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『千と千尋の神隠し』の千尋がブサイクな理由

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本日、金曜ロードSHOW!にて宮崎駿監督の大ヒット映画『千と千尋の神隠し』が放送されます。本作は2001年に公開されるや308億円という前人未到の凄まじい興行収入を叩き出し、日本映画として歴代ナンバーワンの記録を樹立しました。

そんな『千と千尋』と、現在232億円という好成績で後を追いかけている『君の名は。』との間に、共通点があるのをご存知でしょうか?『君の名は。』の監督は新海誠さんですが、作画監督はどちらのアニメも安藤雅司さんが担当しているのですよ。

安藤雅司さんといえば、1990年にスタジオジブリに入社して以来、宮崎駿も認める凄腕アニメーターとして数々のジブリ作品に参加。『On Your Mark』で初めて作画監督を任され、続く『もののけ姫』でも作画監督としてその類稀なる才能を存分に発揮していました。

しかし、『もののけ姫』の作業が終わると、安藤さんは鈴木敏夫プロデューサーのところへ行って「辞めさせてください」と申し出たそうです。驚いて理由を尋ねると、「宮崎監督のアニメーションのスタイルは、自分が理想としているものとは違う。他のスタジオへ行って自分のやり方を試してみたい」とのこと。

でも、鈴木さんとしては彼のような優れた人材を、簡単に失うわけにはいきません。そこで安藤さんを引き留めるために、「『もののけ姫』では宮崎駿が全てを指揮していたが、次回作では君のやり方でやっていい」と約束したのです。

こうして安藤さんは、ジブリに残って『千と千尋の神隠し』の作画監督をやろうと決意しました。しかし、それは同時にベテラン・アニメーター:宮崎駿との、熾烈な戦いの幕開けでもあったのです。なぜなら、宮崎さんのやり方は映像のインパクトを優先するため、正確なデッサンをわざと狂わせたり、時にはキャラクターの背の高ささえ場面によってコロコロ変えるなど、まさに自由自在。

それに対して安藤さんは、完璧に正確なデッサンやリアルな動きなど、自分が考える”正しいアニメーション”を目指していたからです。つまり宮崎監督の方向性とは真っ向からぶつかるわけで、宮崎さんが修正したカットと安藤さんが修正したカットには、明らかな違いが見受けられました。

最初のうちは宮崎さんも我慢して、安藤さんのやり方を受け入れようとしたものの、やがて我慢が出来なくなったのか、途中からどんどん”宮崎色”が強くなり、最終的にはいつもの「宮崎アニメ」に戻ってしまったらしい。

そんな安藤さんは『千と千尋の神隠し』の作業中、どんな心境だったのでしょうか?スタジオジブリを辞めた後、元ジブリのスタッフ達と対談した会話が面白かったので、一部を抜粋してみます。

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吉田健一:絵柄も含めて(宮崎さんに)抵抗しているし、それによって画面に出てくる印象を変えたいっていう安藤さんの気持ちは感じていました。だから劇場に観に行った時は、やっぱり、ものすごい闘いの跡が見えましたね(笑)。千尋が最初の方で、ワーッて階段を降りていって、ベターンってなるところ。あそこはやっぱり、あの作品の岐路だったかなって気がする。その前までの千尋は、もうそれこそ一生懸命やってるんですよ。いや、あそこで変わるっていうのも、最終的に計算に入ってたと思うんだけど。

安藤雅司:いや、計算は全然入ってなかった。

吉田:入ってなかったんだ(笑)。そのあともチマチマ変わってるし。

安藤:というか、そういうストーリーだと最初から解っていれば、見せ方も違ったんじゃないかな。

吉田:ああ、宮崎さんがどんどん絵コンテを新しく出してくるから。あの絵コンテが上がってきた時は、ビックリしたでしょう?

安藤:「階段を千尋がゆっくり降りてきて…」っていう話を宮崎さんに聞かされて。それは、少女の心情として、非常にいい表現だなと思ったんですよ。そしたら宮崎さんが、「いや、一方では愚図な千尋を動かすための誘惑として、踏み板を外してダダダーって走らせてしまおうか、とも思っちゃったりするんだよね」みたいなことを、演出助手に言ってるんですよね(笑)。演出助手がまた、そういうのが好きでね。「いいですね、いいですね!」って。そして、次に上がってきた絵コンテを見たら、階段を踏み外して一気に駆け降りていくものになってて(笑)。

吉田:壁に貼りつきますからね、ベターンって(笑)。

安藤:それでも、まだ軌道修正しながらやっていけばいいかと思ってたんだけど、徐々に、一方向にしかシフトしていかないような作品になっていったんで、苦しかったんですよ。最初は、そうじゃない作品を作るんだっていう思いがあったから。

僕には、千尋という少女を可愛くしないっていうことが、ものすごい挑戦だと思えたんですよ。というのは、アニメーションで「普通の少女を描きます」と言ったって、実際に出てくるものは、たいがい可愛く描かれているじゃないですか。「普通の少女」と言いながら、見てくれが可愛い。性格的にどんなに普通の少女だと言い張っても、見てくれが可愛いから、見る側はどうしても少女を「可愛い女の子」として見てしまう。ひねくれた言い方をしたら、「ヒロインは可愛いというアニメの常識」に沿った見方になってしまう、そんな感じだと思うんです。それをちょっと突き放すということなんですよ。言ってみれば、見てくれを可愛くしないというのは、本当に「普通の少女」を描くという、大きな挑戦だと思ってたんです。違いましたけどね(笑)。

吉田:いやあ、でもやっぱり無理ですよ。というか、それをやるんだったらすごく太らせるとかね。本当に見た目もブサイクに変えないと。アニメって結局そういうものですよ。そういう演出は、今敏さんの方がやるんじゃない?例えば『東京ゴッドファーザーズ』だと、あの主人公の女の子、割と可愛いじゃないですか?けれど、過去のシーンになるとすごく太ってる。安藤さんはああいう方が好きってこと?

安藤:いやいや、そういうわけじゃなくて。ブサイクでも、時間とともに本人なりの頑張りみたいなものが見えていって、切り替わった時に、同じ造形なんだけど、なんか行動に対して愛嬌が滲み出ている。行動にというか、想いに対してって言うべきなのかな。

(中略)

だから、ブサイクな女の子を描きたいというんだったら、本当にブサイクに描くしかない。普通の女の子を描くんだったら、普通の部分っていうものを、本当にバランス良く普通に描いちゃうと、結局「可愛い」という方向にしか行かないんじゃないかって。「マイナス面をいかに強く出すかということをしないと、普通の女の子になってくれないというのがアニメーションの特性だね」っていうような話をしていて。

つまり僕の『千と千尋』に対しての反省点というのは、「千尋をブサイクな顔に描けなかった」ことではなくて、「最初から可愛く描いときゃ良かった」っていう。そっちの方がね、あの内容としては合っていたんじゃないかなって。千尋がふてくされていても、設定として可愛くない必要はないんですよ。ふてくされている、という状況があればいいんですからね。

(「宮崎駿の世界―クリエイターズ・ファイル」より)


というわけで、『千と千尋の神隠し』を制作中の安藤さんはどんな心境だったのか、本人が詳しく語っているんですけど、かなり悩んでいたみたいですねえ(^_^;)

基本的に「アニメのヒロインといえば美少女」というのが世間のお約束となっていて、それは宮崎アニメと言えども例外ではありません。しかし、安藤さんはそういう風潮を覆すために、従来の「宮崎アニメ型美少女」からの脱却を図り、敢えて「普通の女の子」または「ちょいブサイクな女の子」を描こうと試みました。

そのため、『千と千尋の神隠し』での安藤さんは、”宮崎監督の描く千尋”にずっと抵抗を示し続け、宮崎監督が描いた絵の上に紙を乗せて修正を繰り返していましたが、その戦いは熾烈を極め、精神的にも肉体的にも限界までストレスをかけ続けた結果、作業が終わった時には髪の毛が全部抜け落ちていたそうです。恐ろしや!


宮崎駿が描いた『耳をすませば』の絵コンテが凄い

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本日、金曜ロードSHOW!にて近藤喜文監督の『耳をすませば』が放送されます。この作品は宮崎駿さんが脚本と絵コンテを描いて近藤さんが監督したものですが、実は「宮崎監督の絵コンテを他の人が監督する」というパターンは珍しいんですよね。

それまでのジブリでは、ずっと宮崎駿と高畑勲の2大監督を中心として作品を作っていたから、「そろそろ他の人にも監督の機会を与えるべきなんじゃないか?」みたいな話が持ち上がり、『海がきこえる』では望月智充さん、『猫の恩返し』では森田宏幸さんがそれぞれ監督を務めました。

でも、それらの作品では宮崎さんは絵コンテを描いていません。その後、『ゲド戦記』や『借りぐらしのアリエッティ』が作られた際も、宮崎吾朗監督や米林宏昌監督が自分で絵コンテを描いているのです。つまり、宮崎さんの絵コンテを宮崎監督以外の人がアニメ化した例は、『耳をすませば』だけなんですね。

ちなみに、『魔女の宅急便』の監督も当初は宮崎さんじゃなくて、別の人がやる予定でした。それが『この世界の片隅に』の片渕須直さんです。当時、片渕さんは演出としてジブリで働いていましたが、『魔女の宅急便』の監督に内定し、宮崎さんは脚本とプロデュースだけの予定だったそうです。

ところが、当初は「若手監督の劇場デビュー作品だから、80分ぐらいの小規模な映画にしよう」と考えていたものの、宮崎さんがどんどんアクションシーンを追加した結果、スペクタクルな場面を盛り込んだ100分以上の大作なってしまい、「これを新人監督に任せるのは荷が重い」と判断。結局、宮崎さんが自分で監督することになったという。

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で、『耳をすませば』の話ですけど、この映画のなにが凄いって、「宮崎駿が絵コンテを描いていること」なんですよ。いや、『ナウシカ』や『ラピュタ』のような冒険活劇ならともかく、「女子中学生の淡い恋愛ドラマ」ですからね。それを、当時54歳の宮崎駿が描いてるわけです。これはキモ…いや凄いと言わざるを得ません!

同級生の男子にいきなり告られてドギマギする雫(しずく)や、好きな男の子が遠い所へ行くことを知らされ、切ない気持を隠して明るく振る舞う雫など、女子中学生の揺れ動く心情と甘酸っぱい青春物語を、54歳の宮崎駿が描いているという驚くべき事実!

ただ、絵コンテを見てみると、杉村が雫に告白するシーンでは、「しずく、ビックリして顔が真っ赤になる」的な感じで状況を説明してるだけなんですけど、「ずっと前からお前のことが好きだったんだ!」と叫ぶ杉村のところには「いけ杉村!いっちまえ!押せ!押せ!」みたいなことが書いてあるんですよ。

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完全に杉村の方に感情移入してるじゃん!宮崎さんの心の声がダダ漏れに出てるよ!ラストの「しずく、大好きだッ!」の場面も「聖司、コートごとしずくをギュッと抱きしめる。イタリアで訓練してきた」とまで描いてある。しかも「エエイ、言わせちまえ!」って、またもや男子の側に感情移入してるし(笑)。まあ、でも男が女子中学生の気持ちになって絵コンテを描くのは難しいんでしょうねえ(^_^;)

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一方、近藤喜文監督が作った『耳をすませば』本編の方は、宮崎さんが描いた絵コンテとはかなりニュアンスが異なっていて、女子中学生の雫側に感情移入しているような、繊細で女の子らしい仕草が目立ってるんですよ。

どうやら、宮崎さんと近藤さんとの間で、キャラクターに対するイメージにかなりギャップがあったらしく、宮崎さんは雫を「考えるよりも先に身体が動くタイプの女の子」と考えていたのに対し、近藤さんは「考えてから動く思慮深いタイプの女の子」と捉えていたようです。

そのため、完成した映画を見た宮崎さんは「雫はこんな女の子じゃないよ!」と怒り、キャンペーン中の記者会見でも、記者からの質問に近藤監督が答えた後、「それは違う。監督は何もわかってないんです!」と否定するなど、二人の間には常に火花が散っていたらしい。

このように、『耳をすませば』に関しては、宮崎さんと近藤さんとの間で見解の相違があったようですが、鈴木敏夫プロデューサーは「それが逆にこの作品を魅力的なものにしている」とコメントしていました。

たしかに宮さんの絵コンテ通りにやっていれば、雫はもっと明朗快活な女の子になっていたでしょう。だけど、近ちゃんが演出した雫はどこか上品で現代的な子になった。そして、それがこの作品を魅力的なものにしているのも間違いないんです。 (「ジブリの教科書9 耳をすませば」より)

男子キャラに肩入れした宮崎さんの絵コンテを、近藤さんが女子目線で丁寧に演出したことで、ちょうどいいバランスに仕上がったのかもしれませんね(^_^)


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原作者もびっくり!劇場アニメ『耳をすませば』制作裏話

『スター・ウォーズ展』へ行って来ました

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

現在、僕の地元では『スター・ウォーズ』に関するイベントをやってるんですが、「時間がある時に行けばいいや」と余裕をぶっこいて先延ばしにしていたら、いつの間にか終了しそう(開催期間は2月5日まで)になっていたので、慌てて見に行って来ましたよ。

このイベントは、過去に六本木ヒルズで開催された『スター・ウォーズ展 未来へつづく、創造のビジョン』と同じ催しらしく、現在、全国各地を巡回しているようです(名古屋、大阪、北海道など)。なので、すでに見た人も多いと思いますが、僕の住んでいる田舎ではなかなかこういうイベントって回って来ないんですよねえ(^_^;)

なお、スター・ウォーズの魅力である壮大な“サーガ”を、撮影で使用された小道具や衣装など約150点で振り返り、著名なアーティスト達が手掛けたイラストや絵画で広大な世界観を、さらに深く掘り下げようというコンセプトによって構成された会場は、中に入ると7つのゾーンに分かれていました。


1.「スター・ウォーズの原点」

このゾーンでは、ジョージ・ルーカスが映画を構想する原点になったコンセプトアートを展示。ラルフ・マクォーリー(旧三部作のデザイナー)の設定画などが多数並んでいました。

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2.「サーガと運命の肖像」

実際に撮影で使ったキャストの衣裳や小道具が展示されていました。ハン・ソロのブラスターやダース・ベイダーのマスクなど、超貴重な劇中のアイテムを至近距離で堪能できる機会は滅多にないので、じっくり見るべし(笑)。

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3.「フォースの光と闇」

映画で使用された本物のライトセーバーと、フォースをテーマにしたアート作品を展示。オビ=ワンやダース・ベイダーなどの様々なライトセーバーが、ケースの中に陳列されているという、ファン垂涎の空間です(笑)。

「ヨーダのライトセーバーって小さいんだな〜」とか思いながら見ていると、なぜかルークのライトセーバーだけ触れそうな状態で飾ってあるんですよ。一瞬「触ってみようか…」と思ったんですが、確実に怒られるのでやめておきました(笑)。

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4.「戦いと兵器」

このゾーンでは、スター・ウォーズの戦闘シーンに登場した様々なマシンや乗り物などを展示。スター・デストロイヤーやミレニアム・ファルコン号など、お馴染みのメカのミニチュアがズラリと並ぶ様は圧巻です(ただし、撮影に使用されたミニチュアじゃなくて、市販の模型をディテールアップしたもの)。

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5.「銀河と生態系」

イウォーク族やジャワ族など、スター・ウォーズに登場した色んな宇宙生物の衣装(ぬいぐるみ?)や模型を展示。ヨーダやチューバッカもこのゾーンです。なお、ジャバ・ザ・ハットの隣には、炭素冷凍されたハン・ソロが飾られていましたよ(笑)。

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6.「ドロイドが見たサーガ」

R2-D2とC3POが、1から6までの全エピソードを振り返るというコンセプトで、BB-8みたいな有名なドロイドや、あまり見たことが無いドロイド(ピット・ドロイド)も展示されていました。

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7.「アートに広がるギャラクシー」

ストームトルーパーのヘルメットを題材に、様々なポップアート作品を制作。ピンクのトルーパーやスイカみたいなトルーパーなど、色んなヘルメットがディスプレイされていました(スター・ウォーズ本編とは直接関係なし)。

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という感じで、映画『スター・ウォーズ』シリーズに関する様々なアイテムや、撮影に使われた小道具などを間近で見られて嬉しい限りでした(なお、会場内は撮影禁止のため、上記の写真は全てイベントの宣伝用等としてネット上に公開済みの画像を使用しております)。

まあ、スター・ウォーズに興味がない人にとっては何が面白いのか良く分からないかもしれませんが(笑)、基本的に僕はこういう「映画で使われた衣装や撮影用小道具」を見るのが好きなので、『スター・ウォーズ』に限らず、『ロボコップ』や『平成ガメラ』など、この手のイベントがある時には出来るだけ行くようにしてるんですよ。

中でも『スター・ウォーズ』関係の展覧会は過去に何度も開催されていて、例えば2003年に京都国立博物館で開かれた『アート オブ スター・ウォーズ展』では、実際に撮影で使用されたミレニアム・ファルコン号のミニチュア模型や、実寸大のスピーダー・バイクなど、200点以上の貴重なアイテムが展示されていました。

また、2005年に福岡のスペースワールドで開催された『スター・ウォーズ フェスティバル』では、ミニチュアや撮影用プロップだけでなく、なんと実寸大(?)のXウィングが展示スペースのド真ん中に飾られていて、見た瞬間「うわあああ!」ってなったのもいい思い出です(笑)。

今回の展覧会ではそういうボリューミーな展示物が無かった(レプリカも多かった)のがやや残念ですが、スター・ウォーズの世界を満喫できる絶好のチャンスには違いなく、他の地域でも今後開催されるかもしれないので、ファンの人は機会があれば是非行ってみてはいかがでしょうか(^_^)


スター・ウォーズ 制作現場日誌 ーエピソード1~6ー CREATING THE WORLDS OF STAR WARS 365 DAYS
ジョン・ノール(ILM VFXスーパーバイザー)
玄光社

キャラクター造形の舞台裏やコンセプトアートや小道具、巨大な美術セットや精巧なミニチュアセットの制作過程など、撮影の裏側を収録した豪華写真集です

Star Wars Chronicles Episode IV, V AND VI - Vehicles
高貴準三 高橋清二
学研プラス

ミレニアム・ファルコンやスター・デストロイヤー、試作ミニチュアから実寸大セットまで、『スター・ウォーズ』ビークル世界の精髄が圧倒的ボリュームで迫るプロップ写真集の最新決定版!買ってしまいました(笑)。高かったけどいい本ですよ(^_^)

Sculpting a Galaxy: スター・ウォーズ 特撮ミニチュア模型の世界[ハードカバー]
ローン・ピーターソン ジョージ・ルーカス リック・マッカラム
ボーンデジタル (2016-03-16)

ルーカスフィルム・アーカイブに眠る貴重な写真資料300点以上掲載!新旧3部作に使われた特撮模型と製作の舞台裏を解説した究極の写真集!これもオススメです(^_^)

アート・オブ・ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー
ジョッシュ・クーシンズ
ヴィレッジブックス (2016-12-16)

最新作の製作過程を、スタッフやキャストの独占インタビューや膨大なアートワークで紐解いた公式アートブックです

『バイオハザード:ザ・ファイナル』Blu-ray&DVD発売決定!

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

シリーズ最新作にして完結編となる『バイオハザード:ザ・ファイナル』。昨年末に公開されて大ヒットを記録したこの作品が、なんと早くもブルーレイ化されることになりました。早えええ!

個人的には先月映画館で観たばかりだったので、「ぐぬぬ、まさかこんなに早くソフトがリリースされるとは…」と驚かざるを得ません。あ、そういえば、まだこの映画の感想を書いてなかったよ、トホホ(^_^;)

しかも種類が豊富で、Amazon限定版を含めると怒涛の計11バージョンを一挙発売という凄まじさ!多い!中でも一番豪勢(?)なのは、シリーズ全6作品を網羅した「バイオハザード ブルーレイ アルティメット・コンプリート・ボックス」になるんでしょうかね。

内容は、本編と特典を合わせてディスク10枚組の大ボリューム、さらに「ジャパン・プレミア映像特典ディスク」が1枚プラスされるようです。しかも、ディスクを収納するボックスが、アンブレラ社特別研究所「ハイブ」のレーザートラップルームを再現した形になっているという凄いこだわり(笑)。

まあ「なんでや?」という気持ちは 無きにしも非ずですが、映画『バイオハザード』シリーズのファンにとっては、あのレーザートラップこそが映画版バイオの代名詞であり、日曜洋画劇場で放送されるたびに「あのシーンをカットすんなよ!」と思いながら見てしまう所以なのでしょう(違うかもしれないけどw)。


【Amazon限定、先行発売商品一覧】

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【Amazon.co.jp限定】バイオハザード:ザ・ファイナル ブルーレイ スチールブック仕様 (初回生産限定)(特典Blu-rayディスク付) [Steelbook] [Blu-ray]

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明石家さんま激白!『君の名は。』の元ネタは『ひょうきん族』?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先日、明石家さんまさんがパーソナリティを務めるラジオ番組『ヤングタウン土曜日』(2017年2月11日放送)の中で、大ヒットアニメ『君の名は。』について語ってたんですけど、なんと「『オレたちひょうきん族』に関連するシーンが出て来た」と告白!

『オレたちひょうきん族』と言えば、1981年から89年にかけて放送されたバラエティ番組で、ビートたけし、明石家さんま、島田紳助、山田邦子、片岡鶴太郎など、多数のお笑い芸人が出演し、当時は大変な人気を博していました。そんな番組と『君の名は。』がどう関係しているのでしょうか?

というわけで本日は、そのラジオの放送内容から一部を抜粋して書き起こしてみましたよ(なお、ラジオの出演者は、明石家さんまさん、村上ショージさん、「モーニング娘。」の工藤遥さん、石田亜佑美さん、飯窪春菜さんです)。



明石家さんま 「『君の名は。』観に行かせていただきました」

工藤遥 「どうでしたか、どうでしたか?」

明石家さんま 「いや、すごいのは、月曜日の昼間に行ったんですけど、半分ぐらいお客さん入ってた、まだ」

工藤遥 「まだ1日6回とか上映してますからね〜」

明石家さんま 「らしいな〜。8月からやってて、2月のこの時期にまだ半分入ってるって、しかも平日の昼間やのに!びっくりしたわ〜」

飯窪春菜 「すごいですよね〜」

明石家さんま 「大阪で観たんですけど、それであんなにお客さんが入ってるの、ちょっと驚いた。あれは大体、東京の人が街並みとか見て感動しはるんやろうけど」

工藤遥 「そうですね〜」

明石家さんま 「それで、最後のシーン、あるやろ?二人で”君の名は”って言うシーン」

工藤遥 「はいはい!」

明石家さんま 「あそこ、河田町っていう、昔『オレたちひょうきん族』で死ぬほどロケした場所やねん

工藤遥 「え!?」

明石家さんま 「あの階段で死ぬほどロケして、もうアミ取りおばさんとかいうキャラがあったり、あの階段でたけしさんと何回も絡んでコント作ったり、それがラストシーンのあの階段やねん(笑)」

工藤遥 「えええ〜!」

明石家さんま 「四谷ですれ違ってバーッて走っていくやろ?」

工藤遥 「神社のとこですよね?」

明石家さんま 「そうそう、あれ四谷の河田町の階段やねん。そこで、俺とたけしさんがすれ違いながら”社長漫遊記のコント”やってて、明石くん!言いながら振り返って、社長!バッと盛り上がっていきましょう!みたいな、そういうシーン撮ってんねん」

工藤遥 「へえええ〜!」

明石家さんま 「それがラストシーンやったから、もう笑うてしもて(笑)」

石田亜佑美 「じゃあ、さんまさんが元ネタみたいな感じじゃないですか?

明石家さんま 「そうそう!だから監督(新海誠)も、あそこ『ひょうきん族』で使ってるって知ってると思うねん」

工藤遥 「ええ〜!」

明石家さんま 「と思うで?だって、死ぬほど『ひょうきん族』であの階段使ってるから。フジテレビの裏口から出て、右に行ったところのすぐやねん」

飯窪春菜 「観に行って良かったですね!」

明石家さんま 「良かった!あそこ俺のロケ地や!ちっとも俺のロケ地ちゃうねんけど(笑)、ラストシーン見て”完全に俺のロケ地や〜!”って(笑)」

工藤遥 「すごいですね〜!」

村上ショージ 「アニメでしょ?そんなにリアルに描かれてるもんなんですか?」

明石家さんま 「せやねん、どこの場所かわかるぐらいリアルに描かれてるねんな。だからまあ、十代の子がハマるのはわかるわ。わかるけど……ただ俺は後半で、あの〜自転車借りよるやんか?助けに行くために」

工藤遥 「はい」

明石家さんま 「自転車借りてザーッって行って、途中で自転車壊して、そんで走って帰って来たら、自転車取られた男の子、すぐスクーター乗ってるやんか?」

工藤遥 「あはは(笑)」

明石家さんま 「あれ……最初からスクーター乗ってたら良かったのに(笑)

工藤遥 「なんでそう、夢の無いことを思いながら観るんですか!(笑)」

明石家さんま 「いや、なんでお前自転車乗るねん!って(笑)」

工藤遥 「あれは学校用の自転車なんですよ!スクーターで学校へ行くわけにいかないじゃないですか?」

明石家さんま 「いかないの?そもそもあいつスクーターの免許持ってんの?」

工藤遥 「いや、わかんないです」

村上ショージ 「いつ免許取ったんや?あんたら観ててそういう矛盾感じへんの?」

工藤遥 「えええ〜!?」

明石家さんま 「いや、だからあそこ見て”歩いてても良かったのに”って思ったんや。そんで、スクーターがあの後、活躍するわけでもないよな?何でスクーターに乗らしたん?」

工藤遥 「それは、自転車でも間に合わない、徒歩でも間に合わない、だからスクーターっていう…」

明石家さんま 「そういう設定やろ?無理からそういう設定にしてはんのか?」

工藤遥 「たぶん、高校生が考える最速の手段だったと思います」

明石家さんま 「あ〜、なるほど、それでバッタリ合うわけか。そんなバカな(笑)」

村上ショージ 「いや、アニメですから(笑)」

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というわけで、明石家さんまさんによると、『君の名は。』のラストシーンに登場する階段は、『オレたちひょうきん族』を放送していた時代に散々ロケで使用した場所だった、ということらしい。

この階段は、四ツ谷駅またはJR信濃町駅から徒歩10分程度の場所にある「須賀神社」の階段で、映画の公開後は”聖地巡礼”でファンが殺到しているそうです。

それにしても、新海監督は本当に『オレたちひょうきん族』からあのシーンを思い付いたんでしょうかねえ?世代的には合っているのでTVを見ていた可能性はありますが、「影響を受けているか?」と言われると…う〜ん、どうなんでしょう?

いやもしもですよ、もし仮に『君の名は。』のラストシーンで、瀧と三葉がすれ違いながら振り返るというあの名場面の元ネタが、実はビートたけしと明石家さんまだった、ということになれば、ロマンチックなムードがブチ壊しになりそうな気が…。それはちょっと嫌だなあ(^_^;)


※追記

「さんまさんの勘違いじゃない?」との指摘があったので調べてみたんですが、まず『君の名は。』のラストに出て来る階段は、新宿区須賀町にある「須賀神社」の階段なんですね(ちなみに下から見るとこんな感じです↓)。

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一方、明石家さんまさんは、「新宿区河田町にある神社」の階段だと言っているんですよ。この時点で微妙に場所がズレてて、さらに旧フジテレビ本社の裏手にその神社があったという。現在のフジテレビは港区台場に社屋を構えていますが、移転する前は新宿区河田町に本社があったんですね。

で、旧社屋の周辺を調べてみると、「金弁財天(金辨戝天)」という神社を発見。さんまさんが言っていたのは、恐らくこれじゃないのかなと。ただ、もしかしたら『君の名は。』に出て来た階段とそっくりな階段だったのかもしれません。だとすれば、さんまさんが間違えても仕方がないよなあ…そう思いながら「金弁財天」の階段を調べてみました。それがこちらです↓

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うおお〜い!全然違うじゃねえか!どこが「あのラストシーン」なのよ!?いや、もしかすると、さんまさんの記憶の中では、これが『君の名は。』の階段みたいになっちゃってるのかもしれませんが、それにしても違いすぎでしょ!?いや〜、ビックリしたなあ(^_^;)


君の名は。 English edition
RADWIMPS
ユニバーサル ミュージック (2017-02-22)

塚本晋也監督『野火』ネタバレ映画感想/メイキング解説/評価

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■あらすじ『太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、部隊を追い出されて野戦病院行きを余儀なくされた。しかし負傷兵だらけで食糧も困窮していたために追い出され、再び部隊に戻るも入隊を拒否されて途方に暮れる。行く当てもなく、一人で島を彷徨う田村だったが、やがて狂気の世界へと足を踏み入れていき…。『鉄男』や『六月の蛇』などで国内外に知られる塚本晋也監督が戦争の愚かさと悲しみ、そして人間の力強さを描いた衝撃の問題作!』

どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

遅ればせながら、2015年に公開されて話題になった塚本晋也監督の戦争映画『野火』をようやく鑑賞しました(近所の映画館でやってなかったので)。本作は、小規模な上映ながらも映画ファンから高く評価され、第89回キネマ旬報ベスト・テンでは日本映画部門で第2位を獲得した作品です。

さらにヴェネチア国際映画祭でワールドプレミア上映後、トロント国際映画祭や釜山国際映画祭など、北米・南米・アジア・ヨーロッパ全27ヵ国で37の映画祭に参加し、様々な国と地域で上映されまくり、海外の映画関係者からも大いに注目を集めました。

そんな『野火』を初めて観て、あまりにも壮絶な内容に驚愕したんですけど、僕がそれ以上に驚いたのは”映画の制作過程”なんですね。原作は大岡昇平の同名小説で、塚本監督が『野火』を読んだのは高校生の頃。当時からすでに8ミリで映画を撮っていたので、「これを映画にしたらどうなるだろう」と考えていたそうです。

高校生だった塚本さんがこの本を読んで特に印象的だったのは、フィリピンの圧倒的に美しい風景描写と大自然のスケール感。その美しい景色の中で、孤独な兵隊が泥だらけで彷徨っているという不思議なコントラストが脳裏に浮かび、そのビジョンをいつか映画で描きたい!と思っていたらしい。

しかし、そこから映画化までの道のりがとんでもない険しさで、何度も試みては頓挫し続け、苦節40年を経てようやく実現した奇跡の映画だったのですよ。というわけで本日は、塚本晋也監督がどうやって『野火』を撮ったのか、その制作過程をざっくり振り返ってみたいと思います。

さて、原作の『野火』に感銘を受けた塚本少年は、やがて『鉄男』で商業監督デビューし、様々な映画を手掛け、30代になってからは本格的に『野火』の映画化を検討するようになりました。そして90年代末には、「田村役:小林薫、永松役:村上淳、安田役:ビートたけし」という豪華キャストで、製作費6億円の企画を立ち上げるものの、残念ながらボツに。

その後、フランスのテレビ局や海外の映画会社に企画を売り込みますが、やはり予算の面で折り合いが付かず、「1億円ぐらいなら出せる」と言われても「海外ロケの商業映画としては、ちょっと厳しいな…」と考え、結局こちらも流れてしまいました。

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こうした失敗にもめげずに頑張って企画を出し続けていた塚本監督ですが、近年は「『野火』の映画化なんてどうでしょう?」と言っただけでプロデューサーから「ないです」とハッキリ言われるようになったという。もはや金額の問題ではなく、今は「日本兵がボロボロになる映画」というだけで、企画自体が通らないらしい。

そんな”戦争映画がタブー視されているような雰囲気”を察知した塚本監督は、「これはヤバいんじゃないか…?」と、世間の風潮に対する危惧がますます募っていったそうです。また、戦後から数十年が経過し、戦争体験者がどんどんいなくなっていく現状を見て、「今のうちに話を聞いておかなければ間に合わない!」と強く思うようになったとか。

こうして戦争体験者の人たちにインタビューしたり、その人が「フィリピンへ遺骨収集に行く」と聞けば「同行させてください!」と頼み込んで一緒にフィリピンまで出かけたり、様々な体験を積み重ねるうちに、「もう絶対に『野火』を映画化しなければ!」という気持ちが抑え切れなくなっていったのです。

そしてついに塚本監督は、「誰もお金を出してくれないなら、もう自分で作るしかない!」と考え、『野火』を自主制作映画として撮ることを決意しました。後に監督は、その時の心境を以下のように語っています。

その頃、周りのプロデューサーさんに「一番やりたいのは『野火』なんです」と言うと、「それだけは勘弁」みたいな反応だったんですよ。まるで、『野火』のような作品を作ることが不謹慎であるかのような空気が出来あがっていて、そうなると、この先『野火』にお金を出すところは絶対にない。あとは作ることも出来なくなるか、作っても総スカンを喰らう世の中になるか…。


それなら今のうちに、このイヤ〜な空気に一石を投じる映画を作るしかない。平和ボケした人たちの頭をハンマーでひっぱたくような映画を、世に送り出さねばならない。だからとにかく「やる!」と決めて、何も考えず、虫が自動的に蠢くように準備を進めていきました。 (「塚本晋也『野火』全記録」より)

塚本晋也「野火」全記録
塚本晋也
洋泉社

映画の裏話が満載の素晴らしいメイキング本で、非常に参考になりました(^_^)

こうして自主制作の段取りを始めたわけですが、なんと当初は”アニメ化”の案も検討していたそうです。もともと塚本監督は『鉄男』でもコマ撮りアニメの表現を取り入れていたので、「アニメでもいけるんじゃないか?」と本気で考えていたらしい。

しかし、その時塚本監督が計画していたものは、「監督自身が全ての登場人物の動きを一人で演じ、その動きを合成してアニメ化する」というものでした。そこで試しに「田村が上官に殴られるシーン」を一人で演じてみたところ、途方もない時間を要することが判明し、「完成まで10年かかるかも…」と思って諦めたそうです(笑)。

そんなことをやっているうちに「フィリピンへ行こう!」となり、助監督を連れてフィリピンへ。さらに現地に付いたら「実際に『野火』のルートを歩こう!」となり、ジャングルを歩いて小説に出てきたカンギポット山を登ったら想像以上に過酷なルートで、「気付いたら遭難していた」とのこと(笑)。

後に塚本監督は「あんなにつらいロケは生まれて初めて」「地獄のようだった」とコメントしていますが、その甲斐あって数々の素晴らしい映像をゲットし、最初に監督が思い描いていた「圧倒的に美しい風景」を『野火』に取り入れることが出来たのです。

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しかし、色んな都合で全てのシーンをフィリピンで撮影するわけにはいかないため、日本国内でもロケを敢行。大掛かりな銃撃シーンや野戦病院の爆破シーンなどは全て国内で撮影することになったのですが、予算も時間もかかるので「どこで撮ろうか?」と悩んだらしい。

そんな時、助監督の一人が「埼玉県深谷市ならいけるかも」と思い付き、早速「深谷フィルムコミッション」に連絡したところ、「ぜひやりたい!」と前向きな返事が。「でもフィリピンが舞台でしょ?深谷にフィリピンあるかなあ?」と多少の不安要素を感じつつ、何とか深谷市をフィリピンに見立てて撮影が実行されました。

特に「野戦病院の爆破」は、実寸大のセットを建ててそれを本当に爆破するという、本作の中で最も大規模な撮影であるため、監督もスタッフも気合いが入りまくり。入念な打ち合わせの後、深谷市の新井緑地にセットを組んで、日が沈んだ後に一気に爆破!

事前に市役所へ連絡を入れ、地元の消防団にもポンプ車を手配してもらっていたにもかかわらず、想像以上の凄まじい大爆発で、近所に住むお爺ちゃんが空襲と勘違いしたり、地面が揺れるほどの轟音が鳴り響いて消防車が7台も駆け付けるなど、周辺は大騒ぎになったそうです。

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また、大勢の日本兵が機関銃で撃ち殺される「大殺戮シーン」は、撮影日が12月の真冬だったため、「凍え死にそうなほど寒かった」らしい。設定上は酷暑のジャングルなので衣装は半袖、しかもボロボロに切り刻んであるから、エキストラの人たちは冬の冷たい風に晒されてガタガタ震えていたという。

なお、このシーンではスプラッター映画さながらの人体破壊描写が見どころなんですけど、最初の撮影時にはそんなシーンは存在せず、ほぼロングショットのみで構成されていたそうです。ところが、音響効果を担当した北田雅也さんがそれを見て「引きの画ばっかりなんですね。寄りのカットは無いんですか?」と一言。

すると塚本監督が「どう思いましたか?」と食い付いてきたという。北田さんは「バラバラになった人体とか、もっと残酷なカットがあった方がいいんじゃないですか」と軽く答えたら、塚本監督は「わかりました!」と即答し、いきなりもの凄い量の追加カットが上がって来たそうです。

つまり、「千切れる手足」や「血まみれの顔面」や「溢れ出る内臓」や「頭部を撃ち抜かれて飛び散った脳みそ」など、特殊メイクで再現された凄まじい地獄絵図は、全て後から追加で撮影されたものだったのですよ。これには北田さんも、「あれだけの素材をたったの一晩で撮って来るなんて!」と仰天したらしい。

そんな北田さんも音響の作業で大変な苦労を強いられていました。通常、映画の音をミックスするには1〜2週間ぐらいかかるものですが、『野火』の場合は予算の都合で2日間しかスケジュールが取れず、北田さんはダビングルームに籠りっぱなしで作業を続けたそうです。

しかも、セリフ・効果音・BGMなど、音のミックスにはそれぞれ別の担当者が必要なのに、全ての作業をたった一人でやるハメに!全トラックの音源を全て一人で受け持ち、2日間ぶっ通しで作業を続けた北田さん。その結果、彼の体にとんでもないことが起きてしまいました。以下、北田さんのコメントより。

自分一人しかいないから、全シーン・全カットの音量感を常に記憶してないといけないわけです。なので、それらの音の大きさをどう調整するのか考えながらミックスし続けていったんですけど、だんだん脳が飽和してきて…。ランナーズ・ハイじゃないですけど、スポーツしているような状態になったんですよ。本当に脳がアクセル全開状態だったというか、あんな体験は今まで一度もないです。


で、作業が終わって監督に「どうですか?」って喋りかけようとしたら、口が開かなかったんです。唾液が完全に乾き切って、口の中の皮が全てピッタリくっついた状態で全然開かない。「俺、どうしたんだろう?」と思って無理やりパカッと開けたら、皮がベリッと破れて血が出たんです。びっくりしましたよ! (「塚本晋也『野火』全記録」より)

う〜ん、凄まじい状態ですねえ(2日間、飲まず食わずで作業していたのだろうか?)。なお、そんな北田さんの仕事ぶりに感激した塚本監督が「食事をごちそうします。何が食べたいですか?」と尋ねたところ、なぜか北田さんは「カレー」と答え(口の中が血だらけなのにw)、それに対して塚本監督が「ダメです」と言って二人で釜飯を食べたという、良く意味が分からないエピソードも残っているそうです(笑)。

その他、ボランティアで参加した大勢のスタッフたちも、米軍の護送車を撮るシーンのために「護送車を手作りする」という恐ろしいミッションを依頼されたとか、兵士に群がるハエを集めるために農家や牧場を回って500匹近くのハエを捕まえたとか、深谷市の山道に大量の死体を並べて撮影していたら近所のおばちゃん達が通りかかって通報されそうになったとか、苦労話は枚挙にいとまがありません(ちなみに護送車はダンボールで制作)。

このような困難を乗り越えてようやく完成した映画には、塚本監督が当初思い描いていた「圧倒的に美しい風景と絶望的に過酷な戦場」という強烈なコントラストが見事に活写されており、予算の少ない自主制作映画とは思えないほどのスケール感を漂わせていました。

また、市川崑監督の『野火』(1959年)と比較した場合、市川版も非常に素晴らしい作品なんだけど、塚本版『野火』は悲惨な戦争映画でありながら、どこかユーモラスな部分があるんです。例えば、塚本監督演じる田村が分隊長(山本浩司)に本部を追い出され、野戦病院へ行くけどそこも追い出されてまた戻って来て分隊長に殴られて…というやり取りを何度も繰り返す冒頭シーン。

野火 [DVD]
KADOKAWA / 角川書店 (2015-10-30)

市川崑監督作品

市川版では1回だけなのに、塚本版では本部と病院を何往復もさせていて、ある種のギャグになってるんですね。それから、地面に倒れて体にウジ虫が這っている日本兵を見ながら「やっぱりこうなるのが運命か…」と田村がつぶやくと、その日本兵が「ああ?」と返事するっていう(笑)。

「てっきり死体かと思ったら生きてた」という、これは市川版にもあるシーンなんですが、塚本版の方がよりブラックな可笑しさが強調され、悲惨で残酷な映像なんだけど、所々に妙な緩和が垣間見える(極限状態の中でも人間味が感じられる)、そういう雰囲気が良かったなと(安田を演じたリリー・フランキーさんもいい感じでしたね)。

なお、市川版で田村を演じた船越英二さんは、飢餓状態の日本兵を再現するために2週間の断食を行い、痩せ衰えた姿で撮影現場に現れたそうです。ところが、あまりにも過酷な絶食だったため、クランクイン初日に倒れてしまい、撮影が40日間も延期されたという逸話が残っているらしい。

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それから、塚本版のラストシーンでは、主人公が窓の外に見える炎(野火)を見つめながら終わっていましたが、塚本監督によると「近い将来に起こるかもしれない戦争の炎を見ているという意味合いを込めた」と語っています。実は監督自身は、劇中に何度も登場する「野火」が何を象徴しているのか、良く分からなかったとのこと。以下、塚本監督のコメントより。

あれ(野火)が何を象徴しているのか、実は具体的にはわからないまま映画を作っていました。そんな肝心なところがわからなくていいのかとも思うけど、そのわからなさが面白い。わからないものをわかるようにしていく過程、あるいは、わかりたくて近付いていく過程が、今回の映画作りの旅だったのかなとも思うんです。 (「塚本晋也『野火』全記録」より)

というわけで、映画『野火』の制作過程を調べて様々な苦労があったことを知ったんですけど、同時に「今の日本で戦争映画を作ることの難しさ」も実感させられました。昨年ヒットした片渕須直監督の『この世界の片隅に』も、色んな映画会社に企画を断られ、「だったら自分で作ってやる!」と決意した監督が自腹で制作に着手するものの、途中で資金が底を尽き、クラウドファンディングが成功してようやく完成、という苦労を経ていましたが、経緯がよく似ています。

そういう意味でも、今の時代に敢えてこういう映画を作ったことの価値は大きいと思われ、逆に映画会社から反対されて自主制作になったからこそ、塚本監督の主張をストレートに反映させることが出来た、とも言えるでしょう。外部からの制約を受けずに思い切り作ることが出来る完全インディーズ体制は、むしろこの映画にとってプラスだったのかもしれませんね。

塚本晋也×野火

游学社

監督のインタビューや絵コンテや完成台本などを収録した、映画をより深く楽しむための副読本。こちらもオススメです(^_^)

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』Blu-ray&DVD

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昨年12月16日から公開され、大好評のうちに先日2月17日に上映終了したばかりの『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が、早くもブルーレイ&DVD化されることになりました。

うおおお!キタ━━━(゜∀゜)━━━!!!

パッケージの種類は豊富で、数量限定の『プレミアムBOX』は、トルーパーたちが両面に配置されたスチールブック・ケースや、自由に飾れるアートカード・セット、そしてフィギュアファン注目の「S.H.Figuarts」シリーズからデス・トルーパー スペシャリストが付属!これらがセットになり、オリジナルBOXケースに収納された数量限定商品です。

さらに【Amazon.co.jp限定版】には、これらの商品に加えて「ローグ・ワン オリジナルステッカー」と「オリジナルギフトバッグ(サイズ:約24×15×5cm)」が付属します。もちろんボーナス・コンテンツも充実していて、本編ディスク以外の特典ディスクには、1時間を超える貴重なメイキング映像が収録されるらしい。

『エピソード4』の数時間前の出来事を描いた本作は、渋いストーリーや激しい戦闘シーンなども見所ですが、特にラスト10分の盛り上がりが凄まじく、年季の入ったスター・ウォーズファンから若い人まで幅広い層の観客を熱狂させたそうです。確かにエンディング間際の”あのシーン”は鳥肌モノでしたからねえ。

というわけで、ファンなら迷わず購入し、あの興奮と感動を自宅で何度も楽しみたいところですね。なお、発売日は4月28日となっています(^_^)

東京タラレバ娘と「ダークナイト問題」について

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、テレビで『東京タラレバ娘』が放送されますね。「え?それ何?」って人のためにざっくり説明すると、原作は東村アキコ先生の人気漫画で、「30代・独身・彼氏なしの女子3人組が”東京オリンピックまでに結婚しなきゃ!”と焦り奮闘する姿を面白可笑しく描いたコメディ」です。

講談社の雑誌『Kiss』にて絶賛連載中の人気漫画なんですけど、現実のアラサー女子はこれを読んで笑うどころか「リアルすぎて心臓に悪い!」「なんて恐ろしい漫画なの!?」「もはやホラーよ!」と戦慄しているようです(笑)。

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そんな大ヒット漫画を、吉高由里子・榮倉奈々・大島優子・鈴木亮平・坂口健太郎・田中圭ら豪華キャストで実写化したTVドラマが、日本テレビで放送中の『東京タラレバ娘』なのですよ。放送開始前には「キャラのイメージが違う!」などとファンからの反発もあったものの、スタート後は意外と好評だとか。

ちなみに、『主に泣いてます』や『海月姫』など実写化が多い東村アキコさんですが、自分の漫画が実写化される際、原作者からスタッフに対して注文をつけることは、ほとんど無いそうです。ただし、「どうしてもこれだけは…」というこだわりがあるようで↓

一応「こうしてください」って言おうかなと思う時もあるんですけど、顔合わせとか打ち合わせとかしてると、やっぱりね、私が言ってもどうにもならない部分が多いんですよね。だって、私が迂闊に言ったことで、向こうがすごく大変になったりするじゃん。


ただね、「髪型は一緒がいい」とは言いますね。だから『タラレバ』も、倫子役が吉高さんに決まった時に「髪切って、おかっぱにしてもらえるんですかね?」とはすごく言いましたし、KEYくんも「金髪にしてくれなきゃ嫌ですよ」とは言いました。 (「ユリイカ」2017年3月臨時増刊号より)

さて、そんな『東京タラレバ娘』ですが、映画ファンの間では「ダークナイト問題」と称される因縁のエピソードがあることをご存知でしょうか?それは単行本4巻に収録されているお話で、「偶然出会ったイケメンと付き合うことになった倫子が、彼の強烈な映画オタクぶりに困惑する」という内容です。

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その中で問題になったのは、倫子がイケメンの部屋で一緒に映画を観ることになり、オススメ映画としてクリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』を取り出した瞬間、「出た…『ダークナイト』…。男は大好きだけど女が観ても全然面白くない映画ナンバー1」と心の中でつぶやくシーンです。

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初めてこれを読んだ時は衝撃を受けましたよ。「ええええ〜!?男は大好きだけど女が観ても全然面白くない映画ナンバー1!?女子は『ダークナイト』をそんな風に思ってたのか!?」と。

一応解説しておくと、『ダークナイト』とは2008年に公開されたアクション映画で、クリスチャン・ベール演じるバットマンが、宿敵ジョーカー(ヒース・レジャー)と戦うアメコミの実写版です(ヒース・レジャーはこの映画の撮影後に死去)。

その人気ぶりは凄まじく、全米で公開されるやぶっちぎりの勢いで観客動員数を伸ばし続け、最終的な世界興行収入はなんと10億ドルを突破!当時は『タイタニック』、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』に次ぐ歴代4位の成績を記録しました。

そんな大ヒット映画がまさか「女が観ても全然面白くない映画ナンバー1」だったとは…。しかも倫子は「その映画、好きじゃないんだけど」みたいなことは一切言わず、男の趣味に合わせるフリをして「へー、すごーい」と棒読みで答えつつ、内心は以下のようなことを考えていたわけですよ。↓

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大体なんで男ってアメコミヒーローものの映画が好きなわけ?あんなもん現実にいないのに、よくまぁヒーローの悲哀だとかプレッシャーだとか言って、大体あたし『スパイダーマン』とかも全っ然面白いと思わないし、つーかゴッサムシティて何よ?さっさと捕まえりゃいいじゃないのよ。このジョーカーのおっさんブラブラ歩いてんだからケーサツと軍で一気に捕まえりゃ、こんなん10分で終わる映画よ。

うわー、なんという身も蓋も無い感想でしょうか(笑)。

まあ確かに、女性がアメコミ映画を観て「面白くない」と感じる気持ちは、分からなくはありません。基本的にヒーロー物の映画っていうのは、”独自のお約束”に基づいて世界観が構築されているので、その約束事を受け入れない限り、理解を阻む壁は解消出来ない。そういう作りになっているからです。

しかも、ヒーローが主役の映画には、女性にとって興味を引く要素が入っていないことが多いため、感情移入しづらいという理由もあるでしょう。なのでそういう女性の目には、アメコミ映画というものは単に「ヘンなコスプレをした男が暴れ回っているだけの映画」としか映らないのかもしれません。

それにしても、数あるアメコミヒーロー映画の中で、なぜ『ダークナイト』がナンバー1に取り上げられてるんでしょうねえ?『アイアンマン』とか『X-MEN』とか、他にもヒーロー映画はいっぱいあるのに…。いや、『東京タラレバ娘』だけなら「この主人公はたまたまこういうキャラなんだろう」と納得できるんですが、実は東村アキコさんって、他の漫画でも『ダークナイト』をネタにしてるんですよ。↓

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「バカ!男はみんなみんなダークナイト大好きなんだから!見てるどころか、DVD絶対持ってるんだ!ブルーレイ持ってんだ男は!隙あらばダークナイトの話してやろうって狙ってんだ男ってのはみんな!いっつもいっつもダークナイトのことばっか考えてんだ!バカだあいつら!」 (「主に泣いてます」より)

いや〜、何でしょうかこの「ダークナイトに対する過剰なまでに偏った思い込み」は(笑)。確かに『ダークナイト』は世界中で大ヒットしましたけど、全ての男が大好きってわけでもないだろうし、僕だってブルーレイ持ってないし(笑)。もしかして東村アキコさん、昔付き合ってた男に何度も『ダークナイト』の話をされたとか、そういうトラウマでもあるのかなあ?もう、そうとしか考えられないよ(^_^;)

実際、以前に誰かと対談した際にも「どうして男って毎回毎回『ダークナイト』の話をしたがるんですかね?いったい何年聞かされるんですか、その話を?」みたいなことを喋っていたので、恐らく東村先生の実体験じゃないのかなと(笑)。

ちなみに、先週放送された実写ドラマ版では、イケメン映画オタク役を速水もこみちさんが演じていて「まさか、もこみちにあの”ダークナイトネタ”を吉高由里子がぶっ込んでくるのか!?」と期待したんですが、さすがにそこはスルーされてました。ちょっと残念(^_^)

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ダークナイト(2枚組) [Blu-ray]
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2016-02-24)

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日曜洋画劇場が無くなると映画業界はどうなってしまうのか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

昨日、春の番組改編に伴い「日曜洋画劇場が終了する」というニュースが流れました。これを見た多くの映画ファンからは「また一つ映画番組がなくなってしまうのか…」「残念です」等、老舗の映画番組の終了を惜しむ声が上がっているようです。


テレ朝、大型ニュース番組開始で「日曜洋画劇場」は完全消滅


近年は『バイオハザード』シリーズばっかり放送しているイメージのあった日曜洋画劇場ですが、過去には『ダイ・ハード』『ダーティハリー』『プレデター』『コマンドー』『ターミネーター』『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』などのヒット作を繰り返し放送していたので、これらの作品を「日曜洋画劇場で初めて観た」という人も多いでしょう。

ちなみに僕は、『燃えよドラゴン』『カプリコン・1』『俺たちに明日はない』『がんばれベアーズ』『ワイルドバンチ』『エアポート'75』『スペースバンパイア』『特攻野郎Aチーム』『ゼイリブ』『007/ゴールドフィンガー』『ヒドゥン』『猿の惑星』などを日曜洋画劇場で初めて観ました(リアルタイムでは観られず、ビデオもなかった時代なので)。

余談ですけど、テレビで映画を放送する時って、昔は映画解説者が登場して「映画の見どころ」や「面白ポイント」をわかりやすく説明してくれてたんですよね。淀川長治さん、荻昌弘さん、水野晴郎さん、高島忠夫さん、木村奈保子さんなど、それぞれが独特の口調で語る映画解説は、非常に味わい深いものがありました(^_^)

さて、1966年のスタート以来、50年以上も続いてきた日曜洋画劇場がついに終焉を迎えるわけですが、ここで僕が危惧しているのは、「慣れ親しんだ長寿番組が終わってしまうことの寂しさ」も当然あるんですけど、それ以上に、「映画業界が受けるダメージ」の方が問題なんじゃないか?という点なのですよ。

1980年代にレンタルビデオが登場して以降、それまでは映画館で観るか、あるいは日曜洋画劇場のようなテレビ番組で観るしか方法がなかった不自由な時代は終わり、「好きな映画を借りて来て自由に鑑賞する」という新たなライフスタイルが定着しました。

さらに近年は、Netflix、Hulu、Amazonプライムビデオ、dTVなどの”動画配信サービス”が次々と誕生し、「定額で映画が観放題」という、映画好きにとっては非常に便利な環境が当たり前になりつつあります(レンタル屋もゲオチャンネルやTSUTAYA DISCASなどで参入)。

こういう状況に対して、「もうテレビで映画を放送する必要性がないんだよ」「今はネットで簡単に映画の情報が手に入るし、レンタルや動画配信サービスでいくらでも映画を観ることが出来る」「だから映画番組が消えても全く問題ないし、何の影響もない」みたいな意見を見かけたんですけど、果たしてそうでしょうか?

確かに今は「映画を観るのに便利な環境」が整っていて、”映画ファン”にとっては問題ないかもしれません。しかし、ネットにアクセスして自分から映画の情報を得ようとする人は、元々”映画に興味を持っている人”であり、映画に興味が無い人はそんなことしませんよね?。

NetflixやHuluも同様で、「たくさん映画を観たい人」=「映画好き」だけが契約しているのであって、映画に興味が無い人や、ましてや小さい子供が契約することはないわけです。つまり今の環境はあくまでも「大人の映画ファンにとって便利な環境」でしかないんですよ。

それに対して、テレビで放送される映画はどうなのかっていうと、「たまたまテレビを付けたらやっていた」という経験は誰でもあると思いますが、映画に興味がある人も無い人も年齢も性別も関係なく、不特定多数の人にとって有効なコンテンツなんです(しかもタダで)。

振り返ってみると、1970年代〜90年代頃はテレビ朝日系列の「日曜洋画劇場」、TBS系列の「月曜ロードショー」、日本テレビ系列の「水曜ロードショー(現在は金曜ロードSHOW!)」、フジテレビ系列の「ゴールデン洋画劇場(現在は土曜プレミアム)」、テレビ東京の「木曜洋画劇場」など、各テレビ局によって毎日のように世界の名作がお茶の間へ届けられていました。

当時の子供たちはそういう番組を通じて、アクションやSFやホラーやサスペンスや西部劇や感動的な人間ドラマなど、様々な映画に接することが出来たのです。ここで重要なのは、「自分が知らない映画も勝手に放送してくれる」という点なんですよ。

例えば、もし将来的にテレビの映画番組が全て無くなったとしても、興味がない人は特に困らないし、映画を観たくなったら近所のレンタル屋へ行けばいつでも観ることが出来ます。しかし、そのためには自分で映画を選ばなくてはならないわけで、「偶然知らない映画を観る可能性」はほぼ無くなってしまうんですよ(お金もかかるし)。

確かに今はSNSも発達しているし、情報を得ることに関しては昔よりも圧倒的に容易でしょう。でも、「たまたまテレビでやってる映画を観たら意外と面白かった」という”予期せぬ出会い”みたいなものは確実に減ると思うんです。それは結構、重要なんじゃないかなあ。

あと、「テレビで映画を放送しなくなっても、映画を観る人の総数は変わらないだろう」って人がいるんだけど、いや〜、そうかな〜?子供の頃からテレビで映画を観る経験をしている人は、大人になっても映画を観るわけで、それは”習慣”になってるからなんですよね。

一方、子供の頃に映画を観る経験をしていない人は(全く観ないわけじゃないだろうけど)大人になってからも映画を観る頻度が急に増えたりしません。なぜなら、映画以外の面白い娯楽がいっぱいあるから。つまり、映画を観る必要性を感じてないわけで、そういう人がどんどん増えると、将来的には映画人口が減少していくんじゃないかと(少なくとも増加する要因は見当たらない)。もしそうなったら、映画業界的には厳しい状況になっていくんじゃないかなあ。

というわけで、日曜洋画劇場が終わってしまうのは時代の流れとして仕方がないことなのかもしれませんが、テレビで全く映画を放送しなくなると、もともと映画を観ない人はますます観なくなると思うんですよね。だって映画を観なくても全然困らないんだから(笑)。「金曜ロードSHOW!」と「午後のロードショー」、頑張って〜!

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※追記

今回の記事に対していくつかご意見を頂戴したので、追記にてご返答させていただきます(元の意見はTwitterで来たため、一応、こちらでコメント内容を要約していますが、そのまま載せてもOKであればそのまま載せます)。


●昔は受動的に映画を受け取る機会は多かったが、いざ能動的に趣味化しようとするには大きなハードルが合った。現在は受動的に映画を受け取る機会は減ったが、入口を過ぎればハードルが低い。

要は「テレビで映画を放送していた時代は作品を観るのは簡単だけど、好きな作品の情報を得るのに苦労した。しかし今は、テレビで映画に触れるきっかけが減った反面、情報を得ようと思えばいくらでも手に入る」ということですね。「だからTVで映画を放送しなくなっても変化はない」と。

これ、ほぼ同意見なんですが、「入口を過ぎればハードルが低い」って部分に関しては「そもそも最初の機会が減ること自体が問題じゃないの?」というのが僕の見解なんですよ。まずはそこ(最初のきっかけ)を突破しなければ話にならないだろうと。

テレビで毎日のように映画を放送していた時代は、少なくとも映画に接する機会だけは豊富にありました。その時点ではまだ映画ファンではないかもしれないけれど、最初に種さえまいておけば、多少環境が厳しくても植物は生えてきます(将来の映画ファンが育っていく)。でも、いくら環境が良くなっても、種をまかなきゃ何も生えませんからね。つまり、家庭の中で日常的に映画に接する機会があるかどうかがポイントなんです。


●ネットの口コミや友達経由で何か1つの作品から“新たに興味を持った”人も無数にいるはず。

その”最初のきっかけ”として、「今はSNSが発達してるんだから、口コミでも友達経由で映画に接する機会はたくさんあるはずだ」とのことですが、むしろ”情報が多すぎるんじゃないの?”と思うんですよ。「現在は受動的に映画を受け取る機会は減った」と仰っているように、今は”能動的に”受けとらなければならないからです。

つまり、大量に溢れ返る情報の中から、自分が必要とする情報を自ら選別しなければならないわけです。もちろんキュレーションサイトとか、ネットを有効に活用すれば選別にかかる手間を大きく減らすことは可能でしょう。でも、口コミで「○○○という映画が面白いらしい」という情報を知ったとしても、そこから映画本編へアクセスするまでに、さらにもうワンステップ必要なんですよ。

それに比べてテレビの洋画劇場の場合は、「へー、こんな映画があったのか」という新情報と映画本編が同時に入手できますからね。「ダイレクトに本編が観られる」という点において、TV放送の方が圧倒的に優位でしょう。さらに、ネットには「”映画以外の面白そうな情報”が多すぎて、映画に対する興味が逆に薄れてしまう」というネガティブな可能性が潜んでいるのではないかと。


●80年代〜00年代前半はTVが暇潰しツールの一強だった。しかし今の世代は動画サイト、SNS、友達とラインとかいくらでも時間を潰す先がある。

全く同意見です。だからこそ、ネットによって映画自体への興味が薄れている(もしくは”娯楽としての映画の地位”が相対的に下がっている)とは考えられませんかね?ネットによって若い世代が映画に触れる機会は確かに広がったかもしれないけれど、同時にその世代にとって映画の重要度は下がっていると。面白そうな娯楽が次々と現れている状況の中で、それでも「新たに(映画に)興味を持つ人は無数にいるはずだ」というのは、ちょっと楽観視しすぎじゃないかなあ。だって「時間を潰す先」はいくらでもあるんでしょ?


●時間とともに各メディアのもつ役割とポジションはガンガン変わりつづけてるのに、それを考慮せずに80年代と同じ姿を維持するように求めてもあまり意味がない

仰る通りだと思います。ただ僕は「TVで映画を放送することの意義が完全に無くなった」とは思ってなくて、コンテンツの内容次第では「まだイケルんじゃないの?」と考えています。先日放送された『アナと雪の女王』も19.7%の高視聴率だったし(まあ、別の意味で話題になりましたがw)。

例えば「金曜ロードショー」で『天空の城ラピュタ』を放送する際の「バルス祭り」みたいな感じで、SNSと連動した面白い仕掛けを展開できれば、ある程度の盛り上がりは見込めるんじゃないのかなと(各テレビ局も試行錯誤してるみたいですが)。

あともう一つ、「時間とともに各メディアのもつ役割とポジションはガンガン変わりつづけてる」のは確かにその通りだと思いますけど、「ユーザーに対する直接的な訴求力」という面においては、まだまだTVの優位性は揺るがないんじゃないでしょうか(あくまでも”今のところは”という意味で)。


●TVの洋画劇場は、今の若い世代に対してはもう機能しなくなった(観る人が激減したからこそ打ち切られた)。今あるツールを利用した新しい映画ファン育成の窓口を考えるべき。映画を次代に繋げるためにも。

まあ、「観る人が激減したから云々」は確かにそういうことでしょうねえ。ただ、「今の若い世代はテレビで映画なんて観ない」「だから放送しても無駄だ」というのであれば、放送しなくなったらますます観なくなるだけのような気が…(それとも、最近の小学生はみんなスマホで映画を観てるんですかね?)。結局、「新しい映画ファン育成の窓口」が存在しない状態である以上、「TVで映画を放送する」以外の画期的な方法が生まれれば速やかにそちらへ移行すれば良い、というだけの話だと思います。

念のために言っておきますけど、僕は別に「TVの映画枠は今後もずっと存続させるべきだ!」などと主張してるわけじゃないんですよ。ただ、現状では代案がないから、「それなら残しておいてもいいんじゃないの?」という認識なんです。誤解無きように。

【午後のロードショー】テレビで映画を放送する意義って何?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先日、50年以上もテレビで映画を放送していた老舗の映画番組「日曜洋画劇場」が終了しました。それに伴い、「あ〜、地上波の映画放送枠がまた一つ終わったか〜。これでまた映画を観る人が減っちゃうんじゃないかな〜」という記事を書いたら、「いやいや、そんなことはないと思いますよ〜」的なご意見をいただいたんですよ。

まあ確かに、今はレンタル屋へ行けば好きな映画を借りられるし、動画配信サービスへ加入すれば定額で好きな映画を見放題という時代ですから、TVで映画を観る理由が薄まっているのは間違いないでしょう。でも、「じゃあ今テレビで映画を放送する意義って何だろう?」という点が気になったんですよね。

個人的には、TVで映画を観て育った世代ですから思い入れもありますが、放送する側はそれだけでは続けられないだろうと。そこで本日は、長年にわたって地上波で映画を放送し続けている『午後のロードショー』で、実際に番組を製作している人たち、つまり「作り手側が現状をどう考えているのか」について書いてみることにしました。

ちなみに現在、地上波で定期的に映画を放送している番組は、『金曜ロードSHOW!』と『午後のロードショー』の2つだけ。しかも、『午後のロードショー』はテレビ東京の関東ローカルのみなので、知らない人の方が多いかもしれません。

簡単に説明すると、月曜日から金曜日まで毎日2時間(13:50 - 15:55)ひたすら映画を放送しているという他に類を見ない番組なんですよ。しかも「今の時代、映画を観る手段はいくらであるのに、わざわざテレビで映画を観る人なんているのかな?」という疑念を覆し、常に3〜6%の安定した(?)視聴率を稼いでいるのだから凄すぎる(平日の昼間なのに誰が観てるんだ?)。

どうやら、人気の秘密は独特のラインナップにあるようで、例えば「今月はサメ特集だ!」と決めたら、毎週木曜日はサメが出て来る映画ばっかり放送してるんですよ。しかも『ジョーズ』とか『ディープ・ブルー』みたいなメジャーな作品じゃなくて、『シャーク・ナイト』とか『フライング・ジョーズ』とか『シャークネード サメ台風』など、あまり聞いたことがない映画をガンガンぶち込んで来る剛腕ぶり。

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しかし、それが番組の個性として認知され、多くのファンから支持されるようになり、昨年は番組開始からついに20年目に突入!そして「祝!20周年記念特集」と題して『酔拳2』、『コラテラル・ダメージ』、『沈黙のテロリスト』など、相変わらずB級感満載なラインナップを次々と繰り出し、「さすが俺たちの午後ローやで!」と称賛されたそうです(笑)。

そんな『午後のロードショー』を製作している夏目健太郎プロデューサーと高柴隆一ディレクターが20周年記念のインタビューを受けた際、「テレビで映画を放送する意義」について語っている個所があったので、以下にその一部を引用させていただきます。

・今やTVで映画を観る文化は壊滅状態です。そのことにTVマンとしてお2人はどう思われますか?


夏目:壊滅してしまったのは”視聴者の選択”という部分もあると思うんです。プロ野球中継がTVで観られなくなってきたのと時を同じくして、映画も純粋にTVで観る機会はもうなくなってきていると思います。実際、今キー局で反響がある映画番組は、その局のドラマの映画版の放送という状況ですので。製作者が力を抜いてきたのも理由にありますが、それでも一番大きいのは、TVをリアルタイムで観る視聴者が離れてきてしまったという部分でしょうね。


高柴:ディレクターとしては、それでも自分が観たことがない映画に出会える喜びを感じて欲しいと思って作っています。その出会いの場所の一つが「TVの映画番組」だと信じているんです。でも、ネット配信やスマホなどで気軽に映画が観られたり、ノーカット版を観たいという声が大きくなってきたこととの葛藤もあります。僕としては、TVで観た映画体験を通じて映画好きになって欲しい。それこそ『THE GREY』のような作品に事故的に出会って衝撃を受けてもらいたいんです。


・TVで映画を観る層にとって、『午後ロード』は最後の砦ですからね。


夏目:月〜木曜日とやっていくなかで、金曜日もやって欲しいという声が高まって、4月から放送枠が金曜まで広がりました。ということは、このまま『午後ロード』を続けて数字が伸びていけば、ゴールデンタイムに進出することも出来るんじゃないか?と思ってるんです。平日午後で5%の視聴率が取れるなら、夜なら10%いくんじゃないか?と。次の延長線上は、もしかしたらゴールデンタイムや休日にあるのかもしれない。


・夜にやっても『午後ロード』ですからね(笑)。


夏目:こうして派生していくチャンスが生まれるということは、視聴者が支持してくれてのものですから、それが映画界全体のチャンスにも繋がるかもしれない。キー局ができないなら、地方のローカル局から積極的にロードショー番組を作って欲しい。だから、『午後ロード』はそれを実現するための前例を作る意味でも、数字を取っていかなきゃいけない。決して狙っているわけではないんですけど、全部意図してやってますので、そういう流れを平日昼間のローカル局から作り出せる可能性があるということを考えると、まだまだ映画番組も捨てたものじゃないですよね。


・かつて毎晩放送されていたTVの洋画劇場の役割が、今は形を変えて『午後ロード』にすべて凝縮されている感じがします。


夏目:責任重大ですね(笑)。少なくとも、CSと比べてラインナップも色分けされてますし、方向性や売りも視聴者に受け取りやすい形でパスを出しているつもりです。そのパスを出し続けることで放送枠も広がり、そのパスが大きくなれば「なぜテレビ東京だけが映画を頑張ってるんだ?」と他局が研究し始めて、映画番組が増えて活性化して欲しいと思っているんです。


・テレビ東京系のネット局は『午後ロード』を流していないんですよね。


夏目:ないです。ただ、『午後ロード』の視聴率情報はローカル局にも流れていますので、「この映画をウチでも放送したい」とローカル局から問い合わせが来ることがあります。そういう良いエッセンスが少しずつ地方にもちゃんと届いている実感がありますし、番販会社の方も「『午後ロード』でこんなに数字が取れていますよ」と地方局にセールスできているみたいなので、『午後ロード』を続けること自体がキックになっている部分があると思います。私たちが『午後ロード』を続けることで、映画離れを食い止めたい。映画離れを食い止めるためには、やり続けなければ。そうしなければ何も始まらないんですよ。 (「映画秘宝 激動の20年史」より)

というわけで、インタビューの一部を抜粋してみたんですけど、驚いたのは「意外とみんなテレビで映画を観てるんだなあ」ってことですね。特に、最近の傾向としてはSNSとの連動効果が大きいらしく、ツイッターで「今TVで○○○って映画を放送中!」とつぶやいたら、それを見て興味を持った人がテレビに流れて来るパターンも増えているそうです。

とは言え、基本はやっぱり”劣勢”なんですよ。このインタビューでも言及していますが、80年代にレンタルビデオが登場して以降、動画配信サービスやBS・CS等、家庭で映画を観る選択肢は一気に増えました。その結果、地上波で映画を観る機会が減少し、日曜洋画劇場も終了するなど、今やTVの映画枠はその”存在意義”すら脅かされています。

ところが、そんな厳しい状況の中でも『午後のロードショー』はなぜか安定した視聴率を稼ぎ出し、「次はゴールデン進出だ!」とやる気満々。個人的には「さすがに『シャークネード サメ台風』でゴールデンはキツイだろう」と思わざるを得ないのですが(笑)、それにしても”壊滅状態”と言われるほどの逆境にもかかわらず、どうしてここまで前向きでいられるのでしょうか?

理由の一つは、夏目プロデューサーがインタビューで「『午後ロード』を続けることで、映画離れを食い止めたい。映画離れを食い止めるためには、やり続けなければ」と語っているように、番組の作り手側に「地上波の映画枠が無くなると、映画離れが進んでしまうかもしれない。だから番組を続けることで映画離れを食い止めたいんだ!」という強い思いがあるから。

そしてもう一つは、高柴ディレクターの「観たことがない映画に出会える喜びを感じて欲しい」という言葉の通り、「テレビでたまたま流れていた映画を観たことがきっかけで素晴らしい作品に巡り合えた」という”偶然の出会い”を提供したいと。「世の中にはまだまだ面白い映画がいっぱいあることを知って欲しい」と。そのような確固たる信念を持っているからなんですね。

こういう「テレビをつけたらたまたまやっていた」という”偶然の出会い”は誰にでもあるんじゃないでしょうか?確かに、今の時代はレンタルや動画配信サービスなどが充実していて、「観たい映画があれば自由に観ることが出来る環境」ですが、逆の言い方をすれば「観たくない映画は観ない」ということでもあります。

自分にとって興味がない映画は、当然レンタル屋で借りることもなければ映画館で観ることもないでしょう。テレビの映画番組は、そういう「知らない作品に触れられるきっかけ」を与えてくれる場でもあるわけで、「自分が観たい映画を選ぶサービス」とは違った価値を持っているのです。

ちなみに、僕はリドリー・スコット監督の『エイリアン』を子供の頃にテレビの映画番組で初めて観たんですよ。当時の僕はホラー映画が大の苦手で(今でも多少苦手ですがw)、例えレンタルビデオ屋があったとしても、「自分からホラー映画を選ぶ」ってことはまずあり得ませんでした。

ところが、たまたまその日はテレビをつけたら『エイリアン』をやっていて、しかも映像的には”SF”ですから、何も知らない子供の僕は「宇宙船のメカがかっこいいな〜」とか思いながら呑気に観てたわけですよ。そしたらまあ、怖い場面が出るわ出るわ(笑)。あまりの衝撃でお腹が痛くなったことを今でもハッキリ覚えています(^_^;)

でも、映画自体は本当に面白くて、それ以来「もっと面白い映画はないか!?」と今まで観なかったような映画も片っ端から観るようになりました。ある意味、テレビの洋画劇場が僕の中の”マニア魂”に火を付けたと言っても過言ではないでしょう。

恐らく地上波の映画枠を取り巻く環境は、今後も厳しさを増していくと思います。ただ、「レンタルや動画配信サービスがあるし、テレビの映画なんてどうせ誰も観ないよな〜」みたいな気持でやっていたら、視聴率だって上がらないし、テレビで映画を放送する意義も無くなってしまうでしょう。

だとすれば、結局のところ「意義あるものになるかどうか」は番組を作っている人たちの”心意気次第”なのではないかと。その点『午後のロードショー』は「今後映画を観る人が減ってしまうかも…」と作り手側が危機感を感じ、「我々の手で食い止めたい!」と切望している。そしてその心意気を受け止め、支えてくれる大勢のファンがいる。だからこそ、存続していられるのではないでしょうか。

今や”風前の灯”真っ只中の地上波映画枠ですが、このような”映画愛”を持って真摯に番組作りに取り組んでいる人たちを僕は支持したいし、もし本当に映画離れを食い止められるのであれば是非とも頑張っていただきたいなと、一映画ファンとしてそう思っています(^_^)



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映画『バイオハザード:ザ・ファイナル』ネタバレ感想/評価

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■あらすじ『地球上にゾンビが蔓延し、アンブレラ社の人工知能レッドクイーンが人類滅亡まで残り48時間と告げた。アリスは生き残った人々と共に、感染した生物すべてを抹殺するという抗ウイルス薬を求め、地下施設ハイブを目指す。全人類を救うために繰り広げられる凄絶な戦い、レッドクイーンの秘密、散りばめられた数々の謎、さらにアリスの存在に隠された驚愕の真実までもがついに解き明かされる!果たして彼らの運命は!?そしてローラは活躍するのか!?色んなことが気になるシリーズ6作目にして堂々たる完結編!』



本日、映画『バイオハザード』シリーズの第6作目にして完結編となる『バイオハザード:ザ・ファイナル』のブルーレイ&DVDが発売されます。トータルで14年以上に及ぶ長期シリーズですが、第1作目が公開された2002年の時点では、映画を観たファンはもちろん、監督でさえここまで長く続くとは予想していなかったでしょう。

なんせ最初の『バイオハザード』は予算3300万ドルの「低予算ゾンビ映画」として作られていたので、エキストラに払うお金を節約するためにスタッフやプロデューサーがゾンビ役を演じたり、セットをダンボールで作るなど、貧乏な撮影を強いられ四苦八苦していたからです(詳しい裏話はコチラの記事をどうぞ↓)。

映画『バイオハザード』はこうして作られた!制作裏話

ところが、予想外の大ヒットを記録し、続編の製作が決定!ここで監督は喜ぶと同時にちょっと悩んだそうです。前作の『バイオハザード』は「主人公のアリスが無事にハイブから脱出 → 街へ出てみたらゾンビだらけで大変な状況に!」という場面で終わっていたのですが、実はこの時点では続編のことなど何も考えておらず、「衝撃的な結末を見せて観客にショックを与えよう」としただけだったのですよ。

しかも、ポール・W・S・アンダーソン監督は『エイリアンVSプレデター』を撮るために続編を降板。代わりに別の監督(アレクサンダー・ウィット)が『バイオハザードII アポカリプス』を撮ることになってしまったから、なおさら微妙な感じに…。「ただでさえ続編は前作よりもクオリティが落ちやすいのに、監督まで変わったら全然ダメだろうなあ」と期待値はダダ下がりでした。

しかし、予想に反して2作目の『バイオハザード』も普通に面白かったのです。ゲーム版のキャラが全く出て来ない1作目に対し、続編はゲーム版『バイオハザード3 LAST ESCAPE』と設定がリンクしていて、ジル・バレンタインやカルロス・オリヴェイラなどのゲーム版キャラクターが続々登場。

これらゲームキャラの再現度が非常に高く、中でもジル・バレンタインを演じたシエンナ・ギロリーの完コピ具合たるや「まさにジル・バレンタインそのものだ!」とファンから絶賛されるほどでした。さらにアクション要素もレベルアップしているし、「追跡者(ネメシス)」との超絶バトルも堪能できるし、多くの観客から好評を博したのです。

こうした『バイオハザードII アポカリプス』の成功を受けて、さらなる続編『バイオハザードIII』の製作が決定。今回もポール・W・S・アンダーソン監督は脚本とプロデュースのみで、『ハイランダー 悪魔の戦士』のラッセル・マルケイ監督がメガホンを取りました。

そのせいかどうかは分かりませんが、この3作目から雰囲気がガラッと変わっているのです。今までの『バイオハザード』はホラー映画でお馴染みの「暗く不気味な夜のシーン」が多かったのに対し、『バイオハザードIII』では太陽が光り輝く真昼間にゾンビが襲いかかって来るのですよ。

しかも周囲は広大な砂漠地帯が広がり、主人公たちは武装した自動車に乗り込み、埃っぽい道路を爆走するという、まるで「『マッドマックス』の世界にゾンビが現れたらこうなる!」みたいなビジュアルになってて、とても斬新でした。内容的には色々言いたいこともありますけど、割と好きな映画ですね(なお、ゲーム版のクレア・レッドフィールドとアルバート・ウェスカーが初参戦している点もグッド)。

結果的に3作目もヒットし、当然「4作目を作ろう」という流れになりました。しかも1作目のポール・W・S・アンダーソン監督が久々に復帰するということでファンの期待値も急上昇!が、実際に観てみたら…う〜ん、何かイマイチなんですよねえ。

シリーズ4作目の『バイオハザードIV アフターライフ』は舞台が東京へと移り、「渋谷の地下にアンブレラ社の巨大秘密基地があった」というとんでもない設定から物語がスタートし、アリスとウェスカーが壮絶なバトルを繰り広げ、最後は二人の乗ったヘリコプターが富士山に激突するという、冒頭から突っ込みどころ満載の支離滅裂なストーリーに成り果てていたのですよ。

バイオハザードIV アフターライフ [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2011-04-22)

ヘリから脱出したアリスはアラスカへ移動し、クレア・レッドフィールドと再会。その後、飛行機でロサンゼルスへ向かうものの、街中にゾンビが蔓延していて着陸できないから刑務所の屋上に降りて、さあここからどうやって脱出しようか…、みたいな非常にまとまりの無い脚本にガッカリしました(僕の感想はこちら↓)。

『バイオハザード4:アフターライフ』映画レビュー

でもこの映画がまたまた大ヒットし、5作目の『バイオハザードV リトリビューション』の製作が決定。今度はアンブレラ社の巨大実験施設が舞台で、その中にニューヨーク・東京・モスクワの街などが再現され、その限定空間でアリスたちが戦うという、スケールがでかいのか小さいのか良く分からない設定に呆然(笑)。

ゲーム版のキャラとしてエイダ・ウォン、レオン・S・ケネディ、バリー・バートンが登場しているのはゲームファン的には嬉しいんですけど、ストーリー展開までもが「一つのステージをクリアして次のステージへ移動する」という”ゲームみたいな映画”になっているのは「本末転倒」と言わざるを得ません(僕の感想はこちら↓)。

『バイオハザード5:リトリビューション』映画レビュー

余談ですが、本作の撮影中に巨大なセットが倒れてゾンビ役のエキストラの上に落下し、12人が負傷したそうです。ところが、急いで駆け付けた救急隊員たちは”血まみれの衣装”や”骨や内臓が露出した特殊メイク”を見て「大惨事だ!」と勘違いし、現場はかなり混乱したらしい(幸い死者は出なかった模様)。

バイオハザードV リトリビューション [SPE BEST] [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2015-12-25)

というわけで、ここからが本題です(笑)。5作目の大ヒットを受けて、当然のごとく6作目の製作が決まりました。監督はもちろんポール・W・S・アンダーソン。さらに「シリーズ完結編!」「すべての謎がついに解き明かされる!」と聞いて、「これは観なければ!」と公開初日に劇場まで足を運んだわけですよ。ただ、色々と問題が…。

まず気になったのは冒頭シーン。前作『バイオハザードV リトリビューション』のラストがどんな感じだったか、ざっくり振り返ってみると、「ワシントンD.C.のホワイトハウスに立て籠ったアリスたちは、周囲を大量のアンデッド軍団に取り囲まれて大ピンチに!」という場面で終わっていました。

当然、「この後いったいどうなるんだッ!?」とハラハラドキドキしながら続編を待ちわびていたファンも多いことでしょう。だがしかし!そんな期待を打ち砕くかのように、オープニングからいきなりホワイトハウスが大破していてビックリ。しかも、周辺にはアンデッドどころか人っ子一人存在しません。

どうやら前作のラストから数時間後の状態を描いているらしく、廃墟と化したホワイトハウスからアリスが一人で現れ、他の仲間たちの生死は不明のまま話がスタートしてるんですよ。ええええ!?いったい何が起こったの?『5(リトリビューション)』と『6(ザ・ファイナル)』を連続で観たら、全然意味が分からないよ!

なぜこうなったかと言うと、上でも書いたように、元々アンダーソン監督って「先のことを考えないで映画を作る人」らしいんです。つまり、続編への伏線としてではなく、「衝撃的な結末を見せて観客にショックを与えたいから」という、極めて単純な理由で派手なラストを作りたがる人なんですね(まあ、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のラストも最初から続編を意識してたんじゃなくて、単なる”オチ”なんですが)。

週刊少年マンガ誌でも良くあるじゃないですか?もの凄くいいシーンで「次週へ続く!」と引っ張って、「えええ!?この後どうなるの!?」と読者の期待を煽っておきながら、実は作者は何も考えておらず、「さ〜て、来週までに何とか続きを考えなきゃ…」とか思ってるパターン。ポール・W・S・アンダーソン監督もそういうタイプなんですよ(笑)。

しかも、普通の人なら「どうにか辻褄を合せよう」と頑張るはずなんですが、アンダーソンの場合は「辻褄を合せる」とか「伏線を回収する」という意識がそもそも無いらしく、前作のラストシーンを平気で無視するんですよね(というより、自分で張った伏線を完全に忘れてるんじゃないかなあ?)。

そんな感じで、映画を観た人は「ジル・バレンタインやエイダ・ウォンやレオン・S・ケネディは一体どうなったんだよ!」と気になってしょうがなかったと思います。実は前作『バイオハザードV リトリビューション』のラストシーンの後に「激しい戦闘が行われた」という設定を一応考えたものの、映画本編ではそれをスルーし、代わりに小説版で補足してるんですよ。

試しに小説版を買って読んでみたら、エイダとレオンは”寄せ集め(メランジ)”と呼ばれる「リッカーや多数のアンデッドが融合した巨大な複合生命体」に飲み込まれ、ジルはウェスカーに目玉を突き刺されて死んでいました。つまり全滅!なぜアリスだけが助かったのかと言えば「運が良かったから」としか答えようがない(苦笑)。

バイオハザード ザ・ファイナル (角川ホラー文庫)
KADOKAWA / 角川書店 (2016-12-22)

『5』の後に何が起きたか、詳しく知りたい方は小説版を読めば分かりますよ(^_^)

その後、アリスは廃墟で見つけたパソコンを通じてレッドクイーンと会話し、「もうすぐ人類は滅ぶ。助けたければあと48時間以内にラクーンシティの地下にあるハイブへ潜入し、抗ウイルス薬を確保すべし。これを散布すればアンデッドは全滅するだろう」との情報を知らされます。

当然アリスは「はあ!?今まで私を殺そうとしてたくせに、信用できるかボケ!」とブチ切れますが、他にいい方法がないので仕方なくラクーンシティを目指して出発。途中、『3』で死んだはずのアレクサンダー・アイザックスに出会ったり、盗んだバイクで走り出したり、色々あった後、4作目で離れ離れになったクレア・レッドフィールドと再会し、いざハイブへ突入!

あ、ちなみにタレントのローラさんの出番はビックリするほど短いです(苦笑)。「コバルト」という役名を与えられているのが不思議なぐらい「その他大勢」感が満載で、ほとんどドラマに絡んできません。撮影中はスゲーはしゃいで、写真を何枚もアップしてたのになあ。

前作に出演した中島美嘉さんもチョイ役でしたが、中島さんの方がまだアンデッドに変身したり、アリスと戦ったり、印象に残るキャラだったと思います。それに比べてローラの扱いは「かなり残念」と言わざるを得ません、トホホ(-_-;)

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あと、ウェスカーの”やられ方”にもビックリしましたね〜。4作目や5作目であんなに強敵だったのに、まさか自動ドアに挟まれただけで死ぬなんて!あまりにもあっけない最期に「え?ウェスカーこれで終わり?」と驚愕しましたよ(強いのか弱いのかどっちなんだ?)。

とまあ、内容的には相変わらず突っ込みどころ満載ですが、映画版『バイオハザード』シリーズの最大の魅力は、「タフで美しいヒロインが、カッコいいアクションを駆使して恐ろしいゾンビをバッタバッタとなぎ倒す爽快感」であり、ある種「ミラ・ジョヴォヴィッチの活躍を楽しむための映画」でもあるわけです。

そういう意味では「アリスがひたすら敵をブチ殺していく」だけの話であっても、それ自体が見どころなので、ファンにとって不満は少ないのかもしれません。とは言え、今回は完結編でもあるため、「T-ウイルスが生まれた経緯」や「アリスの正体」などを詳しく描き、一応「ドラマ的にも盛り上げよう」という意思が感じられました。

特にクライマックスの展開が良かったですねえ。第1作目の登場時からアリスは記憶を失っていて、ずっと「自分は何者なのか?」を知ろうとしていましたが、本作でついに「アリシア・マーカスという女性のクローンだった」ことが判明するのです。

過去作で何度もアリスのクローンが登場しているので”クローン”自体に驚きはないものの、「アリス自身がクローンだった」という事実は本人にとってやはり衝撃でしょう。しかし、抗ウイルス薬を散布し、アンデッドを全滅させた後、なんとアリスはアリシアの”記憶(データ)”を受け継ぐのです。

アリシアは幼い頃から「プロジェリア」という難病を患っており、一方のアリスはアリシアの遺伝子情報からプロジェリアの要因だけを取り除いて作られたクローンで記憶がない。つまり「互いに何かが欠けている状態」なのです。そして、「双方が欠けているものを組み合わせることによって、貴方は完全になれる」とレッドクイーンに促され、アリスはそれを受け入れたのですよ。

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そしてアリスは最後に”記憶”を手に入れ、映画はバイクに乗ったアリスを映しつつ終了……となるんですけど、あれ?ワシントンDCで行方不明になった少女ベッキーは一体どうなったの?と気になった人もいるでしょう。実は小説版でこの続きが描かれているんです。

ホワイトハウスでの凄絶な攻防戦の際、ベッキーは”隠し部屋”へ避難していました。そして戦闘が終わった後、たった一人で廃墟と化した街を彷徨っていたのです。一方のアリスは、バイクで移動しながらレッドクイーンが操作する人工衛星を使ってベッキーを捜していたんですね。

やがて、池のそばにしゃがみ込んで水を飲もうとしていたベッキーを発見。ベッキーも自分の母親だと思っているアリスを見つけて力いっぱい抱きしめ、二人は感動の再会を果たしてめでたしめでたし…というラストになっていました(なお、人工知能のレッドクイーンはバージョンアップしたらしく、”ルース”という名前に変わっている)。

こうしてアリスの長い物語はようやく終わりを迎え、見事なハッピーエンド(?)で幕を閉じた、というわけです。まさに大団円であり、長年『バイオハザード』を観てきた僕としては「良かったなあ、アリス…」とちょっとだけ感動しそうになりましたよ。ちょっとだけね(笑)。全体的に雑なストーリーであることは否めませんが、最後はいい感じにまとまっており、「終わり良ければすべて良し」みたいな印象だったので、個人的には満足でした(^_^)


バイオハザード:ザ・ファイナル (初回生産限定) [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2017-03-22)

【ネタバレ】劇場アニメ『楽園追放』を徹底解説!感想/評価

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■あらすじ『西暦2400年。ナノマシン技術の暴走によって地球の自然環境が破壊された”ナノハザード”の後、人類の98%は生身の肉体(マテリアルボディ)を捨てて電脳空間”ディーヴァ”で暮らしていた。しかし、謎のハッカー”フロンティアセッター”からのハッキングを受け、中央保安局に所属するアンジェラ・バルザック(鈴木理恵)は、この事件を調査するために生身の身体を得て地上へ降り立つ。現地オブザーバーのディンゴ(三木眞一郎)とコンビを組んで真相を調べるアンジェラだったが、やがて驚愕の事実が明らかに…。監督は『機動戦士ガンダムOO』等の水島精二、脚本は『魔法少女まどか☆マギカ』等の虚淵玄など、豪華スタッフで贈る3DCG劇場アニメーション超大作!』



どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、テレビで『楽園追放 -Expelled from Paradise-』が地上波初放送されます。しかも『鉄腕DASH!』の真裏で(TOKYO MXなので観られない人も多いと思いますが、よりによってなぜこの時間帯にw)。本作は2014年に公開された劇場アニメで、わずか13館という小規模上映にも関わらず、初日と2日目の観客動員が1万7274人、興行収入は2900万円を突破するなど、ファンの間で話題になりました。

監督の水島精二さんは『機動戦士ガンダムOO』や劇場版『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』などで高く評価され、脚本の虚淵玄さんは『魔法少女まどか☆マギカ』や『PSYCHO-PASS』などのアニメ作品で知られる人気クリエイターです(なお、虚淵玄さんはゲームのシナリオや小説の執筆、さらには『仮面ライダー鎧武/ガイム』の脚本を手掛ける等、様々な分野で活躍している)。

また、制作を担当した「グラフィニカ」は、アニメ会社「ゴンゾ」のデジタル部門が母体となって作られたスタジオですが、元々ゴンゾは、ガイナックスを退社した村濱章司、前田真宏、山口宏、樋口真嗣らによって立ち上げられ、『青の6号』や『銀色の髪のアギト』など先鋭的な作品を制作していました。そして2009年に組織が解散、そのCGスタッフを引き継いで設立したスタジオがグラフィニカなのです。

一般的な知名度は低かったものの、『ストライクウィッチーズ劇場版』や『ガールズ&パンツァー』で一躍注目を集めたグラフィニカは、前者で自由自在に空を飛びまわる少女たちの活躍を、後者ではド迫力の戦車バトルを3DCGで表現し、技術力の高さを見せつけました。今回の『楽園追放』でも、その実力を存分に発揮し、魅力的なキャラクターの表情や、戦闘機が超高速で動き回る凄まじいアクションシーンなど、優れたビジュアルを描き出しています。

さらに参加した声優陣も豪華で、釘宮理恵、三木眞一郎、神谷浩史、林原めぐみ、高山みなみ、三石琴乃、古谷徹など、業界を代表する錚々たる面子がズラリ。まあ、メインは釘宮さん、三木さん、神谷さんの3人で、林原さんや古谷さんはほとんど出て来ないんですけど(笑)、非常にゴージャスなキャスティングですよね。

さて、『楽園追放』には大きな特徴がいくつもありますが、そのうちの一つが「セルアニメのようなCG表現」でしょう。本作を手掛けた野口光一プロデューサーによると、『楽園追放』の企画は2009年頃に立案、当時の東映アニメーションでは数十億円の製作費をかけてフルCGアニメ版『キャプテンハーロック』を作ることが計画されていました。

しかし、リアリティを追及したCGの場合はライティングや背景を作り込むのに莫大な費用がかかるし、野口プロデューサー自身、「日本のアニメファンに受けるのはリアル系CGよりもセルアニメ系だろう」との考えだったため、『楽園追放』では「セルアニメ調の3DCG」が採用されたそうです。

さらに、演出を担当した京田知己さん(『交響詩篇エウレカセブン』の監督)も、「セルアニメ時代のOVAみたいなテイストを意識した」とコメント。3DCGのスタッフと打ち合わせをする際も、「1980年代のロボットアニメやOVAは絶対に見ておいて欲しい。そういうニュアンスまで含めて、すり合わせをする必要がある」と指示していたそうです。

このように、『楽園追放』という作品は内容も含めて、ある種の”古さ”や”懐かしさ”を感じさせるアニメなんですよね。実際、「電脳世界で暮らす主人公がサイバースペースを抜け出しリアルワールドへやって来た時、何を考え何を決断するのか」という物語も、過去に色んなクリエイターが手掛けてきた王道的な主題で、あまり目新しさはないかもしれません。

しかし、水島精二監督は「ベタで古臭いかもしれないけれど、こういうシンプルでわかりやすい物語を、フル3DCGでやってみたかった」と語り、「最新のCG技術を使って、敢えて昔の作画アニメみたいな映像を再現することにこだわった」そうです。以下、水島監督のコメントより↓

『楽園追放』では、3Dのアニメーターの中にチーフ格のスタッフが何人かいて、シーンごとに管理をしてもらってるんです。しかも、その子たちのクセが、キャラクターの表情や造形、あるいは芝居にも結構、出ちゃってるんですよ。つまり、タッチが揃ってない(笑)。でも、むしろ揃ってないことは、この作品の売りだと思ってるんですね。現場でもむしろ「どんどんやってくれ」と推奨していたくらいなので。


ここまでバラバラなのは、昔の作画アニメみたいでいいじゃんっていう(笑)。クセが出ていても、キャラクターがカッコ良かったり可愛かったり、とにかく成立していればいい。もちろん「これ、目が垂れすぎてるな」と思ったら修正してますけど(笑)。でも、それがアニメーションの醍醐味だと思うんです。 (「月刊ニュータイプ2014年12月号」より)

そんな中でも、スタッフが一番苦労したのは「アンジェラの表情」で、アニメーターが作画すればすぐに描けてしまうようなシーンでも、CGで描くのは非常に難しいとのこと。最初は「顔だけ作画にしてCGと合成しようか」という案も出たようですが、正確に合成するのに時間がかかるし、そもそも顔だけ描いてくれるアニメーターがいないなど、難問だらけだったようです。

しかし、グラフィニカの技術スタッフが「うちで何とかしましょう!」と”表情を作るためのツール”を開発し、そのおかげで大量の表情ライブラリを共有することに成功、作業効率が劇的にアップしました。このおかげで、CGとは思えないほど表情のバリエーションが増え、特に終盤に登場する”崩し顔”などは、完全に作画アニメのテイストを再現していてビックリ!

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ただ、こういう”崩し顔”は手描きアニメーションの表現としては良く見かけますが、3DCGではあまり例がありません。ではなぜ、本作ではこういう顔を敢えて入れたのでしょうか?演出の京田知己さんは、その意図を以下のように説明しています。

なぜ演出プランとして、この崩し顔が必要であったか?それは、彼女が気負ったエージェントから一人の普通の女の子(?)に戻ったということを、ここで強調しておく必要があったからです。デザインはさておき、前半パートのアンジェラは草薙素子を源流とする”美人サイバーエージェント”の亜流として描かれてきました。


そういった草薙素子的存在が身体性を獲得して「物質世界に戻る」という物語が、現代的であるかどうかはともかく、”身体性の獲得”というテーマを描写するのに「表現方法の枠組みを飛び越える」という方法をとる必要が今回はあったのです。


CGっぽい身体描写を捨てて昔ながらのセルルック表現を見せるということは、ともすれば”退行”とも取られかねないのですけれども、ではその退行と見えるものは果たして本当に退行であると言い切れるのか…という問いは、本作の大きなテーマとも重なり合うものですから、リスクを承知で敢えて”崩し”の表現を入れてみたんですね。 (「アニメスタイル 006」より)

なお、僕が個人的に好きなシーンは、アンジェラとディンゴが食堂へ入り、アンジェラが食べているうどん(?)にディンゴが一味唐辛子のようなものを入れる場面です。「ちょっと、何よそれ?」 → 「…どんな味になるんだろう?」 → 「むしゃむしゃ」 → 「うまッ!メッチャ美味しい!」みたいな感じで、一言もセリフが無いのに、表情だけでアンジェラの心理状態が丸分かりという、非常に面白いシーンに仕上がってるんですよねえ。

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また、クライマックスの戦闘シーンで、敵の攻撃を受けたアンジェラが狭いコクピットの中で体を揺らしながらも、「このぉぉぉぉ!」と前のめりで絶叫しつつ反撃するという、非常にダイナミックなカットがあるんですけど、ここも作画アニメを意識したCGになっていました。

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このカットは、まずアニメーターの山崎真央さんに「参照用」の絵を描いてもらい、それを作画ガイドにしながら3DCG担当の八木田肇さんがアンジェラのCGモデルを1コマずつ調整して作るという、非常の手間のかかるカットだったらしい。本来、こういうアングルや動きは手描きの方が早いのですが、「今回は出来るだけ3Dで作り切ることにも挑戦していたので、難しい場面も敢えてCGでやりました」とのこと。

ちなみに劇場で公開された時、”アンジェラのお尻”が話題になったようで、アーハンのバイク型コックピットにまたがるアンジェラをバックショットから映す演出は、水島監督が考えたそうです。この絶妙なカメラアングルにファンは大歓喜!ただしプロデューサーの野口さんは「東映アニメーションとして、これをプリキュアの横に並べてよいものか?」と悩んだそうですが(笑)。

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それから、電脳空間や後半の宇宙空間における戦闘シーンも本作の見どころの一つでしょう。特に、アンジェラがディーヴァから脱走して、低軌道駐屯地のコンテナ収容施設に侵入し、新型アーハンを奪った後に始まる超高速バトルは必見!縦横無尽に飛び交うマシンや、変幻自在に動きまくるカメラワークなど、スピード感溢れる見事なアクションに仕上がっていました。

この場面、演出の京田知己さんが『交響詩篇エウレカセブン』の監督なので、『エウレカセブン』で特技監督を務めた村木靖さん(アニメーター)が描いた動きを意識したのかな?と思いきや、『楽園追放』にモーションアドバイザーとして参加している板野一郎さんがチェックしていたらしい(絵コンテにも「板野サーカス全開で!」と書かれている)。

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板野一郎さんといえば、『伝説巨神イデオン』に参加した際、「全方位ミサイル発射シーン」などで多数のミサイルが飛び回るシーンを描いて注目された超絶技巧アニメーターです。『超時空要塞マクロス』ではメカ作監として活躍し、スピーディーでアクロバティックな戦闘シーンは「板野サーカス」と称され、日本中のアニメファンの度肝を抜きました(詳しくはこちら → wikipedia)。

そんな板野さんですが、本作に関わったスタッフの中には経験の浅い新人も多くいたため、まず「板野ゼミ」と呼ばれる勉強会を開き、ミサイルの飛び方やアクション、時間軸と空間の見せ方など、3DCGを使っていかにカッコいいアニメーションを作るか、その秘訣をレクチャーしたそうです。以下、板野さんのコメントより↓

マシンが分隊行動をとる場合は、隊長機やウイングマンなどそれぞれ役割があって各々の死角をカバーするような動きになるはずなんです。隊長機に向かっているミサイルをサポート機が撃ち落とすとか。回避行動にしても、ミサイルを回避する前にまず、熱源であればフレア弾、レーダー追尾ならチャフ(電波欺瞞紙)を撒けって話だよね。短い尺で一瞬のことかもしれないけれど、行動理由を考えながらアニメーションを付けていくことが重要なんです。 (「CGWORLD 2014年12月号」より)

さらに終盤のクライマックスでは、迫り来る何十機もの敵アーハン部隊を、ディンゴと協力することで着実に撃破していくアンジェラのバトルシーンが迫力満点で素晴らしく、ここでも京田知己さんの意向で80年代のテイストが取り入れられました。

このシーンでロボットアクションの参考にしたのは、本作とシチュエーションが似ている『蒼き流星SPTレイズナー』の後半で沖浦啓之さんが作画した回や、『装甲騎兵ボトムズ』で谷口守泰さんが作画監督をやった回、いわゆる「アニメアール回」の作画を想定したそうです。

その想定通り、3DCGで描かれたロボット同士のバトルは前代未聞のカッコ良さ!アンジェラを援護するディンゴの活躍も同時進行で描かれ、誘導ミサイルの発射シーンでは板野サーカスもバッチリ再現されています(なお、煙や爆発などのエフェクトに関してはアニメーターの橋本敬史さんが作画しているらしい)。

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まあ、言われてみれば確かに「おお!レイズナーのあの場面か!」とか、「これはまさにボトムズだ!」と思えるようなシチュエーションではありますねえ。ただ、そういう感覚が分かる人は、相当な年輩のアニメファンだけのような気もしますが(笑)。

そして、この戦闘シーンの最中、アンジェラはある重要な決断を迫られます。電脳都市ディーヴァを追放されたアンジェラは、もう”楽園”には戻れない。ならば、このままリアルワールドで暮らすのか、それとも…。ここでフロンティアセッターは「宇宙への同伴」を提案するのです。

外宇宙探索用宇宙船「ジェネシスアーク号」に乗船すれば長期間の宇宙旅行は必至ですが、肉体を持たない電脳パーソナリティなら問題ありません。しかし、フロンティアセッターの「私と一緒に銀河の果てへ旅立ちませんか?」という誘いに対し、アンジェラは「ごめんね…。私、この世界をまだろくに知らない…。まだ見たことも無いものが、あまりにもたくさん有りすぎるの!」と言って自分の進むべき道を決断します。

おそらく、このセリフの直前まで彼女自身も悩んでいたのでしょう。初登場時点のアンジェラは、電脳都市ディーヴァを”人類が生存する上で最高の環境”だと思い込み、ディーヴァを拒んでリアルワールドで暮らす人々を「なぜそんな不自由な肉体の檻の中で生きていこうとするの?」とバカにしていました。ドラマの終盤では、そんなアンジェラの問いかけに対し、ディンゴは以下のように答えています。

ディーヴァへ行けば精神の可能性は無限大、どこまでも自分を進化させられる、あんたたちはいつだってそう言うよな?それはウソだ!


ディーヴァでの生活は「どれだけ多くのメモリを得られるか」で決まる。結局、出世争いが全てになっちまう。それが正しいかどうかなんてどうでもいい。だが、俺はウソだけは見過ごせない。「ディーヴァに行けば誰でも自由になれる」なんて戯言だけはな!


あんたたちは肉体の枷からは解放されたかもしれないが、より厄介な牢屋に閉じ込められているんじゃないのか?人が作った「社会」という檻に。俺はそんな生活はまっぴらだ。奴隷になってまで”楽園”で暮らしたいとは思わないね。

ディンゴのこの言葉を聞いてアンジェラは悩みます。我々は本当に”自由”なのか?そして、電脳都市ディーヴァは本当に”楽園”なのか?と。その答えが、フロンティアセッターに向けたあのセリフだったわけですね。

なお、アンジェラの声を演じた釘宮理恵さんは一番印象に残ったシーンとして、あのセリフを言う直前の「空高く舞い上がったアンジェラが地平線を見て、一瞬時間が止まったようになるシーン」を挙げていました。以下、釘宮さんのコメントより↓

収録していた時も、あの場面に至った瞬間パニックになってしまったというか。アンジェラはそれまで色んなことを知った気でいたし、そういう気持ちで戦っていたんですが、パッと見えた風景に圧倒されてしまって。感覚がホワイトアウトしちゃったというか、「あれ?いったい何だっけ?」みたいな感じになったんです。 (「月刊ニュータイプ2014年12月号」より)

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そしてこの後、フロンティアセッターは自分の意識をHLVに移し、宇宙へ向けて発進するカットが映るんですけど、あれ?何だかどこかで観たようなシーンが…?↓

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どうやら終盤の作業スケジュールがかなり厳しかったらしく、京田知己さんは「結果的に某有名ロケット打ち上げ作品のカットに似たものになってしまった」と説明。これってたぶん『オネアミスの翼』で庵野秀明さんが描いたロケット打ち上げシーンのことなんでしょうねえ(笑)。

というわけで、『楽園追放 -Expelled from Paradise-』は「エリート意識の高い主人公が、初めてやって来た別世界で全く価値観の異なる人々と出会い、少しずつ心情に変化が生まれる」という、悪く言えば”ベタ”とも思える定番のストーリーを、敢えてストレートに描き切っている点がグッドでした。

また、脚本を書いた虚淵玄さんも「僕の作品として世に出たアニメの中では、珍しく明るい話になった」と語っているように、やはり主人公のアンジェラやディンゴのキャラクターが魅力的で、物語自体も前向きなパワーに満ち溢れているところが、鑑賞後の印象を爽やかなものにしている要因だと思います。

ある意味「王道のSF」ですが、王道でシンプルな作劇だからこそ、普遍的なテーマを奇をてらわずに力強く描くことが出来たのでしょう。一見ややこしそうに見えるかもしれないけれど、素直に「面白い!」と思える作品なので、まだ観ていない人はぜひどうぞ(^_^)


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エンディングに流れる主題歌もすごくいい曲ですよ♪

『新世紀エヴァンゲリオン劇場版』 「気持ち悪い」の意味は?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、NHK・BSプレミアムで『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が放送されます。先週は前編の『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2』が放送され、「次は後編?やべえ!ついにNHKでシンジくんのオ○ニ○シーンが流れるのか!?」とネットがザワついたようですが(笑)、さすがにそれはないでしょう(^_^;)

さて、ざっくり説明すると、この映画が公開されたのは1997年ですが、当初の計画ではTV版の総集編と第25話・第26話をフルリメイクした『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生』が97年3月に公開、そして7月には完全新作の劇場長編アニメ(TV版エヴァとは異なる内容)が公開予定となっていました。

ところが、庵野秀明監督の構想が膨らみすぎて、『REBIRTH』編の絵コンテが2時間40分を超えてしまい、当初の予定尺(60分)を大幅にオーバーする異常事態に!何とか脚本を書き直して87分まで圧縮するものの、作画のスケジュールが足りなくなり、3月の公開は絶望的となってしまったのです。

そこで急遽、公開1か月前の97年2月14日に東映本社会議室で緊急記者会見が開かれ、「当初”完結”を謳っておきながら、3月に完結できなくなりました。誠にもって申し訳ございません!」と庵野監督自ら謝罪するという異例の事態が勃発したのですよ。

映画が公開日に間に合わないというのは大変なことで、関係者にとっては一大事です。この時プロデューサーを務めていた大月俊倫さんも、精神的な重圧がもの凄かったらしく、庵野監督から電話で「もうダメだ」と告げられた時、「当時、私は中野のボロアパートに住んでたんですけど、夜中に窓をあけて絶叫しましたからね。なんで絶叫したのかわかんないんですけど(笑)」と後に語っていました。

しかも、大月さんがその知らせを受けたのが1月で、その時点では世間の誰もが(関係者も含めて)3月の公開を信じていたわけです。それなのに「映画が完成しないって知ってるのは庵野さんと私だけでしたからね。なのでマスコミの取材を受ける時にも”いい映画ができます!楽しみにしてください!”って嘘をつくしかなくて(苦笑)」と2月の緊急記者会見まで本当のことを言えない状況が辛かったという。

また、劇場版のシナリオを書いた薩川昭夫さんも、「庵野さんから脚本を依頼されたのが96年の11月でした。その時点で製作発表はとっくに終わってるのに。しかも、打ち合わせ中に1時間も『ジャンボーグA』の話をするわけですよ(笑)。そんなことやってる場合じゃないだろうって(笑)」と”エヴァが遅れた要因”を暴露。

結局、3月にはTVシリーズの総集編に当たる『DEATH』編と、未完成版の『REBIRTH』編(約28分)を公開し、7月に本当の完結編となる『Air/まごころを、君に』が公開されることになったのです。つまり、本来なら7月に公開予定だった「完全新作劇場版」は、幻のままで終わってしまったんですよねえ。でも、いったいどんな内容だったのでしょう?

庵野監督によると、そのプロットはなんと大ヒット漫画『進撃の巨人』にそっくりだったらしく、「遠い未来、人類はほとんど滅亡しかかっていて、街は巨大なATフィールドで守られている。長い大きな橋だけが外界に通じていて、そこから使徒がやってきて襲ってくる。しかもその使徒は人間を食うんです」とのこと。

さらに「この凶悪な使徒に対抗できるのはエヴァンゲリオンだけ。でも、エントリープラグじゃなくて、子宮に直接入るんです。そして出るときは摘出手術。しかもタイムリミットがあって、間に合わないと取り込まれて人としては死んでしまう」等、オリジナル版とは全然違う設定だったらしい(確かに『進撃の巨人』に似てますねw)。

しかし、結局この「完全新作劇場版」は実現せず、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH & REBIRTH シト新生』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の2作品が上映されることになりました。出来れば『進撃のエヴァンゲリオン』も観たかったなあ(笑)。

なお、僕は『シト新生』の公開時に映画館で観たんですけど、『DEATH』編を観て「なんだこりゃ?」と思った後、『REBIRTH』編のラストに大興奮!アスカ(弐号機に搭乗)と戦略自衛隊との激しいバトルを描き、上空を旋回する量産型エヴァを見せつつ『魂のルフラン』が流れて「次回へ続く!」という、神懸かり的にカッコいい終わり方に全国のアニメファンが悶絶したとかしないとか(笑)。

今、当時の状況を振り返ってみると、『シト新生』(春エヴァ)が公開された時点では、ファンの反応は「まだ『Air/まごころを、君に』(夏エヴァ)があるし」「夏の完結編を観なければ何とも言えない」という、微妙だけれど”評価は一旦保留”みたいな感覚だったと思います。

それは、TV版の後半から心を病んでフェードアウトしていった惣流・アスカ・ラングレーの華麗なる(?)復活劇や、”人類補完計画”とか”死海文書”など、劇中で提示された数々の謎や疑問に対する”答え”が「夏の完結編で明らかになるかもしれない」という期待感があったからでしょう。

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そして7月に『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』が公開され、前作を上回る大ヒット!当然のごとく僕も観に行きました。感想?たぶん皆さんと一緒ですよ(笑)。アスカの例のセリフが終わった瞬間、劇場の照明が明るくなって、ノロノロと席を立つ観客たちの真顔っぷりが今でも忘れられません。後にも先にも、映画館であんな空気を体験したのはあの時だけです(^_^;)

なんせ、全員「今観たものは何だったんだ…?」という表情でしたからねえ(笑)。当時の庵野さんはアニメファンに対してかなりの嫌悪感を抱いていたようで、「観客の突き放し方」が尋常じゃなかったです(後に「エヴァが現実逃避の場になることが耐えられなかった」と心境を告白)。あの頃はネットが発達してなかったから良かったものの、今なら炎上必至でしょうねえ(笑)。

中でも議論が白熱したのが、ラストシーンのアスカのセリフ。浜辺で横たわるアスカにまたがって首を絞めようとするシンジだったが、途中で泣き崩れてしまい、そんな様子を見てアスカが一言「気持ち悪い」と言い放つ。ここで映画はサクッと終わってしまうわけです(エンディングすら流れない)。「はあああ!?なんじゃそりゃ!?」と観客が困惑するのも無理はないでしょう(笑)。

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このラストに関しては既に散々議論が交わされ、声優さんたちもラジオやインタビューで色々話しているため詳細は省きますが、アスカの声を演じた宮村優子さんがNHKの「BSアニメ夜話」に出演した際、具体的な状況を語っていたので、参考までにその一部を引用させていただきます。

私は、監督というものは最初に全部物事を決めていて、「こういうことをやりたいからこう表現して欲しい」と伝える人だと思ってたんですよ。でも、この最後の「気持ち悪い」というセリフもそうだったんですけど、庵野監督の方が投げかけてくるんですよね、「こういう時にこうなったらどう思う?」って。それは私だけじゃなくて他の声優さんにも聞いてました。で、私の場合は、アフレコで最後のセリフを録った後に「もう一度やり直すことになったから」と事務所に言われて。私一人が録り直しする予定だったんですけど、相手役の緒方さんが「掛け合いのセリフなので…」と一緒にやることになったんです。


で、二人でアフレコすることになったんですけど、実は最後のセリフって台本では「あんたなんかに殺されるのはまっぴらよ!」だったんです。でも、何回もそのセリフを言ってみたんだけど、庵野さんは「違う!そうじゃないんだ!」って何度もやり直しさせられて。休憩時間中にも緒方さんと「どうしたら監督の思うような表現が出来るんだろうね」とか話し合ってて。首絞められるシーンなんて、本当に緒方さんが私の上にまたがって首を絞めたぐらい(笑)、監督からの要求に応えようと必死でやってたんですけど、本当に難しくて…、う〜ん、リアルを求めてたのかなあ?


で、最後のセリフに関してはですね、これ言っていいのかどうか分かんないんですけど…、あの〜、もし宮村が…、”アスカが”とかじゃないんですよ(笑)。もし宮村が自分の部屋で一人で寝てて、窓から知らない男が入って来て、それに気付かずに寝てて、いつでも襲われるような状況だったにもかかわらず、襲われないで、寝ているところを見ながら、自分でオナニーされたと。で、それをされてる時に目が覚めたら何て言う?って聞かれたんですよ(笑)。「え!?」って。前から監督って変な人だなあって思ってたんですけど、その瞬間に気持ち悪ッ!って思っちゃって。で、「気持ち悪い……ですかねえ」って言ったら庵野監督、「あ〜、やっぱりそうか」とか言って(笑)。 (「BSアニメ夜話 2005年3月28日放送」より)

というわけで、「気持ち悪い」というセリフはこうして決まったようなんですが、宮村さんの発言を聞くと、「女性にそんな質問をする監督が気持ち悪い」という意味に思えてしまい、結局あのセリフはシンジではなく、庵野監督に向けられたものだったのか?と(笑)。

あと、「もし宮村優子が”私の寝顔をオカズにしながらオナニーしてくれる男の人って素敵!”とか思うような女性だったらどうなっていたのか?最後のセリフが変わっちゃってたんじゃないの?」等、色々気になる発言ではありました(^_^;)


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友達と映画を観に行ってケンカになったことはありますか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

突然ですが、皆さんは誰かと映画を観に行った時に、意見が食い違って揉めたりしたことはありませんか?例えば、仲のいい友人と一緒に映画を観に行って、その帰りに感想を話し合ったら、相手は「すごく面白かった!」と感動しているのに自分はそうでもなかった、とか。

こういう時って、相手は「どこがどう感動的だったか」を興奮気味に話しかけて来るんですけど、自分は「あまり面白くなかった」と思っているのでリアクションも薄めというか、むしろ「いや、つまんないんだけどなあ…」と内心テンションは低くなりがちじゃないですか?

でも、「好きな映画を他人に貶されたら嫌な気分になるだろうな」という気持ちもあるため、あまりダイレクトに批判したりせず、一応「ふんふん、なるほどね」と話を聞きながら、なるべく肯定的な雰囲気に持っていこうとするわけですよ。

とは言うものの、多少は反対意見も言いたくなるじゃないですか?「自分はこういう風に感じた」って。それに対して「やれやれ、この映画の素晴らしさが分からんとは(薄笑)」みたいに上から目線で接して来られたら、やっぱりさすがに腹が立ちますよね(^_^;)

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ましてや「感動できないお前が悪いんじゃボケ!」などと言われようものなら、いくら仲のいい友人同士でもケンカになってしまう可能性は十分あるでしょう(そこまで熱くなる人は滅多にいないと思いますがw)。本日は、「そういうことにならないためには、どうすればいいのか?」というお話です。

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上の画像は島本和彦先生の漫画『アオイホノオ』(第6巻)のワンシーンで、主人公の焔燃(ホノオモユル)が友人(ジョウ)と映画を観に行って(ちなみにマイケル・ダグラス主演の『ランニング』)、ジョウは感動して号泣したのに、焔は全く感動できず、上映後に「あの程度で泣くなんて!」とジョウを叱責している場面です。

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『ランニング』(1980年)とは、「冴えない中年マラソン・ランナーが、妻との離婚問題をきっかけに、オリンピック出場めざして奮闘する姿を描いたヒューマン・ドラマ」ですが、実は焔燃は、過去に『マイ・ウェイ』(1975年)という同じ系統の映画を観ており、「『マイ・ウェイ』の方がもっと感動的だった」と考えてたんですね。

つまり「俺はもっと感動的な映画をすでに観てるんだから、それ以上に感動的でなければ泣けない!」というわけです。まあ、僕も含めて映画オタクにはこういう面倒な人が多いんですけど(笑)、焔燃の友人ジョウは「感動できないのはお前に何かが欠けているからだ!」と猛反論。

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さらに「この映画の良さが分からないなんて、お前は人間の気持ちを全く理解できていない!」「お前自身に欠陥がある!」などと罵倒しまくり、焔燃はこれまでの人生を全否定されたような気分になったという(映画に感動できなかっただけなのに…)。

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でも、本当にジョウが言っているように「映画を観て感動できなかったら、感動できないヤツが悪い」のでしょうか?そもそも同じ映画を観ているのに、感じ方が違うのはなぜなのか?実はこの問題、色んな条件や要因が重なってて、一概に「こういうことだ」とは言えないんですよね。以下、具体的に検証してみましょう。

まず、上記の焔燃の場合は、『ランニング』を観る前に『マイ・ウェイ』を観ていて、「『マイ・ウェイ』の方が”父親マラソン映画”として質が上だ!」と評価しています。これだけなら、「過去に同じような映画を観ているから」で説明できそうなんですが、実は友人のジョウも同じく『マイ・ウェイ』を観てるんですよ。

その上で、「『マイ・ウェイ』なんて曲がいいだけだ!」「お前は曲に騙されてるんだ!」と断言している。つまり「同じような映画鑑賞歴を持つ二人が同じ映画を観ても評価が一致するとは限らない」ということです。もちろんこれは漫画の話ですが、現実でもこういう状況は珍しくありません。

そして、もし現実にこういう状況になった場合、議論はずっと平行線のままで、解決することはほぼ無いんですよね。なぜなら、お互いに背負っている「文化的バックグラウンド」や「個人の感受性」や「思想的ポジション」などが全く異なるからです。

もちろん、「年齢」や「性別」によっても感想は違うものになるわけで、そう考えると「映画を観て”面白い”あるいは”面白くない”と評価がわかれるのはむしろ当たり前」であり、そこで対立してもあまり意味がないと思うんですよ。

もしお互いに「異なる意見を受け入れる心構え」みたいなものを持っていれば、争いは起こらないはずなんですけど、どうしても「自分の主張が正しいことを認めさせたい!」という意識が働くのか、最終的には「この面白さを理解できないお前が悪い!」的な”人格攻撃”に至ってしまうんでしょうねえ。

特に最近はSNSが発達したことで、そういう状況が余計に目に付くようになりました。例えば、去年の夏に大ヒットした『シン・ゴジラ』の場合、僕自身は非常に楽しめたんですが、その一方で「面白くなかった」とか「どこが面白いのか良く分からない」という意見もチラホラと。

それに関して「まあ確かに、”家族愛”や”恋愛要素”などをわざと排除したせいで、従来の怪獣映画に見られた”明快なエンタメ性”は薄まったかもしれない」、だから「”良く分からない”という人がいても不思議じゃないよなあ」と思ってたんですよ。

ところが、「面白くない」と感想を述べた人に対して「いや、この映画の面白さが分からないやつは云々」という批判が相次ぎ、何となく「面白いと言わなきゃいけない雰囲気」みたいなものが出来上がっていったんですね。そういう状況を見て僕は「何か違うんじゃない?」と感じたわけで。

また、逆パターンとしては同じく昨年大ヒットした『君の名は。』の場合、今度は「面白くない」と思ってる人が「面白かった」と言う人に対して、「この程度の映画で感動してるヤツはレベルが低い!」などと批判していたり。これってもう映画の評価じゃなくて、他人の感想にケチを付けてるだけじゃないですか?

「面白い」と感じた人が素直に感想を語ったり、「面白くない」と感じた人がその理由を説明するのは、それぞれ自由にやればいいと思います。しかし、個人の人格を否定したり、ましてや誹謗中傷するような行為は見ていて気持ちのいいものではありません。

映画の中身について議論し合うならまだしも、互いの感性を否定し合うことがメインの言い争いは虚しいだけだし、もしもこういう行為に巻き込まれてしまった場合、極めて不毛な時間を過ごすことになってしまうので、それが嫌なんですよね。

ちなみに個人的な話をすると、以前、僕は友人のS君(重度の映画マニア)と一緒に映画を観に行く機会が多かったのですが、好きな映画のジャンル(嗜好)が微妙に異なるため、場合によってはかなり意見がわかれていました。

そのせいで、映画を観終わった後は毎回どこかのファミレスで2時間ほど不毛な議論を繰り広げるハメに陥っていたのです。そういう状況に疲れ果てた僕は、ある時期からもう一人の友人K君(野球好きの一般男性)も連れて行くことにしました。

K君は特に映画に詳しい人ではありません(ごく普通の会社員)。ただ、二人だけで観に行っている時は「どちらの意見が正しいか?」という”正解を決める議論”になりがちだったのに対し、「普通の人の意見」を取り入れ三人体制になったことで、「どういう評価が多いのか?」という”多数決の議論”に変化したのです。

そもそも同じ映画を二人で観て「面白い」「面白くない」と評価が分かれたとしても、それはむしろ当然であり、「どちらの意見が正しいのか?」って話じゃないはずなんですよ。映画の感想に”正解”なんて存在しないし、捉え方は人それぞれなんだから。

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(「木根さんの一人でキネマ」より)

なので例えば、ある映画を観て僕は「面白くなかった」と考え、S君は「面白かった」と評価した場合、残ったK君が「面白くなかった」と言えば、とりあえずこの場では「面白くないという意見が最も多い」となって一応収まるわけです。

もちろん、逆に僕の意見が否定される場合もありますが、それはそれで”他の考え方”を知るいい機会でもあるし、なにより1対1の場合は「この映画の面白さを理解できないヤツはお前だけだ!」などと決め付けられ、なかなか”着地点”が見出せず、長時間話してても疲れるだけだったんですよねえ。

でも、ここへK君が加わってくれたおかげで「う〜ん、まあそういう意見も無くはないだろうな」とS君も渋々ながら納得してくれるようになり、個人的には非常に助かっています。K君ありがとう!

というわけで本日の結論は、

「映画を観に行く時は三人以上で行け!もしくは一人で行け!」

これが”争いを起き難くさせるベターな対応策”だと思います(^_^)


『キングコング:髑髏島の巨神』ネタバレ映画感想/評価

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■あらすじ『時は1973年。ベトナム戦争が終結を迎えつつある中、南太平洋上に未知の孤島「スカル・アイランド(髑髏島)」が発見され、米国政府特務機関“モナーク”は調査隊の派遣を決定。リーダーは、ジャングルでのサバイバルに精通した元英国陸軍特殊空挺部隊のコンラッド(トム・ヒドルストン)。その他、研究者(ジョン・グッドマン)やカメラマン(ブリー・ラーソン)、ベトナム帰りの米軍ヘリ部隊を率いるパッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)などの精鋭メンバーが集結した。しかし突如、巨大な生物キングコングが現われ、ヘリコプターを次々と破壊!その圧倒的なパワーに為す術もない人間たちは、一刻も早くこの島から脱出すべく、ジャングルの中で決死のサバイバルを繰り広げるのだった…!「GODZILLA ゴジラ」を手がけたレジェンダリー・ピクチャーズが、ハリウッドを代表する巨大モンスター“キングコング”を壮大なスケールでリブートしたアクション・アドベンチャー超大作!』


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

現在、全国の劇場で絶賛上映中の『キングコング:髑髏島の巨神』が、観客動員100万人を突破、興行収入も16億円を超え、大ヒットしているそうです。さらにアメリカや中国などでも記録を伸ばし続け、4月10日時点での全世界の興収は5億3000万ドル(約595億円万円)を超えているらしい。

中でも中国の影響が凄まじく、5億3000万ドルのうち海外市場が3億5000万ドル(約392億円)で、中国での興行収入は10億8580万元(約175億円)となっており、実に半分近くを中国市場が占めていることになるわけですよ。中華パワーすげえ!

というわけで本日は、快進撃を続けている『キングコング: 髑髏島の巨神』の感想を書いてみたいと思います。なおネタバレありなので、まだ映画を観ていない方はご注意ください。

さて、キングコングと言えば、ストップモーション・アニメの先駆者:ウィリス・オブライエンが1933年に生み出したモンスター映画が元祖であり、まるで生きているかのように動くキングコングを見て、当時の観客は度肝を抜かれたという。

「コマ撮り人形アニメ」という技法で作られた『キング・コング』(33年版)は、物体を1コマ毎に少しずつ動かして撮影するため、非常に手間がかかるのですが、多くの映像作家に影響を与え、レイ・ハリーハウゼンやフィル・ティペットなど、優れた”モンスターメーカー”を生み出すきっかけになりました。

この映画が大ヒットしたことで、続編の『コングの復讐』や、1949年にはオブライエンの弟子のレイ・ハリーハウゼンがストップモーション・アニメを担当した『猿人ジョー・ヤング』が公開され、こちらも話題に(1998年にはビル・パクストンやシャーリーズ・セロン主演でリメイク版の『マイティ・ジョー』が作られた)。

そして1976年にはジョン・ギラーミン監督の『キングコング』が登場。こちらはコマ撮りアニメではなく、特殊メイクアーティストのリック・ベイカーが手掛けたゴリラスーツを自ら着込んでコングを演じたり、機械仕掛けの「巨大なコングの手」を作って俳優を掴むなど、リアリティを追及しようと様々な新技術が導入されました。

中でも、視覚効果アーティストのカルロ・ランバルディ(『エイリアン』(1979年)や『E.T.』(1982年)でオスカー受賞)が作った「実物大のキングコング・ロボ」は、見た目のインパクトが凄まじく、宣伝のためにわざわざ日本にも運び込まれ、当時は非常に話題になったそうです(ただし、撮影ではほぼ何の役にも立たなかったらしい)。

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このギラーミン版『キングコング』も大ヒットしたため、続編の製作が決定。しかし、リンダ・ハミルトン主演で作られた『キングコング2』(1986年)は、「前作で死んだはずのキングコングに人工心臓を移植して生き返らせる」という無茶なストーリーについていけない観客が続出し、全世界で大コケ。

僕は公開当時に映画館で観たんですけど、「何をどうしたらこんな酷い脚本になるのだろう?」と呆れ果てるぐらいグダグダで、観たことを激しく後悔しました(ちなみに日本では映画を題材にしたファミコンソフト『キングコング2 怒りのメガトンパンチ』が発売され、それなりに売れたらしい)。

そんな大失敗から19年後、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで数々の記録を打ち立てたピーター・ジャクソン監督が、1作目(33年版)をリメイクした『キング・コング』(2005年)を製作。最新CG技術を駆使して描き出されたデジタル・コングは、モーションアクターを務めたアンディ・サーキスの熱演と相まって実に生き生きとした動きを披露し、多くの観客を驚嘆させました。

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さらに海外だけでなく、日本でもキングコング映画が誕生。しかも、我が国が誇る怪獣王:ゴジラと激突するという”夢の対決”に日本中が大興奮!東宝がキングコングの名称使用料として8000万円を支払ったとされる『キングコング対ゴジラ』(1962年)は、1200万人を超える未曾有の観客動員数を叩き出し、ゴジラ映画史上最大規模の大ヒットを記録したのです(この記録はいまだに破られていない)。

そして5年後には『キングコングの逆襲』が作られ(キングコングの使用権は5年間だったため、契約終了前にもう1本製作した)、原始恐竜ゴロサウルス(オリジナル版へのオマージュ)と戦ったり、巨大ロボ:メカニコングと激しいバトルを繰り広げるなど、大いに観客を沸かせました。

このように世界中のファンから愛された人気キャラクターが、2005年の『キング・コング』以来12年ぶりに復活!しかもジョーダン・ボート=ロバーツ監督が作り上げた『キングコング: 髑髏島の巨神』は、オリジナル版の『キング・コング』(33年)に敬意を表しつつ、フランシス・フォード・コッポラ監督の『地獄の黙示録』の要素も盛り込んだ、”怪獣映画”プラス”戦争映画”になっているのが凄い!

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時代設定を1970年代前半のベトナム戦争終結直後にしたのも、荒唐無稽な巨大モンスターとリアルな戦争を一つの映画の中で同時に描くために必要な措置であり、わざわざベトナムやオーストラリアまで行って撮影するなど、徹底的に”本物っぽさ”を追求したそうです。

ジョーダン・ボート=ロバーツ監督曰く、「今はデジタルで何でもできる時代だけど、俺は撮り方も70年代に準じたかったんだ。ロケだからこそ生まれる臨場感や生々しさが欲しかったし、実際にヘリを夕焼けの中で飛ばしてみたかったんだ(笑)」とのこと。

こうして映画には見事なリアリティが宿ったんですけど、撮影は本当に大変で、毒ヘビや毒グモと何度も遭遇した役者がビビリまくっていたらしい。サミュエル・L・ジャクソンに至っては「マジで毒ヘビがウヨウヨしてるし、顔が引きつることもしばしばだった。普通なら撮影前にロケハンして安全を確かめているはずなのに…。オレは絶対、スタッフが手を抜いたと思うね!」と怒っていたそうです(笑)。

そんな苦労の末に完成した本作の最大の魅力は、何と言ってもキングコングの造形でしょう。今回のコングはとにかくデカい!全長31.6メートルに達するその大きさは、過去の映画に登場したコングの中でも最大級です。監督は「初めて目にしたとき、その巨大さに思わず息を呑む、という圧倒されるサイズ感がおよそ30メートルで、それぐらいが巨神的だろうと考えたんだ」とコメント。

また、監督はコングの動きにもこだわったようで、「俺が求めていたのは”荒ぶる神”であり、”孤独な王”なんだ。歩くときはゆっくり、重みがあって威厳があり、それと同時に不機嫌な感じも伝わってくるように見せたかった。参考にしたのは『ワンダと巨像』というゲームだ。そこに登場するクリーチャーには奇妙な悲しみがあって、俺はそのメランコリックな感じをコングでも表現したかったんだ」とのこと。

ワンダと巨像
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その言葉通り、本作のコングは威風堂々としていて実にカッコいい!中でも一番ビックリしたのが、女性に対してデレデレしてないこと。何しろ今までのコングは、初めて出会った金髪美女に一目惚れし、彼女を求めて右往左往し、最後はヒロインを助けるために死んでたんですけど、今回のコングはそんなことしません。

綺麗な女性がいても目もくれず、ひたすらストイックに髑髏島を守るために戦ってるんですよ。途中、水に落ちて死にかけているヒロインを助ける場面はありますが、助けた後に何も言わず(当り前かw)背中を向けて去って行くという、その男気溢れる後ろ姿に「渋いなあ!」と感激。人間の役者に例えたら、高倉健クラスの渋さじゃないでしょうか(笑)。

そんなコングに対して、人間側の主人公は全然渋くないというか、キャラが薄いんですよねえ(苦笑)。トム・ヒドルストン演じるコンラッドは、一応「サバイバルのエキスパート」なので島から脱出するために行動してるんですが、ずっと怪獣たちに追い回されるだけで、ほぼ何の活躍もしてません(というより活躍が目立たないw)。

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終盤のスカル・クローラーに襲われる場面で、なぜかいきなりマーロウ(ジョン・C・ライリー)の日本刀を使って翼竜(サイコ・バルチャー)を切りまくるという”アメコミヒーローっぽいアクション”が飛び出すものの、カッコいどころか不自然に見えて仕方がない(苦笑)。「どうした突然!?」って驚きましたよ(^_^;)

トム・ヒドルストン本人も「編集でカットされると思った」とインタビューで話してるほどですから、あのシーンはいらなかったんじゃないかなあ(笑)。あと、「パッカード大佐の部下が皆を助けるために手榴弾で自爆しようとしたらスカル・クローラーに吹っ飛ばされて死ぬ場面」も必要ないと思いました(笑)。

「カットすればいいのに」と思ったシーンは他にもあって(シーンというより”キャラ”なんですけど)、ジン・ティエンという中国の女優さんが演じているサンというキャラクター。この人、全然ストーリーに絡んで来ないんですよ。科学者の一人として調査隊に同行しているはずなんですが、特に活躍するわけでもなく、ドラマに影響を及ぼすでもなく、本当に不要なキャラなんです。いったい何のために登場しているのか、全く意味が分かりませんでした(苦笑)。

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実はこのジン・ティエンさん、ドニー・イェン主演の『スペシャルID 特殊身分』やジャッキー・チェン主演の『ポリス・ストーリー/レジェンド』、そしてマット・デイモン主演の『グレートウォール』、さらに現在撮影中の『パシフィック・リム2』など、超大作映画に次々と出演してるんですよね。

なので「いったい、どうしてこんな有名作品ばかりにキャスティングされるんだろう?」と不思議だったんですけど、衝撃の真相が発覚!以下、アクション監督の谷垣健治さんの証言より↓

谷垣:実は、『特殊身分』を作ったスターライト・フィルムのオーナーが、ジン・ティエンの恋人なんですよ。で、スターライト・フィルムはジン・ティエンをスターにするための会社なんです。


・それでジン・ティエンって妙に大物との共演が多いのか!


谷垣:そうなんです。彼女のデビュー作『戦国』(2011年)では、日本から中井貴一さんを呼んで、『ポリス・ストーリー/レジェンド』ではジャッキーの娘役、『ヴェガスからマカオへ(ゴッド・ギャンブラー レジェンド)』ではチョウ・ユンファとニコラス・ツェーと共演してますから。


・でも、よくジャッキーが引き受けましたね。


谷垣:スターライト・フィルムの親会社は、中国では有名な配給網を持っている会社で、最近AMCシアターズ(北米で2番目に大きな映画館チェーン)を買収したんです。『ライジング・ドラゴン』ってアメリカではAMCの配給だったんですよね。偶然かもしれませんが…。 (「映画秘宝2015年2月号」より)

なんと映画会社の重役の恋人だった!?なるほど、そういうことか…。まあ、いかにも芸能界で良くありそうな話ですね(さすがにちょっとあからさま過ぎる気はするけどw)。あと、製作会社のレジェンダリー・ピクチャーズは、2016年に中国の大連万達グループに買収されたので、”中国側の思惑”も働いてるんでしょうねえ。

特に最近のハリウッド映画は、やたらと中国市場を意識した描写が目立っているし、ジン・ティエンの不自然なキャスティングも”市場に対するアピール”と考えれば仕方がないのかも…。ただ、キャラの弱さだけはもう少しなんとかして欲しかったなあ(苦笑)。

それに比べて、パッカード大佐(サミュエル・L・ジャクソン)はキャラが立ちまくり!この人、映画の中では悪人っぽく描かれていますが、ベトナム戦争で多くの部下を失い、さらにジャングルで怪獣に部下を殺され、「絶対に仇を取ってやる!」と憤っているだけで、基本的には「部下思いのいい上司」なんですよね。ただ、”部下思いの気持ち”が暴走しすぎて、結果的に部下が大迷惑を被ってますけど(笑)。

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あと、サミュエル・L・ジャクソンと言えば「マザー・ファッカー!」の決め台詞でお馴染みですが(『パルプ・フィクション』では26回も言ってるw)、でもその言葉を言っちゃうとアメリカではR指定になってしまうので、映画会社としては言わせたくないんですよね。で、「マザー・ファッ…」と言い終わる前にコングに潰されるという、衝撃的な方法でR指定を回避してるんですよ(笑)。ヒデぇ〜!最後まで言わせてあげて〜w

それから、太平洋戦争中に島に墜落したマーロウは、同じく墜落した日本兵のイカリ・グンペイ(MIYAVI)と仲良くなり、共に島を脱出するために船(グレイ・フォックス号)を作っていたものの、途中でグンペイは命を落とし、彼の日本刀をマーロウが受け継いで…という、ちょっとブロマンスっぽい雰囲気も醸し出していました(『太平洋の地獄』に設定が似てる?)。

このマーロウも、パッカード大佐と同じくキャラが立ちまくりでしたねえ。基本的にはコメディリリーフなんですけど、笑わせるだけでなく、意外と感動的なシーンもあったりして、しっかりドラマを引っ張ってるんですよ。もうこの映画って、完全にパッカードとマーロウとコングの映画ですよね(笑)。なお、イカリ・グンペイは『新世紀エヴァンゲリオン』の碇シンジと、ゲームボーイを開発した横井軍平の名前から取っているそうです。

ちなみに、本作ではスカル・クローラー、バンブー・スパイダー、スケル・バッファロー、リバー・デビル、スポア・マンティス、サイコ・バルチャーなど、ありとあらゆる怪獣が次々と襲いかかってくるんですが、例えばスカル・クローラーのデザインがエヴァの使徒(サキエル)を元ネタにしていたり、日本のアニメやゲームの影響を受けまくりなんですよ(他にも『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』からの引用もあるらしい)。

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スカル・クローラー自体は、33年版の『キング・コング』に出て来た「大トカゲ」と同じなんですけど、骨みたいな顔の造形が、エヴァのサキエルだったり、『千と千尋』のカオナシだったり、ポケモンのカラカラだったりと、監督の趣味が反映されているそうです(動きは『グエムル』の怪獣を参考にしたとか)。

ジョーダン・ボート=ロバーツ監督が大の日本好き&ガチオタだからこそ、ここまでアニメやゲームネタをぶっ込んでるんでしょうね。インタビューで「オレは本当に日本のカルチャーが大好きなんだ。宮本茂や小島秀夫の影響は計り知れないね。日本こそ、地球上で最も大好きな場所だよ(笑)」と断言するぐらい、日本の文化にはまっているようです。

というわけで、色々魅力的な部分が多い本作なんですけど、個人的に一番気に入ったのはやっぱり「コングが圧倒的に強くてカッコいい」という点ですねえ。今までのキングコングは美女に弱く、ヒロインの尻を追いかけ回した挙句、最後は人間にやられて死んでしまう、という設定でした(あくまでも”悲劇”のキャラ)。

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しかし今回のコングは髑髏島を守護する神であり、ヒロインをエロい目線で見ることもなく、島の平和を乱す連中(人間を含む)に対して容赦ない攻撃を加える、崇高な存在として描かれているのです。人間側はそんなコングに畏れおののき(後半は怪獣退治に協力してますが)、「絶対に敵わない相手だ」と判断して島を去っていくという。最後の最後までコングの威厳を維持したまま終わるのが印象的でしたね。

そしてエンドクレジットが流れた後は、皆さんお待ちかねの次回予告(?)が登場!ラドン、モスラ、キングギドラの壁画を見せつつゴジラの咆哮、という怪獣映画ファンにとっては悶絶ものの映像で幕を閉じていましたよ。これはもう、『三大怪獣 地球最大の決戦』のハリウッドリメイクじゃないか!?

レジェンダリー・エンターテインメントがブチ上げた「モンスターバース」という構想は、東宝から怪獣映画の権利を獲得し、自社が所有するモンスターと同一の世界で対決させる、「怪獣映画版のアベンジャーズ」みたいな企画だそうです。

ギャレス・エドワーズ監督の『GODZILLA ゴジラ』(2014年)から始まったこの「モンスターバース」の第2弾が『キングコング:髑髏島の巨神』で、第3弾がラドン・モスラ・キングギドラ登場の『Godzilla: King of Monsters』(2019年)、そして第4弾でついにゴジラとキングコングが激突する『Godzilla vs. Kong』(2020年)が公開されるわけですよ。これは期待するしかありませんね!

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ジョン・ギラーミン監督の映画『キングコング』は本当に駄作なのか?

ピーター・ジャクソン監督作品『キング・コング』映画感想


映画『ザ・グリード』はここが凄い!ネタバレ解説/感想/続編は?

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■あらすじ『舞台は南シナ海。世界最大の超豪華客船「アルゴノーティカ号」が、3000人の乗客を乗せて処女航海に出航していた。船内では派手なパーティの真っ最中。そんな中、謎の美女トリリアン(ファムケ・ヤンセン)が、楽しいひと時を過ごす乗客たちから次々とサイフを抜き取っていた。しかし船長に見つかり、食糧庫に監禁されてしまう。その頃、フィネガン(トリート・ウィリアムズ)の密輸船「サイパン号」が、同じく南シナ海を航行していた。彼は、怪しい武装集団と大量の兵器を、海図にない島まで送り届ける仕事を請け負っていたのだ。ところが、突然船が何かに衝突し、沈没寸前になってしまう。その時、運よく彼らの目前に巨大な客船の姿が…。こうして「アルゴノーティカ号」に乗り込んだフィネガンたちだったが、人の気配が全く感じられない。3000人の乗客は、いったいどこへ消えたのか?大海原に孤立した豪華客船の中で、いまだかつてない未曾有の惨劇が始まろうとしていた…。人類が初めて遭遇する究極の恐怖を、最新のCG技術を駆使して描き出したモンスター・アクション・パニック超大作!』



どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、午後のロードショーでスティーブン・ソマーズ監督の『ザ・グリード』が放送されます。スティーブン・ソマーズと言えば、本作で注目を集め、『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』で大ヒットを飛ばし、以降『ヴァン・ヘルシング』や『G.I.ジョー』など、ひたすら単純明快な娯楽作品を撮り続けている分かりやすい映画監督です(笑)。

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これも面白かったなあ♪

最近は全く新作の話を聞きませんが、ここまで作品の傾向が一貫している監督も珍しいんじゃないでしょうか?そんなソマーズ監督の”全キャリア史上最高傑作”と言われている映画が『ザ・グリード』なのですよ(ただし一般的な知名度はイマイチかもしれないw)。

本作が公開されたのは1998年。当時のキャッチコピーは「『タイタニック』を上回るスペクタクル、『ダイ・ハード』を凌駕する銃撃戦、『スピード2』を超える疾走感、『エイリアン4』を凌ぐタフで美貌のヒロイン、そして『GODZILLA』を超越した恐怖のモンスター!90分で3000人、喰って喰って喰いまくれ!」という勇ましいもので、多くの映画ファンの期待を煽りました。

このコピーにまんまと心を鷲掴みにされた僕は、ワクワクしながら映画館へ行って『ザ・グリード』を観たんですけど、確かに色んな娯楽映画の要素をギッシリ詰め込んだ楽しい作品ではありましたね。少なくとも海洋アクション映画としては、キアヌ・リーブスが降板した『スピード2』よりも遥かに面白かったです(笑)。

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コレはいまだに低評価ですねえ(^_^;)

要は、タイタニックみたいな豪華客船を舞台に、最新の重火器で完全武装したテロリスト集団&美しいヒロインが、凶悪な巨大モンスターを相手に凄まじいバトルを繰り広げるという、中二魂を激しく揺さぶる面白設定が満載の、豪華なB級アクション・ホラー映画なんですよ。

なお、タイトルの”グリード”っていうのはモンスターのことですが、これは配給の東宝東和が勝手に付けた邦題で、劇中には一言もそんなワードは出て来ません(名前の由来は、聖書の「七つの大罪」の一つ”強欲・貪欲”を意味する言葉から取ったらしい)。

設定によると、「8億年前のカンブリア紀から生き延びて来た古代生命体が、環境破壊によって生態系が崩れたために異常進化した」となってるんですけど、特殊メイク・アーティストのロブ・ボッティンがデザインした姿は完全に巨大なタコ!

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ロブ・ボッティンと言えばコレでしょう(^_^)

そいつがグニョグニョと蠢く触手を伸ばして人間を捕え、頭から生きたまま踊り食いし、骨だけ「ペッ!」と吐き出す、まさに悪夢のような映像が炸裂するのだからたまりません。しかも、VFX会社ドリーム・クエスト・イメージズとILMがタッグを組んで作り上げたグリードの造形がまた凄い!

なんと、120名以上のスタッフが1年半を費やしてロブ・ボッティンのデザインを忠実に再現したそうです。さらにCGアニメーターたちは水中生物を集めた水槽を大量に並べ、イカやイソギンチャクやクラゲなどの動きを観察し、映像制作の参考にしたという(ヌメヌメしたリアルな気持ち悪さは必見!)。

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そんな『ザ・グリード』で主演を務めたトリート・ウィリアムズは、シドニー・ルメット監督の『プリンス・オブ・シティ』や、セルジオ・レオーネ監督の『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』に出演する一方、焼き豚が襲いかかって来る爆笑ホラー・アクション『ゾンビコップ』で主役を演じるなど、仕事を選ばないスタンスで有名な俳優です(ちなみに『スター・ウォーズ 帝国の逆襲』にもノンクレジットで出演しているらしい。どこに出てたんだろう?)。

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バディムービーとしても面白い!超オススメ!

一応本作の主人公なんですけど、テロリストに脅されたり、人食いモンスターに襲われたりしても慌てず騒がず、「Now what!?(お次は何だ!?)」と言いながら次々とピンチを切り抜けていく様が実に痛快なんですよね。

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本来は怪しい仕事を請け負う「海の運び屋」で、人と荷物を運ぶだけのはずだったのに、予期せぬトラブルでテロ集団と行動を共にすることになり怪物と遭遇してしまうという、巻き込まれ型のキャラクターを魅力的に演じていました(当初の予定ではハリソン・フォードにオファーを出していたらしいので、ハン・ソロみたいなキャラをイメージしてたのかも)。

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また、ヒロインを演じたファムケ・ヤンセンは、『007 ゴールデンアイ』の女暗殺者ゼニア・オナトップ役で注目され、『X-Men』のジーン・グレイ役で人気を獲得し、『X-Men』シリーズ5作品に出演(『96時間』シリーズではリーアム・ニーソンの奥さん役も演じています)。

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ジェームズ・ボンドを股で絞め殺そうとする恐ろしい女です(^_^;)

そんなファムケ・ヤンセンが『ザ・グリード』で演じたトリリアンは、「窃盗、強盗、公文書偽造、殺人未遂などで逮捕6回、有罪5回、4か国から国際指名手配中の女泥棒」で、要するに峰不二子ですな(笑)。劇中では、白いタンクトップ&ジーンズを着用して巨大なタコに立ち向かう姿が、実にカッコ良く描かれていました。

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にしても、やっぱりアクション映画には「タンクトップ姿で戦うヒロイン」が欠かせませんねえ(笑)。『エイリアン2』のリプリーとか、『ターミネーター2』のサラとか(どっちもキャメロンですけどw)。そういえば、トリリアンって『スピード』に出演していた頃のサンドラ・ブロックに似てるような気がするなあ。

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その他、、『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』『ヴァン・ヘルシング』『G.I.ジョー』など、スティーブン・ソマーズ監督作品でお馴染みのケヴィン・J・オコナーや、『イン・アメリカ/三つの小さな願いごと』『ブラッド・ダイヤモンド』でオスカーにノミネートされたジャイモン・フンスーなど、個性的な俳優が出演しているところも本作の魅力の一つでしょう。

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あと、テロリスト達が使っている武器にも特徴があって、「M1-L1 トリプルパルス突撃銃」という見たこともない銃が出て来るんですよ。劇中では「中国製」となっていますが、実在しないオリジナル・ガンで、ベースはキャリコM960だそうです。

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発砲時には5本束ねられた銃身が高速回転し、ガトリング砲のように弾丸を連射!マズル・フラッシュも派手に発火するし、「ギュイーン!」と豪快に作動するロータリー・バレルも異様にカッコいいんですよねえ(劇中のテロリスト達も「イエーイ!」とハイテンションになってるしw)。

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ただ、良く考えたら”必然性”はないかもしれません(笑)。もし時代設定が近未来なら、『ロボコップ』のオート9とか、『エイリアン2』のM41Aパルスライフルみたいな「架空の銃」を見せることに意味がありますけど、本作の場合は現代の話だから、そのまま実在する銃を使っても良かったはずなんですよ。

でも、そこで敢えて実銃を使わず、わざわざオリジナル・ガンを作ってバンバン撃たせるという、妙なところにこだわっている点が『ザ・グリード』の個性でもあるわけで、そういう部分も楽しかったですね(喜んでるのは銃オタクだけかもしれませんがw)。

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さらに音楽を担当しているのが巨匠ジェリー・ゴールドスミス!『オーメン』『エイリアン』『ランボー』『グレムリン』『トータル・リコール』など、数多くの優れた楽曲を手掛け、アカデミー賞に18回もノミネートされた名作曲家ですが、本作でも見事なスコアを提供しています。

特に冒頭シーン、海底をモンスターが進んでいる場面では『ゴジラ』を思わせるような重厚で不気味なメロディが流れ、この作品が”怪獣映画”であることを強調。また、アクションや爆発シーンではテンポのいい楽曲が鳴り響くなど、活劇映画の魅力を存分に堪能できますよ。

なお、ラストは「やっと巨大モンスターから逃げのびた主人公たちがとある島に辿り着くものの、島の奥から別の巨大生物らしきものが現れ…」という場面で終わっていたため、「続編があるのでは?」と期待した人もいたようです。ただ、残念ながらその後、続編の話は聞こえて来ないので、本作はこれで完結なのでしょう(もし続きが作られるのなら観てみたい!)。

というわけで、アクション・サスペンス・ホラー・コメディ・海洋モンスターなど、ありとあらゆるエンタメ要素をブチ込んだ痛快娯楽大作『ザ・グリード』。ややグロテスクなシーンがあったりしますが(というか中盤以降は結構グロいw)、基本的に登場人物がもれなくバカなので(笑)、気軽に鑑賞できますよ。未見の方は是非一度ご覧ください(^O^)/

ザ・グリード [DVD]
パイオニアLDC (1999-04-23)

残念ながら現在DVDは廃盤になっててプレミアが付いてます。ブルーレイ出してくれないかなあ(-_-;)

※なお余談ですが、午後のロードショーでは時々「マイナーだけど面白いモンスター映画」を放送することがあり、僕は『ザ・グリード』と『トレマーズ』と『アナコンダ』の3本を勝手に”午後ロー三大傑作モンスター映画”と呼んでいます(笑)。

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地中から襲い来る巨大生物と人間の攻防戦が超面白い!

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見どころは巨大ヘビvsジョン・ヴォイト!

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実写映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』ネタバレ感想/評価

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■あらすじ『西暦2070年、アジアのとある都市。電脳ネットワークと肉体の義体化が高度に発達した近未来で「電脳テロ犯罪」を取り締まる諜報部隊・公安9課(通称「攻殻機動隊」)。そのリーダーを務める”少佐(スカーレット・ヨハンソン)”は、上司である荒巻(ビートたけし)の指示を振り切り、サイバーテロに繋がる動きを未然に防ごうとしたが、ハンカ・ロボティックス社の研究者が芸者ロボットによって電脳ハックされてしまう。その後、現場に残された”クゼ”と名乗るハッカーからのメッセージを手掛かりに、怪しいクラブを見つけて潜入。しかし激しい銃撃戦に巻き込まれてしまった。やがて研究者のデータから、「プロジェクト2571」の存在に気付く少佐。そしてついにクゼの居場所を突き止めたものの、そこで驚愕の事実を知ることに…。果たして”自分”は何者なのか?「プロジェクト2571」の正体とは?原作:士郎正宗、監督:押井守の劇場アニメ「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」を、ハリウッドで実写映画化したSFアクション超大作!』


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

さて、スカーレット・ヨハンソン主演のSFアクション映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』が公開されて2週間ほど経ちましたが、やはりと言うべきか賛否両論真っ二つの評価になっているようですねえ(^_^;)

一応ざっくり説明しておくと、本作は日本のアニメをハリウッドで実写映画化したものであり、元ネタは1995年に公開された劇場アニメーション『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』です。

士郎正宗の原作漫画を、押井守監督が独特の世界観を用いてアニメ化したこの映画は、日本での興行収入が大コケだったにもかかわらず、アメリカの「ビルボード」誌でビデオ週間売り上げ全米ナンバーワンを記録。

これは(1996年当時)、日本の映像作品としては初の快挙で、大友克洋の『AKIRA』と並び「ジャパニメーション」と呼ばれる一大ムーブメントを巻き起こすきっかけになりました(現在は死語w)。

その影響力は凄まじく、ジェームズ・キャメロンやウォシャウスキーやクエンティン・タランティーノなど、ハリウッドの有名映画監督がこぞって『攻殻機動隊』を絶賛。

特に、ウォシャウスキー監督が『攻殻機動隊』のビデオをプロデューサーに見せて「こんな映画を作りたい」と言った結果『マトリックス』が生まれた、というのは有名なエピソードでしょう。

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実際、『マトリックス』における”攻殻機動隊リスペクト”たるや尋常ではなく、「もうこれが実写版『攻殻機動隊』でいいんじゃないの?」と思えるぐらいの激似ぶり(ウォシャウスキー監督は来日した際に押井監督に会って「あなたの映画を参考にした」と正直に告白したらしい)。

つまり、『攻殻機動隊』はまずアメリカでヒットし、その影響を受けた映画『マトリックス』が公開され、「どうも『攻殻機動隊』というアニメが『マトリックス』の元ネタらしいぞ」みたいな流れを経て日本でも認知されるようになったと、そういう感じなんですね。

そんな『攻殻機動隊』がハリウッドで実写化されたわけだから、そりゃあ大ヒット間違いなしだろう…と思いきや、3月に公開された北米では初日3日で2000万ドルにも届かず大コケ、ロッテントマトの評価も「46%」という微妙な数字で、いまいちパッとしてません。

しかし、4月7日から公開された日本では、3日間で観客動員23万人、興行収入3億6000万円を記録し、週末ランキング第2位を獲得しました。さらに日本と同時に公開された中国では、2,140万ドルを稼ぎ出し、初登場第1位を獲得!どうやらアメリカよりもアジア圏の方がヒットしているみたいですね。

アメリカでコケた理由は、「日本人の主人公をスカーレット・ヨハンソンが演じているから」とのこと。こういう、有色人種のキャラクターを白人が演じる「ホワイトウォッシュ問題」に関しては敏感に反応する人が多く、特に海外では批判の対象になりやすいようです。

その背景としては、キャラクターの白人化により有色人種の仕事の機会を奪うのは「明確な人種差別行為だ!」と考える人が多いからで、残念ながら『ゴースト・イン・ザ・シェル』は人種差別的な映画と思われてしまったみたいですね。

それに対し、日本ではあまり問題視されてないのが面白い(笑)。まあ、元々アニメの『攻殻機動隊』は日本でヒットしていなかったし、押井守監督は物語の舞台を”香港の街並み”っぽく描いていたので、キャラが外国人に変わってもあまり違和感がないのかも…。

というより、実際に映画を観てみると、「これを”ホワイトウォッシュだ!”と騒ぎ立てること自体が的外れなのでは?」と思うような内容なんですよね(理由は後述)。では、そういう問題以外に賛否両論になっている要因は何なのか?ということを考えてみたいと思います。

●良かったところ

まず、”賛”の意見としては「アニメ版の再現レベルが素晴らしい」という点が挙げられるでしょう。なんせルパード・サンダース監督が押井守の大ファンで、冒頭「ビルの屋上からダイブするシーン」に始まり、「水辺での格闘シーン」や「香港風の街並み」など、アニメ版を意識した場面が山ほど出て来ますからね。

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また、川井憲次の音楽をアレンジして使ったり、続編の『イノセンス』やTV版『SAC』のシーンも入れたり、「アニメの実写化」としてはかなりクオリティが高いと思いました。そういう意味では「ファンに喜ばれる実写版」と言えるんじゃないでしょうか?

さらに、「難解で哲学的」と言われた押井守のアニメ版を分かりやすく”改変”しているのも大きなポイント。「虚構と現実の境界線」や「生命とは何か?」という哲学的な要素を敢えて外し、「主人公のアイデンティティーを探す物語」にアレンジしているのです。

要は、話のベースが『ロボコップ』で、そこに”『マトリックス』系のSFアクション”や、”『ブレードランナー』系の世界観”みたいなものを組み合わせ、「受け入れやすさ」を高めているんですよ。この改変によって、アニメ版を知らない人でも楽しめる映画になったと思います。

●悪かったところ

しかしながら、上記の「良かったところ」が、そのまま”否”の意見を誘発している点も『ゴースト・イン・ザ・シェル』の困った部分なんですよねえ(苦笑)。

例えば、「難解な物語を分かりやすく改変したこと」自体は、アニメ版を知らない一般の人にとってありがたいのかもしれませんが、元の「深くて複雑な物語」が好きなファンにとっては物足りなく感じてしまうでしょう。

また、「記憶を失い機械の体に改造された主人公が、様々な困難を乗り越えて最終的に本来の自分を取り戻す」というストーリーを観て「『ロボコップ』じゃん!」と突っ込む人もいるだろうし、1995年のアニメを忠実に再現したせいで古臭く見えてしまう点もマイナスではないかと。

「古臭い」と言えば、原作の『攻殻機動隊』が「高度に発達した人工知能は生命体と成り得るのか?」というガチなSFを90年代に描き、最近でも『エクス・マキナ』で「人工知能は人間と同じような感情を持てるのか?」みたいなテーマを展開しているのに、本作では昔ながらの「自分探し」をやっているのが古臭い(苦笑)。

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人工知能をリアルに描いた衝撃作!

やはり、「今の時代にこの映画を作る意義」みたいなものが必要だと思うんですよね。オリジナルの方が「30年近く前の作品にもかかわらず優れた近未来的映像」を見せ、対する実写版の方は「2017年の作品なのに目新しさがあまりない」ってどうなのか?その辺が残念でした。

その他、「ビートたけしの滑舌が悪すぎて何を喋ってるか全然分からなかった」とか、「トグサや他の9課メンバーがほとんど活躍してない」など、細かい不満はいくつかあるんですけど、一番残念だったのは”全体的に中途半端”なところ。

内容を分かりやすくするのは別にいいんですよ。ただ、難解な設定を避けて純粋なエンターテインメントに徹するのであれば、もっと派手でカッコいいアクションを入れるとか、もっとラスボスを強くして最後に主人公がやっつけた時のカタルシスを高めるとか、娯楽映画としての盛り上がりを強化しないと意味がないんじゃないかなあ。

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というわけで、良かったところと悪かったところをいくつか挙げてみたんですが、結局この映画に対する僕の評価はどうなの?っていうと……う〜ん、「映画の出来栄え」を問われた場合、出来はあまり良くないんですよね(笑)。でも、「好きか、嫌いか?」と問われたら、割と好きな映画でした。

それは、ハリウッド映画でここまで日本のアニメを真面目に再現しようとしている実写化作品が今までなかったということと、日本語吹き替えにアニメ版の声優さんをそのまま使っているから。「声の効果」っていうのは本当に大きくて、一気にアニメ版の雰囲気を再現できるんですよ。

これがもし、日本で実写映画化していたら、少佐の声を田中敦子さんが吹き替えたり、バトーの声を大塚明夫さんが、トグサの声を山寺宏一さんが吹き替えることもなかったわけだから、そういう意味でもハリウッドで作られて良かったなと。

あと、「日本人のキャラクターを西洋人が演じる問題」に関しても「上手く対処しているな」と感じました。本作は、アニメ版で詳しく描かれていなかった”主人公の背景”を掘り下げることでドラマ性をアップさせ、同時に”草薙素子”という日本人のアイデンティティーも描いています。

つまり、人間の意識を機械の体に移す”義体”という技術が開発された世界だからこそ草薙素子の外見が変わったのだ、という必然をきちんと見せているわけですよ。

良く考えてみれば、士郎正宗の原作でも”男性型の義体”になったり、アニメでも”子供の義体”になったり、草薙素子の外見は状況に応じてコロコロ変化しているのですから、”スカーレット・ヨハンソンの義体”になったって何の問題もないでしょう(笑)。

ただ、一つ気になったのはラストシーン。クゼに「俺と一緒に来てくれ」と言われた素子は、その誘いを断るんですね。原作でもアニメ版でも、素子はネットと融合して「さらなる上部構造にシフト」していましたが、実写版ではリアルワールドに留まることを選択しています。

この改変が良いか悪いかはともかく、個人的には「ネットは広大だわ」という素子の決め台詞が聞けなかったのは少し残念でした(^_^)

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ジョン・ウー節が炸裂!『フェイス/オフ』ネタバレ映画解説/感想

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■あらすじ『冷酷非道なテロリスト:キャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)に幼い息子を殺されたFBI捜査官ショーン・アーチャー(ジョン・トラボルタ)は、6年の歳月を復讐のためだけに生きてきた。そしてついにキャスターを捕えたものの、意識不明の重体に!しかもキャスターは、ロサンゼルスを壊滅させる強力な時限爆弾を仕掛けていた。キャスター以外に爆弾の在りかを知る者は、弟のポラックスのみ。そこで、「キャスターの顔を移植して彼に成りすまし、ポラックスから情報を聞き出せ」との指令が下る。アーチャーは悩みつつもこの極秘任務を引き受けるが、その直後、昏睡から目覚めたキャスターがアーチャーの顔を自分に移植し、任務を知る人間を一人残らず抹殺してしまった。こうしてアーチャーに成りすましたキャスターは、FBI捜査官としての権限を手に入れ、一方のアーチャーは犯罪者として刑務所の中へ…。この世で自分が最も憎悪する”顔”をつけた2人の男は、運命に操られるかのように再び死のチェイスを繰り広げるのだった!『男たちの挽歌』のジョン・ウー監督が、ハリウッド進出3作目にしてついに自らの映像美学を貫き通したガンアクション映画の大傑作!』


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、午後のロードショーにてジョン・トラボルタ&ニコラス・ケイジ主演の『フェイス/オフ』が放送されます。本作は、香港映画界の巨匠:ジョン・ウー監督が、ハリウッドで撮った3本目の作品であると同時に、真の意味で「ジョン・ウー・スタイル」が発揮された記念すべき作品なのですよ。

ジョン・ウー監督と言えば、香港時代に『男たちの挽歌』や『狼/男たちの挽歌・最終章』などの優れたアクション映画を次々と発表し、「男同士の熱い絆」を描いた情感溢れる作劇と、様式美を極めた激しい銃撃戦で人気を博し、”香港ノワール”という新語まで生み出しました。

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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2013-10-11)

特に、”2丁拳銃”や”スローモーション”を多用した独特のガン・アクション・シーンが観る者全ての度肝を抜きまくり、クエンティン・タランティーノやマーティン・スコセッシやロバート・ロドリゲスなど、海外の映画監督にも絶大な影響を与えたのです。

そんな凄いクリエイターをハリウッドが放っておくはずがありません。実は、ジョン・ウー監督が香港で『狼たちの絆』を撮影している頃、すでに「アメリカへ来ないか?」という誘いを受けていたらしい。

ジョン・ウーを誘ったのはオリバー・ストーン監督で、わざわざ撮影現場まで会いに来るほど熱心に勧誘していたようですが、当時は次回作の『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』の撮影が決まっていたため、実現しませんでした。

ハード・ボイルド/新・男たちの挽歌 [Blu-ray]
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しかし、『ハードボイルド/新・男たちの挽歌』を撮り終えたジョン・ウー監督は、翌1993年にジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の『ハード・ターゲット』でついにハリウッド・デビュー!サム・ライミが製作総指揮を務めたこの映画は、公開初登場でいきなり全米ナンバー1の大ヒットとなり、一躍ジョン・ウーの知名度を押し上げたのです。

ちなみに『ハード・ターゲット』は、ヴァン・ダムの華麗なアクションも見どころなんですけど、『エイリアン2』のビショップ役で有名なランス・ヘンリクセンや、『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』のイムホテップ役で注目されたアーノルド・ヴォスルーなど、個性的な役者たちも魅力的でした。

ハード・ターゲット [Blu-ray]
ジェネオン・ユニバーサル (2013-11-27)

そして、さらにスケールをアップさせた次回作『ブロークン・アロー』でもっと凄い映画に…と言いたいところなんですけど、これがちょっとイマイチなんですよねえ。

クリスチャン・スレーターとジョン・トラボルタ主演のアクション超大作で、ヘリは墜落するわ、核弾頭は爆発するわ、派手なシーンの連続で確かに凄い迫力でした。でも、ジョン・ウーらしさがあまり感じられないのですよ。

どうやら映画会社の規制が厳しかったようで、前作の『ハード・ターゲット』の時にはサム・ライミがジョン・ウーの熱狂的なファンだったから、ある程度自由に撮らせてくれたのですが、『ブロークン・アロー』では自分の思い通りに作れなかったらしい。やはりハリウッドの壁は厚いのか…。

ブロークン・アロー [Blu-ray]
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だがしかし!ジョン・ウー監督は諦めませんでした。『ブロークン・アロー』を撮った後、ハリウッドの強大な映画産業システムに対して果敢に闘争を挑み続け、ついに勝利を収めたのです。これってもの凄い快挙なんですよ!

なんせプロデューサー主導型のハリウッドで、脚本の修正権、キャスティング権、撮影現場での自由裁量権、編集権など、まさに”全権委任”ともいえる絶対的な権限を勝ち取り、全てを思うがままに操れるポジションを獲得してしまったのですから!

こうして、映画全体をコントロール出来るようになったジョン・ウー監督は、本来の”驚くべき大胆さ”を思う存分に発揮し、映画史上かつてない前代未聞のアクション巨編を誕生させたのです。それがこの『フェイス/オフ』なのですよ!

フェイス/オフ [Blu-ray]
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2010-12-22)

では、いったいどんな映画なのか?というと、「2人の男が互いの顔を入れ替える」という、「なんじゃそりゃ?」としか言いようのない破天荒な設定でして(笑)。それもそのはず、なんと元々は映画学校の生徒が書いた脚本だったんですね。

どうやら最初に脚本を読んだジョン・ウー監督自身も「なんじゃそりゃ?」と思ったらしく、一度オファーを断ってるんですよ。当初は「200年後のアメリカを舞台にしたSF映画」だったので、「全くやる気が出なかった」そうです。

しかし、「善と悪が入れ替わるという設定には興味があった。これは私の持論だが、100%良い人や100%悪い人間はいない。人は必ず両方の面を持っているはずで、この脚本にはそういう私のテーマが描かれていたんだ」とのこと。

そこでジョン・ウーは、監督の権限を利用して脚本を大幅に書き直し、登場人物の内面に人間性を与え、さらに家族の絆をめぐる感動的なドラマを付け加えたのです。こうして”映画学校の生徒が書いた脚本”とは全然違うストーリーが完成しました(笑)。

そしてこのストーリーを、ニコラス・ケイジとジョン・トラボルタという、色んな意味で濃い俳優2人が演じ、他にもニック・カサベテス、ジョアン・アレン、ジーナ・ガーション、ドミニク・スウェインなど、個性的なキャストがズラリと集結!そんな本作の見どころを、以下に箇条書きしてみます。


●キャスター・トロイ登場シーン

飛行場に現れたキャスターは、ロングコートを風になびかせながら車から降り立ち、悠然と歩きつつ背中の2丁拳銃を見せる。それは24金が施されたゴールド仕上げのカスタム・ガバメントで、グリップには龍まで彫られたド派手なハンドガン!しかもその間、画面はずっとスローモーション!痺れるぜ!

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●飛行場での銃撃戦

ジェット機とヘリの激しいチェイスの後、格納庫に逃げ込んだキャスターを追って熾烈なバトルを繰り広げるアーチャー。「2丁拳銃を撃ちながらの横飛び」や、ジョン・ウー作品でお馴染みの「互いに銃を突きつけ合う2人の男(メキシカン・スタンドオフ)」も炸裂!

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●顔の入れ換え

元はSF映画の脚本でしたが、「政府の要人を安全に保護するために顔を変える技術を研究中」という設定に変更してリアリティを高めたそうです。特殊メイクを使った手術シーンは結構グロい(しかし、ジョン・トラボルタとニコラス・ケイジでは顔の大きさが違い過ぎるんじゃないだろうか?)。

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●刑務所を脱獄

『フェイス/オフ』のユニークなところは、中盤の展開が「脱獄不可能と言われる最新鋭の刑務所からいかにして脱出するのか?」という囚人映画になっている点。特殊な靴を履かされた囚人たちは、スイッチ一つで足が床に固定されて動けなくなど、変な設定も満載です(笑)。普通ならこれだけで1本映画を作れそうですが、単なるワンエピソードとして描いているのが贅沢ですね。

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●オーバー・ザ・レインボー

何とか刑務所を脱走したアーチャーでしたが、犯罪者扱いされているため自宅には戻れません。そこで、キャスターの仲間の所でかくまってもらうことに。しかし、そこへFBIが突入!激しい銃撃戦が繰り広げられる中、バックには「オーバー・ザ・レインボー」が流れるという斬新すぎる演出に驚愕せざるを得ない!

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ここでこの曲を流したのはジョン・ウー監督のアイデアですが、映画会社が著作権使用料の支払いを渋ったため、ウーさんが自腹で支払ったそうです(なお、この曲を選んだのは、監督が生まれて初めて観た映画『オズの魔法使い』の主題歌だったから)。

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●鏡を挟んで撃ち合い

いくつもの鏡が設置された部屋で互いを撃ち合うキャスターとアーチャー。「鏡に映った憎い相手の顔に銃を突き付ける」という変則的なメキシカン・スタンドオフが面白い。なお、このシーンは映画会社から「予算が無いので撮影できない」と断られたものの、「俺の監督料からその分を引いてくれ!」とジョン・ウーが説得し、何とか撮り切ったらしい。

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●教会でのガンアクション

白いハト、2丁拳銃、スローモーション、体をクルクル回しながら発砲する回転撃ち、「1対1」ではなく、何人もの人間が同時に銃を突きつけ合う複雑すぎるメキシカン・スタンドオフなど、この教会シーンに”ジョン・ウー的映像美学”が全て詰まっている名場面!サイコーだッ!

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●モーターボート・チェイス

いよいよラストの大アクションシーン。「出し惜しみはしないぜ!」と言わんばかりに壮絶なボート・チェイス&大爆発の連続!「流れ弾が当たってガスボンベが木っ端微塵」とか、爆発しなくてもいいようなものまで敢えて爆発させてるし!最後はボートに乗った2人が吹き飛ばされるんだけど、どう見てもスタントマンなんだよね(笑)。でもジョン・ウー監督はそんなこと一切気にしてない。勢いで突っ走ればOKなのだ!

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というわけで、最初から最後まで熱いアクションがてんこ盛りの『フェイス/オフ』。設定的にはやや(かなり?)無茶なシーンがあるものの、間違いなくジョン・ウーがハリウッドへ渡ってからの最高傑作であり、彼の全フィルモグラフィーの中において重要な位置を占める作品だと言っても過言ではないでしょう。

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ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社 (2010-12-22)

映画好きが選ぶ『対決映画ベストテン』!

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

さて、『男の魂に火をつけろ!』(washさん運営)というブログでは定期的に「映画ベストテン」を選ぶ企画を開催していて、僕も何度か参加させてもらってるんですけど、今回のテーマは「対決映画ベストテン」に決まったようです。

男の魂に火をつけろ!対決映画ベストテン

過去のテーマでは「戦争映画」や「SF映画」など、それぞれのジャンルで好きな映画を選んでいたんですが、まさか「対決映画」というジャンル(?)があったとは驚きました。「対決映画?なるほど、そういうのもあるのか」と(笑)。

でも、今回は意外と難しかったですねえ。対象作品の基準として「対決する両者の名前がタイトルに明記されていること」、「ただし、その両者が作中で実際に戦っていなくてもOK」とのことなので、最初は簡単そうに思えたんですよ。

ところが、いざ候補を挙げようとすると、なかなか思い浮かばないんですよねコレが(苦笑)。アクション映画などは必ず誰かと誰かが戦っているわけだし、「対決映画」自体は結構多いはずなんですけど、”タイトル縛り”が予想外に厳しくて…う〜む(-_-;)

というわけで、かなり苦労したものの、何とか10本を絞り出してみましたよ。今回、僕が選んだ対決映画ベストテンは、以下のような感じです。


1.『ガメラ2 レギオン襲来』

ガメラ2 レギオン襲来 [Blu-ray]
角川エンタテインメント (2009-08-28)

「平成ガメラ三部作」はどれもオススメなんですが、個人的に一番好きなのは『2』ですね。元々、前作の『大怪獣空中決戦』は「怪獣 vs 自衛隊」をリアルに描いたことが評価されていました。

そして続編となる『レギオン襲来』ではその路線をもっと進化させ、「戦争映画」的なアプローチで「ガメラ」という物語を見せているところが良かったです。

昨年大ヒットした『シン・ゴジラ』も自衛隊の活躍が目立ちましたが、あれは「政治家 vs 怪獣」という新機軸を打ち出したことが画期的だったわけで、岡本喜八ばりの素早いカッティングで描かれる役人たちの対応が見事な緊張感を生み出した反面、「よく分からない」という批判も出ていました。

それに対して『レギオン襲来』では、自衛隊員、技術者、民間人など多彩なキャラクターが様々なドラマを繰り広げながら怪獣退治に尽力するという、非常に分かりやすい(悪く言えば古典的な)手法でストーリーを構築したことが、娯楽映画としてのクオリティを高める要因になったのではないかなと。

ちなみに僕は『シン・ゴジラ』を観た時、「なんて面白い怪獣映画なんだ!」と感激してブルーレイも買いました。しかし、それによって『ガメラ2 レギオン襲来』が古臭くなったか?と言われれば全然そんなことはないわけで、むしろ今観ても十分に面白い!と断言できます。まさに、それこそが名作の証しなのではないでしょうか。

2.『エイリアン VS プレデター』

エイリアンVS.プレデター [Blu-ray]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (FOXDP) (2012-07-18)

「エイリアンとプレデターって、もし戦ったらどっちが強いかなあ?」という、映画好き達が居酒屋でビールとか飲みながら話してるノリをそのまま具現化したような(笑)、非常に無邪気な映画なんですけど、僕は好きなんですよねえ。ポール・W・S・アンダーソン監督のオタク趣味が全開になってて最高です。残念ながら世間の評価はイマイチのようですが(^_^;)

3.『マジンガーZ対デビルマン』

「マジンガーZとデビルマンが戦う話」ではありません。最近ではマーベルやDC映画でお馴染みの、いわゆる”クロスオーバー作品”ってヤツですね。このシリーズには、『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』や『グレートマジンガー対ゲッターロボ』などがあり、当時の子供たちを熱狂させました。タイトルだけでもワクワクさせられますねえ(^_^)

4.『ルパン三世 ルパン VS 複製人間』

劇場版ルパン三世第1弾として1978年に公開され、当時は大ヒットした本作。まあ、個人的には『カリオストロの城』の方が好きなんですけど、今回の企画の趣旨に最適なタイトルなのでこちらを選びました。宮崎ルパンの人気の影に隠れがちですが、『複製人間』も冒険活劇映画として非常に良く出来ていると思います。

5.『ゴジラ×メカゴジラ』

ゴジラ映画はほぼ全てが「対決モノ」なので、どれを選ぶか?というのが悩みどころなんですけど、そんな中で本作を選んだ理由は釈由美子が主役だから…ではなく、作品全体の雰囲気が某有名ロボットアニメに酷似していて、他のゴジラ映画とは印象が異なっているからです(監督は絶対意識してるはずw)。

6.『サイボーグ009 VS デビルマン』

『マジンガーZ対デビルマン』では両者は戦いませんでしたが、こちらはマジでサイボーグ009とデビルマンが戦います。タイトルそのまんまです(笑)。

7.『ピープル VS ジョージ・ルーカス』

ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』を何度も修正していることに対して、ファンの人たちが怒り狂っている様子を収めたドキュメンタリーです。ルーカスへの批判が凄まじいことになってて、もう笑うしかありません(笑)。

8.『人質奪還 アラブテロ VS アメリカ特殊部隊』

アメリカ特殊部隊の活躍を描いたアクション映画ですが、見どころはそこじゃなくて、脇役で出演しているスコット・アドキンスの見事な格闘戦なんですよ。特に終盤のタイマンバトルは必見の素晴らしさで、カンフー・テイスト満載のアクロバティックな動きに驚愕すること間違いなし!

9.『AVN/エイリアン VS ニンジャ』

日本の超低予算ムービーで、内容は……あまり期待しないでください(苦笑)。ただし、アクション監督を『図書館戦争』や『アイアムアヒーロー』の下村勇二が務めているだけあって、アクションシーンだけは迫力満点。あと、「宇宙怪獣モノ+チャンバラ」という、他に類を見ない変なコンセプトは捨て難い魅力があります。

10.『メガ・シャーク VS グレート・タイタン』

このシリーズは、『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』とか『メガ・シャーク VS クロコザウルス』とか、大体どれもこれも酷い内容なんですが、そんな中で本作は珍しく面白かった(マシだった)ので今回選んでみました(まあ、他が酷過ぎるだけなんですけどねw)。


1.『ガメラ2 レギオン襲来』(1996年 金子修介監督)

2.『エイリアン VS プレデター』(2004年 ポール・W・S・アンダーソン監督)

3.『マジンガーZ対デビルマン』(1973年 勝間田具治監督)

4.『ルパン三世 ルパン VS 複製人間』(1978年 吉川惣司監督)

5.『ゴジラ×メカゴジラ』(2002年 手塚昌明監督)

6.『サイボーグ009 VS デビルマン』(2015年 川越淳監督)

7.『ピープル VS ジョージ・ルーカス』(2010年 アレクサンドラ・フィリップ監督)

8.『人質奪還 アラブテロ VS アメリカ特殊部隊』(2003年 アイザック・フロレンティーン監督)

9.『AVN/エイリアン VS ニンジャ』(2010年 千葉誠治監督)

10.『メガ・シャーク VS グレート・タイタン』(2015年 クリストファー・ダグラス=オーレン・レイ監督)


というわけで、今回僕がチョイスした10作品は上記のような感じになりました。なお、このランキングとは全く関係なく、個人的に気になった作品があったのでついでにご紹介しておきます。

『エイリアンvsアバター』っていう、2大ヒット映画に便乗した安易な企画で、僕は観たことないんですが、まあ何となく内容は想像できますよね(笑)。で、驚いたのはそのキャッチコピーなんですよ。

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「勝手に戦え!」

なんで逆ギレしてるんだよ(笑)。あまりにも雑な仕事ぶりに「もしかして何か深い意味が隠されているのでは…?」と一瞬深読みしてしまったんですが、どう考えても「ああ面倒くせえ!もう、お前ら勝手に戦えよ!」という以外の意味があるとは思えないんですよね。こんな投げやりなコピー、初めて見たよ(^_^;)

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ARC (2012-05-28)

カスタマーレビューはなぜか絶賛w

『ローグ・ワン/スター・ウォーズ ストーリー』ネタバレ感想/評価

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■あらすじ『銀河全体を脅かす帝国軍の究極兵器:デス・スター。その設計図を奪うため、無法者たちによる反乱軍の極秘チーム「ローグ・ワン」に加わった女性戦士ジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)は、様々な葛藤を抱えながら不可能なミッションに立ち向かっていく。「エピソード4」の冒頭でレイア姫がR2-D2に託したデス・スターの設計図は、いかにして入手されたのか?そこには、わずかな希望を繋ぐため、命を懸けて危険な作戦に挑んだ名もなき反乱軍戦士たちの、勇気と感動のドラマが隠されていた…。伝説の原点へと続く、誰も知らない”もう一つの物語”がここにある!』


※この記事は完全にネタバレしています。まだ映画を観ていない人はご注意ください。


どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

ゴールデン・ウィーク真っ只中、皆さんいかがお過ごしでしょうか?本日、5月4日はなんと『スター・ウォーズ』の日です。いや、もちろん日本では”みどりの日”なんですけど(笑)、海外ではルーカス・フィルム公認の“Star Wars Day”であり、世界中のファンがスター・ウォーズの文化を祝い、映画を称える日として親しまれているのですよ。

ではなぜ、5月4日がスター・ウォーズの日なのか?と言えば、「May the Force be with you(メイ・ザ・フォース・ビー・ウィズ・ユー=フォースと共にあらんことを)」という劇中で定番のセリフを「May the 4th(メイ・ザ・フォース=5月4日)」にかけた語呂合わせなんですね(ダジャレかよw)。

ちなみに、日本の一般社団法人・日本記念日協会も、5月4日を「スター・ウォーズの日」と正式に認定したとのことで、ますます身近な存在になっている模様。というわけで、本日は『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の冒頭に繋がるストーリーを描いた『ローグ・ワン/スター・ウォーズ ストーリー』の感想ですよ。


時は内乱のさなか。凶悪な銀河帝国の支配に、反乱軍は秘密基地から奇襲を仕掛け、帝国に対し初めて勝利を収めた。更にその戦闘の合間に、反乱軍のスパイは帝国軍の究極兵器の設計図を盗み出すことに成功。それは”デス・スター”と呼ばれ、惑星をも粉々にするパワーを持つ宇宙要塞基地だった。凶悪な帝国軍に追われながら、レイア姫は盗み出した設計図を手に故郷へと急いだ。人々を救い、銀河に自由を取り戻すために....


1977年に1作目の『スター・ウォーズ』(エピソード4)が公開された時、映画の冒頭シーンでいきなり上記の文章が流れ、多くの観客を驚かせました。なぜなら、そこには観客が知らない「これまでのあらすじ」が記されていたからです。

今でこそ、『スター・ウォーズ』は世界中の人が知る人気シリーズになっていますが、当時は単なる新作映画の一つであり、シリーズ化の予定もありませんでした(『エピソード4/新たなる希望』という表記も後から付け加えられたもの)。

なので、初めて『スター・ウォーズ』を観た当時の人々は「反乱軍のスパイって何?」「この映画、途中からストーリーが始まってるぞ!?」と驚いたわけです。

その後、全世界で大ヒットし、劇中で触れられていた「過去の出来事」も『エピソード1』〜『エピソード3』として描かれたのですが、『エピソード4』の冒頭で流れた”あのシーン”だけがずっと謎のままだったんですよ。

だからファンは長年「どんなことが起きてたんだろうな〜」と想像するしかなかったんですけど、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ ストーリー』でついに、あの「反乱軍によるデス・スター入手作戦」の真相が明らかになったわけです。いや〜、嬉しいですねえ(^_^)

さて、本作は『EP3』と『EP4』の間の物語ですが、厳密に言うと『EP4』が始まる直前の状況(数分前)を映画化したもので、『EP3』と直接的な繋がりはありません。なので、本作だけでも十分に内容は理解できるんですけど、出来れば『EP4』を先に観ておいた方がいいでしょう。

なぜなら、『ローグ・ワン』には『EP4』に関連するキャラが多数登場しているので、全く知らない状態で観た場合は印象が違うと思うんですよ(まあ先の展開を知ることになるため、思い切り”ネタバレ”になっちゃうんですけどねw)。

例えば、『EP4』に出て来るターキン総督(グランド・モフ・ウィルハフ・ターキン)という悪人が、本作にも登場しています(直前の話だから)。しかし、ターキンを演じたピーター・カッシングは1994年に亡くなってるんですよ。

だから、映画を観る前は「ああ、『EP3』の時みたいに良く似た俳優(ウェイン・パイグラム)を使って、少しだけ登場させるんだろうな〜」程度の認識しかありませんでした(『EP3』にも若い頃のターキン総督がゲストキャラ的に出ていたので)。

ところがなんと、ターキンの登場シーンがめちゃくちゃ多い!しかもピーター・カッシングにそっくり!『EP4』時代のターキン総督そのまんまの姿がスクリーンに映ってるんです。正直、これにはド肝を抜かれましたねえ。まさか、とっくに死んだ俳優が新作映画に出てるとは!

実は、首から下の部分はガイ・ヘンリーというイギリスの役者が演じ、ターキンの衣装を着たヘンリーさんの顔にフルCGで作ったピーター・カッシングの顔を合成しているのだそうです(以下、メイキング解説映像↓)。

『ターミネーター:ジェニシス』でも若い頃のシュワちゃんをCGで作ったりしていたので、不可能ではないんでしょうけど、ここまでしっかりCGキャラが画面に映って違和感が無いっていうのは「凄まじい技術の進歩だ!」と驚かざるを得ません。

ちなみに、ガイ・ヘンリーは『ハリー・ポッターと死の秘宝』でパイアス・シックネス役を演じた人で、ターキンを演じるにあたり、故ピーター・カッシングの動きを再現しようと意識したものの、完璧に演技を似せることは難しく、さらにCGで作ったターキンの顔ともマッチさせなければならず、非常に苦労したらしい。

では、ターキンの顔はどうやって作ったのか?というと、1984年に公開されたヴァル・キルマー主演の『トップ・シークレット』という映画に故ピーター・カッシングが出演した際、撮影の過程で作成した”顔型”がたまたま残っていたんですね。で、ILMがそれをスキャンして、運よくデジタルデータを取得できたというわけです。

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さて、次に登場キャラクターを見てみると、まず主人公のジン・アーソ(フェリシティ・ジョーンズ)が良かったですね。幼い頃に帝国軍の襲撃を受け、母を殺され父を拉致された彼女は、反乱軍の戦士ソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)に保護された後、15歳からは一人で孤独に生きてきました。

『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』でもデイジー・リドリー演じる”レイ”という女性が主人公でしたが、スピンオフ作品の本作でも、勇敢で美しいヒロインが過酷な試練に立ち向かう姿を描いています(とても魅力的なキャラなのに、これ1作だけで終わってしまうのが残念)。

やがて反乱軍同盟に合流したジンは、キャシアン・アンドア(ディエゴ・ルナ)、ボーディー・ルック(リズ・アーメッド)、チアルート・イムウェ(ドニー・イェン)、ベイズ・マルバス(チアン・ウェン)などの仲間たちと出会い、帝国軍の野望を阻止するために離れ離れになった父ゲイリン・アーソ(マッツ・ミケルセン)の行方を追って…という展開に。

そんな反乱軍部隊の中で印象的なキャラを挙げるなら、やはりドニー・イェンが演じたチアルート・イムウェでしょう。「盲目の僧侶」という昔のカンフー映画に出て来そうな武術の達人が、素手でストームトルーパーをなぎ倒す場面のなんたるカッコ良さ!

ジェダイが全滅してしまった(本当は違うけどw)とされている銀河系で、フォースの力と教えを信奉しているチアルートは、ジェダイではないためフォースを使うことは出来ません。しかし、強靭な精神と修業により、圧倒的な強さを身に付けているのです。

そしてチアルートと行動を共にするベイズは、フォースの存在を信じているわけではないものの、相棒で親友のチアルートを助けるために、巨大なブラスターを駆使して帝国軍を殲滅!クライマックスは、2人のコンビ愛が炸裂した名場面になっていて大いに泣けます。

一方、帝国軍の将校オーソン・クレニック(ベン・メンデルソーン)は、上司であるダース・ベイダーの指示に従いつつ、皇帝パルパティーンに取り入ろうと企む狡猾なキャラですが、最後はターキンによって粛清されてしまうという、何とも言えない小悪党っぷりが良かったですね(中間管理職の悲哀を感じましたw)。

また、この他にも『EP4』に登場したキャラが予想以上にたくさん出ているので、スター・ウォーズ好きにはたまらん状況と言えるでしょう。特にラスト付近で”あの人”が登場した時は、世界中のファンが「うおおおお!」と大興奮したに違いありません。そう、ダース・ベイダーです!

暗闇の中から例の呼吸音が不気味に鳴り響き、ライトセーバーが赤い光を放ったその瞬間の恐ろしさたるや、戦慄を覚えるほどの圧倒的な絶望感!兵士たちが抵抗するものの全く歯が立たず、次々と命を落としていく阿鼻叫喚の宇宙船内!

しかし、「何としてでもこのデータ(デス・スターの設計図)だけは守らねば!」という決死の思いで仲間に託し、受け取った兵士も命懸けでそれを届ける、まさに”地獄のバトン・リレー”によって「わずかな希望」が繋げられていくのです。

そして、最後にそのバトンを手にした人は……レイア・オーガナ姫!『EP4』の頃のレイア姫が、そのままの姿で登場してる!このシーンでも全スター・ウォーズ・ファンが「うああああ!」と歓喜の雄叫びを上げたことでしょう(もちろん顔はCGで、ノルウェーの女優イングヴィルド・デイラがレイアを演じている)。※以下、ネタバレ動画↓

その後、レイア姫を乗せた宇宙船(レベル・ブロッケード・ランナー)が脱出し、それをスター・デストロイヤーが追いかける…という『EP4』の冒頭シーンに続いていくわけで、まさに「伝説の始まり」に直接繋がる物語なんですよね。いや〜、ラスト5分がここまで盛り上がる映画ってなかなかないですよ(笑)。

ちなみに、本作でレイア姫を演じたイングヴィルド・デイラさんは、10歳の頃からノルウェーで舞台演劇を勉強し、2012年にはイギリスへ移住。そして大学の芸術学部を卒業した後は、映画の仕事を中心に活動しているそうです。

しかし、これまで出演した作品はマイナーな短編がほとんどで、あまりメジャーな映画には出ていません(『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の脇役ぐらい)。つまり、『ローグ・ワン』が初の超大作&重要な役どころになるわけで(顔は出てないけどw)、デイラさんは感激したらしい。

なお、昨年末に急逝したキャリー・フィッシャーさんも今回の「CGレイア姫」の製作に協力しており、完成した映像を見てとても喜んでいたそうです。昨今はデジタル技術の進歩が著しいとはいえ、昔のレイア姫をこんなに上手く再現できるって凄いですねえ(^_^)

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また、クライマックスのバトルシーンが「海岸を舞台にした壮絶なアクション」になっているところも大きな見どころでしょう。過去のシリーズでも砂漠や森林や雪原など、様々な背景で戦っていましたが、「海辺での戦闘」は史上初でとても新鮮でした(ギャレス・エドワーズ監督は「『地獄の黙示録』をイメージした」とコメント)。

あとは、出て来るメカやヘルメット等の装備品がどれも「旧三部作」を意識したデザインになっている点も素晴らしい。まあ、そのまま『EP4』に繋がるわけだから旧作準拠は当然とはいえ、計器のスイッチ類やモニターの表示まで「適度にダサい感じ」を再現しているのが良かったです(笑)。

というわけで、主に良い点ばかりを書いてきましたが、映画全体の作りとしては決して絶賛オンリーの出来栄えではありません。特に映画の前半部分は、キャラの言動やストーリー展開がモタモタしていてキレがなく、どうにも今一つでしたねえ。

中でもボーディ(リズ・アーメッド)がソウ・ゲレラ(フォレスト・ウィテカー)に会いに行って会話するくだりや、そこへジンやキャシアンが合流するくだりが非常にダルいというか…「ぶっちゃけソウ・ゲレラっていらなくね?」と思ってしまいました(笑)。

だがしかし!後半になると急に勢いが加速し始め、ビックリするほど面白くなるんですよ。「一体どうして?」と驚いたんですけど、実はギャレス・エドワーズ監督が撮った最初のバージョンを観たディズニーの重役が不満を感じ、脚本家のトニー・ギルロイに後半部分を撮り直させたらしいのです。

具体的な状況はわかりませんが、ディズニー側は「映画全体の4割に及ぶ大幅な再撮影」があった事実を認めているので、初期のバージョンからかなりの修正が加えられたことは間違いないでしょう(実際、予告編にあった映像の多くが、本編ではカットされていました)。

また、チアルートを演じたドニー・イェンも「ギャレス・エドワーズ監督の時にはそれほど重要な役ではなかったのに、トニー・ギルロイ監督に替わったら急に活躍シーンが増えた」とコメントしており、変更部分は多岐に及んだことが分かります(撮り直してくれて良かったw)。

なお、本編にはいくつか気になるシーンもあって、チアルートが激しい銃撃戦の中を歩いていく場面で「スイッチの場所が目立ちすぎ!」とか、巨大なスター・デストロイヤーを小さな宇宙船(ハンマーヘッド・コルベット)が破壊する場面で「タグボートでタイタニック号を押してるようなもんだろ!」とか、思わず突っ込みたくなるような珍シーンもチラホラと(笑)。

いや、「物理的に可能かどうか」の問題ではなく、「ええ〜、スター・デストロイヤーってこの程度でやられちゃうのかよ…」という、”帝国軍の巨大メカに対する脅威”が一気に失墜してしまうことが問題なんですよ(この映像はマズイでしょうw↓)。

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あと、「帝国軍はなぜデス・スターの弱点に気付かなかったのか?」というスター・ウォーズ・ファンの長年の疑問に答えてくれたのは嬉しかったんですが、あれって”弱点”と呼ぶにはあまりにも難易度が高すぎませんかね?

たまたま反乱軍の中にジェダイの資質を持ったルークがいたから良かったようなものの、普通の人なら絶対に失敗してるでしょう(実際、『EP4』でもメチャクチャ苦労してる)。なので、「ゲイリン・アーソさん、どうせならもう少し攻略しやすい弱点にしてくれよ…」と思わなくもありませんでした(笑)。

しかしながら、「主人公を含めて主要な登場人物がほぼ全員死亡」という衝撃的な結末は、過去の『スター・ウォーズ』シリーズではあり得ないほどシリアスな展開で、その壮絶かつ感動的なドラマの前では少々の突っ込みどころなど「取るに足らない問題」なのかもしれません。

いずれにしても、全シリーズの中で最も悲壮感漂う内容になった『ローグ・ワン』は、スター・ウォーズの世界観をしっかり継承しつつ、”次回作”の『エピソード4 新たなる希望』へ違和感なく繋げる見事な構成になっており、まさにファン必見の一作と言えるのではないでしょうか(^_^)


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