた瞬間に浮かび、参加を決めたんです。鈴木さんにはもう一つ、「麻呂には未来がある。お前にも未来がある。その二人が組んで何ができるか見てみたい」と言われました。発表は翌年でしたが、鈴木さんは宮崎さんが長編アニメーション映画から引退することを、何か感じていたのかもしれませんね。 (「キネマ旬報2014年8月上旬号」より)

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伝説のアニメーター、金田伊功について語る

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今から8年前の2009年7月21日、一人の偉大なアニメーターがこの世を去った。激しいパース、ほとばしる光線、叩きつけるような情熱的アクション。画面からはちきれんばかりの凄まじいエネルギーでアニメ映像史に革命をもたらした伝説の男、その名は金田伊功!

「金田伊功って誰?」「読み方がわからん」という人でも、『サイボーグ009』や『銀河旋風ブライガー』や『魔境伝説アクロバンチ』や『機甲創世記モスピーダ』などのオープニング原画を描いたアニメーターと言えば、分ってもらえるのではないだろうか?

あるいは、『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』、『となりのトトロ』、『紅の豚』、『もののけ姫』など、宮崎駿監督の作品で優れた原画を披露し、宮崎監督から「原画頭(げんががしら)」という称号をもらった唯一のアニメーター、といった方が伝わりやすいかもしれない(ちなみに「かなだよしのり」と読みます)。

まさに日本のアニメシーンにおけるアクション作画を一変させ、多くのアニメファンに動きの楽しさを伝えたカリスマ・アニメーターなのである。直接的にも間接的にも、彼の影響を受けた人は数多く、「金田伊功がいなければ、日本のアニメはまるで違ったものになっていただろう」と言われるほどだ。

個性的なポーズや怒涛のアクション、パースを強調したレイアウト、スピード感溢れる独特のタイミング、そして何より、それらが渾然一体となって生まれる動画の快感の素晴らしさ!金田伊功が描き出すアニメには、紙の上に描かれた絵が生き生きと自由奔放に暴れ回る感動とカタルシスがあったのだ。

ことに炎、爆発、光線といったエフェクトアニメーションの分野では、金田は理屈を越えたイメージを動きで表現し、不定形なものを生き物のように描いて観客を魅了した。ほとばしるエネルギーに満ち溢れた金田エフェクトは、人間の想像力を直接的に視覚へ転換した点で、まさに「純アニメーション」と呼べる芸術性を備えていたのである。『銀河旋風ブライガー』のオープニングには、そんな金田伊功の全てが詰まっていると言っても過言ではない。

ちなみに以前、NHKで放送された『BSアニメ夜話』(2004年9月6日放送回)にて、アニメ評論家の氷川竜介が『ブライガー』のOPを取り上げ、金田作画について詳しく解説していたことがある。それが結構面白かったので、以下にコメントの一部抜粋↓

コックピットに座ってるシーンがありますよね?このシーンを見ると一番手前にいるキャラは上からのアングル、奥のキャラは下から撮っている。そして女の人は、何だかよくわかんないけどニュートラルな位置にいます(笑)。


普通、こういうレイアウトだと絶対一枚の絵に収まらないはずなんですよ。でも、こんな絵を平然と描いてしまうところが凄い。しかも描くだけじゃなくて、このゆがんだパースのまま動かしてしまう。ゆがんだ絵がこうグルっと回る感覚が、普通のイマジネーションでは決して描けない金田さん独特のものなんですよ。

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通常、アニメーションにおける表現は、出来るだけ自然に見えるように描くものだ。しかし、金田伊功のアニメは彼自身のイメージとセンスが生み出した独特の空間と運動法則に基づいたもので、世界中で金田しか描けないと言ってよいほどのオリジナル世界を内包していたのである。

なお、金田伊功の描いたオープニングがあまりにも素晴らしすぎたため、当時は本編とのギャップに戸惑いを隠し切れないアニメファンが続出したらしい(島本和彦著『アオイホノオ』より↓)。

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そんな金田の画面作りは極めてユニークだった。手前にあるものを極端に大きく描いたり、人物を斜めに立てたり、ポーズも背中を丸めたり、ガニマタになったり、手首を異様な角度に曲げたり、必ずデフォルメして描いている。

さらに人物だけでなく、ジグザグに空間を乱れ飛ぶ光線や球になってはじけ飛ぶ爆発など、あらゆる動きにメリハリがついており、それが観る者に不思議な快感を与えていたのだ。

当時のアニメファンは金田伊功の描き出す特殊な動きやタイミングに酔い痴れ、テレビ画面に釘付けとなった。そして同時に、多くのクリエーター達に衝撃を与えたのである。では、金田伊功が生み出した革命的な作画技術とはいかなるものだったのか?以下、具体的に上げてみよう。


その1:金田パース

パースとは「遠近法(パースペクティブ)」のこと。金田の構図は超広角レンズ的で、手前の物はより大きく誇張され、奥行き感を広くとらえている。また構図の形としては安定感のある三角形が基本(ただし描いている本人は特に意識しておらず、「自然にこうなった」とのこと)。金田パースは空間が歪んでいるかのような錯覚すら与えるが、これが画面に奇妙な迫力を生み出しているのだ。

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その2:金田光

金田は光のとらえ方も特徴的だ。逆行で撮影したときに発生するレンズゴーストのような”丸”や”十文字”の光を特殊効果で入れ、それを微妙に動かすことで快感を引き出している。きっかけは『大空魔竜ガイキング』の最終話で、「何か面白いことできないかなあ」とセロテープの丸を利用して線を描いたことがきっかけらしい。以来、メカの人工的輝きや静止場面等に多用している。

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その3:金田爆発

”爆発の金田” それが最初に彼につけられた呼び名だった。なぜそれほど爆発にこだわったのか?金田曰く、「キャラはキャラ設定通りに描かなければいけないという原則がありますが、僕が描くと似ないんですよ(苦笑)。でも爆発には決まりがないから何をやってもいい。制約がないので自由に楽しんで描いてました」とのこと。

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エネルギーが開放され、炎が噴きあがってくる力強さはたしかに”爆発の金田”と呼ぶにふさわしい。爆発はうまく使えば画面を彩る”華”となり得る素材。金田は生命のないはずの炎や爆発も生き生きと動かし、観客を驚かせ、感動を何倍にも増幅させた。そのとらえ方も、球体を基本に吹き上げ、崩れる様が実に緻密。自然現象をベースにイメージで膨らませているのだろう。

その4:金田ポーズ(金田飛び)

金田の作画を語る時に欠かせない特徴が、キャラやメカの独特のポーズだ。拳を握り締め腕を広げ、ガニマタで小首をかしげるポーズは、無機質なメカをも魅力的に見せる。手首足首を思いっきり湾曲させ、ジャンプするときにも必ずガニマタになるなど、一度見たら忘れることができないほどの強烈なインパクトを放つ。ロボットアニメで定番のポーズもここから生まれたのだ。

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その5:金田カゲ

照明を意識した「光と影」の演出は映像の基本だが、金田の塗り分けによる表現は実にユニークだ。うねるように絡みつくように、迫力を優先して描かれたメカのハイライト。大胆にグネグネとした線でつけられた影。しかも、逆行ぎみにつけたり、表面に沿って亀裂が入ったように処理している。大きな金属の表面が、微妙なひずみで光の反射が圧縮され屈折する様子を、色の塗り分けで表現したのだ(この表現は、後に「ワカメ影」と呼ばれ、多くのアニメーターに模倣された)。

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その6:金田ビーム

金田のビームの描き方は”ほとばしる”といった、チカラのタメが感じられる。決してまっすぐには落ちず、まるでカミナリが地上に落ちるときのように、シグザグに乱れ飛ぶ光線。実にパワフルでメリハリの効いた走り方をしている。

まず発射光が膨れ、続いてパワーをタメるように光が広がり、収束して直線状に飛ぶ。最後に崩れるコマを入れることで光線の勢いを表現しているのだ。円形からいったん崩れて直線になる独特のビーム表現は、直線以外にも”タメ”を感じさせる歪んだパターンをランダムに取り入れ、迫力を強調している。

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その7:金田流線

金田は東映動画時代に劇画ブームの洗礼を受けたらしい。その結果、本来は静止したコミックの手法である集中線や流線をアニメに取り入れるようになった。激しく動く物体の残像や空気の流れ、物体がぶつかった時の衝撃、空間の奥行きなど、バトルの表現に流線が入ることで独特の迫力やスピード感が加わったのだ。

また、登場人物の驚きや感情の爆発など、精神的な描写にも使用されている。不可視なものを画面からほとばしるように表現するためのテクニックなのだろう。アニメの正統法ではないが、効果は間違い無く向上している。以後、様々なアニメで同様の技法が取り入れられた。

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このような金田伊功の作画テクニックはアニメ業界全体に衝撃を与え、80年代は金田の作画をマネるアニメーターが続出した。ひどい時には、『さよなら銀河鉄道999』が劇場で公開されたとたんに、テレビで女王プロメシュームのエフェクトが丸ごとパクられる、などということも日常茶飯事だったらしい。

当時は、どのスタジオでもアニメーターは皆「金田のコピー」という状況であり、金田の技術は物凄い勢いでアニメ界に浸透していったのである。それが「金田フォロワー」と称されるアニメーターたちだ。有名なクリエイターでも金田の影響を公言する人物は多く、後継として独自のエフェクトや動きを発見する者も出現。この流れがアニメ作画の歴史に劇的な進化をもたらしたのである。

金田の影響を受けたエフェクト・アニメーターと言えば、鍋島修、亀垣一、越智一裕ら直系の弟子筋たちを筆頭に、山下将仁、大張正己、摩砂雪、板野一郎、いのまたむつみ、橋本敬史、毛利和昭、吉田徹、逢坂浩司、わたなべひろし、上妻晋作、田村英樹、大平晋也、いまざきいつき、渡部圭祐、長谷川眞也など、枚挙にいとまが無い。

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山下将仁は金田系作画を『うる星やつら』に持ち込み、奇想天外なアクションで一世を風靡した。

そんな中で、ちょっと意外に思える人物が庵野秀明だ。ご存じ、大ヒット作『新世紀エヴァンゲリオン』の監督として有名な庵野だが、元々は超一流のエフェクト・アニメーターであり、『オネアミスの翼』のロケット打ち上げシーンなど、数々の優れた作画を担当している。

しかし、彼の描くアニメはどちらかと言えば”リアル志向”で、ハッタリ全開の金田アニメとは全く異なる印象を受けるのだ。本人も「僕のアニメの師匠は宮崎駿で、影響を受けたアニメーターは板野一郎です」と公言しており、金田伊功との接点はあまり感じられない。

だが、2009年8月30日に行われた「金田伊功を送る会」で、庵野秀明は多くの業界関係者と共に、金田とのエピソードについて語っている。『風の谷のナウシカ』で金田と一緒に仕事をした庵野秀明は、アニメーターとしてずっとあこがれだったことを話し、金田の作画がいかに素晴らしいか、涙を堪えながら語っていた(以下、その一部を引用↓)。

金田さんの作画をビデオに録って何度もコマ送りで見ました。もう何度見たか分かりません。しかし、コマ送りで1コマずつ模写して角度まで似せても、金田さんの描いた動きは再現できないんです。そっくり同じに描いているのに、どうしてもタイミングが合わない。結局マネしきれず、コマとコマとの繋がりは分かりませんでした。今でも分かりません。でも、だからこそ素晴らしいのだと思います!

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金田伊功がアニメーターとして世に登場してから既に40年以上が経過している。その間、アニメの技術は著しい進歩を遂げ、CGが全面的に導入されるなど作画環境は大きく様変わりしてきた。にもかかわらず、近年も金田は多くの若手アニメーターたちからリスペクトされる存在であり続けている。彼らは「金田フォロワー」を入り口として、更にオリジナルに遡って作画の研究を重ねた「孫世代」のクリエイターたちだ。

中でも、今石洋之、小池健、雨宮哲、村木靖、新井淳、吉成曜らは時に「本家」と見紛うばかりの強烈な作画を披露し、現在もなお、「金田流」を画面に生き続けさせている(今石の作画はリスペクトというよりもパロディの領域に達しているような気もするがw)。

誰もが憧れるスーパーアニメーター、金田伊功。その存在を一言で言えば「情熱のオーラ」だ。金田の描くアニメは単にテクニックが優れていただけでなく、1枚1枚の原画に燃えるような魂が込められている。自らも光を放ち、多くの人々を引き付けるアニメーションとは、こうした輝かしいオーラの結晶なのだろう。

たしかに金田伊功の作画は、「レイアウト至上主義」の現在のアニメ制作現場から見れば異端かもしれない(特に、丁寧な作画を最優先する今の環境では、アニメーターが個性を発揮するのは難しいと思う)。だが、その自由奔放なスタイルは、CG時代の今だからこそ必要とされるのではないだろうか?ぜひとも若きクリエイターたちの手によって今後も金田スタイルを継承し、日本製アニメのエフェクト・クオリティを向上させ続けていただきたい。


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公開1周年!庵野秀明はいかにして『シン・ゴジラ』を撮ったのか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

突然ですが、本日7月29日は何の日かご存知でしょうか?

そう、『ドラクエ11』の発売日!

今回は3DS版とPS4版が同時発売なので、どっちを買おうか迷ってる人もいるのでは…

じゃなくて!

1年前に『シン・ゴジラ』が公開された日です!

いや〜、あれからもう1年経っちゃったんですねえ。

公開当時は全国の劇場で大ヒットを記録し、82億の興行収入を叩き出すなど、大変な話題になりました。僕も映画館へ何度も通い、ブルーレイも買い、とうとう『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』まで買ってしまいましたよ。

というわけで本日は公開1周年を記念して、『シン・ゴジラ』に関する情報がギッシリ詰まった公式記録集『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』の内容をざっくり紹介してみたいと思います。

まず、本のサイズがデカい!縦31センチ、横23センチ、厚さ4センチ、重さ2.5キログラムという特大のボリュームに加え、オールカラー全560ページの超豪華仕様!百科事典か!?

内容の方も充実しまくり、『シン・ゴジラ』制作のために描かれたデザイン画・イメージボード・資料写真等を可能な限り収録し、スタッフ・インタビューやメイキング記録もたっぷり!読み応えあり過ぎ!

特に各担当者のインタビュー記事が素晴らしく、『シン・ゴジラ』の制作過程や苦労話を実に詳しく語っているのですよ。本書のみに独占掲載された庵野秀明さんの7万字を超えるロング・インタビューも必読です!

今回は、それら膨大なインタビューの中からほんの一部分を抜粋させていただきました。当時の制作現場がどんな状況だったのか、その大変さが多少なりとも分かっていただけると思います(^_^)



【ゴジライメージデザイン】前田真宏

最初に説明があった時、庵野さんがコンセプトデザイン的なスケッチを描いてくれたのですが、それがまさしく初代ゴジラのイメージでしたね。同時に「これが最もイメージに近い初代です」と言って、ビリケン商会の素組みのソフビを渡されました(笑)。


庵野さんの説明で特に印象的だったのが、「初代ゴジラの手は意思が感じられない。だからいい」というものでした。恐らく、当時の技術では腕までコントロールできなくて、ただブランとしてしまっただけだと思うのですが、それが逆に印象的なんですよね、日本の幽霊的なポーズで。能などに代表される日本古来の幽霊譚ではないですが、霊が帰って来て、生者と対話して、また去っていくというのは、ある種、ゴジラもそのパターンなんだなと。


【ゴジラ造形】竹谷隆之

尻尾に関しては、造形する時に短いものを長くするより、詰めて短くする方が楽だというのもあって、最初から長めにしようと考えていました。そうしたらチェックの際に「あっ、長いのもいいですね!」となって、そのままで行くことになりました。


ゴジラの体表に関しては、工房の2階で育てていたゴーヤを参考にしてるんですよ(笑)。日除けのネットで栽培していたゴーヤに、大きくなり損なった変な形の実が出来たので、面白いから型取りして複製を作っておいたのです。


【プリヴィズCGI監督】宮城健

庵野さんは、プリヴィズで自分が納得できるまで動きやアングルを詰めていたので、いざ本番のCGが出来上がってくると、上がった精度に違和感を覚えたのか「プリヴィズに戻してください」という指示を出すことが結構ありました。


作業を続けているうちに幾度か「もうVFXが間に合わない」という事態になったのですが、その度に庵野さんは「許容できないままの画面を出すぐらいなら、やりたかったことが伝わるプリヴィズをそのまま公開した方がいい」と言い出して…。


【ゴジラコンセプトアニメーター】熊本周平

当初、自分が担当するのは、あくまでもプリヴィズ用のCGであって、それを基にさらに本番用のCGを作り込んでもらう、という予定でした。プリヴィズ用のリグはすごくラフなものでしたし、生物の骨格構造ならこんな動きはしないというような、普通ではない変なものだったんです。なので、本番のCGではリグからきちんと作り直してもらうはずだったのですが…。どうもこの異様な動きが、今回の庵野さんの狙いと合致したみたいなんですね。


引き続き本編のCG制作もお願いしたい、プリヴィズの動きを完全再現してくれって言われて困ったなと(笑)。本番のCG制作作業に入ったところで、良かれと思ってバレないように少しプリヴィズから作り変えたりしたのですが、庵野さんの記憶力がものすごくて、わずかなパーツの違いとか、ほとんどミリ単位の動きのズレとかを一発で見抜かれてしまうんです。「プリヴィズ通りにしてください」という言葉を、トラウマになるぐらい浴びせられました(笑)。


【美術】林田裕至

官邸内部を完璧に再現するために、ありとあらゆる資料や書籍を調べましたが、どうしてもわからない場所があるんですよ。例えば、窓際は逆光になるので、そこで撮られた写真は無いんです。だからそれは、反対側の壁に掛けてある額のガラスへの映り込みを拡大して解決しました(笑)。


執務室の調度品は、装飾部さんが実際に官邸へ納入しているメーカーを探り当てて、総理執務室の棚と同じデザインでサイズ違いのもを借りて来て、取っ手やガラスの厚み等を採寸させてもらいました。背後の棚に至るまで、ほぼほぼ完璧に近いものになっていると思います。


【撮影】山田康介

全体の狙いとしては、前半の官邸周りのパートは岡本喜八監督風、後半は実相寺昭雄監督風にしたいというのは庵野さんの狙いとしてあったようです。ロケハンの時に庵野さんから「実相寺昭雄監督の作品を観るように」と言われました。


岡本監督の作品で参考にしたのは、『激動の昭和史 沖縄決戦』や『日本のいちばん長い日』です。前半の会議のシーンなど、カメラを引いたところから芝居を狙って、一言ずつ喋るところを撮っていくというスタイルで、こちらは普段の撮り方に近いので、それほど悩んだり苦労したりすることはなかったですね。


【撮影(Bカメラ)】古長真也

庵野さんはカメラのポジションとフレームへのこだわりが強く、どんなにカメラの台数が多くても、1台ごとにカメラの横で確認する程だったのですが、そのことで怒られることもありました。自衛隊員の前で訓示する矢口のシーンで、庵野さんから「こういう画角で」と指示された場所がすごく入りづらくて、アオリでと言われたのが難しく、少し高めから撮るように変えてもらったんです。庵野さんには「それでいいです」と言われたのですが、僕が諦め切れずに別の角度からアオリで狙おうとしたら「勝手に動かさないで!」と怒鳴られました。


僕は良かれと思ってやったのですが、総監督がいったん納得したものを勝手に変えたのはまずかったですね…。でも実は、そうやって怒ったあとの庵野さんはすごく優しかったです。そのカットを撮っている時は10分ぐらい、ずっと横に立って映画と関係ない世間話をして(笑)。今にして思えば、それが庵野さんなりのケアだったのかもしれません。


【助監督】足立公良

映画の世界では、カメラマンがアングルを決めて、その中でどういう風にするかということが多いのですが、庵野さんはアングルの1センチとか2センチの差にこだわるので、撮影スタッフは大変だったんじゃないかなと思います。モニターを見ながら「このカメラ、あと1センチ上に上げて」とか、そういう指示がしょっちゅう出ていたので。


【監督助手】大庭功睦

撮影中にびっくりしたのが、庵野さんの映像の記憶力ですね。ドイツの研究室のシーンを撮影していた時のことですが、庵野さんがカメラマンに「もうちょっと下に振って、カメラ高を1センチ上げて、あの3本のパイプの左側2本を入れるぐらいの感じに…」と細かい指示を出していました。それで画が決まって、「あとはよろしく」と庵野さんはベースへ移動したのですが、その間にカメラマンが、奥に座っている人の顔が重なっていることに気付いて、ほんの5ミリぐらいカメラを動かしたんです。そうしたら、ベースに戻った庵野さんがモニターを見て、「さっきと画が違います!」と…。どんな記憶力なんだと思いました(笑)。


あと、矢口役の長谷川博己さんがヤシオリ作戦に出発する決死隊に演説するシーンで、最初に1回テストをやって、それが凄く良かったんです。でも本番の時は、長谷川さんのボルテージがテストに比べてやや落ちたかな、という感じがしたんですよ。そうしたら、滅多に芝居のことについて言わない庵野さんがベースから出て来て、長谷川さんに「最初のあなたの芝居を見て、僕はとても感動しました。きっと、あなたは昨晩、こういう風にやろう、ああいう風にやろうと真剣に考えたんだと思います。その思いをずっとため込んで、ため込んだものがテストの1回目に全部出たから、それが届いて、僕は感動したんだと思うんです」


「けれど2回目は、同じように持っていこうという意識が働いて、ちょっと作りものっぽくなっていました。次は、上手く見せようとか、リズム良く喋ろうとか、そんなことは考えなくていいので、自分の感情の流れのまま、セリフを喋って欲しい。語尾とかも、言いにくかったら変えてもらって構わないですから」というようなことを言ったんです。その時の庵野さんの話し方が、とても切実な、身につまされるような言い方だったんですね。人間に対して、こんなことを言ってる庵野さんを初めて見て、なんか感動しちゃったんですよね。


【コンポジットスーパーバイザー】小林晋悟

映画の画面はプリヴィズに出来るだけ近い場所で撮影して、それを加工しています。いくつかの画像を継ぎはぎしたり、パースを合わせたりもするんですが、庵野さんはパースに関しては非常に厳しいので、バレないようにするのが大変でした(笑)。ちょっとでも不自然だとすぐにバレますから。やはり、撮られた素材を不用意に変えることを大変嫌われるので、細心の注意をもって行っています。


修正版を見て「こうじゃありません」となって、もう一度修正すると「前の方がいいです」と、行ったり来たりすることも良くありました。庵野さんは全部の映像を記憶されているみたいで、前のバージョンがどうだったのかを思い出せること自体がすごいなと思いました。


【ゴジラモデリング&コンポジター】上西琢也

竹谷さんの雛型を3DスキャンしてCGのゴジラをモデリングするんですが、どうしても元の情報が失われてしまうので、原型の実物を見ながら元の状態に修正していくわけです。その過程で庵野さんにチェックしてもらうんですが、庵野さんの視覚的記憶力がかなりすごくて、ちょっとでも似ていないと、すぐに指摘されてしまうんですよ。そのすり合わせに、ずいぶん時間がかかりました。


【CGプロデューサー】井上浩正

庵野さんはかつて、『王立宇宙軍 オネアミスの翼』などでアニメーターとして、いわゆるVFXスーパーバイザー的な立場で腕を振るっていたわけですよね。そんな庵野さんに対して、ビル破壊など最も得意とする分野で、僕らはCGで挑んでいくわけですから大変でした。庵野さんは手描きのアニメで1コマ1コマをゼロから生み出していった。そのイマジネーションというのは、計り知れないと思います。庵野さんの研ぎ澄まされた感性に合わせていくのは、本当に大変なことです。


【企画協力】川上量生

『シン・ゴジラ』で個人的に特に好きなのは、最後の電車が攻めて来るシーンです。シナリオを読んだ時はピンと来なかったのですが、あれは映像で観て驚きました。なんていうか、すごいご都合主義じゃないですか(笑)。作戦と言いながら、ゴジラがちょうど線路の上で止まらないと発動しないなんて、作戦として成立してない気もしますが(笑)。でも、電車が頑張ってる感じで応援したくなるし、このシーンが一種の救いになって、気持ち良く映画が終われていると思うんですよ。


【編集/VFXスーパーバイザー】佐藤敦紀

当初、庵野さんは撮影には立ち会わないと聞いていました。でも、9月に本格的な撮影が始まって、2〜3日分のラッシュの上がりを見て、撮影参加を決めたようです。もちろん現場は、それによってかなり混乱があったようですし、「約束と違います!」という話も漏れ聞こえてきました。庵野さんは、画面レイアウトの1ミリのズレが許せない人ですから、撮影現場は大変だろうと思っていましたが…。


庵野さんの編集は、とにかく細かいんですよ。抜群の動体視力なんですかね?1コマ抜いたり入れたりまた戻したり…。フィルムの時なんて、本当にどうしていたんだろうなと思います(笑)。あと、庵野さんは映像の記憶力が凄いんです。しかもプリヴィズで全体の流れを完全に掴んでいるから、ちょっとでもプリヴィズと違う、もしくはプリヴィズより良くないと、「これはプリヴィズと違います。同じにしてください」と言われることが何回もありました。まあ、庵野さん自身「僕は面倒くさい監督ですから」と自分で言うくらいの方なので(笑)、ある程度はわかっていたのですが。


【音響効果】野口透

大変だったのは庵野さんのこだわりで、ゴジラにまつわるSE(効果音)に、往年の東宝特撮作品で使われていた音がそのまま当てられていたんですね。東宝に保存されていた昔の磁気テープまで掘り出してかき集めて、「これと同じ音にしてください」と。庵野さんのオーダーは、初代の『ゴジラ』(1954)をはじめオリジナルのSEを「そのまま」使うことだったんです。元々を変えちゃいけない。ただ、ある程度は調整しないと劇場で迫力ある音として聞いてもらえない。だから、庵野さんに気付かれないようにどこまで変えるかが大変でした。


まあ、列車は列車の音だし、新幹線は新幹線の音だし、それはそのままですよね。それが爆発したら、昭和の爆発(笑)。でも爆発し過ぎなんですよね。もう少し間を開けて爆発してくれれば、音も聞こえやすくなるって、『エヴァ』の頃から毎回言ってるんですが…(笑)。でも結局、ドバドバドバッ!と固まって聞こえる爆発音になってしまうんですよ(笑)。


【准監督・特技総括】尾上克郎

プリヴィズを作ることで、「アングルやレイアウトが全て」と言っていいぐらいにこだわる庵野さんの姿勢が分かったことは大きいです。プリヴィズから少しでも違和感のある映像が上がって来たら迷わずプリヴィズに戻すんですよ。「直らなかったら、プリヴィズのまま公開するからいいです」なんてこと言い出すし(笑)。現場は大変でした。


当時、現場のスタッフは今回の「総監督」の役割も漠然としか理解できていなかったと思うし、当たり前ですけど「監督」である樋口君の意見を尊重します。でも、言語も違うし、そこで色々混乱が出て来てしまった。たぶん庵野さんはもっとミニマムな態勢で、あくまでもストイックな作品にしたかったんでしょう。


ところが、樋口君は性格的に大きくやりたがる。取り合えずなんでも「特盛り」で「暑苦しい」のが好き。それが彼の持ち味なんですけどね(笑)。この違いに皆も気付いていると思っていたんですが、甘かった。今思うと、それに気付いていながら対処できなかった僕にも責任の一端はあります。この食い違いが、後々ボディブローのように現場に効いていきました。


【監督/特技監督】樋口真嗣

最初の頃、現場の全スタッフ、全キャストが庵野さんに対して「あの人、なんなの?」みたいな感じで、それをなだめすかすのが自分の役割でした。「樋口さんは、それでいいわけ?」なんて聞かれるし。「僕は映画のために仕事をしてるんです。監督としていばりたいわけじゃない。映画が良くなればそれでいいんです。良くなりそうでしょ?」みたいな話をずっとしてました。それが長く付き合っている友達として出来る、精一杯のことですから。


もちろん、俺は俺なりに「何やってんだろう…」みたいに悩みましたよ。でも、そのとき「待てよ」と思ったわけです。そういえば、俺も大暴れしたのを、色んな人に助けられた結果、今ここにいるんだなと。だったら、たまには誰かのために仕事をしようと。結局、そういう大暴れって誰かが受け止めてくれて成立するわけじゃないですか?じゃあ順番として今回は俺が助けようと。尽くそう、尽くしますって。庵野さんが満足いくまで尽くせたかどうかは、分からないですけど。


【総監督】庵野秀明

当初、僕は現場に出ない予定だったんですが、幾つかの段階と転機と理由があり、結果として「可能な限り現場に出るしかない」と判断しました。理由の一つは、現場の意識の改革を試みるしかないと思ったことです。当初スタッフは、ルーティンワークで動いていました。もちろん全員がそうではないんですが、基本的にスタッフの意識は「年に何本かある仕事の1本」なんですよ。それが当たり前というか普通なんですけど、ルーティンからは面白さも新しさも生まれにくいんです。


ですから、まずは現場でのルーティンの否定と破壊から始めようと。スタッフにはパラダイムシフトを起こして欲しかったんですね。それと、いわゆる「作り込んで綺麗にまとまった完成形の映画」にしたくなかったんです。芸術作品として作り込んだ映画の完成度より、現場の混沌としたエネルギーをそのまま切り取って紡ぎたかった。切り取り方も、完成度が欲しい時と勢いが欲しい時と、シーンごとに違うので、当然現場は混乱します。スタッフに詳細な演出意図を説明する時間も惜しかったし、それはそれでまとまってしまうので、イヤだったんですね。


そもそも、コミュニケーションが苦手で面倒に感じる自分自身の問題点も混ざっています。しかし、面白い作品になる可能性を上げるためには、スタッフも巻き込んで、せめて意識を同じ方向に向けてもらえれば、と思って現場に出ていました。そのいらだちもあって、現場では常に怒っていましたね。最初は気を遣ったりもしていたんですが、途中で止めました。僕の感情的な状態は、現場にあまり関係ないんですよ。どっちでも同じなら、自分のエネルギーの温存とモチベーションの持続を優先させて、感情は隠さず表に出していこうと。


自業自得の状況なんですが、正直辛くて、あまり良い記憶がない現場でした。それが作品の緊張感になっていれば幸いです。現場がもっていたのは、おそらく樋口監督のおかげですね。僕のいないところ、見えないところで、随分と立ち回ってくれていたんだろうなと思います。でないと、僕が降ろされていたか現場が降りていたか、どちらかになっていた気がします。面白い作品になり得ないなら、それもやむ無しという、覚悟のうちではありましたが。

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とまあ、こんな感じで膨大なインタビューの中からほんの一部を取り上げてみたんですけど、いかがだったでしょうか?正直、映画に参加したスタッフの大半が「庵野さんのこだわりが強すぎて大変でした」と証言しているのを読んで、「どんだけやりたい放題だったんだよ、庵野秀明…」と驚愕せざるを得なかったし(笑)、庵野さん自身もそれを自覚してたっていうのが何とも凄まじいなと(^_^;)

ただ、当初、東宝側からは「もっと感情ドラマや恋愛要素を増やして欲しい」という要望があったのに全部突っぱね、「そういう方向性なら僕がやる必要がないので降板します」と強い口調で言い切ったそうですから、相当な覚悟を持って撮影に挑んでいたのでしょう。

なお、庵野さんのインタビューは7万字以上もあり、他にも面白いエピソードが満載なので、気になる人は是非『ジ・アート・オブ・シン・ゴジラ』を読んでみてください。価格は高めですが、圧倒的な情報量にド肝を抜かれること間違いなしですよ(^_^)


怖がりな人でも大丈夫?初心者向けゾンビ映画オススメ15選

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先月7月16日、映画監督のジョージ・A・ロメロが、肺がんのため77歳で死去したとニュースで報じられました。ロメロ監督は“ゾンビ映画の父”とも言われ、1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』以降、『ゾンビ』や『死霊のえじき』などの優れたゾンビ映画を次々と制作。

さらに、その影響を受けた他の監督が様々なゾンビ映画を生み出し、当初はマイナーなジャンルだったゾンビ映画の認知度を一気に押し上げたのです。近年はゲームのキャラクターにも採用されるなど、今や完全に”ゾンビ”というワードは一般化したと言ってもいいでしょう。

だがしかし!

世間の人たちは、みんなゾンビ映画を観ているのでしょうか?そもそも怖がりの人はそういう映画を観ないだろうし、いくら世の中に大量のゾンビ映画が溢れていても、そのほとんどは知られていない可能性があるのでは…?

それは非常にもったいない!

というわけで本日は、怖がりな人でも大丈夫なゾンビ映画をいくつかピックアップしてご紹介しますよ。もちろん、ゾンビが出て来る以上、人間をムシャムシャと貪り喰う場面も当然あるわけですが、エグい映像が苦手な人でもギリ耐えられる程度の作品を選んでいるのでご安心ください(^_^)


●『ショーン・オブ・ザ・デッド』

あらすじ「毎日パブに入り浸り、堕落した生活を続けていたショーン(サイモン・ペグ)は、恋人のリズに振られたことから、“まともな生活を送ろう”と決意する。そんなある日、街中にゾンビが発生!果たしてショーンは人生をやり直すことが出来るのか?」

まずは定番のこちらから。ゾンビ映画を観たことがなくても、この作品を知っている人は割と多いんじゃないでしょうか?『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-』のエドガー・ライト監督と、『ミッション・インポッシブル』シリーズのサイモン・ペグ。

ジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』をこよなく愛するこの2人が作った本作は、全編ゾンビ愛に満ち溢れたホラーコメディとして圧倒的な面白さを実現し、年季の入ったゾンビファンからも「『ショーン・オブ・ザ・デッド』はいいぞ!」と絶賛されるほどのクオリティを獲得しました。

しかもそれだけでなく、本作を観たロメロ監督も大喜びし、なんとエドガー・ライトとサイモン・ペグを自身の監督作『ランド・オブ・ザ・デッド』(2005年)にカメオ出演させたのですよ。凄いですね〜!

●『ゾンビランド』

あらすじ「新型ウイルスが広まって人類の大半がゾンビになってしまった世界。引きこもり青年のコロンバス(ジェシー・アイゼンバーグ)は、自称ゾンビ・ハンターのタラハシー(ウディ・ハレルソン)や、美人詐欺師姉妹のウィチタ(エマ・ストーン)、リトルロック(アビゲイル・ブレスリン)らと出会い、「ゾンビがいない」と噂される場所を目指して悪夢のようなサバイバルを繰り広げる!」

『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグや、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーンなど、意外と出演者が豪華なゾンビ映画です(ウディ・ハレルソンやビル・マーレイも登場)。

胃弱で引きこもりのオタク少年が久しぶりに外へ出てみたら、世界はゾンビで埋め尽くされていた!という絶望的な状況にもかかわらず、悲壮感はゼロ(笑)。

さらに、自ら「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」を作り、それを実行しながら両親の住むオハイオ州へ向かい、その道中で色んな人々に出会う…というゾンビ版青春ロードムービーなのですよ。鑑賞後は妙に爽やかな気分になる不思議なゾンビ映画です。

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●『ロンドンゾンビ紀行』

ロンドンゾンビ紀行 [Blu-ray]
アミューズソフトエンタテインメント (2013-06-05)

あらすじ「都市開発が進むイースト・ロンドン地区の工事現場で、古代遺跡とともにゾンビを発見!その一方、閉鎖の危機に追い込まれた老人ホームを救うため、地元のボンクラ兄弟が銀行強盗計画を進めていた。2つの事件が同時に起こった時、ロンドンは前代未聞の大パニックに陥る!」

ある日突然、ロンドンの街に大量のゾンビが発生!何も知らずに老人ホームで暮らしているお爺ちゃんやお婆ちゃんに、ゾンビの魔の手が迫る…!

と聞くと実に怖そうですが、実際に観てみると、「ゆっくり襲ってくるゾンビ VS ヨロヨロと逃げるジジイ」という”映画史上最も緊迫感のない超低速デッドヒート”が繰り広げられるのですよ。

ゾンビに襲われそうになっているジジイを見て「お爺ちゃん!後ろ!後ろ〜!」と叫んでいる場面は、完全に「志村〜!後ろ!後ろ〜!」の世界ですね(笑)。ゾンビ初心者はぜひどうぞ。

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●『ゾンビーノ』

ゾンビーノ デラックス版 [DVD]
ジェネオン エンタテインメント (2008-04-23)

あらすじ「過酷な”ゾンビ戦争”に勝利した人類は、ゾムコン社が開発した調教首輪システムでゾンビをペットのように飼い慣らしていた。少年ティミーの家でも、ママの希望でゾンビを飼うことに。ティミーは、いじめっ子から助けてもらったのをきっかけに、ゾンビと友達になる。だが、やがてとんでもない事件が巻き起こり…」

ゾンビを鎮静化させ飼いならせる技術が実用化された世界で、「人間とゾンビの共存」を描いた本作は、単なるコメディではなく、人間ドラマとしても優れています。

苛められっ子で、いつも寂しく一人で過ごしていた少年ティミーは、ある日一人のゾンビと出会い、一緒に遊ぶようになりました。「ファイド」と名付けたゾンビと次第に仲良くなっていくティミー。

しかし、別のゾンビにティミーが襲われる事件が勃発!そのピンチに駆け付けたのは…なんとファイドでした!少年とゾンビの奇妙な友情を描いた秀作です。でも「愛と勇気のゾンビ・ファンタジー」って何だろ?

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●『ゾンビスクール!』

あらすじ「母校の小学校で働き始めたクリント(イライジャ・ウッド)は、生徒たちの異変に気付く。一人の少女がいきなり男の子に噛み付いたのだ!何が起きたか分からないまま、学校中はパニック!次々とゾンビ化していく子供たち相手に、楽器やスポーツ用品で武装した教師たちが立ち向かう。キッズゾンビVSイカれた教師の戦いの火蓋が切って落とされた!」

とある小学校で、給食のチキンナゲットを食べた生徒に異変が発生。なんと小学生が全員ゾンビになって、先生たちに襲いかかって来た!果たして、生ける屍の巣窟と化した小学校から脱出できるのか…?

教師のクリント(イライジャ・ウッド)は、生き残った他の先生たちと協力してゾンビに立ち向かうんですけど、「小学生がゾンビ」という設定を利用して、大人が子供をボコボコにしばき倒すという、倫理的にだいぶアウトな映像が続出します(笑)。

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●『ゾンビコップ』

あらすじ「ロス市警の刑事・ロジャー(トリート・ウィリアムズ)とダグ(ジョー・ピスコポ)は強盗団に襲われた宝石店へ急行、犯人を相手に派手な銃撃戦を繰り広げる。しかし、犯人たちは撃たれても全く平気で抵抗を続けるのだった。やがてロジャーとダグは、驚くべき事実を聞かされる。なんと犯人たちは、とっくの昔に死んでいた?半信半疑のまま、2人は犯人の遺体から検出された薬品を手がかりに捜査を開始するのだが…」

「いくら撃っても死なない不死身の強盗団」に出くわした2人の刑事が、謎の事件を調べているうちに自らもゾンビになってしまう…という刑事アクションのゾンビ版です。

この映画、とにかくテンポが抜群に早い!『ターミネーター』や『ランボー/怒りの脱出』などの編集を担当したマーク・ゴールドブラッドが監督してるので、次から次へとストーリーが展開していくのですよ。

やがて2人は死体を蘇生させる技術を開発した会社を突き止めるのですが、捜査の過程で潜入した中華料理屋でブタの丸焼きに襲われるなど、面白アクシデントの連続!

もちろん、カーチェイスあり、派手な銃撃戦あり、アクション映画としての見どころも盛りだくさん。いや〜、バディ・ムービーとゾンビがこんなに相性がいいとは思いませんでした。


●『ゾンビ処刑人』

あらすじ「戦死した親友・バートがゾンビとなってジョーイの前に現れる。血液を飲まないと餓死(もう死んでるけどw)してしまうバートのために、ふたりは悪人を成敗し血をもらおうと決意。こうして、夜な夜な犯罪都市ロサンゼルスを徘徊する”ゾンビ処刑人”が誕生した!」

バディ・ムービーをもう一つ。こちらは刑事じゃなくて、主人公のバートが死亡し、葬儀に参加した彼の友人ジョーイが生き返ったバートを見つけてビックリ、という展開です。

ゾンビになったバートは「人間の生き血を摂取しないと肉体が腐ってボロボロになる」ということに気付き、ジョーイとコンビを組んで街の悪党を成敗する「必殺仕事人」みたいなことをやり出します(そのついでに生き血をもらう)。

「正義のヒーロー気取りで悪者を処刑していく2人」という設定は、おそらく、ノーマン・リーダスが主演した『処刑人』のゾンビ版を目指していたのかなと(クオリティはかなり差がありますけどw)。


●『ゾンビーワールドへようこそ』

あらすじ「高校生でボーイスカウトのベン、カーター、オギーの3人組は、クラブで女の子と遊びたくて仕方がない。ある日、キャンプを抜け出してパーティー会場へ向かっていたら、なんとゾンビ化した住人たちが襲って来た!間一髪のところを美人ウエイトレスに助けられた3人は、ボーイスカウトで 身につけた様々なワザを駆使して、ゾンビに立ち向かおうとするのだが…」

モテない童貞3人組が、何とかして女の子とエッチしようとドタバタする様は、70年代に流行った『グローイング・アップ』シリーズ等の青春エロ・コメディを彷彿させます。本作はそれにゾンビ要素をプラスした青春エロ・コメ・ゾンビ映画で、お色気シーンもありますよ。


●『ウォーム・ボディーズ』

あらすじ「ゾンビと人類が敵対する近未来。ゾンビ男子”R”(ニコラス・ホルト)は、ある日、仲間のゾンビに襲われていた人間の女子ジュリー(テリーサ・パーマー)にひと目ぼれし、助けてしまう。最初は怖がって拒絶していたジュリーも、Rの不器用な純粋さや優しさに心を開きはじめる。出会ってはいけなかった、けれど、うっかり出会ってしまった二人の恋の行方は、いったいどうなる?」

『マッドマックス 怒りのデスロード』のニコラス・ホルト主演作です。今までの映画にも「途中でゾンビになってしまった主人公」はいましたが、本作は最初からゾンビなのがミソ。彼には人間だった頃の記憶がほとんどなく、”R”という頭文字しか覚えていません。

そして普段は廃墟に閉じこもり、仲間のゾンビたちと人間をムシャムシャ食べるだけの生活を送っていました。そんなRくんが、ある日可愛い女の子と出会ったことで、徐々に人間らしさを取り戻していくのです。

これはつまり、「内気でコミュ障なオタク男子が、生まれて初めて彼女と付き合い始めたことでリア充になっていく姿」を描いた青春ラブ・コメディなのですよ。「ボーイ・ミーツ・ガール」ならぬ「ゾンビ・ミーツ・ガール」ですね(笑)。

●『ライフ・アフター・ベス』

あらすじ「アメリカのとある田舎町。ザック(デイン・デハーン)は、最愛の恋人のベス(オーブリー・プラザ)を不慮の事故で亡くし、悲嘆に暮れていた。しかしある日、ベスが墓穴から這い出し、家に戻ってきてしまう!ザックは恋のやり直しを誓って、これまで以上にベスを大切にしようと努めるものの、次第にベスがゾンビ化していく姿を見て、心の距離が遠のき始め…」

こちらも『ウォーム・ボディーズ』と同じくラブ・コメディですが、主人公の男子は人間で、彼女の方がゾンビになります(ちなみに主演は『クロニクル』のデイン・デハーン)。

ゾンビ化した彼女はとんでもない怪力を発揮し、縛り付けられたオーブンを背負ったままハイキングに出かけてしまうなど、面白シーンも満載ですよ。


●『バタリアン』

バタリアン HDリマスター版 [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2014-08-02)

あらすじ「軍人病院の薬品事故が原因で死体が次々に蘇生。そのゾンビはケンタッキー州のとある医療品倉庫へ送られ、長年カプセルに入れて極秘保管されていた。ある日、そこで働くフランクとバイトのフレディがうっかりカプセルを叩いたところ、突然謎のガスが漏れ出し、不死身のゾンビが蘇ってしまった!」

これはもう、超有名なゾンビ・コメディなので、知っている人も多いでしょう。ちなみにタイトルの”バタリアン”とは、本来は「大群」という意味ですが、日本で配給した東宝東和がゾンビたちの総称として命名。

原題は『The Return of the Living Dead』で、劇中に「ロメロ監督の『ゾンビ』は実話なんだよ!」というセリフがあることから、『ゾンビ』のパロディまたは後日談的な位置づけになるようです。

なお、当初はトビー・フーパーが監督する予定だったものの、諸事情でクビになり、ダン・オバノンにオファーが回って来たらしい(当時、ダン・オバノンは『ブルーサンダー』の監督に内定していたが、それを蹴って『バタリアン』を選んだ)。


●『死霊のはらわた2』

あらすじ「恋人リンダとともに森の山小屋へ出かけたアッシュ(ブルース・キャンベル)。キャビンの中で奇妙な古書とテープレコーダーを見つけた二人は、好奇心からテープに録音された呪文を再生、700年間封印されていた太古の死霊を甦らせてしまう!」

『スパイダーマン』のサム・ライミ監督が、新人時代に勢いにまかせて作り上げたアクセル全開のぶっ飛びゾンビ映画『死霊のはらわた』。本作はその続編であり、セルフリメイクでもあります。

予算はなんと前作の10倍!ただし、前作がたった35万ドルの低予算だったので、10倍になってもたかが知れてますけど(笑)。でも、前作の過激なノリは10倍以上にパワーアップ!

特に、「死霊に乗っ取られた自分の右手を相手に、全力でバトルを繰り広げる主人公」という映画史に残る珍場面を、見事な一人芝居で演じ切ったブルース・キャンベルが素晴らしすぎる(笑)。


●『プラネット・テラー in グラインドハウス』

プラネット・テラー [Blu-ray]
ジェネオン・ユニバーサル (2013-12-20)

あらすじ「テキサスの田舎町で、かつての恋人と再会したダンサーのチェリー(ローズ・マッゴーワン)。しかし、軍の秘密実験の失敗により、町にはゾンビが溢れ出した!ゾンビに襲われ片足を失ったチェリーだったが、義足の代わりにマシンガンを装着し、ゾンビ軍団に戦いを挑む!」

本作は、ゾンビ・綺麗なお姉ちゃん・激しいガンアクション・壮絶な血しぶき・くだらないギャグ等、ロバート・ロドリゲス監督のやりたいことだけを詰め込んだ、壮大なB級映画です。間違っても感動するような内容ではありません(笑)。非常にバカバカしくて面白いんですが、基本的に突っ込みどころ満載なので、その手の映画が好きな人だけご覧ください。


●『バイオハザード』

バイオハザード [SPE BEST] [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2015-12-25)

あらすじ「巨大企業アンブレラ社が地中深くに作り上げた秘密研究所ハイブ。ここで開発中のウィルスが、何者かの手によって空気中に漏洩、施設内がゾンビで溢れ返ってしまった!記憶喪失の美女アリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、無事に脱出できるのか…!?」

これまた超有名作品というか、日曜洋画劇場で飽きるほど繰り返し放送されていたので、恐らく一度は観たことがあるんじゃないでしょうか(なぜ日曜洋画劇場がこのシリーズを猛プッシュしていたのかは謎w)。

数あるゾンビ映画の中でも、地上波でここまで何度も放送された作品は『バイオハザード』シリーズだけであり、まさに「お茶の間で家族団らん安心して楽しめるゾンビ映画」と言えるでしょう。

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(画像は『怒りのロードショー』より)

●『ワールド・ウォーZ』

あらすじ「ある朝、元国連捜査官のジェリー(ブラッド・ピット)と妻と2人の娘を載せた車は渋滞にはまっていた。そして、ただならぬ異変を感じた次の瞬間、背後からトラックが猛スピードで突進!必死で家族を守り逃げ出すが、気付けば全世界では人間を狂暴化する“謎のウイルス”の感染者が爆発的に増加し、大混乱に陥っていた…」

本来、ゾンビ映画とは”低予算”の代名詞でした。大掛かりなセットを組まなくてもいいし、高価なVFXも不要。ゾンビ風のメイクを施した一般人を適当にフラフラと歩かせておけば、それなりにゾンビ映画が撮れてしまうのです。

だからこそ、『桐島、部活やめるってよ』みたいに学生やアマチュアが次々とゾンビ映画を撮っていたわけですが、それを大予算で作ったらどうなるか?というのが本作です。

なんと、ゾンビ映画史上最高の200億円という製作費をつぎ込み、ハリウッドの一流スター:ブラッド・ピットを主役に迎え、フィラデルフィア・スコットランド・イスラエルなどで大規模なロケを敢行。

その結果、途中で予算が足りなくなり(追加撮影の費用も原因)、映画の終盤が何となくショボい感じに見えるかもしれませんが(笑)、その辺も含めてお楽しみください。

なお、ラスト付近で「ペプシのジュースをゴクゴクと飲み干すブラピの姿」がCMみたいに大きく映ってるんですけど、実は足りなくなった製作費をペプシが出してくれたため、こういう映像を入れることになったそうです。まあ、色んな事情がありますよね(^_^;)

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というわけで本日は、今までゾンビ映画を観たことがない人や、ホラー映画が苦手な人でも(多分)安心して楽しめる「初心者向けゾンビ映画」をご紹介しました。

次回は(次回があるのかどうか分かりませんがw)、ジョージ・A・ロメロ監督の作品を筆頭に、本家の影響を受けた「新世代ゾンビ映画」の数々を解説してみたいと思います。それでは、また!(^O^)/


●参考文献

ゾンビ論 (映画秘宝セレクション)
伊東 美和 山崎 圭司 中原 昌也
洋泉社

ゾンビ映画年代記 -ZOMBIES ON FILM-
オジー・イングアンソ
パイインターナショナル (2015-08-13)

EXILE主演映画『HiGH & LOW THE MOVIE』ネタバレ感想

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、金曜ロードショーで『HiGH & LOW THE RED RAIN』が放送されます。

『HIGH&LOW』とは、日本テレビとパフォーマンス集団EXILE TRIBEがタッグを組んで展開している、"総合エンターテイメントプロジェクト"です。

このプロジェクトのためにAKIRA、青柳翔、3代目J Soul Brothersの岩田剛典、TAKAHIRO、登坂広臣、黒木啓司、ELLY、白濱亜嵐、佐野玲於など、錚々たるメンバーが集結しました。

『HIGH&LOW』はコミカライズ、オンライン動画配信サービス、オリジナルアルバムのリリース、さらに作品の世界観を音楽で再現したライブツアーなど、様々なメディアでコラボを展開。

そして2015年から連続ドラマとしてTV放送を開始し、2016年7月に劇場版第1弾『HiGH & LOW THE MOVIE』が公開され、21億円の大ヒットを記録したのですよ。

そのスピンオフ映画が『HiGH & LOW THE RED RAIN』になるわけですが、本日は1作目の『HiGH & LOW THE MOVIE』がいかに凄い映画か、について語ってみたいと思います。

まず最初に僕自身はEXILEに何の興味も持っておらず、TVドラマ版も観ていません(←オイw)。なので、どういう物語なのか全く分からない状態で観たんですけど、非常に面白かったんですよ。

いや、正直に言うとドラマ版を観ていないと分かり難い場面はいくつかありました(特に人間関係が)。しかし、映画のオープニングで「これまでのあらすじ」を結構細かく説明してくれるのでほぼ問題なかったです。

ちなみに、この「あらすじ」で声を担当しているのは、『世界の果てまでイッテQ』のナレーションや『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウ役などでお馴染みの立木文彦さん(この説明シーンだけで8分も喋ってるw)。

物語の舞台は、「山王連合会」「White Rascals」「鬼邪高校」「RUDE BOYS」「達磨一家」という5つのチームが拮抗する街SWORD地区。かつてこの街を仕切っていた「ムゲン」の総長・琥珀が、再びSWORD地区に戻って来たことで新たな抗争が始まる…という感じ。

要は、日本が舞台なのに世紀末ムードがビンビンに漂う荒れ果てた街の中で、大勢のならず者たちが日々暴力に明け暮れるという、実にクレイジーな世界観なわけでして。

特に、SWORDのチームが集結し、大量のバイクや車で路上を爆走するシーンは「どこの『マッドマックス』ですか?」と問いただしたくなるような破天荒な場面に仕上がっていました(笑)。

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そんな異様な空間で、色とりどりの衣装をまとったカッコいいキャラたちが、痺れるようなカッコいいセリフを吐き、各々の個性に沿った見事なアクションをカッコ良く繰り広げるわけですよ。

こういう「自分たちの好きなモノを目一杯詰め込んで、本気で映画を作っている感じ」が実にいいんですよね。「俺たちはコレがやりたかったんだよ!文句あるか!?」という揺るぎないスタンスで全編を貫いているところが素晴らしい。

圧巻は何と言ってもクライマックスの大乱闘シーンでしょう。画面の手前にSWORDの100人、それと向き合う形で敵が500人。さらにその奥にラスボス的な6人が控えていて、計606人が殴り合う壮絶なアクションシーンを、何とワンカットで見せているのです!

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久保茂昭監督曰く、「参考にしたのは『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや、『300(スリーハンドレッド)』の決戦シーンだが、向こうはCGなのに対し、こっちは全て生身の人間を使って撮影している。これだけ大規模なモブシーンを全て実写で撮った映像は、恐らく史上初だろう」とのこと。

このシーンを撮影するために、神戸港のコンテナ置き場を2週間かけて作り込み、ライブ撮影やスポーツ中継に用いる「フライングモンタ」という特殊な機材を日本の映画では初めて導入したそうです。

疾走する600人以上の男たちの頭上スレスレを滑るように移動する俯瞰ショットは、海外のアクション映画と比較しても全く引けを取らない迫力とスケール感を生み出していました。

というわけで本作は、「作り手たちが自分らのやりたいことをやり切った」という点において、見事に1本スジの通った(というかスジしか見当たらない)快作に仕上がっており、「天晴れ!」としか言いようがありません。

唯一の問題は「話に整合性が全く無い」という点ですが(街が爆発炎上しているのに警察も出動しない等)、出演者及びスタッフの熱意の前では取るに足らない問題です。「何が何だかよく分からないけど、とにかく凄いモノを観た!」と思わせてしまう映画、それが『HiGH & LOW THE MOVIE』なのですよ!

実写映画版『ジョジョの奇妙な冒険』がヤバすぎる!ネタバレ感想

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■あらすじ『“スタンド”と呼ばれる特殊な能力を持つ高校生、東方仗助(山崎賢人)。彼が暮らす杜王町は緑豊かで平和な町だったが、最近、謎のスタンド使いアンジェロ(山田孝之)による変死事件が続発していた。そんな中、仗助の前に空条承太郎(伊勢谷友介)と名乗る男が現われ、実の父親を巡る秘密と、奇妙な事件の背後に蠢く”スタンド使い”たちの存在を知らされる。同級生の広瀬康一(神木隆之介)、山岸由花子(小松菜奈)、虹村形兆(岡田将生)、虹村億泰(新田真剣佑)らと出会い、愛する家族と町を守るため、危険な戦いに身を投じていく仗助。果たして凶悪な敵を倒すことは出来るのか!?』


※今回の記事はネタバレしてます。未見の方はご注意ください!


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

突然ですが、皆さんは現在公開中の映画『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』を観ましたか?えっ!?まだ観てない!?それはいけません、すぐに観ましょう!なぜなら、興行成績がヤバすぎるからです。

本作は、ご存じ荒木飛呂彦先生の同名人気漫画を実写化した長編映画で、公開前から注目を集めていた話題作なんですが、いざ公開してみたら想像を絶する異常な不入りに関係者一同ビックリ仰天!

初週の土日2日間で観客動員11万7000人、興収1億6600万円、ランキング5位という残念な結果になってしまったのですよ(ちなみに、先に公開された実写版『銀魂』は土日2日間で動員39万3000人、興収5億4100万円を記録した)。

この状況は、同じ三池崇史が監督した実写版『テラフォーマーズ』の成績よりも悪く、しかも公開2週目には早くもランキング10位圏外へ転落するという大惨敗を喫してしまい、製作元のワーナーブラザーズも大慌て!なぜなら、このままでは続編が作れなくなるからです。

今回の実写版『ジョジョ』はタイトルに「第1章」と入っているように、今後の大きな物語へ繋げるための「導入編」にすぎません。つまり完全に続編ありきのストーリー展開になっており、本作を観ただけでは意味の分からないシーンが多数含まれてるんですよ。

なので、僕は当然「次回作は確定済み」と思ってたんですけど、続編の製作はあくまでも”予定”で、「1作目がヒットすれば2作目以降を作る」という段取りだったらしい(まあ「原作は超人気マンガで主演も人気俳優の山崎賢人だし、大ヒットは間違いないだろう」などと考えていたのかも…)。

ところが、想定外の結果になったことで関係者も焦ったんでしょうね。「オイ!このままじゃ企画が打ち切られて第2章が作れないぞ!」「張った伏線を回収できないじゃん!」みたいな感じになったらしく、とうとう公式が自らネタバレ動画を投稿するという前代未聞の事態が勃発!

なんと、本編の重要なシーンを少しずつネットに公開し始めたんですよ。えええ!?マジか!?よっぽど追い詰められてるんだろうなあ(^_^;)

いや、もちろん観客の期待を煽るために本編のワンシーンを見せるっていうのは良くあることだし、何の問題もないでしょう。しかし、クレイジー・ダイヤモンドのバトルぐらいならまだしも、終盤のシアー・ハート・アタックやラストのサプライズシーンまで見せてしまうのは、ちょっとやりすぎじゃないの?

特にシアー・ハート・アタックなんて、原作ファンなら必ず「あっ!」と驚く超重要なシーンなわけで、ある意味、一番ネタバレしちゃいけない場面じゃないですか。それを公式が自分でバラすって…どうなんだろう?こういう宣伝は初めて見たなあ(-_-;)

このような公式の”暴挙”に対し、「いくら客が入らないからって、上映中の映画のオチを自らネタバレしてどーする!?」「これはさすがにダメだろ」「自暴自棄としか思えない」などと批判が殺到している模様。

まあ公開1週目でまさかの5位、2週目で早くもトップ10位から消えてしまったのだから、焦る気持ちも分からなくはないんですが、先行して公開された動画と合わせると、ほとんどの「見どころ」を公開しちゃってるわけで、さすがにネタバレが過ぎるのでは?と思わざるを得ません。

こういう状況を見て、ファンの間では「実写版『ジョジョ』がコケたのは宣伝のやり方が悪かったからだ!」という論調が広まっているようです。ただ、「それは確かにその通りだけど、それだけじゃないよな〜」とも思いました。

あくまでも個人的な見解ですが、タイトルに「第1章」と銘打ち、ストーリーも「続編」を前提として構成するなら、最初から全ての章を作った上で公開すべきだったと思います(つまり、3部作なら3本一気に撮ってしまえ!と)。

もちろんリスクもあるでしょう。しかし、例えば実写版『20世紀少年』の場合は、第1章が公開される前に第2章と第3章を撮影していたわけで。そうすると、コケたらえらいことになるから宣伝も必死にならざるを得ないし、その結果、興収計114億円の大ヒットに繋がったのですよ。

残念ながら実写版『ジョジョ』は、そういう”覚悟”が足りなかったと言わざるを得ません。もしどうしてもリスクが怖いなら、「第1章」などとせずに潔く「1話完結」のストーリーにすれば良かったんですよ。それならまだ納得できたのに、「ヒットしたら続編やります」的な甘い気持ちで映画を作るからこんなことになったんじゃないの?”覚悟”が足りないよ!

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いや、なんで僕がこんなに熱くなってるかと言うと、「続編」を作って欲しいからなんです。僕は原作の『ジョジョ』のファンですが、実写版を観た感想としては「漫画の内容をかなり丁寧に再現しており、決して悪い出来ではない」という印象でした。

もちろん、絶賛するほど完成度が高いわけじゃないんですけど、スペインで撮影された風景も意外と作品の世界観にマッチしていたし、新田真剣佑さんの虹村億泰も再現度が高かったし、フルCGで作られたスタンドもカッコ良かった!特にバッドカンパニー最高ッ!

…みたいな感じで、全体としては妙に面白かったんですよ。しかもクライマックスでは「え?ここでシアーハートアタックが出て来るの!?」とか、さらにエンディングでは「うおおお!こ、これは吉良吉影…!」など、原作ファンの心をガッチリ鷲掴みするようなサプライズの連続で興奮しまくり。なので物語の続きにも期待していたんですけどねえ…。

もし第2章が作られなかったら、この映画は虹村形兆を殺したスタンド使い(吉良吉影)の正体が分からないまま、中途半端な状態で完結してしまうわけです。DVDが発売されても、「第1章」のタイトルだけが虚しく残って結末は尻切れトンボのまま。そんなカッコ悪いことってあります?

だからこそ続編を作って欲しいし、ハッキリ言えば小松菜奈が演じる山岸由花子をもっと見たい!今回はほぼ活躍シーンが無かったけど、次回作ではスタンド(ラブ・デラックス)を使ったバトルもあるはず。そうなれば「このヘナチン野郎があああ!」と絶叫する小松菜奈を見れるかも!みんな、見たくない?僕はもの凄く見たいぞ!

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まあ、実際に「第2章」が作られたとしても、こういうシーンがあるかどうかは分かりませんけどねw↑

というわけで、現状では続編の可能性がほぼ無くなりつつある実写版『ジョジョの奇妙な冒険』ですが、そうなるとあまりにも悲しいので、自分で勝手に次回作の展開を予想してみましたよ(^_^)


●「第2章」に出ると思われるキャラ(スタンド)

・山岸由花子(ラブ・デラックス)

・岸辺露伴(ヘブンズドアー)

・矢安宮重清(ハーヴェスト)

・辻彩(シンデレラ)

・吉良吉影(キラークイーン/シアーハートアタック)


●「第3章」に出ると思われるキャラ(スタンド)

・噴上裕也(ハイウェイ・スター)

・宮本輝之輔(エニグマ)

・杉本鈴美(幽霊)

・猫草(ストレイ・キャット)

・吉良吉廣(アトム・ハート・ファーザー)

・川尻浩作(キラークイーン/バイツァ・ダスト)


●たぶん出ないと思われるキャラ(スタンド)

・トニオ・トラサルディー(パールジャム)

・間田敏和(サーフィス)

・小林玉美(ザ・ロック)

・音石明(レッド・ホット・チリ・ペッパー)

・ジョセフ・ジョースター(ハーミットパープル)

・静・ジョースター(アクトン・ベイビー)

・支倉未起隆(アース・ウインド・アンド・ファイヤー)

・ジャンケン小僧(ボーイ・II・マン)

・鋼田一豊大(スーパーフライ)

・乙雅三(チープ・トリック)

・ネズミ(ラット)


原作の第四部『ダイヤモンドは砕けない』は、本編に直接関係ない「サブ・エピソード」が多いので一見長い物語に見えるんですが、吉良吉影(川尻浩作)に関わるキャラを中心に構成していけば割とストーリーは作りやすいかもしれません(ただ、個人的にはトニオさんの話を観たいんだけどなあw)。

あと気になった点は、今回の映画で仗助の周りにいつも群がっている3人の女子高生が、全く女子高生に見えないんですよね(もう完全に「セーラー服を着た風俗嬢」って感じw)。なので、次回作ではもう少し若いJKをお願いします(^_^)


東日本大震災の真相に迫る!映画『太陽の蓋』ネタバレ感想/解説

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■あらすじ『2011年3月11日、宮城県の東南東沖130kmを震源とする巨大地震が発生した。福島第一原発では全電源喪失の非常事態に陥り、原子炉の温度が上昇し続け、メルトダウンの危機に直面する。想定外の状況を前に、情報不足のまま混乱を極める官邸。秘密主義のような電力会社。冷静な判断力を失う科学者たち。そんな中、多くの一般市民が危険区域からの避難を余儀なくされていった…。ある日、突然日常が破壊され、極限状態に追い込まれていく人々の姿をリアルに描き出した渾身のポリティカル・ドラマ!』



佐藤太監督の『太陽の蓋』を観た。佐藤太といえば、傑作怪獣映画『ガメラ 大怪獣空中決戦』や『ガメラ2 レギオン襲来』などで監督助手を務めており、本作が公開された際も庵野秀明総監督の「『シン・ゴジラ』に似ている」と言われていたらしい。

確かに、総理官邸の危機管理センターに大勢の官僚が集まって会議をしているシーン等、類似する場面がいくつか見受けられた(ちなみに危機管理センターのセットや小道具も、平成ガメラ三部作の美術スタッフが担当している)。

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そして「内閣官房副長官」とか「首相政務秘書官」など、登場人物の役職と名前がテロップで表示される点も『シン・ゴジラ』と同様。しかも菅直人(三田村邦彦)、枝野幸男(菅原大吉)、福山哲郎(神尾佑)といった当時の内閣のメンバーを全て実名で登場させているのが凄い。

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3.11以降、東日本大震災をモチーフにした作品が数多く作られ、『シン・ゴジラ』もその一つだったわけだが(なので似ていても当然)、そんな中で『太陽の蓋』は真正面から福島の原発事故に向き合い、「あの時起きていた状況」を忠実に再現しようとしているのだ(ニュース映像の作り込みもリアル)。

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本作の主人公は新聞社に務める鍋島(北村有起哉)。官邸に張り付いて情報収集に奔走する政治部の記者だが、全く要領を得ない政府の対応に「福島で何が起きてるんだ?」「官僚たちは国民に重大な事実を隠してるんじゃないのか?」と疑念を抱き始める。

その頃、官邸では次々とアクシデントが勃発していた。「福島第一原発、交流電源喪失、全冷却機能が停止したそうです!」「どうなってるんだ?問題ないって言ったじゃないか!」「わかりません」「わかりませんじゃないだろう!原子力安全保安院の院長に原発のことを聞いてるんだぞ!」とブチ切れる菅直人内閣総理大臣に対し、院長が力強い一言。

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「私は東大の経済出身です!」

その瞬間、会議室はシーンと静まり返り、全員沈黙したまま「こいつはいったい何を言ってるんだ…?」という表情で原子力安全保安院の院長を見つめる官僚たち(技術の専門家ではない”偉い人”が会議に出たって何の役にも立たない、ということが明らかになるシーンw)。

とにかく「冷却装置を動かすためには電源が必要」ということで、すぐに電源車を手配しようとするが、道路は寸断され、自衛隊のヘリでも重くて運べない。そのため、官邸はあらゆる手段を講じてようやく現場へ電源車を送り込んだ。

ところが、現地で「プラグの形状が合わなくて使用できない」という痛恨のミスが発覚!思わず、「運ぶ前にそのぐらいのこと分かるだろ!」と激怒する担当者。

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そしてとうとう、「私が直接現場へ行く!」と言い出す菅直人首相。それに先立ち、原子炉格納容器内の圧力を下げるために「ベント」の実施を決定。すぐさま枝野官房長官が公表する。ところが、予定時刻を過ぎてもベントが実施できない。「ここままじゃ官房長官がウソを言ったことになる!」と焦る官僚たち。

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その後、菅総理はヘリで現場を視察し、官邸へ戻って自衛隊員の増員を指示する。この時点でもまだ原子力安全委員会の斑目委員長(劇中では万城目)は「爆発なんてしませんよ」と余裕のかまえを見せていた。しかし、3月12日16時49分、官邸に福島第一原発1号機の爆発映像が流れると状況は一変!

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「あっちゃ〜」と頭を抱える万城目委員長。

それを見て「あなた、爆発は無いって言いましたよね?」と静かにキレる菅直人。情報が錯綜し、パニックが広がる中、とうとう3号機も爆発!さらに2号機には水位の低下が確認され、「燃料棒が露出したのでは?」と大騒ぎに。次から次へと想定外の事態が起こりまくり、官邸内は阿鼻叫喚!

そんな時、東電サイドから「作業員を撤退させたい」との申し入れが官僚たちへ入る。この時、近隣住民は20キロ圏外への避難を完了していたため、一番危険に晒されていたのは現場で働いている700人の作業員たちだったのだ。「民間企業の社員に無理は言えない」との意見が出る中、「撤退は絶対に認めない!」と断固拒否する菅直人総理。

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「今、撤退したら…この国は終わりだ!」

東電社員が命懸けの作業を続けるものの、危機的状況は一向に収まる気配がない。残った2号機はいつ爆発するか分からず、停止中の4号機にも燃料棒が千本以上も格納されており、これを冷やしている水がなくなったら一気に温度が上がり、限界を超えれば…メルトダウンは必至!

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もし4号機が吹き飛べば他の原子炉も巻き込まれ、被害範囲は250キロ以上に拡大する。そうなったら東京も人が住めなくなる。次々とはじき出される恐ろしい数値を目の当たりにして騒然となる官邸内。「いったい日本はどうなってしまうんだ…」という不安がどんどん拡大していく。

公開時は『シン・ゴジラ』との類似性が注目された本作だが、『シン・ゴジラ』はあくまでも”虚構”であるため、娯楽映画的な「面白さ」を最優先していた。奇想天外な作戦が飛び出すし、盛り上がる場面では派手なBGMも鳴り響く。

しかし、本作は現実に起きた出来事を描いているが故に、淡々と事実を語るのみで必要以上にドラマを盛り上げたりしないし、BGMもほとんど流れないのだ。

そういう意味では(一見『シン・ゴジラ』に似ているものの)、極めてストイックな…ハッキリ言えば地味な映画に仕上がっており、ある種の「再現ドラマ」を観ているような感覚に陥るかもしれない。

しかし、「怪獣は上陸しません」と政府が発表した直後に上陸してきて「え〜?」となる場面は『シン・ゴジラ』なら笑って観ていられるが、「爆発しません」と言った直後に原発が爆発して「あっちゃ〜!」となる本作の場合は、全然笑えないどころか「マジでこんなことやってたのかよ…」と空恐ろしくなった。

なお、本作の評価としては、原発事故の真相を追う新聞記者の視点、未曾有の危機に翻弄される官邸内部の様子、さらに東京や福島で暮らす市井の人々の不安げな姿をそれぞれ並行して描いてはいるが、肝心の「福島第一原発の現場」の描写が少なく、それがやや残念だった。

とはいえ(ドキュメンタリーの形式以外で)ここまで東日本大震災当時の政府の状況を克明に記した映画は他にないという点においても、大いに価値があると言えるだろう。


太陽の蓋 [DVD]
オデッサ・エンタテインメント (2017-03-02)

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