どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
先日、『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』を観たんですが、一部のファンの間で主人公の冴羽獠が銃を撃つシーンに対して、「原作と違う!」みたいな不満が出ているようなんですね。
具体的に言うと、冴羽獠が自分の銃(コルト・パイソン357)に弾を込めた後、昔のアニメでは「手首をスナップさせてシリンダーを戻す」という動作(アクション)をやってたんですよ。
これがカッコよくて、『シティーハンター』のファンは当時モデルガンを買ってマネしたりしてたんですが、今回の劇場版ではそのアクションがなくなってるんです。
そのため、「なぜあれがないんだ?」との批判が出たようですが、この疑問に対し、銃器設定監修として『劇場版シティーハンター』に参加しているミリタリーライターの金子賢一さんが、自身のツイッターで以下のように答えていました。
劇場版シティーハンターへのご感想、その中で「パイソンに弾を込めた時に最後にするアクションがなかった、あれがカッコよかったのに」といったご意見拝見しました。今回、あのスナップロードアクションはあえてNGにしています。あのアクションは銃にダメージを与え精度を下げる行為だからです。(続
— 金子賢一 (@Kenichi_Kaneko) 2019年2月17日
続)獠は、プロのツールとしてパイソンを”酷使”はしても”粗雑”には扱わないと思うのです。リボルバーで最も重いパーツであるシリンダーを、手首のスナップでフレーム部に叩き込む動作を繰り返せばフレームやクレーンに微妙な歪みが発生し、獠のような精密射撃を行う銃としては致命的になるのです(続
— 金子賢一 (@Kenichi_Kaneko) 2019年2月17日
あのアクション、70~80年代の刑事モノドラマとかで使われ過ぎて、あれが正しいやり方だと誤解されてるフシもあるんですよね。お陰であの真似してモデルガン壊した(実銃でもNGなのに改造防止の為に意図的に強度落としてるプラ製モデルガンなら壊れるのは当然)ガンマニア少年はいっぱいいます…
— 金子賢一 (@Kenichi_Kaneko) 2019年2月17日
続)銃の扱い方・構え方一つとっても「流行」があるんです。これは映像作品の世界でも実世界でも同じ。可能な限り元の味を活かしつつ、今風にアップデートすべきところだけ(黙ってれば殆どの人には分からない程度)ちょこっと手を加える、というのを心掛けました。とりあえずこの件はおしまいです。
— 金子賢一 (@Kenichi_Kaneko) 2019年2月17日
金子さんによると、「あのアクションは70~80年代の刑事ドラマや映画で良く使われたやり方だけど、現実には銃を痛めてしまう行為で、リアルな描写ではない」とのこと。
さらに「銃の扱い方や構え方には流行があり、映画の世界でも古いやり方は現代風にアップデートするべきだ」と述べています。
この説明を読んで、僕は特に「銃の扱い方や構え方には流行がある」という部分に興味を惹かれました。確かに、映画のアクションシーンを見ていると、時代によって銃の撃ち方が違うんですよね。
例えば、1986年に『男たちの挽歌』が公開されると、多くの映画がその影響を受け、「ガンアクションのスタイル」が激変したのです。
ジョン・ウー監督は、当時米軍に採用されたばかりのベレッタM92Fを映画に登場させ、16連発という(当時としては)最新のスペックを最大限に活かし、見たこともない銃撃戦を生み出しました。
ベレッタM92Fで突撃しながら、弾がなくなるまで連射し続ける主人公!おびただしい数の薬莢が弾け飛び、派手に血しぶきを舞い散らせながら次々と倒れる敵の姿!
それまでの”弾数が少ない拳銃”とは異なり、多弾数オートマチックだからこそ可能な「ひたすら撃ちまくるガンアクション」が誕生したのです。
しかも、西部劇でしか見かけなかった”2丁拳銃”を現代に復活させ、おまけに黒いサングラスをかけ黒いコートをひるがえしながら華麗に銃を連射する姿が圧倒的にカッコいい!
この『男たちの挽歌』が映画界に与えた影響たるや凄まじく、世界中で「黒いサングラス&黒い服を着た男が2丁拳銃を撃ちまくる映画」が続出しました。
さらに、クエンティン・タランティーノやロバート・ロドリゲスなど、ハリウッドの映画監督の間でも”ジョン・ウー・スタイル”がトレンドとなり、ものすごい勢いで拡散していったのです。
また、一時期は「横撃ち」も流行りましたねー。いや、正式名称はなんて言うのか知りませんけど(笑)、片手で持った銃を90度横に傾けて撃つスタイルのことです。
「gangsta style」とか「SideWays grip」など色んな呼び方があるようですが、1990年代の初めぐらいからアメリカの映画やドラマでこうした銃の撃ち方が見られるようになりました。
元々は、第二次世界大戦の頃にトンプソンM1などのサブマシンガンを撃つ際、激しい反動で銃口が上を向く傾向があったため、弾丸が垂直ではなく水平に広がるように横に倒したことからこの撃ち方が生まれた…と言われているようです。
そして、1993年に公開された『ポケットいっぱいの涙』という映画の冒頭シーンで、初めて横撃ちが登場したらしい(諸説あり)。
この映画を撮った監督によると、1987年にミシガン州デトロイトで起きた強盗事件を間近で目撃した際、「アフリカ系ギャングたちの間でそういう撃ち方が流行っていると知り、自分の映画にも取り入れた」とのこと(実際に横撃ちする現場を見てたのかw)。
このように「ジョン・ウー式のスタイル」や「横撃ち」などが一時期アクション映画を席巻していましたが、最近はまた傾向が変化し、「リアリティ」が求められるようになりました。
例えば、2014年に公開された『ジョン・ウィック』では、”ガン・フー”と呼ばれる独特な格闘術が出て来るんですが、これは「C.A.R(Center Axis Relock)」という実在する射撃スタイルを元ネタにしています。
特徴としては、ジョン・ウーのように2丁拳銃を派手に乱射するのではなく、1丁の拳銃を両手でホールドし、胸の前で抱きかかえるように構えるのが基本です。
こうすることで、室内などの狭い空間でも素早く動け、至近距離の相手にも精密な射撃を行える上にマグチェンジもしやすいという、実に合理的かつ実戦的なシューティング・スタイルなのですよ。
つまり「見た目の派手さ」よりも「リアルな射撃」に重点を置いているわけで、数年の間にガンアクションのトレンドが大きく変化していることがわかるでしょう。
そう考えると、『劇場版シティーハンター』で銃の扱い方が変わった件も、「なるほど、今はこれがリアルなんだな」と納得できるのではないかなと(ただ、”もっこり”と”ハンマー”は相変わらずリアリティを無視して出て来ますがw)。