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銃の撃ち方には流行がある?『劇場版シティーハンター』の疑問について解説

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劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>

『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

 

先日、『劇場版シティーハンター<新宿プライベート・アイズ>』を観たんですが、一部のファンの間で主人公の冴羽獠が銃を撃つシーンに対して、「原作と違う!」みたいな不満が出ているようなんですね。

具体的に言うと、冴羽獠が自分の銃(コルト・パイソン357)に弾を込めた後、昔のアニメでは「手首をスナップさせてシリンダーを戻す」という動作(アクション)をやってたんですよ。

これがカッコよくて、『シティーハンター』のファンは当時モデルガンを買ってマネしたりしてたんですが、今回の劇場版ではそのアクションがなくなってるんです。

そのため、「なぜあれがないんだ?」との批判が出たようですが、この疑問に対し、銃器設定監修として『劇場版シティーハンター』に参加しているミリタリーライターの金子賢一さんが、自身のツイッターで以下のように答えていました。

 

 

金子さんによると、「あのアクションは70~80年代の刑事ドラマや映画で良く使われたやり方だけど、現実には銃を痛めてしまう行為で、リアルな描写ではない」とのこと。

さらに「銃の扱い方や構え方には流行があり、映画の世界でも古いやり方は現代風にアップデートするべきだ」と述べています。

この説明を読んで、僕は特に「銃の扱い方や構え方には流行がある」という部分に興味を惹かれました。確かに、映画のアクションシーンを見ていると、時代によって銃の撃ち方が違うんですよね。

 

例えば、1986年に『男たちの挽歌』が公開されると、多くの映画がその影響を受け、「ガンアクションのスタイル」が激変したのです。

 

ジョン・ウー監督は、当時米軍に採用されたばかりのベレッタM92Fを映画に登場させ、16連発という(当時としては)最新のスペックを最大限に活かし、見たこともない銃撃戦を生み出しました。

ベレッタM92Fで突撃しながら、弾がなくなるまで連射し続ける主人公!おびただしい数の薬莢が弾け飛び、派手に血しぶきを舞い散らせながら次々と倒れる敵の姿!

それまでの”弾数が少ない拳銃”とは異なり、多弾数オートマチックだからこそ可能な「ひたすら撃ちまくるガンアクション」が誕生したのです。

男たちの挽歌

男たちの挽歌

しかも、西部劇でしか見かけなかった”2丁拳銃”を現代に復活させ、おまけに黒いサングラスをかけ黒いコートをひるがえしながら華麗に銃を連射する姿が圧倒的にカッコいい!

この『男たちの挽歌』が映画界に与えた影響たるや凄まじく、世界中で「黒いサングラス&黒い服を着た男が2丁拳銃を撃ちまくる映画」が続出しました。

ジョン・ウー・スタイル

ジョン・ウー・スタイル

さらに、クエンティン・タランティーノロバート・ロドリゲスなど、ハリウッドの映画監督の間でもジョン・ウー・スタイル”がトレンドとなり、ものすごい勢いで拡散していったのです。

 

また、一時期は「横撃ち」も流行りましたねー。いや、正式名称はなんて言うのか知りませんけど(笑)、片手で持った銃を90度横に傾けて撃つスタイルのことです。

gangsta style」とか「SideWays grip」など色んな呼び方があるようですが、1990年代の初めぐらいからアメリカの映画やドラマでこうした銃の撃ち方が見られるようになりました。

横撃ち

横撃ち

元々は、第二次世界大戦の頃にトンプソンM1などのサブマシンガンを撃つ際、激しい反動で銃口が上を向く傾向があったため、弾丸が垂直ではなく水平に広がるように横に倒したことからこの撃ち方が生まれた…と言われているようです。

そして、1993年に公開された『ポケットいっぱいの涙』という映画の冒頭シーンで、初めて横撃ちが登場したらしい(諸説あり)。

 

この映画を撮った監督によると、1987年にミシガン州デトロイトで起きた強盗事件を間近で目撃した際、「アフリカ系ギャングたちの間でそういう撃ち方が流行っていると知り、自分の映画にも取り入れた」とのこと(実際に横撃ちする現場を見てたのかw)。

 

このように「ジョン・ウー式のスタイル」や「横撃ち」などが一時期アクション映画を席巻していましたが、最近はまた傾向が変化し、「リアリティ」が求められるようになりました。

例えば、2014年に公開された『ジョン・ウィック』では、”ガン・フー”と呼ばれる独特な格闘術が出て来るんですが、これは「C.A.R(Center Axis Relock)」という実在する射撃スタイルを元ネタにしています。

ジョン・ウィック

ジョン・ウィック

特徴としては、ジョン・ウーのように2丁拳銃を派手に乱射するのではなく、1丁の拳銃を両手でホールドし、胸の前で抱きかかえるように構えるのが基本です。

こうすることで、室内などの狭い空間でも素早く動け、至近距離の相手にも精密な射撃を行える上にマグチェンジもしやすいという、実に合理的かつ実戦的なシューティング・スタイルなのですよ。

つまり「見た目の派手さ」よりも「リアルな射撃」に重点を置いているわけで、数年の間にガンアクションのトレンドが大きく変化していることがわかるでしょう。

そう考えると、『劇場版シティーハンター』で銃の扱い方が変わった件も、「なるほど、今はこれがリアルなんだな」と納得できるのではないかなと(ただ、”もっこり”と”ハンマー”は相変わらずリアリティを無視して出て来ますがw)。

 


『カメラを止めるな!』スピンオフ『ハリウッド大作戦!』の感想(ネタバレ)

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カメラを止めるな!

カメラを止めるな!』スピンオフ『ハリウッド大作戦!』

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

昨日、AbemaTVで『カメラを止めるな!』のスピンオフドラマ『ハリウッド大作戦!』が配信されました。

ザックリあらすじを説明すると「前作『ONE CUT OF THE DEAD』から半年後、ヒロインの千夏はアメリカへ渡り、ハリウッドが見えるレストランでウェイトレスをしていた。髪を金髪に染め、新しい人生を歩もうとしていた彼女だったが、またしてもゾンビに襲われて…」みたいな感じ。


※以下、『カメラを止めるな!』のネタバレがあります。未見の方はご注意ください!


さて、『カメ止め』を観た人ならだいたい想像がつくと思いますが、このスピンオフもドラマが二重構造になっています。

つまり、前半で『ONE CUT OF THE DEAD』の続きをワンカット長回しで見せ、後半で1か月前に遡り、監督や俳優やスタッフがどうやってこの映画を撮ったのか裏側を見せる、という構成です。

プロデューサーに再び無茶ぶりされた日暮監督(濱津隆之)が、「大丈夫かなあ…」と心配そうな表情を浮かべながらも仕事を引き受け、例によって現場が大混乱に陥るという、安定の”カメ止め展開”でした(笑)。

また出演者も、「よろしくで~す♪」でお馴染みの秋山ゆずき、日暮監督の奥さんのしゅはまはるみ、娘の真魚、自分で撮影したくて仕方がないカメラマン助手(浅森咲希奈)、適当なことしか言わないプロデューサー(大沢真一郎)など、『カメ止め』のキャラがほぼ全員再集結。

さらに、前半のワンカット映像で”フリ”を作り、「あれ?何か変だな…?」と観客に思わせ、後半でその違和感の正体を解明していくというパターンも一緒です。

そういう意味ではスピンオフというより、完全に『カメラを止めるな!』の続編であり、『カメ止め』の要素を1時間に凝縮した「ショート・バージョン」と言っていいでしょう。

「じゃあ、これを『カメ止め』のパート2として映画館で上映すればよかったんじゃないの?」

そう感じた人も多かったようです。実際、本作を2時間の映画として再構成し、『カメラを止めるな!2』として劇場公開すれば、それなりに話題になったかもしれません。

しかしその場合、おそらく『カメラを止めるな!』ほどのヒットにはならなかっただろうと思います。それはなぜか?

まず続編映画を作る場合、「前作でウケた要素」を必ず入れることが重要です。1作目のファンはそれを期待しているわけですから、「前作に登場したキャラを出す」「前作と似たような展開にする」等は必須条件でしょう。

でも、ストーリーをちょっと変えただけで「前作と同じキャラ」「前作と同じ展開」、そういう映画で観客は果たして満足できるのでしょうか?

例えば『シックス・センス』の続編を作るとして、あのラストから数年後のストーリーを、同じようなオチで描いたとしたら、それはちょっと厳しいんじゃないのかなと。なぜなら観客は『シックス・センス』がどういう映画かすでに知っているからです。

カメラを止めるな!』の場合も、「37分間のワンカット撮影」や「前半の伏線を後半で回収していくスタイル」や「様々なアクシデントに必死で立ち向かう撮影スタッフたちの姿」などを見て、観客は驚き感動したわけですから、その辺の要素は絶対に外せません。

とは言え、それらのフォーマット通りに続編を作ったら、すでに『カメ止め』を知っている人にとってはサプライズが無いわけで、「前作と同じものを期待しているが本当に同じ映画を作っても満足できない」というジレンマに陥ってしまうのですよ、トホホ。

こういう”矛盾”が続編映画の難しさなんですけど、今回の『ハリウッド大作戦!』は映画ではなく、1時間枠のネット配信ドラマとして公開した点が良かったと思います。

前作のフォーマットを使いつつ、舞台がハリウッドになったことでスケール感もアップしてるし(してないw)、前作の「家族愛」にかわって真魚の「恋愛物語」がフィーチャーされ、さらにお馴染みのキャラのその後の活躍を見ることが出来るという、まさにファンサービス満載の内容と言えるでしょう。

もちろん劇場作品に比べてボリュームは少な目ですが、その分気軽に観れるし、もしかすると予算はこっちの方が多いかもしれません(笑)。そういう意味でもネット配信は正解だったんじゃないでしょうか(^.^)

 

『カメラを止めるな!』の面白さの秘密はシンクロ率?

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カメラを止めるな!

映画『カメラを止めるな!』より

※以下、ネタバレしているので本編を観ていない人はご注意ください!

 

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

本日、金曜ロードSHOW!で『カメラを止めるな!』が地上波初放送されます。

わずか300万円の低予算映画にもかかわらず、あまりの面白さに口コミで評判が拡散し、最終的には30億円を超える大ヒットとなったことでも知られる本作。

事前の告知では、「とある廃墟でゾンビ映画を撮影しているとスタッフたちが本物のゾンビに襲われ、その様子を37分間のワンカットで撮った和製ホラー」などと紹介していました。

しかし、実際は前半のゾンビ映画は劇中劇で、後半に「その撮影の裏側ではこんなことが起きていた」みたいな感じで種明かしをする”二段構え”の構成になっていたのですよ。

この仕掛けに「なるほど!」と感心した観客たちは、出来るだけネタバレをしないように「面白いから観て!」と知り合いにプッシュしまくり、その結果、大ヒットに至ったと。

ただ、この映画が観客の心をとらえた理由はそれだけじゃないと思うんですよね。

個人的な感覚ですが、人の心に響く映画というものは、「作り手側の状況」と「劇中のキャラクターの状況」が極めて似通っている場合が多い…ような気がします。

例えば、ボクシング映画の金字塔的名作『ロッキー』。

ご存知、シルベスター・スタローンの大出世作ですが、この映画が公開されるまでスタローンは役者として全く知られておらず、どん底の極貧生活を送っていました。

しかし、「底辺ボクサーが苦難を乗り越えてスターに成り上がる」という『ロッキー』の脚本を自ら書き上げ、自分で主役を演じたことで、スタローン自身も本物のスターになったわけです。

つまり、『ロッキー』自体はフィクションなんだけど、映画の中では「作り手側の状況」と「劇中のキャラクターの状況」が見事にシンクロしてるんですよ。

すなわち、『ロッキー』を観ている観客は主人公のロッキーを通してシルベスター・スタローンの生き様そのものを目撃をしているわけで、そこに感動が生まれたんですよね。

カメラを止めるな!』も同じく、「少ない予算と厳しい環境の中、スタッフみんなが頑張って映画を作り上げる」という劇中の状況と実際の状況が完全に一致してるんです。

しかも「ワンカット映画の撮影中に次々とトラブルが起きる」というストーリーもそのまんま(実際に現場でアクシデントが頻発していたらしいw)。

もちろん、事前に「予算300万円」の情報が流れていたせいもあるかもしれませんが、たとえ裏話を知らなくても、映画を観ていればそれぞれのキャラクターを通じて出演者やスタッフたちの心情はしっかり伝わってくるでしょう。

だって、彼らにとってはフィクションじゃなくて”本物”だから(笑)。それこそが『カメラを止めるな!』の面白さであり、最大の魅力だと思います(^.^)

ピエール瀧容疑者の逮捕で色んな作品に影響が出ている件

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ピエール瀧容疑者

ピエール瀧容疑者

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日から様々なメディアで報道されまくっているピエール瀧容疑者逮捕の件ですが、それらのニュースを見ると「関わっている作品が多すぎて影響が尋常じゃない」って内容がほとんどなんですよね。

4月5日に公開予定だった麻雀放浪記2020』は、五輪組織委員会の元会長という重要な役を演じているため編集でカットできず、「有料コンテンツとして観客の判断にゆだねたい」として4月の公開を前提に最終調整しているそうです。

麻雀放浪記2020

麻雀放浪記2020

そして松坂桃李さん主演の時代劇『居眠り磐音』は、5月17日の公開予定まで時間があるので、ピエール瀧容疑者の出演箇所を撮り直し、差し替えることを決定。こちらも「予定通り公開する」とのこと。

ただし、過去に公開直前のトラブルで撮り直したケースでは、再撮影および編集作業だけで2500万円ほどかかったらしく、さらにポスターやパンフレットなど瀧容疑者の名前や写真が入った関連商品も全て作り直すことを考えると、「損害額は3~4000万円に上るのでは…」と言われているそうです。

居眠り磐音

居眠り磐音

また、11月22日に公開となるアナと雪の女王2』では、前作に引き続いてピエール瀧容疑がオラフの声を演じる予定になっていたんですが、当然ながら降板。

しかも過去に収録した作品についても、新たな声優で録音し直し再発売するようで、『アナと雪の女王』『アナと雪の女王/家族の思い出』『アナと雪の女王/エルサのサプライズ』と、短編アニメを収録した『ディズニー・ショートフィルム・コレクション』のDVD、BD、CDなど、全ての関連商品が販売停止となってしまいました。 

おまけに、スクウェア・エニックスの人気アクションRPGキングダム ハーツIII』まで日本語版吹き替え声優を交代することが決定。いったいなぜ?

実は『キングダム ハーツIII』のゲーム内ワールドの1つに『アナと雪の女王』の世界を舞台にした「アレンデール」があり、そこにオラフが登場するからなんですけど、これにともない今後ゲーム本編のアップデート配信によって吹き替え音声の変更が実施されるそうです。 

ゲームと言えば、木村拓哉さんが主人公の八神隆之を演じたPS4ソフト『JUDGE EYES:死神の遺言』も、ピエール瀧容疑者が羽村京平役で出演しているため、発売元のセガゲームスが「当面のあいだ製品の出荷及びダウンロード販売を自粛する」と発表しました。 

しかし、映像作品の中で最も影響を受けているのは、何と言ってもNHK大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』でしょう。

ピエール瀧容疑者が演じているのは履物店「播磨屋」の主人の黒坂辛作で、主人公:金栗四三中村勘九郎)のマラソン用足袋を開発する重要な役どころです。当然、今後のドラマでもますます活躍シーンが多くなっていくため、編集で出番をカットしたぐらいでは全く対応できません。

NHK大河ドラマ『いだてん』より

NHK大河ドラマ『いだてん』より

しかもNHKとしては、オンデマンド配信やソフト化なども考慮する必要があるので、瀧容疑者が出ているシーンは第1話から全て再撮影しなければならないのですよ。これはメチャクチャ大変です(いったいどうするんだろう…)。

なお、NHKオンデマンドに関しては『連続テレビ小説 とと姉ちゃん(シリーズ全作)』『とと姉ちゃん もうひとつの物語“福助人形の秘密”』『あまちゃん』『龍馬伝』『55歳からのハローライフ』などの配信が早くも停止されました。 

さらにあまちゃんの場合は、3月23日の「三陸鉄道リアス線」の開通に合わせ、BSプレミアムで3月17日に前編、24日に後編を放送予定だったにもかかわらず、なんと「瀧容疑者が出演している後編は自粛する」と発表。もう、踏んだり蹴ったりじゃないですか…(泣)。 

あと、ビックリしたのはピエール瀧容疑者の似顔絵が描かれたマンホールの蓋まで撤去されたことですね(地元静岡出身の有名人ということで2017年に設置され、費用は約120万円かかったらしい)。静岡県藤枝市下水道課は「事件の内容や社会的な影響力も考慮し、撤去せざるを得なかった。とても残念」とコメントしてるんですけど、普通そこまでする?

ピエール瀧のマンホール

ピエール瀧のマンホール

この他にも、電気グルーヴの30周年記念ライブが中止され、CDやDVD等の関連商品が全て出荷停止・店頭在庫回収・デジタル配信停止となり、冠番組ピエール瀧のしょんないTV』は放送打ち切り、TBSラジオ『たまむすび』は降板、住宅設備大手『LIXILリクシル)』のCMは放送中止・契約解除など、多くの分野で甚大な影響が出ているようです。 

こうした状況の中、「過去の作品まで全て自粛するのは少しやりすぎでは…」との意見も上がり始めました。

まず、ミュージシャンの坂本龍一さんがTwitterで「なんのための自粛ですか?電グルの音楽が売られていて困る人がいますか?」と自粛の必然性を問いかけ、「音楽に罪はない」と持論を展開。

そしてロックバンドのソウル・フラワー・ユニオンも、回収対応の是非を問うツイートを紹介しながら「断固反対する」と明確な立場を表明。

その他、ロックバンド「凛として時雨」のドラマー・ピエール中野さんや、エレクトロユニット「Satellite Young」を主宰する草野絵美さんなど、音楽関係者が次々と今回の騒動について言及しています。

また、演出家の鴻上尚史さんは「出演者の不祥事によって過去作品が封印されるなんて風習は誰の得にもならない」「このままでは日本の文化は悲惨なことになってしまう」と苦言を呈しました。

一方、テレビや映画や音楽などの”自粛”に対し、ファンたちも活動を開始したようです。ソニー・ミュージックが電気グルーヴのCDや楽曲の出荷・配信停止・店頭在庫の回収を決めた直後に、社会学者らが方針の撤回を求める署名支援サイト「change.org」を立ち上げ、17日時点でなんと3万人以上の賛同が集まっているらしい。

というわけで、現在この騒動をきっかけとして「過剰すぎる自主規制は是か非か」という議論が巻き起こっているようです。世間の反応を見る限りでは「作品に罪はない」的な論調が目立つようですが、果たして今後どうなるのでしょうか?

ちなみに、『エイリアン』や『ブレードランナー』の監督として世界的に有名なリドリー・スコットは、未成年の少年に対する性的暴行容疑でケヴィン・スペイシーが訴えられた際、以下のようにコメントしました。

ケヴィン・スペイシーが何をしようと、俳優として素晴らしいことは事実だ。確かに彼は許されないことをしたが、作品まで殺してはならない。芸術家の私生活と作品は、切り離して考えるべきだ。

う~ん、どうやらリドリー・スコット監督も「作品に罪はない」説を支持しているようですね。

ちなみに、ケヴィン・スペイシーの騒動が起きた時、すでに撮影が終わっていた映画『ゲティ家の身代金』は公開日までわずか1ヵ月しかありませんでした。

しかしリドリー・スコット監督は「延期も公開中止もしない!」と言い放ち、すぐにスペイシーの代役を起用し、たったの9日間で全てのシーンを撮影し直してしまったのです。驚くべき早撮りですよねえ(^^;) 

 

『ガンダム誕生秘話』を見ました

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ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、NHKで「TVアニメ『機動戦士ガンダム』が作られた当時の状況を関係者たちが語る」という内容の番組ガンダム誕生秘話』が放送されました。

富野由悠季安彦良和大河原邦男板野一郎など、『機動戦士ガンダム』に関わったスタッフたちがTV版の制作中に起きた様々なエピソードをそれぞれの視点で語っていくという、実に濃厚な番組でしたよ。

 

 

時は1979年、設立4年目の新進気鋭のアニメスタジオ:日本サンライズでは、『無敵超人ザンボット3』、『無敵鋼人ダイターン3』に続く自社制作のオリジナルアニメを模索中でした。

富野監督としては「ガンダムが始まる2年ぐらい前から”ロボットアニメ”というジャンルに衰退が見えてきていたし、僕にとっても3本目のオリジナル作品なので、今までと同じようなものを作るわけにはいかない」と考えていたらしい。

テレビでは、1回ごとにやられメカが出て来て主人公がやっつけるという徹底的なパターンがあったわけだけど、それを外していっても話が通じるという構造にしたかった。映画として公開できるようになれば、巨大ロボットものというジャンルでも、映画的なビジネスとして考えた時に広がっていくのではないかと思った。

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

こうして富野監督は『機動戦士ガンダム』の企画書を作成。物語の主人公となる少年の名前はアムロ・レイ。登場人物たちのキャラクター・デザインを担当した安彦良和さんは、当時アムロの設定を聞いて驚いたそうです。

富野さんに「アムロは三白眼で、髪の毛なんか縮れててニンジンみたいな頭してるんだよね」って言われたのを覚えています。アニメの主人公って大体カッコよくて、正義感に溢れてて運動能力があってひたすら元気…とかね、そういう中心的な主人公が当たり前だったんですよ。でもそれに飽きてたんですね。

 

アムロの設定って、今見ると普通に見えるかもしれないけど、当時は画期的ですよ。根暗でメカフェチであまり友達もいなくて、そんな主人公いなかったですから。途中で家出しちゃったり、ブライトにビンタされたりとか。すごく嬉しかったですね。どんどんこういうのやりましょう!って。 

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

また、ガンダムのメカを担当した大河原邦男さんは「ザクのデザインが一番楽しかった」と告白。「主人公メカは色んな人の意見を聞かなきゃ作れないけど、敵のモビルスーツは商品化する予定がなかったので自由に作らせてもらえた。富野監督から言われたのは”モノアイにしてくれ”っていう、後は好きにやってくれ」と。

注文はそれだけだったので、ザクに関しては1週間ぐらいで完成しました。第2稿でもう決定稿だったから、すごく楽させてもらったんですよ(笑)。第1話を見た時は身震いしましたね。「ああ、こんな感じになるんだ!」って。スペースコロニーに入って来るザクがまたカッコよかったんですよ。あんな苦労しないで作ったザクが一番カッコよかったですね(笑)。

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

一方、ガンダムの制作に入る直前まで『宇宙戦艦ヤマト2』に参加していた安彦さんは、制作体制の違いに愕然としたそうです。

当時のサンライズの現場は全体的に貧弱でしたが、その中でもガンダムは特に貧弱な方でしたね。当時、サンライズの主力は長浜組ってのがあって、そこが一番いいアニメーターを抱えてたんです。これは東映の下請けをやってたんですよ。『ボルテスV』とかね。なぜか下請けが最精鋭なんですよ。で、オリジナル企画は貧弱なんです。ワケがわからないですよね(笑)。

 

ヤマトの現場を見て、「これだったらサンライズでは3本できる」と思ったんですよ(つまりガンダムの3倍の規模)。それぐらい(人的にも予算的にも)分厚かったんです。ビックリしましたね。カラーチャートってのがあるんですが、それがヤマトは三百何十色もあった。ガンダムを作った時は79色かな?それを無理言って3色増やしてもらったんですよ。それでやっと82色。ヤマトはグレーだけでもそのぐらいあったんじゃないですかね(笑)。それぐらい違う。 

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

そんな貧弱な現場で作られたガンダムでしたが、スタッフたちは皆手応えを感じていたようです。特に安彦さんは第1話が放送された時に『ヤマト2』のスタジオで打ち合わせ中だったのですが、「ちょっとテレビつけていいですか?僕が参加したアニメの放送日なんで…」と言って強引にテレビをつけさせ、ヤマトのスタッフにガンダムを見せたそうです。

もちろん安彦さんは完成したガンダムをとっくに見てるんですけど、自分たちが作っているアニメに自信があったからこそ、ヤマトのスタッフに見せたかったのでしょう。

「やった!」と思いましたね(笑)。俺はもうこの場(ヤマト)にはいないんだと。俺の気持ちはこっち(ガンダム)なんだと。彼らは沈黙してたけど、でもクサした人はいなかった。ヤマトの数分の1の戦力で、これだけのものを作ったんだと。「見たか!」って感じでしたね(笑)。

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

また、後に『超時空要塞マクロス』で”板野サーカス”を編み出したアニメーターの板野一郎さんは、当時まだ二十歳の新人でしたが、富野監督の絵コンテや安彦さんの作画に感銘を受けており、特に第28話『大西洋、血に染めて』のエピソードが強く印象に残っているという。

富野さんが28話の絵コンテを描き上げて、「安彦ちゃん、この回ちょっと読んでよ!」って渡したら安彦さんが「どうしたの、富野さん?」って、そしたら富野さんが「いや~、描いてて泣けちゃってさあ」みたいな。

 

それで安彦さんが読み終わって、見てるとちょっと涙目になってて「良かったよ、富野さん。ミハルいいよね…」みたいな。「これは良くしたいよね」「でしょ?絶対良くしたいよね!」みたいなことを二人で話してて。

 

で、安彦さんたちが帰った後に「どんなコンテなんだろう?」と気になって、富野さんの机の上に置いてあった絵コンテを読んだら「ああ、これは泣けるな~!これはいいわ!」と。自分ももらい泣きしてしまったんですよね。 

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

ただし、同じ時期に放送されていた『宇宙戦艦ヤマト2』が20%以上の高視聴率を獲得しているのに、ガンダムの初回視聴率はわずか3%でした。これに対して安彦さんは「視聴率なんてとれるわけがない」と一蹴。

だって時間帯が5時半ですから。4月始まりなので、まだお天道様は上ですから。誰が見るんだ、こんな時間にと。だから視聴率が低いのは当たり前でしょうって、誰も聞く耳を持ってなかったですよ。

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

しかし、テレビを放送する側にしてみれば視聴率は重要で、さらにガンダムはオモチャも売れなかったためスポンサーが怒り出し、とうとう打ち切りになってしまいました。おまけに、作画の中心的存在だった安彦さんが急病で入院するという非常事態まで勃発し、現場は大パニックに!

ただでさえ貧弱なスタジオなのに、一番重要な戦力がいなくなったわけですから、さすがの富野監督も「どうすればいいんだ…」と頭を抱えたそうです。

作画監督がいなくなり、絵のクオリティを保つことが出来なくなって、それをどう対処するかっていうことで、僕の描いた原画でさえ使わなくちゃいけないような状況が続いたんですよね。だから打ち切りということも含めて、現場的に言うと、みんなで万歳するしかない、そういう状況でした。それぐらい貧しい状況だったんです。もう本当に悪戦苦闘が始まってて、「こんな作画でオンエアしなくちゃいけないのか…」って。何度も言うけど、テレビ版には僕が描いた原画のカットがあるんだもん、ひどい絵のが。とにかくもう、騙し騙し作ってるような感じでしたね。

ガンダム誕生秘話

ガンダム誕生秘話』より

……というわけで、当時の『機動戦士ガンダム』はとんでもない苦境に追い込まれていたんですが、ここからどんな逆転を決めて後の大ヒットに至ったのか?まだ番組を見てない人や気になる人は、4月4日に再放送があるようなので是非ご覧ください(^.^)

嵐:大野智の主演映画『忍びの国』 評価/感想(ネタバレ)

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忍びの国:大野智

映画『忍びの国』より

本日、大野智さんが主演した忍者アクション映画『忍びの国』が地上波初放送されます。

大野智といえば、ジャニーズの人気アイドルグループ「嵐」のリーダーですが、今年の1月に「何事にも縛られず、自由な生活がしてみたい」と告白し、2020年12月末で嵐が活動休止になることが発表され話題になりました。

そんな大野さんが演じる本作の主人公は、「伊賀一の忍び」として恐れられた”無門(むもん)”。その名の通り「どんなに堅牢な門でも彼の前では意味を成さない」と言われるほど凄腕の忍者ですが、普段は無類の怠け者で、女房の”お国”に頭が上がらないなど愛嬌のあるキャラです。

そして、石原さとみさんが演じるお国は、無門が一目惚れして伊賀に連れて来た「安芸の武将の娘」で”お姫様”なんですけど、非常に自立心が強く、夫の無門に対して「もっと働いてお金を稼いでちょうだい!」と叱責するなど、完全に「ダメ亭主を尻に敷く鬼嫁」と化してます(笑)。

忍びの国

映画『忍びの国』より

つまりこの物語は、「怠け者の夫と強い妻が織り成すラブ・コメディ」であり、そこへ「戦国時代の勢力争い」や「忍者アクション」などを加えた娯楽性の強い時代劇なのですよ。そういう意味では多少(?)リアリティに欠けているかもしれません。

原作小説の方は、筆者の和田竜さんが「忍者の実像に触れられるような物語にしたくて、過去の史料を調べていくうちに第一次伊賀攻め(天正伊賀の乱)という史実に突き当たった」と述べているように、1579年に起きた”実話”を元にしてるんですが、映画版の世界観はかなりユルいというか現実離れしてますから(笑)。

完成した映画を観て原作者の和田先生も驚いたらしく、以下のようにコメントしていました。

「よくこんな風に作ったな」と思いました。面白くて、観客が喜ぶ作りになっていて、オープニングも楽しいし、この映画のトーンをタイトルの出方が一気に決定づけていて、「この映画は馬鹿みたいな冗談みたいな映画です」と宣言している感じが小気味よかったです。

そんなわけで、全体的に”お笑い要素”が強い映画なんですけど、伊賀と対立している織田の軍勢は割とシリアスで、皆さん真面目に”時代劇の芝居”をしているところがギャップを感じる部分かもしれません。

特に、無門のライバル的な存在となる日置大膳は、天下無双の力を持つ最強の武将で、演じた伊勢谷友介さんも「オーソドックスな”THE武将”としてやるべきなのかなと。忍び軍の空気感とは真逆の要素も強かったので、時代劇らしいアカデミックな部分を意識しました」と述べています。

そういう”コメディ”と”シリアス”のギャップも、本作の見どころの一つでしょう。

忍びの国

映画『忍びの国』より

さらに大きな見どころなのが、忍者たちの繰り出すアクションの数々です。スタントコーディネーターの吉田浩之さんが手掛けた無門のアクションは、「相手を打ちのめすというより、余裕をもって攻撃をかわすイメージ。ダンスのような動きで敵を翻弄しながら、相手の力すら利用して追い込む戦い方なんです」とのこと。

今回のアクションについて、無門を演じた大野智さんは以下のように語っていました。

余裕でかわす動きは、過去に舞台でもやったことがあるので懐かしい感覚でしたね。ワイヤーアクションは(嵐としてデビューする前の)京都での舞台でやってたし、嵐のライブでも使ったりしてたんですが、タイミングを合わせるのが意外と難しかったです。あとはワイヤーを体にグルグル巻き付けて、それを一気にほどく力でクルクル横に回転する動きがすごく大変で。ワイヤーに体が締め付けられてアバラが折れるんじゃないか?と思うぐらい痛くて。リハーサルで監督に「これマジですか?」って聞いたら「マジだ!」って。しかも「笑顔でやって」と言われて…死ぬかと思いました(笑)。

中でも特にすごかったのが、ラストで無門と下山平兵衛が一騎打ちするシーン。至近距離で互いの力をぶつけ合う緊張感溢れるこのアクションは、フィリピンの”カリ”という格闘技をベースにしているそうです。

スピードも速く、300手を超えるほど複雑な動きのため、わずか数分のシーンを撮影するのに3日もかかったらしい。殺陣の段取りを覚える役者さんも大変だったようで、平兵衛を演じた鈴木亮平さんは以下のようにコメントしていました。

このアクションは本当に難しかったですね。ただ、僕が3日ぐらいかけて覚えた殺陣を、嵐のツアーを終えて練習に合流してきた大野くんが1日で完璧に覚えてたんです。ダンスをする人は覚えるのが早いとは聞いていましたが、それにしても早いから、隠れて練習してるんだろうと思ってました(笑)。

忍びの国

映画『忍びの国』より

たしかに、映画の世界では昔から「ダンス経験者はアクションも上手い」と言われていたので、中村義洋監督も大野智さんをキャスティングする際にそれを見越していたのかもしれませんね。

ちなみに本作には、知念侑李、マキタスポーツ、でんでん、満島真之介、きたろう、立川談春國村隼など非常に豪華なキャストが出演していて、それも見どころの一つと言えるでしょう(^.^)

 

このモブシーンがすごい!『風立ちぬ』で宮崎駿監督がこだわった点とは?

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宮崎駿監督『風立ちぬ』

宮崎駿監督『風立ちぬ』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

昨日、金曜ロードSHOW!で宮崎駿監督の劇場アニメーション風立ちぬが放送されました。本作は宮崎監督にとって11作目の長編映画ですが、制作中に東日本大震災が発生し、そのことが作品内容にも影響を及ぼしているそうです。

ちょうど「関東大震災のシーン」の絵コンテを描き終えた直後に地震が起きたため、「このままこの場面を映画に出して良いのだろうか…?」「今後どういうアニメを作ればいいのだろうか…?」と宮崎監督も悩んだらしい。

そして2011年6月30日、宮崎駿監督はスタジオジブリの大会議室にスタッフ全員を集め、次のように語りました。

今後、我々はもっと物質的にも時間的にも窮迫した中に生きなきゃいけなくなると思うんです。その時に自分たちは何を作るのか?少なくとも、そういったことが十分予想される時に、前と同じようにファンタジーを作って、女の子がどうやって生きるかとか、そんなことでは済まないだろうと思いました。 

風立ちぬ』というのは実は、激しい時代の風が吹いてくる、吹きすさんでいる、その中で生きようとしなければならない、という意味です。それが、この時代の変化に対する自分たちの答えでなければならないと思います。

 宮崎駿監督は震災から逃げずに向き合うことを決意し、そのためには「よりリアルな情景を描かなければダメだ」と考えたようです。

また、震災シーンの作画を担当したアニメーターの稲村武志さんも、本作について次のように語っています。

どう描こうかということについて随分悩みましたね。記憶がすごく新しいじゃないですか?3月に地震があって、『コクリコ坂から』が終わってすぐ入るという形だったんですけど、これはちょっと嘘はつけないなと。映像としてだけでなく、感覚的なところもきちんと描かねばならないと思いました。

そして宮崎監督は、映画『風立ちぬ』でこれまで以上に「ある場面」にこだわりました。それは”大勢の群衆(モブシーン)”をしっかりと描くことです。

もちろん、今までの宮崎アニメでもモブシーンは描かれていましたが、「背景に大勢の人がいる」という状況を伝えるための、ある程度”効率的に描くこと”を計算した作画でした。

しかし今回の『風立ちぬ』では、「一人一人の人物をしっかり描く」ということが命題の一つになったのです。以下、宮崎監督のコメントより。

群衆というのはどういうものかって言ったら、”主人公じゃない情けない人たち”じゃなくて、”世の中を支えている重要な人たち”だから、ちゃんとした人間たちを描かなきゃダメなんだ。

つまり、モブシーンとは「その他大勢の人」ではなく、一人一人が個性を持った人間なんだということを観ている観客に伝えられるぐらい丁寧に描け!という意味です。

これがどれぐらい大変なことかわかるでしょうか?例えば、マンガの見開きページに50人程度のキャラクターを描いた場合を考えてみてください。

1ページ描くだけでも大変なことが想像できると思いますが、アニメの場合はさらにキャラを動かす…つまり同じような絵を少しずつ形を変えながら何百枚も描ねばならないのです(3秒程度の以下のカットを描くのに1年3カ月もかかった)。これはキツい!

宮崎駿監督『風立ちぬ』

宮崎駿監督『風立ちぬ』より

ただでさえモブシーンはアニメーターの負担が大きいので、普通は少しでも手間を減らすために動かないキャラがいたり「引き」でごまかしたりするんですが、本作では全てのキャラを動かし、全てのキャラに演技をさせているのです。

以下のカットはキャラが小さすぎてよく見えませんが、実際は4つぐらいのパートに分けて絵を描き、それを一つの画面に合成しているのです(だから一人一人の人間がしっかり描かれている!)。

宮崎駿監督『風立ちぬ』

宮崎駿監督『風立ちぬ』より

なんとも凄まじい作画ですが、こういうことをやっているとどうなるか?アニメーターが死にます。

作業自体の大変さもさることながら、フリーのアニメーター(動画マン)は一枚200円ぐらいの単価で動画を描いているため、手間のかかるシーンが増えれば増えるほど収入が減ってしまうのですよ。

昔、『機動戦士ガンダム』で「フラミンゴの群れ」を描いた板野一郎さんは、一枚の絵を描くのに時間がかかり過ぎて収入が激減し、見かねた先輩アニメーターからカップラーメンやコーラを差し入れてもらって、どうにか飢えをしのいでいたそうです。

機動戦士ガンダム

機動戦士ガンダム』より

なので『風立ちぬ』のモブシーンは一切外部のアニメーターには発注せず、全てジブリ社内の動画スタッフが担当することになりました(というより、外注先のスタジオに断られたのかもしれません)。

しかし、想像を絶する作業量にベテランアニメーターたちから「心が折れそうだ」との悲鳴が続出!若手動画マンの一人の大橋実さんも「普通ならキレて辞めてもおかしくないレベル」などと壮絶すぎる現場の状況を語っていました。

また、動画検査を担当した舘野仁美さんは、本作の中で一番思い入れが強いカットとして「関東大震災直後の上野広小路のモブシーン」を挙げ、以下のようにコメントしています。

これ全部動いてるんです。出来上がりを見てゾクッとするようなカットなんですよ。これ全部アニメーターが手で描いたんですから。かわいそう…。原画を見るだけで涙が出ちゃいそうになる…。宮崎さんも「本当によくやったね」って褒めてくださったカットです。長年この仕事をしてきて、一番すごいカットの一つだと思います。

一方、こういう大変な手描き作画に対し、「CGでやればいいやんけ!」と言う人もいるでしょう。しかし、「歩くだけ」などの単純な動きのパターンならともかく、これだけ多くのキャラに個別の芝居をさせることは、いかにCGと言えども簡単ではありません。

さらに「一人一人の個性を感じさせるような丁寧な演技を描く」ということに関しては、今もなお手描きの作画に分があると思われ、実際、多くのアニメ監督も「アニメーターに負担を強いることは理解しているけれど、出来れば手描きでやりたい」と考えているようです。

ただ、現実にモブシーンを手描きで制作するには様々な問題があるんですよね。

ベルセルク黄金時代篇』のモブシーンは、当初”手描き”で作画する予定だったらしく、アニメーターの恩田尚之さんが実際に原画を描いていたのですが、それを動画スタジオに回したところ、「こんな大変なカットは中割り出来ない」と断られ、結局CGになったそうです(せっかく描いた原画も全部ボツ)。

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 というわけで、『風立ちぬ』を観る際は是非とも「モブシーンの凄さ」にも注目してご覧ください(^.^)

【放送禁止?】『ルパン三世 ルパンVS複製人間』でカットされたシーンを調べてみた

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ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
昨日、金曜ロードSHOW!でルパン三世 ルパンVS複製人間が放送されました(先日亡くなったモンキー・パンチ先生の追悼ということで、急遽オンエアが決まったらしい)。

ルパン三世次元大介石川五エ門峰不二子、銭形警部など毎度”お馴染みの面々”が、人類の滅亡を目論む謎のクローン人間「マモー」と戦う…というストーリーです。

本作はルパン三世の劇場用アニメ第1作として1978年に公開されたんですが、その後テレビで放送される際に色々と「問題になる場面」があったため、何カ所もカットされてるんですよね。

こういうパターンは昔のアニメで割と多く、例えば『巨人の星』の場合は「僕の父は日本一の日雇い人夫です」とか「父ちゃんは野球キチガイだ」などのセリフが差別用語放送禁止用語と見なされ、再放送時にカット(無音処理)されました。

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つまり「どんな表現をカットするか(何をもって不適切とするか)」は各テレビ局のさじ加減次第…ってことなんですけど、じゃあ『ルパン三世 ルパンVS複製人間』ではどういうシーンがカットされたのでしょうか?ちょっと確認してみましたよ。


●次元と五ェ門が口論するシーン
マモーのアジトを破壊されたことにより、ルパンたち3人が言い争いを始めるシーンで、次元が五ェ門に「ヒステリックにわめくな、このキチガイ!」と怒鳴るセリフが放送コードに引っかかった模様。まあ、これは普通にアウトですよね(笑)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●砂漠をさまようシーン
アジトを壊されたルパンたちは、徒歩で広大な砂漠を横断して一軒の小屋に辿り着くんですが、その行程が丸ごとカットされていました。

ただしこのシーン、途中でマモーが「お前らに勝ち目はないぞ」的な警告を示す場面などはあるものの、特に放送禁止になりそうな個所は見当たりません(単に尺の都合でカットされたのだろうか?)

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンの脱出シーン
マモーに捕まって鳥カゴみたいな牢屋に入れられたルパンが、見張りを騙して脱出するシーンがカットされていました(これもなぜカットされたのか不明)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ナポレオンに遭遇するシーン
マモーの敷地内をウロついていたルパンが「あの~、ちょっとお尋ねしますが…」と言ってナポレオン(のクローン)に話しかけるシーンがカット。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

でも、その後ヒトラーに出会って「ハイル・ヒットラー!」と言うシーンはカットされてないのに、なぜナポレオンだけカットされたのでしょう?不思議ですね~。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●マモーと初対面した際のセリフ
ルパンがマモーと初めて会った時のセリフが「ここは精神病院でもなければ仮装パーティーでもない」 → 「ここは仮装パーティーではない」に変更されています(アフレコをし直したらしい)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●研究室&試験管ベイビーのシーン
科学者たちが研究室でクローンの実験をしていることろにルパンが忍び込み、「どうやら正体が見えてきたな…」とつぶやくシーンがカット。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

その後、別の部屋に入ったルパンは大量の巨大試験管に浮かぶ赤ん坊のクローンを目撃しますが、オンエアではカットされているため「瓶詰の赤ん坊さえ見なきゃな!」というセリフの意味が通じなくなってしまいました。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●ルパンの頭の中をのぞくシーン
「これがルパンの全てさ!」と叫んだマモーがルパンの深層心理を暴こうとするシーンは、女性の裸の画像や不二子のヌードなど「不適切な場面」が満載!

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

さらに、劇場公開時にタイアップしていた「テレパッチ」という駄菓子のCMが映っているため全面的にカットされています(そりゃそうだw)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

●画面がチカチカと点滅するシーン
元の映像では、マモーが装置の出力を上げると画面全体が激しく点滅してるんですが、放送では点滅が少なくなり、シーン自体も短くなっていました(いわゆる「ポケモンショック」の影響)。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より


というわけで、金曜ロードショーで放送された『ルパン三世 ルパンVS複製人間』がどんな風にカットされているのか調べてみたんですが、「放送禁止用語」または「不適切な表現」が5ヵ所ぐらいで、あとは尺の都合でカットされたと思しき場面が数ヵ所ありました。

最近は地上波の表現規制がどんどん厳しくなっているので、本作みたいに40年以上前の作品などは現在の基準に合わないシーンも多いのでしょう。

ただ、そのせいで「昔よくテレビで放送されていた映画が、最近は全然オンエアされなくなっちゃったなあ」と寂しく感じている映画ファンもいるかもしれません。個人的には、ホラー系の映画が全く放送されなくなったのは残念ですねえ(TV局側の自主規制らしい)。

なお、『ルパンVS複製人間』のスタッフ欄には「監修:大塚康生」とクレジットされていますが、当時の大塚さんは宮崎駿監督の『未来少年コナン』で忙しく、本作にはほとんどタッチできなかったそうです。

唯一手掛けたのが冒頭シーンで、「ルパンの死刑を知らされた銭形警部が絶望して警視庁を退職し、実家の寺へ帰って寺男として生活している」という”あらすじ”を大塚さんが考え、実際に作画もされました。

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

ところが、最終的にこのシーンはカットされ、「ルパンの検視報告中に仏像が映る」という中途半端な形で大塚さんのアイデアが残ってしまったそうです。なるほど、それであんなところに仏像が出てたのか!

ルパン三世 ルパンVS複製人間

映画『ルパン三世 ルパンVS複製人間』より

銭形が「貴様の骨にこの手で戒名を刻んでやるぞ!」と叫んでいたのも”お寺の息子”だったからなのね(笑)。さすがに分かりにくい(^^;)

ちなみに海外版予告編には、本編からカットされた「山寺で暮らしている銭形」のシーンが少しだけ入っているそうです。


「平成で一番面白かった映画」といえば?過去30年を振り返ってみた

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平成に公開された映画

平成に公開された映画

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
いよいよあと2日で「平成」が終わってしまいますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

さて、間もなく新しい元号「令和」に変わるということで、世間では「平成〇〇〇ランキング!」的なものが流行っているようですけど、当ブログでは敢えて”ランキング”とか”ベストテン”形式ではなく、単純に「平成の30年間に公開された映画」をザックリと年代順に振り返ってみたいと思います。

もちろん全部の作品を書くわけにはいかないので、中でも特に話題になった映画や個人的に印象に残った作品などを取り上げ、”感想”なり”思い出”なりを語ってみようかなと。いや~、30年間でずいぶん色んな映画が公開されましたね~。

 


●平成元年(1989年)
まず、記念すべき(?)平成最初の年に公開された映画としては、『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』、『レインマン』、『魔女の宅急便』、『バットマン』、『ブラック・レイン』、『ゼイリブ』、『告発の行方』、『カクテル』。

さらに『ワーキング・ガール』、『男たちの挽歌2』、『機動警察パトレイバー the Movie』、『リーサル・ウェポン2/炎の約束』、『恋人たちの予感』、『007 消されたライセンス』、『ニュー・シネマ・パラダイス』など色々ありますが、特に印象に残っているのはダイ・ハードですね。

第1作目からいきなりもの凄い完成度で映画ファンの度肝を抜きまくった『ダイ・ハード』は、ブルース・ウィリス出世作であると同時に、その後のアクション映画に絶大な影響を与え、公開から30年以上経ってもなお、「傑作」との呼び名が高い超人気作品です。

つーか「もう30年も前の映画なのか…」と今さらながら驚きますねえ(^^;)

●平成2年(1990年)
続いて平成2年。この年は角川映画天と地と興行収入92億円の大ヒットを記録し、ジョン・マクレーンが再び活躍する『ダイ・ハード2』や、アーノルド・シュワルツェネッガー主演のSFアクション映画『トータル・リコール』、切ないラブストーリーの『ゴースト/ニューヨークの幻』。

さらに野球を通じて家族の絆を描いた『フィールド・オブ・ドリームス』、CGを駆使して斬新な映像を生み出した『アビス』、B級モンスター映画の傑作『トレマーズ』、音楽もヒットした『プリティ・ウーマン』など話題作多し。

そんな中でもダントツに面白かったのは、バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』と『PART3』ですね。ご存知、マイケル・J・フォックス主演の大ヒット作の続編ですが、まさかの前後編という構成にビックリしました。

当時はシリーズものでも1話完結が基本で、映画のラストに「次回へ続く!」と出る映画なんてほとんどなかったからです。今みたいにネットで情報を集めることも出来ないし、「続きはどうなるんだ!?」と気になってしょうがなかったですよ本当に(^^;)

●平成3年(1991年)
平成3年は、今でもクリスマスの定番としてテレビで繰り返し放送されている『ホーム・アローン』、アカデミー賞作品賞を獲得した『ダンス・ウィズ・ウルブズ』、アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士が観る者に強烈な印象を与えた『羊たちの沈黙』などが公開されました。

しかし、この年に一番ヒットしたのは、ジェームズ・キャメロン監督のターミネーター2です!シュワちゃん演じる殺人マシン:ターミネーターとの戦いを描いた前作から数年後、少年へと成長したジョンと母親サラ・コナーに再び魔の手が迫る!

僕は公開時に映画館で鑑賞し、ド迫力のアクションシーンや自由自在に変身する敵ターミネーターのCG表現など、衝撃映像が満載で大興奮したのを覚えています。個人的にはこれがナンバーワンかな~。

●平成4年(1992年)
ティム・バートン監督の趣味が炸裂した『バットマン リターンズ』、安定感抜群のディズニーアニメ『美女と野獣』、コメディ色が強くなった『リーサル・ウェポン3』、ホイットニー・ヒューストンが歌う主題歌「オールウェイズ・ラヴ・ユー」も大ヒットした『ボディガード』など。

さらに『エイリアン3』、『氷の微笑』、『JFK』、『ユニバーサル・ソルジャー』、『ミンボーの女』など色んな映画が公開された平成4年ですが、個人的には宮崎駿監督の紅の豚が良かったかなと。前作『魔女の宅急便』よりも、宮崎監督の”個人的な想い”みたいなものがストレートに出ている感じが好きなんですよ。

●平成5年(1993年)
平成5年は、押井守監督の大傑作『機動警察パトレイバー2』、シルヴェスター・スタローンが久々に大作アクションに返り咲いた『クリフハンガー』、クエンティン・タランティーノ監督が注目されるきっかけとなった『レザボアドッグス』など。

そんな中で最大の話題作は、なんと言ってもスティーブン・スピルバーグ監督のジュラシック・パークでしょう。それまでは人形アニメや着ぐるみ等でしか見ることができなかった恐竜の動きを、フルCGでリアルに再現した画期的な作品です(特撮も使ってますが)。

「『ジュラシック・パーク』以降は、映画の表現方法が完全に変わった」と言われるほど業界に与えた影響はすさまじく、本作をきっかけとして急激にCGの使用頻度が増大しました。そういう意味でも「平成を代表する一作」と言っても過言ではないと思います。

●平成6年(1994年)
この年に公開された映画は、スピルバーグ監督が初のオスカーを獲得した『シンドラーのリスト』、高畑勲監督の『平成狸合戦ぽんぽこ』、キャメロン監督とシュワちゃんが再びコンビを組んだ『トゥルーライズ』、アカデミーで脚本賞、カンヌではパルムドールを受賞した『パルプ・フィクション』など。

そんな平成6年で僕が一番好きな映画は、キアヌ・リーブス主演の『スピード』です。公開時は映画館で観たんですが、あまりの面白さに3回連続で観てしまいました(当時は入れ替え制じゃなかったので)。

まだアクション俳優的なイメージが付く前のキアヌ・リーブスが激しいアクションに挑む意外性や、『ダイ・ハード』や『リーサル・ウェポン』シリーズのカメラマンとして優れた映像を撮り続けて来たヤン・デ・ボンの監督デビュー作としても話題になった本作。

エレベーター、バス、地下鉄など、次々と場面(乗り物)を変えながら展開していく独特のアクション構成は冒頭からラストシーンまでサービス精神に満ち溢れ、某映画評論家に「抜きどころしかないAVみたいだ」と言わしめたほどです(笑)。

●平成7年(1995年)
この年は、リュック・ベッソン監督の大ヒット作『レオン』、いまだに名作との誉れ高い『ショーシャンクの空に』、人気シリーズ第3弾『ダイ・ハード3』、押井守監督の名前が全米(のオタク)に知れ渡った『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』、トム・ハンクス主演の『フォレスト・ガンプ/一期一会』や『アポロ13』など話題作が多いんですが…

個人的にはガメラ大怪獣空中決戦』を強く推したい!監督:金子修介特技監督樋口真嗣、脚本:伊藤和典の3人がそれぞれのスキルをいかんなく発揮した本作は、停滞していた”怪獣映画”というジャンルに新しい命を吹き込んだ革新的な作品なのですよ。

今見ると、着ぐるみ感満載の怪獣の表現はやや古臭く感じるかもしれませんが、後に「平成ガメラ三部作」と称されることからも、平成を代表する映画の一つと呼んで差し支えないでしょう。

●平成8年(1996年)
平成8年の映画ではデヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』が衝撃的でしたねえ。主人公の刑事に扮したブラッド・ピットが奇妙な事件を捜査するサスペンス映画なんですが、ラストの展開が凄すぎて…(なお、同じ年に公開された『ユージュアル・サスペクツ』も必見です)。

その他、アル・パチーノロバート・デ・ニーロの共演が話題になった『ヒート』、人気スパイシリーズの第1弾『ミッション:インポッシブル』、前作よりもさらに戦闘シーンがリアルになった『ガメラ2 レギオン襲来』、そして『ザ・ロック』や『インデペンデンス・デイ』など大作映画も目白押し。

そんな中で僕のお気に入りはトイ・ストーリーですね。史上初のフルCGアニメーション作品として注目された本作ですが、脚本の素晴らしさに感激しました。完成までに何度もシナリオを書き直しただけあって、物語の面白さが尋常じゃありません。続編も最高!

●平成9年(1997年)
平成9年最大のヒット作といえば……そう!宮崎駿監督のもののけ姫と、ジェームズ・キャメロン監督のタイタニックです。正確に言うと、興行成績の1位は『もののけ姫』で、12月に公開された『タイタニック』は平成10年の1位にカウントされてるんですが、公開された年は同じです。

当時は日本の歴代興行収入第1位となる193億円を叩き出し、「高倉健主演の『南極物語』以来、14年ぶりに記録が更新された!」とニュースになったんですけど、5カ月後に公開された『タイタニック』がそれを上回る大ヒットで二度ビックリしましたね。まさかこんなに早く日本新記録が破られるとは(笑)。

なお、個人的は庵野秀明監督の新世紀エヴァンゲリオン劇場版 シト新生』と『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君にが最も印象的でした。映画館で初めて”あのラスト”を観た時の衝撃と、劇場内に充満する「なんなのコレ…?」という異様な雰囲気はたぶん一生忘れないと思います(笑)。

●平成10年(1998年)
Jホラーブームの先駆けとなった『リング』が公開された平成10年は、割と批判され気味のハリウッド版『GODZILLA』の他、『スターシップ・トゥルーパーズ』や『エイリアン4』や『ザ・グリード』など、モンスター系の映画が多かったですね。

あとは『ディープ・インパクト』と『アルマゲドン』という似たような内容の映画が同時期に公開されて観客を混乱させたり、『踊る大捜査線 THE MOVIE』の大ヒットでTVドラマの映画化が流行ったり…。

ちなみに、この年の映画で僕のおすすめはプライベート・ライアンです。スピルバーグトム・ハンクスのコンビは毎回期待を裏切らないんですが、今回は特に冒頭(オマハ・ビーチ)の戦闘シーンが凄すぎてトラウマになりそうでした(苦笑)。

●平成11年(1999年)
平成11年のヒット作は、何と言ってもスター・ウォーズエピソード1/ファントム・メナスでしょう。ジョージ・ルーカス監督作の人気シリーズが16年ぶりに復活するとあって、世界中のファンが大興奮!もちろん、僕も観に行きました。結果は……まあ敢えて言いませんけれども(笑)。

他に話題になった映画としては、M・ナイト・シャマラン監督のシックス・センスが最強ですね。なんせ当時は映画ファン以外にもその評判が広まり、「『シックス・センス』観た?」と聞かれて「観てない」と答えようものなら話に参加できなかったぐらいですから(笑)。

その他、平成ガメラ三部作完結編の『ガメラ3 邪神覚醒』や、デヴィッド・フィンチャーブラッド・ピットの『ファイト・クラブ』、娯楽要素が満載のアドベンチャー映画『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』など面白い映画は色々ありましたが…

この年の1位を選ぶなら、やはりマトリックスしかないでしょう!ハリウッド俳優が自ら挑んだカンフーアクション、人物の周囲をカメラがグルッと回り込むマシンガン撮影バレットタイム)など、見たこともない斬新な映像を次々と繰り出し、映画界に「革命」を起こした衝撃作です。まさにエポックメイキング!

●平成12年(2000年)
平成12年のヒット作は、人気シリーズ第2弾のミッション:インポッシブル2』と、スティーヴン・キング原作&フランク・ダラボン監督のグリーンマイルです。特に『グリーンマイル』は予告編でスピルバーグが「4回号泣した」とコメントするなど、大いに話題となりました。

その他、『トイ・ストーリー2』、『アイアン・ジャイアント』、『アメリカン・ビューティー』、『マグノリア』、『X-MEN』、『ギャラクシー・クエスト』など様々な映画が公開されましたが、中でも特筆すべきは『シュリ』でしょう。

今でこそ韓国映画は当たり前のように受け入れられていますが、当時はまだ韓国のアクション映画が日本でヒットするなんて思いもよらず、本作以降に『冬のソナタ』などの”韓流ブーム”が到来。ある意味、韓国作品がヒットするきっかけになったと言っていいかもしれません。

●平成13年(2001年)
この年、日本の映画史に残る超ウルトラメガヒット作が登場しました。宮崎駿監督の長編8作目千と千尋の神隠しです。有名すぎて特に語ることもないんですけど、308億円という前代未聞の大記録を叩き出し、日本歴代興行収入第1位を達成!18年経った今でもこの凄まじい記録は破られていません。

その他、長くファンから愛されることになる人気シリーズの第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』と、同じく長寿シリーズとなる『ワイルド・スピード』も公開。あとは『ジュラシック・パークIII』、『ハンニバル』、『A.I.』なども話題になりました。

なお、ゲームメーカーとして有名なスクウェア・エニックス(当時はスクウェア)が映画界に参入して来たのもこの年で、140億円以上の製作費を投じて劇場版『ファイナルファンタジーを作ったものの、世界的規模で大コケし、ギネスブックに載るほどの赤字を叩き出したことでも知られています、トホホ。

ちなみに、「子供向けアニメだと思ってナメてたら大人が号泣した」といまだに高く評価されているクレヨンしんちゃん嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』も平成13年に公開されました。

●平成14年(2002年)
平成14年のヒット作は、新シリーズ2作目の『スター・ウォーズエピソード2/クローンの攻撃』、超大作ファンタジー映画『ロード・オブ・ザ・リング』、ピクサーの長編アニメ『モンスターズ・インク』、ジョージ・クルーニーブラッド・ピットマット・デイモンなど豪華キャストが集結した『オーシャンズ11』、シリーズ2作目『ハリー・ポッターと秘密の部屋』など。

その他、サム・ライミ監督が有名なアメコミを映画化した『スパイダーマン』、トム・クルーズが近未来で戦う『マイノリティ・リポート』、捧腹絶倒なアクション映画『少林サッカー』、松本大洋の人気漫画を実写化した『ピンポン』など話題作多数。

そんな中で印象的だったのは、リドリー・スコット監督が実際にソマリアで起きた戦闘をドラマ化したブラックホーク・ダウンです。米軍の汎用ヘリコプターUH-60ブラックホークが撃墜され、敵地のど真ん中に取り残された兵士たち。そのリアルな姿と戦場の臨場感がハンパない!

●平成15年(2003年)
平成15年の大ヒット作といえば、踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』です。この映画は173億円というとてつもない興行収入を叩き出し、2003年の興収第1位のみならず、なんと実写邦画の歴代第1位の座を獲得しました(いまだにこの記録は破られていない)。

そして、大ヒットした『マトリックス』の続編となる『マトリックス リローデッド』と『マトリックス レボリューションズ』も日本を含め世界中で大ヒット(ただし、作品の評価は賛否両論わかれましたがw)。

その他、『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔』、『ターミネーター3』、『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』、『ワイルド・スピードX2』、『ボーン・アイデンティティー』、『キル・ビルVol.1』、『ラストサムライ』、『X-MEN2』など大作映画が目立ちましたね。

そんな大作映画に紛れてひっそりと公開されたリベリオンっていう映画、皆さんご存知でしょうか?まあ、たぶん知らないと思います。なにしろ、主演を務めたクリスチャン・ベイルが『バットマン ビギンズ』のプロモーション時に「昔『リベリオン』という映画に出演したんだよ。誰も知らないだろうけどね」とコメントしたぐらいですから(苦笑)。

あと、印象に残った映画としてはジョゼと虎と魚たちが良かったです。妻夫木聡池脇千鶴上野樹里、そして悪い意味で有名になってしまった新井浩文が出演している恋愛ドラマで、ハリウッド映画に比べると規模は非常に小さいですが、色々と考えさせられる場面が多く、いつまでも心に残る作品ですよ。

●平成16年(2004年)
平成16年にヒットした映画は、ダントツで宮崎駿監督のハウルの動く城です。前作の『千と千尋』よりは落ちたものの、196億円という凄まじい興行成績で他を圧倒!

洋画では、『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還』や『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』などが世界中でヒットしましたが、日本では世界の中心で、愛をさけぶが大ヒット!若者の間で”セカチュー・ブーム”が巻き起こりました。

あと、是枝裕和監督の『誰も知らない』で主演を務めた柳楽優弥が、第57回カンヌ国際映画祭にて日本人初の最優秀主演男優賞を獲得したことも話題になりましたね。

他にも『いま、会いにゆきます』、『スウィングガールズ』、『下妻物語』、『海猿 -ウミザル-』、『花とアリス』など日本映画が注目されたんですが、「史上最悪の実写化」としていまだに批判されている実写版『デビルマンが公開されたのもこの年です(笑)。

そして、押井守監督が『攻殻機動隊』の続編として作った『イノセンス』、「CG・ワイヤー・スタントマンを一切使いません!」のキャッチコピーでアクション映画ファンの心を掴んだ『マッハ!!!!!!!!』なども忘れ難いんですけど、個人的にはスパイダーマン2が至高でした。

●平成17年(2005年)
この年に公開されてヒットした洋画は、新三部作完結編のスター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐スピルバーグトム・クルーズの『宇宙戦争』、ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』、『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』など。

邦画では、昭和レトロブームの火付け役となったALWAYS 三丁目の夕日ネット掲示板2ちゃんねるから生まれた『電車男』、バンド活動に打ち込む女子高生たちの姿を瑞々しいタッチで描いた『リンダ リンダ リンダ』、戦艦大和の乗組員の生き様を力強く活写した『男たちの大和/YAMATO』などが話題に。

その他、『ボーン・スプレマシー』、『バットマン ビギンズ』、『キング・コング』など色々ありましたが、劇場版『機動戦士Ζガンダム -星を継ぐ者-』と『機動戦士ΖガンダムII -恋人たち-』には驚かされました。まさかテレビ放送終了から19年も経って劇場版が作られるとは!

なお僕が印象的だったのは、クリント・イーストウッド監督のミリオンダラー・ベイビーです。「年老いたボクシングトレーナーと若き女性ボクサーが織り成す愛と感動のスポーツドラマ」かと思いきや…。いや~、すごいラストだったなあ(汗)。

●平成18年(2006年)
平成18年に公開された洋画では、シリーズ2作目『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』、トム・ハンクスが世界を駆け巡ってイエス・キリストに関する謎を解くダ・ヴィンチ・コード、シリーズ3作目『ミッション:インポッシブル3』など。

邦画では、人気漫画を実写化した『LIMIT OF LOVE 海猿』が70億円を超える大ヒット!同じく漫画原作の『デスノート前編』と『デスノート後編』がどちらもスマッシュヒットを記録、さらに宮崎駿の息子の宮崎吾朗の初監督作品『ゲド戦記』が77億円のメガヒットを記録しました。

その他、『THE 有頂天ホテル』や『日本沈没』などが相次いで50~60億以上のヒットを記録し、全体としては21年ぶりに国内興行収入で邦画が洋画を上回ったそうです(この時期から邦画の成績がどんどん高まっていった)。

あとは、『X-MEN: ファイナル ディシジョン』、『ブロークバック・マウンテン』、『機動戦士ΖガンダムIII -星の鼓動は愛-』など色々ありましたが、個人的に良かったのは韓国映画グエムル-漢江の怪物-』です。「日常風景の中に怪物が普通に映り込んでいる」という映像がインパクト大でした(笑)。

●平成19年(2007年)
洋画では、3作目のパイレーツ・オブ・カリビアンワールド・エンド』がシリーズ最高の109億円の特大ヒット。続いて『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』が94億円の大ヒット、さらに『スパイダーマン3』、『ダイ・ハード4.0』、『ロッキー・ザ・ファイナル』などの続編が相次いでヒットした平成19年。

邦画では、木村拓哉主演の人気ドラマの劇場版『HERO』が80億円を超える大ヒットを記録!また、周防正行監督が『Shall we ダンス?』以来10年ぶりに撮った新作映画『それでもボクはやってない』が話題になりました。

アニメでは、庵野秀明監督が前作から10年ぶりにエヴァを再映画化した『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が話題になり、20億円のヒットに。

その他、『トランスフォーマー』、『ボーン・アルティメイタム』、『ALWAYS 続・三丁目の夕日』など色々ありつつ、個人的にはギレルモ・デル・トロ監督の切ないファンタジーパンズ・ラビリンスを推しておきます。

●平成20年(2008年)
洋画では、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』が57億円、ジョン・ウー監督が三国志の”赤壁の戦い”を描いたアクション大作『レッドクリフ PartI』が50億円を超える大ヒット。

邦画では、宮崎駿監督の長編10作目崖の上のポニョが155億円のメガヒットを記録した他、人気ドラマの劇場版『花より男子ファイナル』が78億円、第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『おくりびと』が65億円、ガリレオシリーズの劇場版『容疑者Xの献身』が49億円など、邦画の強さが際立った年でした。

一方、バットマンシリーズの続編『ダークナイト』が全米で驚異的な大ヒットを記録したり、マーベルがMCUの第1弾となる『アイアンマン』を公開するなど、この辺からアメコミ映画が活気づいてますね。

その他、『ノーカントリー』、『ランボー/最後の戦場』、『インクレディブル・ハルク』など色々あった中で、印象的だったのはクローバーフィールド/HAKAISHAです。観た時は「何だ、この映画は?」と思ったんですが、いまだに「何だったんだ、あの映画は?」という気持ちです(笑)。

●平成21年(2009年)
洋画では、『タイタニック』で世界最高の興行収入を打ち立てたジェームズ・キャメロン監督が、なんと新作のSF超大作アバターで自身の記録を更新し、156億円という凄まじい成績を叩き出しました。

また、シリーズ6作目の『ハリー・ポッターと謎のプリンス』は80億円、『レッドクリフ Part II -未来への最終決戦-』が56億円のメガヒットを記録。

さらにこの年はマイケル・ジャクソンが急死し、ソニー・ピクチャーズが急遽ドキュメンタリー映画マイケル・ジャクソンTHIS IS IT』を作って公開したところ、世界中で爆発的なヒットとなり、日本でも52億円の好成績を収めました。

邦画では、人気ドラマの劇場版『ROOKIES -卒業-』が86億円、『のだめカンタービレ最終楽章 前編』が41億円、『20世紀少年 第2章 最後の希望』が30億円、さらに『20世紀少年 最終章 ぼくらの旗』が44億円を売り上げるなど、「漫画の実写化」が絶好調!

そして、庵野秀明監督のヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』は、以前のストーリーをそのままなぞるのかと思いきや、新キャラ:マリを登場させるなど意外な展開の連続でエヴァファンも大歓喜!しかし、まさか『Q』があんなことになるとは…(苦笑)。

その他、『ターミネーター4』、『トランスフォーマー/リベンジ』、『サマーウォーズ』、『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』、『ワイルド・スピード MAX』、『愛のむきだし』、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』など。

そんな中で僕が好きな映画はクエンティン・タランティーノ監督のイングロリアス・バスターズです。第二次世界大戦を舞台に、ナチス壊滅秘密部隊「バスターズ」の活躍を描いた痛快アクションで、特にランダ大佐を演じたクリストフ・ヴァルツの存在感がすごい!

●平成22年(2010年)
洋画では、ティム・バートン監督の『アリス・イン・ワンダーランド』が118億円の大ヒット。そして、シリーズ完結編となる『トイ・ストーリー3』が108億円の大ヒットを記録し、有終の美を飾りました。

また、クリストファー・ノーラン監督のインセプションは、「特殊な装置を使って他人の夢の中へ入り込む」という『ドラえもん』みたいな話を、レオナルド・ディカプリオがもの凄く真面目に演じたことにより、過去に類のない独特なSF映画として成立させた点が素晴らしかったです。

その他、キャスリン・ビグローが女性として史上初のアカデミー監督賞を受賞した『ハート・ロッカー』や、南アフリカにおけるアパルトヘイト政策の実情をSF映画に反映させた『第9地区』、かつてのアクション映画のヒーローたちを復活させた『エクスペンダブルズ』なども良かった。

邦画では、『踊る大捜査線 THE MOVIE3ヤツらを解放せよ!』が73億円、『THE LAST MESSAGE 海猿-UMIZARU-』が80億円、『借りぐらしのアリエッティ』が93億円のメガヒットを記録。ついでに木村拓哉主演の『SPACE BATTLESHIP ヤマト』も41億円の大ヒットを記録しています。

そんな大ヒット作がひしめく平成22年で、あまりヒットしなかったけど印象に残った映画といえばキック・アスですね。主人公のキック・アスより、クロエ・モレッツ演じるヒット・ガールの方に注目が集まったような気もしますが(笑)、アメコミ愛に溢れたいい映画でした。

平成23年(2011年)
平成23年は、3月11日に東日本大震災が発生したことで、日本中が大混乱に陥りました(しばらく自粛ムードが漂い、経済的にも影響が…)。

そんな中、洋画では前後編で公開されたハリー・ポッターと死の秘宝』が2作合わせて166億円の大ヒットを記録し、2001年から始まった人気シリーズがついにフィナーレを迎えました。

また、シリーズ4作目となる『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』は89億円の好成績を収めて相変わらずの人気の高さを見せつけ、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』が54億円、『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』も43億円と絶好調。

邦画では、宮崎吾朗の監督2作目『コクリコ坂から』が44億円、三谷幸喜監督の『ステキな金縛り』が43億円、そして奥浩哉の人気漫画を実写化した『GANTZ』が前後編合わせて62億円の大ヒットを記録しています。

なお、この年は2003年に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が、60億kmの旅を終えて地球に戻ってきたことも話題となり、『はやぶさ/HAYABUSA』などはやぶさ」関連の映画が4本も公開されました(作りすぎやろw)。

その他の公開作品は『ソーシャル・ネットワーク』、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』、『SUPER8/スーパーエイト』、『ワイルド・スピード MEGA MAX』、『猿の惑星:創世記』、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』など。

ちなみに僕のおすすめは、同じ8分間を何度も何度も繰り返す男の姿を描いたミッション:8ミニッツです。地味だけどいい映画ですよ。

平成24年(2012年)
洋画では、アイアンマン、キャプテン・アメリカ、ソー、ハルクらマーベル・ヒーローが一堂に集結したアベンジャーズが公開され、36億円の興行収入を達成。「日本よ、これが映画だ!」という強気のキャッチコピーも話題になりました。

また、ヴィクトル・ユゴーの同名小説を原作とした有名なミュージカル『レ・ミゼラブル』が、ヒュー・ジャックマンラッセル・クロウアン・ハサウェイら豪華ハリウッドスターによって映画化され、59億円の好成績を獲得。

そして、ゲームの映画化でありながら大人気を博し、続編も作られたバイオハザード・シリーズの5作目『バイオハザードV リトリビューション』が38億円の大ヒット。

さらに『アメイジングスパイダーマン』が32億円を稼いだ他、『ダークナイトライジング』、『プロメテウス』、『ドラゴン・タトゥーの女』、『バトルシップ』、『007 スカイフォール』など超大作が次々と公開されました。

一方、邦画は『BRAVE HEARTS 海猿-UMIZARU-』が73億円のメガヒット、『テルマエ・ロマエ』が60億円、『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』が59億円、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』が53億円、『おおかみこどもの雨と雪』が42億円と、完全に洋画を上回ってますねえ。

他にも、『ALWAYS 三丁目の夕日'64』が34億円、『るろうに剣心』が30億円など、平成24年は年間興行成績トップ10のうち、7本を邦画が占める結果となりました。日本映画強し!

そんな中、「イランに取り残されたアメリカ人外交官を救出するため、CIAが架空のSF映画をでっちあげる」というウソみたいな本当の話を映画化した『アルゴ』は、第85回アカデミー賞で作品賞を受賞するなど高く評価されました。非常に面白いので未見の人はぜひどうぞ。

●平成25年(2013年)
洋画では、フルCGアニメ『モンスターズ・インク』の続編となるモンスターズ・ユニバーシティが90億円のメガヒットを記録した他、熊のぬいぐるみが活躍するコメディ映画『テッド』が43億円、サンドラ・ブロックが宇宙を漂流する『ゼロ・グラビティ』が32億円を獲得。

あとは、『ダイ・ハード/ラスト・デイ』、『アイアンマン3』、『ワイルド・スピード EURO MISSION』、『パシフィック・リム』、『ワールド・ウォーZ』、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』などハリウッドの大作映画が多数。

邦画では、宮崎駿監督の長編11作目風立ちぬが120億円と相変わらずの強さを見せ、『永遠の0』が88億円、『真夏の方程式』が33億円、『そして父になる』が32億円、『かぐや姫の物語』が25億円という成績でした。

なお、個人的に印象に残った作品としては、キャスリン・ビグロー監督のゼロ・ダーク・サーティです。ジェシカ・チャステイン演じるCIA分析官のマヤがウサーマ・ビン・ラーディンの行方を追って奔走するという、実話を元にしたサスペンスで非常に見応えがありました。

平成26年(2014年)
この年最大の話題は、ディズニーのフルCGアニメアナと雪の女王が興収255億円という圧倒的な勢いでトップを独走し、主題歌の「レット・イット・ゴー~ありのままで~」が日本中を席巻したことでしょう(ニュースでも報じられました)。

同じくディズニーの『ベイマックス』が92億円、さらにディズニーの名作アニメ『眠れる森の美女』を実写でリメイクした『マレフィセント』は、アンジェリーナ・ジョリーが妖精マレフィセントを演じて65億円の大ヒットを記録(ディズニー恐るべし!)。

一方邦画では、子供たちの人気者ドラえもんをフルCGで映画化した『STAND BY ME ドラえもん』が84億円の大ヒットを記録した他、実写版『るろうに剣心/京都大火編』が52億円、『るろうに剣心/伝説の最期編』が44億円、『テルマエ・ロマエII』が44億円など、漫画の実写版が目立ちました。

その他、『GODZILLA ゴジラ』『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』『アメイジングスパイダーマン2』『マイティ・ソー/ダーク・ワールド』『ホビット 竜に奪われた王国』『X-MEN: フューチャー&パスト』『オール・ユー・ニード・イズ・キル』『トランスフォーマー/ロストエイジ』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『エクスペンダブルズ3 ワールドミッション』『インターステラー』『ゴーン・ガール』など、非常に充実した年でしたねえ。

なお、あまりヒットはしなかったんですが、マーティン・スコセッシ監督のウルフ・オブ・ウォールストリートも最高にキレてて面白かったです。特に「ドラッグでヘロヘロになったレオナルド・ディカプリオ」が素晴らしすぎる(笑)。

平成27年(2015年)
洋画では、『エピソード3/シスの復讐』から10年ぶりに公開された新作スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が116億円の大ヒット(ファンの評価も『エピソード1』より良かったようですw)。

さらに、『ジュラシック・パークIII』から14年ぶりに公開された続編『ジュラシック・ワールド』が95億円、ディズニーの名作アニメを実写化した『シンデレラ』が57億円、『ミニオンズ』が52億円、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』が51億円、『インサイド・ヘッド』が40億円…という具合に、この年は洋画が巻き返しを図るかのように次々とヒットしましたねえ。

他にも、第87回アカデミー賞で最多9部門にノミネートされ、作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞の4部門を受賞した『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』とか、第88回アカデミー賞で衣装デザイン賞や美術賞など6部門を受賞した『マッドマックス 怒りのデス・ロード』など、見逃せない映画が多数公開されました。

その他、『アメリカン・スナイパー』、『ターミネーター:新起動/ジェニシス』、『キングスマン』、『アントマン』、『ジョン・ウィック』、『クリード チャンプを継ぐ男』なども話題に。

一方邦画は、細田守監督の『バケモノの子』が59億円、『HERO』が47億円、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』が32億円、『ビリギャル』が28億円、『暗殺教室』が28億円、『バクマン。』が17億円、『進撃の巨人 ATTACK ON TITANエンド オブ ザ ワールド』が17億円…という感じで洋画に比べると若干控えめな成績でしたね。

なお、個人的にはデミアン・チャゼル監督、マイルズ・テラー主演の『セッション』が良かったです。ドラム演奏に打ち込む主人公と、鬼のような指導者テレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ)とのやり取りが狂気に満ち溢れ、一瞬たりとも目が離せません!

平成28年(2016年)
この年、日本の映画界が大騒ぎになるほどの大ヒット作が登場しました。そう、新海誠監督の君の名は。です。前作『言の葉の庭』が1億5千万円程度の興行成績だったので、打ち合わせ会議では「今回は20億円ぐらいいきたいよねー」などと話していたようですが、いざ公開すると250億円の超ウルトラメガヒットで関係者も仰天!

なんと日本国内の歴代興行収入ランキングで4位、日本映画では『千と千尋の神隠し』に次いで第2位という凄まじい記録を樹立し、大変な話題になったのです。これには新海監督も相当ビックリしたらしく、「ちょっと何が起きているのかよくわからない」とコメントするほどでした。

そしてもう一つ、庵野秀明監督のシン・ゴジラもヒットしましたねえ。『新世紀エヴァンゲリオン』の庵野監督が、日本が誇る怪獣王ゴジラを撮ったらどうなるのか…という期待と不安が入り混じった気持ちで観に行ったらまさかの大傑作!83億円のメガヒットを記録しました。

さらに、片渕須直監督のこの世界の片隅にも、当初は小規模公開だったにもかかわらず口コミで評判が広まり、徐々に上映館数が増えていき、驚異のロングラン上映によって異例とも言うべき大ヒットに繋がったのです。

一方洋画では、『ズートピア』が77億円、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が73億円、『ファインディング・ドリー』が68億円、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が46億円、『バイオハザード: ザ・ファイナル』が43億円、『オデッセイ』が35億円、『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』が28億円など、邦画に負けない好調ぶり。

その他、『ブリッジ・オブ・スパイ』『ヘイトフル・エイト』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』『スポットライト 世紀のスクープ』『レヴェナント: 蘇えりし者』『ハドソン川の奇跡』『ジェイソン・ボーン』『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』『デッドプール』『ドント・ブリーズ』『X-MEN: アポカリプス』など話題作が公開。この年は映画業界全体が盛り上がってましたね。

●平成29年(2017年)
洋画では、ディズニーの長編アニメーション作品『美女と野獣』の実写リメイク美女と野獣が124億円を記録し、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が75億円、『怪盗グルーのミニオン大脱走』が73億円など。

そして、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』、『モアナと伝説の海』、『SING/シング』、『ラ・ラ・ランド』、『ワイルド・スピード ICE BREAK』などがそれぞれ40億~60億円の大ヒットを記録しました。

また、MCUは『ドクター・ストレンジ』、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』、『スパイダーマン:ホームカミング』、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の4作品が、DCEUは『ワンダーウーマン』と『ジャスティス・リーグ』の2作品が公開されました。

一方邦画では、実写版『銀魂』が38億円、『君の膵臓をたべたい』が35億円、『メアリと魔女の花』が33億円、『DESTINY 鎌倉ものがたり』が32億円と、やや物足りない感じですね。

なお、この年は『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が22億円のスマッシュヒットを記録した他、『新感染 ファイナル・エクスプレス』やゲット・アウトなど、ハリウッド超大作以外の”小規模なホラー映画”が話題になったことも印象に残っています。

●平成30年(2018年)
さて、いよいよ平成30年です。洋画では、伝説的ロックバンド「クイーン」のフレディ・マーキュリーを主人公にしたボヘミアン・ラプソディが異例のロングランヒットで127億円を稼ぎ出し、『ジュラシック・ワールド/炎の王国』が81億円、『グレイテスト・ショーマン』が52億円。

そして、『リメンバー・ミー』、『インクレディブル・ファミリー』、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、『ボス・ベイビー』などがそれぞれ30億~50億円の興行収入を獲得しています。

また、スティーブン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』は、『AKIRA』の金田バイクやガンダムなどを劇中に登場させ、日本のファンにアピールしたことでも大いに話題となりました。

さらに邦画では、人気ドラマを映画化した『劇場版コード・ブルー/ドクターヘリ救急救命』が93億円の大ヒットを記録した他、是枝裕和監督の万引き家族が第71回カンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、興行収入46億円を達成。

その他、実写版『銀魂』の続編『銀魂2 掟は破るためにこそある』は38億円、木村拓哉二宮和也の共演が注目された『検察側の罪人』は30億円、細田守監督の新作『未来のミライ』が29億円のヒットになりました。

しかし、平成30年で最も話題になった映画と言えば、やはりカメラを止めるな!でしょう。たった300万円で作った低予算ゾンビ映画、しかも当初の上映はわずか2館のみという厳しい状況にもかかわらず、SNSで評判が広まり、上映館数は350館以上に拡大し、観客動員数も210万人を突破!興収31億円を超える大ヒットとなったのです。スゲー!

というわけで、平成元年から平成30年に公開された映画をザックリと振り返ってみたんですけど、ヒット作を中心に印象に残った映画だけを取り上げても、30年分となると分量がすごいですね。こんなに記事が長くなるとは思いませんでした(笑)。

当然、これ以外にも面白い映画はまだまだたくさん公開されているので、興味がある人は今回のゴールデン・ウィークに平成の名作映画をゆっくりとご覧になってみてはいかがでしょうか(^.^)

なぜ『アメトーーク!』には「マクロス芸人」が登場しないのか?

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全マクロス大投票

NHK『全マクロス大投票』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

長かったゴールデン・ウィークもいよいよ終わりを迎えようとしていますが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?

 

さて、昨日NHKBSプレミアムにて『全マクロス大投票』という番組が放送されました。

マクロスといえば、1982年に放送が開始された巨大ロボットアニメ『超時空要塞マクロス』を始めとする一連の作品のことで、今もなお関連シリーズが作られ続けている人気アニメです。

今回の番組では、『マクロスプラス』や『マクロス7』など過去に制作された16作品を対象に、自分の”お気に入り”を選んで投票する…という内容でした(カテゴリーが「作品部門」や「キャラ部門」や「歌部門」など細かく分かれている)。

ちなみに、作品部門では1位が『マクロスF』、2位が劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』、3位が『マクロス7』という結果で、僕の好きな『マクロスプラス』は7位でした。

この番組を見ながら「マクロスNHKでこんなに大々的に特集される日が来るとは…」と感慨深かったんですけど、同時に「そろそろアメトーーク!でも取り上げてくれないかな~」と思ったんですよね。

アメトーーク!』では、過去に『機動戦士ガンダム』を特集したガンダム芸人や、『新世紀エヴァンゲリオン』を特集したエヴァンゲリオン芸人」など、人気ロボットアニメを取り上げているからです。

マクロスも、ガンダムのように派生作品がいくつも作られ、『超時空要塞マクロス』から37年経ってもファンから支持され続けている人気アニメですから、マクロス芸人」が登場してもおかしくないだろうと。

だがしかし……。冷静に考えてみると、やっぱり『アメトーーク!』にマクロスが出て来るのはちょっと違和感があるような気もするんですよねえ。

例えば知名度の問題。ガンダムエヴァンゲリオンに比べると、マクロスは恐らく(一般的には)かなり認知度が低いでしょう。全国放送の地上波番組で取り上げるには少々厳しいかもしれません。

また、『北斗の拳』や『ジョジョの奇妙な冒険』の時には、劇中に出て来るヘンなシーンを芸人さんたちがイジって笑いにしていましたが、マクロスにそういうシーンがあったかなあ…とか。

あと、よく芸人さんがガンダムの名セリフをパッと喋って笑いが起きるじゃないですか?ああいうことも、マクロスの場合は起き難いし。要するに、マクロスってバラエティ番組的に扱いづらい素材なのかも…と思うんですよ。

この”微妙な差”をもう少し具体的に言うと、「アニメに興味がない友人たちと居酒屋へ行った際、『ガンダム』や『エヴァ』の話題なら何とか許容してもらえるが、『マクロス』はギリアウト」みたいな感覚でしょうか(笑)。

もちろん、アニメファンにとって非常に重要な作品であることは間違いありません。ただ、『アメトーーク!』に「マクロス芸人」が登場することは、今後もなさそうな気がしますねえ(^^;)

 

芸能人やタレントを起用した日本語吹き替えの問題点

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メン・イン・ブラック:インターナショナル

メン・イン・ブラック:インターナショナル』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、人気シリーズの最新作『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(6月14日公開予定)の日本語吹き替え版のキャストが発表されたんですが、なんと「吉本坂46が全員声優として参加する」ということが判明し、批判が殺到しているようです。

う~ん、なんか『シャザム!』の時も吹き替えの件で炎上してましたが、最近こういうのが多いですねえ。

ちなみに吉本坂46とは、乃木坂46欅坂46につづく3番目のグループとして秋元康がプロデュースしたアイドルグループです。

その名の通り、メンバーは全員吉本興業に所属しているお笑い芸人で、村上ショージエハラマサヒロ野沢直子ゆりやんレトリィバァなど、錚々たる面子(?)が揃っています。

「なぜそんな芸人たちが映画の吹き替えをするんだ?」と言われれば、もうかなり以前から指摘されていることですけど、「宣伝のため」なんですね。

邦画の場合は、出演している俳優や女優が直接テレビ番組に出て宣伝できるので、効果的な話題作りが可能です。でも洋画はそれができません。

そこで、名前が知られている俳優や女優、人気タレントやアイドルなど、「有名芸能人をキャスティングした日本語吹き替え版」を作ることで、少しでも注目してもらおうという作戦なのですよ。

いや、別にタレントやお笑い芸人を起用した吹き替え版が「全てダメ」ってわけじゃないんです。ただ、どうせ芸能人を起用するなら、下手な人よりも上手い人にやってもらいたいなと。それだけなんですけどねえ。

あと、「日本のアニメも声優を使わずに役者やタレントを起用するパターンが多いから同じじゃないか」という意見を聞くんですが、それは違うと思います。

確かに、宮崎駿細田守新海誠など、自分のアニメーション作品に役者やタレントをキャスティングする監督は少なくありません。しかし、それらは全て”監督の意向”に従って決められている、という点が大きく違うんですよ。

例えば、宮崎駿監督の『風立ちぬ』の場合、「主人公役に庵野秀明」という常識的に考えてあり得ないキャスティングで注目を集めました。

しかし、これは決して話題性を狙ったものではなく(まあ多少はあるかもしれませんがw)、宮崎監督の中で「主人公の声を演じられるのは庵野秀明しかいない」と判断したからです。

それに対して洋画の吹き替えはどうでしょう?『アベンジャーズ』の監督が「ホークアイの声を演じられるのは雨上がり決死隊宮迫博之だけだ!」なんて言いますか?言わないですよね。

つまり、「お笑い芸人やタレントを起用した日本語吹き替え版」の本質的な問題点は、作り手側の意向が全く反映されていない、という点だと思うんですよ。

多くのタレント吹き替えが単に”話題性のみ”を優先したキャスティングで、「作品を良くしよう」なんて気持ちや作品に対するリスペクトなどは微塵も感じられません。その辺がすごく気になるんですよね。

もちろん全ての吹き替えがそうではなく、ピクサーやディズニーなどはきちんとオーディションをやって声優を選んでいるそうです(だからディズニー作品の吹き替えは評価が高い)。

モンスターズ・インク』では、「ホンジャマカ」の石塚英彦と「爆笑問題」の田中裕二、『Mr.インクレディブル』では三浦友和黒木瞳綾瀬はるか、『塔の上のラプンツェル』では中川翔子など、芸能人の吹き替えでも高評価されたものはたくさんあります。

なので、タレント吹き替えでもそういう「声の演技が上手い人」をキャスティングすれば、炎上する可能性もかなり減るんじゃないでしょうか(^.^)

映画『インデペンデンス・デイ』の作り方

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インデペンデンス・デイ

映画『インデペンデンス・デイ

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

昨日、土曜プレミアムインデペンデンス・デイエクステンデッド版』が地上波初放送されました。

インデペンデンス・デイ』といえば「宇宙から大量の異星人が攻めて来て地球がエラいこっちゃ~!」で有名なSF映画です。

一見すると非常に豪華な内容なんですが、本作を撮ったローランド・エメリッヒ監督によると「この手の超大作映画にしては予算が少なくて苦労した」とのこと。

例えば、宇宙船から発射されたビームによってニューヨークやロサンゼルスなどの大都市が大爆発&炎上するシーンを撮るためにいくらかかるのか?

その費用を試算したところ、「CGの炎を合成するだけで15万ドルもかかる」との高額な数字がはじき出されたため、プロデューサーから「カットしよう」と無慈悲な提案が…。

しかし、どうしてもカットしたくない監督は、「だったら俺が低予算で最高にカッコいい映像を撮ってやらあ!」と『スーパー食いしん坊』の主人公ばりに反発し、CGをほとんど使わない”アナログ特撮”を選択。

「大都市が炎に包まれるシーン」では、まず24分の1のミニチュアビルを大量に作り、それらを並べて幅2.4メートル・長さ6メートルの街並みの模型を制作しました。

そして、”ミニチュアの街”を垂直に立て掛け、カメラをその上方1.5メートルに設置したのです。この状態で下から爆発させると、炎は上に昇る性質があるため煙突のような効果が生まれ、街が巨大な火の波に飲み込まれるド迫力シーンが撮れたのですよ。

インデペンデンス・デイ

映画『インデペンデンス・デイ

また、「ホワイトハウスが粉々に吹き飛ぶシーン」は、12分の1の模型を作って撮影したそうで、幅4メートルのホワイトハウスのミニチュアは素材に木を一切使わず、全て石膏で作られました(壊れやすくするため)。

そして模型の内部に爆薬をセットし、いよいよ爆破!実際の撮影はわずか数秒で終わってしまいますが、1秒に300コマという通常の12倍のスピードで撮影しているので、再生すると爆発がスローに見えます。

こういう撮影はやり直しがきかないため、現場はもの凄い緊張感が漂っていたらしい。しかし、無事に一発で狙い通りの画が撮れてスタッフは一安心。監督も「最高のショットが撮れたよ」と満足していたそうです。

インデペンデンス・デイ

映画『インデペンデンス・デイ

一方、ミニチュア特撮ばかりではなくCGを使ったシーンもあって、クライマックスの戦闘は大量のF-18戦闘機と小型宇宙船(アタッカー)が飛び交う複雑な空中戦を描くため、フルCGのF-18を作成しました。

当初はミニチュアで撮影する予定だったものの、150機のF-18と200機以上のアタッカーの動きをミニチュアで再現することは不可能と判断。リアリティを増すために本物のF-18の写真を撮り、テクスチャーとしてCGの機体に貼り付けたそうです。

しかし、その作業量は膨大で、1つのカットを制作するのに5日以上もかかったり、たった6秒のシーンを作るのにデータ容量が52ギガバイトを超えることもあったらしい(大変ですねw)。

インデペンデンス・デイ

映画『インデペンデンス・デイ

こうして、少ない予算の中でも創意工夫と効率的な撮影方法で斬新な映像を次々と生み出した『インデペンデンス・デイ』は世界中で大ヒット。20年後にはCGをバリバリに使った続編が作られましたが、正直なところ1作目に感じた”熱量”みたいなものが感じられず、やや残念でしたねえ。

映画『関ケ原』のセリフはなぜ聞き取りにくいのか?

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映画『関ケ原』

映画『関ケ原』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

本日、テレビ朝日「日曜プライム」で原田眞人監督の超大作時代劇『関ケ原』が地上波初放送されます。

V6の岡田准一石田三成に扮し、徳川家康役所広司)と天下分け目の大決戦を繰り広げる戦国史上最大の歴史スペクタクル!

そんな『関ケ原』を撮った原田眞人監督は、ある”こだわり”を持っていることでも知られています。

それは、「一度カメラを回し始めたら、カットがかかるまで何があっても演技を止めてはならない」ということ。いったいどういう意味でしょう?

例えば、映画のメイキング映像などを見ていると、本番中に役者がセリフを噛んでしまい、「すみません!もう1回お願いします!」と撮り直している場面が映ったりしますよね。

しかし原田監督の現場では、こういうことは許されません。「俺がカットと言ってないのに、どうして勝手に演技を止めるんだ!」と怒号が飛んでくるそうです。

なぜなら、「その演技がOKかどうかは監督である俺が決めることで、役者が判断すべきではない」「例えセリフを噛んだとしても、演技自体が良ければNGにはしない」と考えているからです。

実際、『駆込み女と駆出し男』で主役を演じた大泉洋さんも「物凄い早口で長ゼリフを喋るシーンがあったんですが、原田監督から”絶対に途中で止めるな!”と言われていたので必死でやり続けました」「よく見るとちょっと噛んでるんですけど(笑)、現場ではOKになってそのまま使われてます」と語っていました。

駆込み女と駆出し男

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このように、原田監督の撮影方法は「間違えようが何をしようがとにかく最後まで喋り続けろ」というものなんですが、そのせいでセリフが聞き取りづらくなっちゃてるシーンがあるんですよね。

駆込み女と駆出し男』もそうですが、『関ケ原』が公開された時も「登場人物が何を喋っているのか良く分からない」という苦情が来ていたそうです。確かに『関ケ原』を観ると、時代劇にしては異常にセリフのテンポが早いんですよ。

石田三成を演じた岡田准一さんも「原田組のテンポはとにかく早い。時代劇は情感を大事にすると教わってきたので、原田監督の”セリフにも動きにも間合いはいらない”という考え方は非常に刺激的でした」と驚いたそうです。

ワンカットの中で膨大なセリフを一気にワーッと喋る独特のリズム感は確かに面白いとは思いますが、果たしてこのスピードに観客は付いて来れるのだろうか?と、その辺がちょっと気になりました(^.^)

 

実写映画『空母いぶき』は本当に駄作なのか?(ネタバレあり)

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映画『空母いぶき』

映画『空母いぶき』

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

現在、全国の劇場で公開中の映画『空母いぶき』は、かわぐちかいじ氏の人気漫画を実写化した作品で、公開前から(色んな意味で)話題になっていました。

事の発端は、本作で総理大臣役を演じた佐藤浩市さんの「ある発言」(詳細は省きますが)で、これに対し某有名小説家がツイッターで激怒するなど、かなりの騒ぎになったのです。

実際に映画が公開されると初登場でランキング2位、興行収入は2日で3億3000万円という好成績を記録したものの、評価の方は賛否両論…というか明らかに批判的な意見が多数見受けられました。

では、本当に実写映画『空母いぶき』は駄作なのか?なぜこんなに批判されているのか?などについて、本日は具体的に検証してみたいと思います(なお、僕は原作を全部読んでいます)。

 

※以下、ネタバレしているので未見の方はご注意ください

 

●原作を改変している
まず、本作が”炎上”した直接の要因は「佐藤浩市さんの発言」によるものですが、それ自体は映画の出来・不出来に影響を及ぼすほどではありません(あくまでも”役作り”の範疇なので)。

最大の問題は、やはり「原作を大きく改変している」という点でしょう。これは人気漫画を実写化する際には必ず取り沙汰される問題ですけど、個人的には改変自体が悪いことだとは思わないんですよね。

大ヒットしている人気漫画ともなれば長期に渡って連載している場合が多く、そのままでは長すぎて映画化できないからストーリーを圧縮するために色んな部分を改変せざるを得ない…という事情は理解できますから。

ただ、その際は「どこをどんな風に改変するか?」が大事だと思うんですよ。それぞれの原作によって「変えちゃいけないポイント」みたいなものが絶対にあるはずなので。

そういうことを考えながら実写版『空母いぶき』を観てみたんですけど……原作は自衛隊と中国軍が戦う話なのに、「東亜連邦」という架空の国に変わってました(泣)。う~ん…、「変えなきゃ色々と面倒なことになる」というのは分かるんですが、『空母いぶき』を描く上において、ここは「最も変えちゃダメな部分」じゃないのかなあ?と。

なぜなら、”中国”という軍事的にも経済的にも極めて強大な国家が日本に脅威を与えてくるからこそ、「そのプレッシャーに我々日本人はどう立ち向かうべきか?」という命題が引き立つわけで、人口もGDPも分からないような謎の国(東亜連邦)が攻めて来たところでリアリティに欠けるというか、危機感がダイレクトに伝わって来ないんですよね。

まさしく漫画版の『空母いぶき』が画期的なのは、日本侵略を目論む敵対国として堂々と”中国”を名指ししている点だと思うので、そこは何とか変えないで欲しかった。

かわぐちかいじ先生は敵国を変更した理由について「今、世界の情勢はどんどん変化しているので、もし日本と中国が仲のいい時に映画が公開されたら困ると思った」などと釈明していますが、そんな心配は不要じゃないですかね?


●実写版オリジナルキャラはどうなのか?
それから、「原作にいないオリジナルのキャラが出て来る」っていうのも”実写化あるある”でして、本作でも本田翼や小倉久寛斉藤由貴など、オリキャラがたくさん登場していました。

ただ、これに関しては悪くなかったですよ。特に本田翼さん演じる女性記者(本多裕子)は、たまたま自衛隊を取材するために乗った空母いぶきで初めて他国との戦闘を体験し、その衝撃を「ネットを通じて発信することで世界に影響を与える」という重要な役柄を演じていたり。

しかも原作では、新聞社の男性記者が沖縄まで出向き、最前線の写真を撮って公表することで世間に影響を与える…という展開だったのに対し、制作側が「男ばかりで画面に華が無い」と判断したのか、映画版では美人な本田翼さんになっていて良かったです(笑)。

映画『空母いぶき』

映画『空母いぶき』

その反面、中井貴一さん演じるコンビニ店の店長は物語への関連度が薄いせいでほぼサブエピソードのように見えてしまい、上手く機能しているとは思えませんでした(観客からも「あのシーン、いらねえだろ!」と批判が殺到した模様)。

まあ、激しい戦闘の直後にゆる~いコンビニ店の様子をぶっ込まれたらギャップに戸惑うのも無理ないと思いますが、あのシーンは「このような平和な暮らしの裏ではギリギリの攻防が繰り広げられていた」ということを現す場面なので、必要っちゃ必要なんですよね。

さらに、有事が報道されると大勢の人が一斉にコンビニに押し寄せ、商品を買い漁って店の棚が空っぽになる…という描写を入れることで、「現実に戦争が起こればこうなるかもよ」と示唆しているわけです(原作にも同様のシーンがある)。

なので少しでも関連を持たせるために、例えば「いぶき」に乗船している自衛官の一人が実は店長の身内だったとか、ベタでもいいからそういう設定で相互にドラマを繋げればもうちょっと観客の共感を得られたのではないか?と思うんですけどねえ。


●「おかしい」と言われてるシーンが実は原作通りだった
あとは、護衛艦いそかぜ」の艦長:浮船武彦(山内圭哉)が主砲を撃つたびに「いてまえー!」と関西弁で絶叫するシーンを観た人から「あんな自衛官がいるわけないだろ!」と普通に突っ込まれていましたが、あのキャラは原作にいるんですよ(笑)。

かわぐちかいじ著『空母いぶき』より

かわぐちかいじ著『空母いぶき』より

もちろん、漫画版ではもっと年配で落ち着いた艦長なんですけど、シチュエーションはだいたい合ってます(映画版でなぜあそこまで”お笑いキャラ”になってしまったのかは分かりませんが)。

そして、この艦長が敵の撃ってきた主砲をかわすために「バックや!」と叫ぶシーンも、「いくらスクリューを逆回転させたところで、あんな大きな船が急にバックできるはずがない!」と批判されていましたが、残念ながらこれも原作通りです(笑)。

かわぐちかいじ著『空母いぶき』より

かわぐちかいじ著『空母いぶき』より

いや、「飛んできた砲弾をバックでかわす」なんてことが現実に可能かどうかは分かりませんけど、少なくとも原作ではそうなってるんだから、文句がある人は映画ではなく、かわぐちかいじ先生の方へお願いします(^^;)

さらに、潜水艦「はやしお」の艦長:滝隆信(高嶋政宏)の判断で、敵の潜水艦に「はやしお」をぶつける場面については「潜水艦同士を体当たりさせるなんてそんなバカなwww」などと嘲笑されていましたが、これも原作を再現しているだけなので悪しからずご了承ください(ちなみに漫画版で体当たりしているのは別の潜水艦です)。


●脚本がまさかの…!
今回、実写版『空母いぶき』を観て一番ビックリしたのは、脚本が伊藤和典さんだったこと伊藤和典と言えば、 押井守監督と組んで『うる星やつら』シリーズや劇場版『機動警察パトレイバー』や『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』など、数々の名作アニメを手掛けたベテラン脚本家です。

特に『機動警察パトレイバー2 the Movie』は、「現職の自衛隊員がクーデターを企てる」というロボットアニメとは思えないほどハードなポリティカル・フィクションを臨場感たっぷりに描き出し、多くのアニメマニアから絶賛されました。

 

さらに実写映画では、「平成ガメラ」シリーズで全国の特撮ファンを熱狂させまくったことで知られており、中でも『ガメラ2 レギオン襲来』における自衛隊描写のリアリティたるや、いまだに語り草になるほどの素晴らしさ!

自衛隊の全面協力を得て撮影された迫力満点の戦闘シーンに至っては「本作が無ければ『シン・ゴジラ』も生まれなかっただろう」と言われるぐらいのカッコよさで、まさに「怪獣映画の歴史を塗り替えた」と評しても全く過言ではありません。

 

そんな伊藤さんが脚本を書いているとなれば、さぞかし凄いストーリーなんだろう…と思うじゃないですか?でも僕は映画を観終わって「え?伊藤さんが書いてたの?」と驚きましたからね。悪い意味で(^^;)

いや、正確に言うと今回は共同脚本なんですよ、伊藤和典さんと長谷川康夫さんの。長谷川康夫と言えば、織田裕二主演の『ホワイトアウト』を筆頭に、『ソウル(SEOUL)』、『亡国のイージス』、『ミッドナイト イーグル』など、邦画では珍しい”派手なアクション大作”を多く手がけている印象で、良く言うと「スケールが大きくて大胆」、悪く言うと「話が雑」みたいなイメージでしょうか(笑)。

 

まあ、世間ではあまり評判の良くない『ホワイトアウト』や『亡国のイージス』も僕は割と好きなんですよ。だから、「なるほど、自衛隊描写に定評のある伊藤和典と、派手な画を好む長谷川康夫が共同で脚本を書いたらこういう映画になるのか」という、ある種の”納得感”みたいなものはありました。しかし、「『ホワイトアウト』なんてつまらん!」と思っている人が観たら、当然厳しい評価になるでしょうね(^^;)

というわけで、実写映画版『空母いぶき』を検証した結果、”駄作”と呼ぶほど酷い出来とは思わなかったんですが、色々気になる点があったことも否定できません。

個人的には「中国軍と自衛隊が戦うという設定を変えたこと」と、もう一つはラストで各国の潜水艦が登場するシーンが気になりました。無難な決着の付け方で、悪くはないんだけれど今いちカタルシスに欠けるというか、モヤッとする終わり方なんですよね。原作がまだ完結していないので、独自のラストを考えなきゃいけない難しさはあったと思うんですが…。

ただ、過去から現在に至るまで自衛隊が(架空とはいえ)他の国の軍とガチで戦う映画」はほとんど存在しないので、そういう意味では価値があるんじゃないかと思いました。ツッコミどころは多いですけど(笑)。

 

なぜ新海誠監督作『君の名は。』は「気持ち悪い」と言われてしまうのか?

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新海誠監督作『君の名は。』

新海誠監督作『君の名は。

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、テレビで新海誠監督の大ヒット劇場アニメ『君の名は。』が放送され、平均視聴率12・4%(関東地区)という高い数字を記録しました。

2016年に公開された当時は250億円という驚異的な興行成績を叩き出し、日本中で話題になった本作ですが、3年経った現在でもその人気は衰えていないようです。

 

だがしかし…

 

テレビで『君の名は。』が放送された直後から、SNS上で「『君の名は。』を観たけど気持ち悪い」という感想が多数投稿されていたらしいのですよ。いったいどうして…(T_T)

これらの意見を見てみると、主に「口噛み酒」や「胸を揉むシーン」や「胸が揺れるシーン」などが”気持ち悪いと感じた理由”として挙げられているようですね。

まあ確かに、普通の感覚で考えれば女子高生が自分のオッパイを何度も揉んだり、口の中に入れたものをグチュグチュ噛んで吐き出して酒を造る…なんて描写は「気持ち悪い」と言われても仕方ないかもしれません。

ただ(別に擁護するわけではありませんが)、もともと新海誠監督は、例えば『ほしのこえ』にしても「制服を着た女子高生が巨大ロボットに乗って宇宙人と戦う」など、特定の層にしか受けないような”極めて趣味性の強いアニメ”を作っていたのです。

そのことは本人も自覚しているようで、「もともと僕の作品は、ファンの方が見てくれて、見るはずのない人たちは見ないタイプの映画でした」と最近のインタビューでも語っているのですよ。

つまり新海監督にしてみれば、「今までは自分の好きなようにアニメを作って、自分と同じ嗜好を持つファンたちが喜んで観てくれていたのに、大ヒットしたせいで一般の人までが観るようになり、一般の感覚で批判してくるのがウザい」みたいな心境なのでは…(あくまでも僕の推測ですけどw)。

しかし、もし「気持ち悪い」と言っている人たちの意見を真摯に受け止め、今後はそういうシーンを一切入れず、品行方正なアニメを作ります!みたいなことになったらどうでしょうか?

「マイナーからメジャーになる」ということは、そういう世間の反応も意識し、自分の作風を変えていかなければならないのかもしれませんが、「果たしてそれでいいのか?」という気もするんですよねえ。

なお、昔ながらの新海誠ファンからは以下のような意見も出ているようです。

というわけで、間もなく最新作『天気の子』が公開される予定の新海誠監督ですが、個人的にはメジャーになっても今まで通りの”新海ワールド”を見せて欲しいと思っています(^.^)

 

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『未来のミライ』は細田守監督の息子が見た夢だった?(ネタバレ解説)

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映画『未来のミライ』

映画『未来のミライ

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、「金曜ロードSHOW!」で細田守監督の劇場アニメ未来のミライが地上波初放送されました。

昨年の夏に公開されたばかりの最新作なんですが、実はこの映画、公開時に評価が賛否両論真っ二つに分かれ、かなり批判的な意見も多かったんですよね。

なので「今回のテレビ放送でもそういう反応が出るんだろうな…」と思っていたら案の定、SNS上で「これはひどい」「なんてつまらない映画なんだ!」などと批判が殺到していたようです。

その主な理由としては(「くんちゃん役を演じた上白石萌歌の声が全然合ってない」などもありましたが)、やはり「内容が意味不明」「どこが面白いのか全く分からない」という感想が多数を占めていた模様。

大まかなあらすじを書くと、「4歳のくんちゃんに妹(ミライちゃん)ができたことで、お父さんやお母さんが妹ばかりを気にするようになり、不機嫌になったくんちゃんが庭に出ると未来からやって来た妹と出会い、次々と不思議な体験を繰り返していく」というお話です。

これだけ聞くと面白そうな感じもするんですが、実際に観てみると何故かイマイチなんですよねえ…。

映画『未来のミライ』

映画『未来のミライ

まず最初に、くんちゃんの家で飼われている犬の”ゆっこ”が擬人化して、「自分は両親から可愛がられていたのに、お前が生まれてから大事にされなくなった」などとくんちゃんに愚痴をこぼします。

そして、いきなりくんちゃんがゆっこのシッポを奪って自分の尻にズボッ!と挿入。すると何故かくんちゃんが犬に変身して庭を走り回り、最後はゆっこのドッグフードが少しグレードアップしてなんとなく終了。

その後は、ミライちゃんの依頼で雛人形を片付けたり、ひいおじいちゃんに会ってバイクに乗せてもらい、苦手だった自転車に乗れるようになるなど、「ミッション・クリアー型の小さなイベント」を一つずつ消化することでストーリーが進んでいく…みたいな構成になってるんですよ。

しかしながら、それぞれのエピソードが割と短い上に、派手なアクションシーンがあるわけでもないため、全体的にスケール感の小ささは否めません。中でも個人的に気になったのは「現実と非現実の境界線が曖昧なこと」なんですよね。

映画『未来のミライ』

映画『未来のミライ

例えば時をかける少女の場合、物語の舞台は現実世界がベースになっていて、主人公が”タイムリープ能力”を使うことで非現実の状況が出現する、というスタイル。

サマーウォーズの場合も完全に現実世界が舞台ですが、インターネット上の仮想世界「OZ」を通じて非現実的な空間を表現していました。

おおかみこどもの雨と雪も現実世界が舞台ではあるものの、”狼と人間の間に生まれた子供”という非現実的なキャラクターを劇中に投入することで全体的にはファンタジー作品となっています。

そして『バケモノの子』は、主人公が「人間界(渋谷)」と「バケモノ界(渋天街)」を行ったり来たりすることで、「現実と非現実の境界線」を明確に見せていました。

それらに対して、『未来のミライ』はどうなのか?というと…

未来の世界からやって来た中学生のミライちゃんは、一見すると『時をかける少女』と同じく”タイムリープ能力”を使って現れたように見えますが、そもそもミライちゃんにそんな能力があったのでしょうか?

もしミライちゃんが超能力者だとすれば、犬のゆっこはどうなのでしょう?人間に変身できる特別な能力を持った犬だった?それとも、元々人間だったのが魔法みたいなものをかけられて犬の姿になってたの?

「いやいや、その辺はファンタジーなんだから深く考えなくてもいいんだよ」「もしかすると全部くんちゃんの妄想(空想)かもしれないし」という意見もあるようですが、ミライちゃんやゆっこの行動が現実世界にしっかり干渉している点を考えても、単なるイマジナリーフレンド(空想の友人)とは思えないし、いくらファンタジーだからと言っても「なんでもアリ」が許されるわけじゃないでしょう。

ハリー・ポッター』のようにファンタジー世界がベースの映画だって「なぜそうなるのか?」という理由は示されているし、その世界の中の「ルール」みたいなものがちゃんと存在しているわけですから。そういう意味では、『未来のミライ』って「あまりにもルールが不明確」なんですよねえ。

つまり、細田守監督の過去作品では不思議なことが起きても一応何らかの説明が成されていたのに、今回は「まあファンタジーだから別にいいじゃん」とスルーしているように見えてしまうんですよ。その辺が「よく分からん!」と批判された要因なんじゃないでしょうか?

映画『未来のミライ』

映画『未来のミライ

ちなみに細田監督はインタビューで、『未来のミライ』を作ることになった”きっかけ”を以下のように語っていました。

本作を作るきっかけの一つは、2人目の子供(長女)が生まれたこと。妹が出来たことで4歳の長男の行動が明らかに変化しました。それまでは両親にすごく愛されていたのに、いきなり妹に愛を奪われて(笑)、床を転げ回って泣き叫んでるんです。そのリアクションが非常に面白かったので、これを映画にしたいなと。

そしてもう一つのきっかけは、4歳の息子が見た夢の話。僕は毎朝起きると「今日はどんな夢を見た?」と聞くようにしてるんですが、ある日「大きな赤ちゃんに会った」って言うんですよ。「体の大きな赤ちゃん?」って聞いたら「違う。妹が大きく成長して、お姉さんみたいになって僕に会いに来た」って。

それを聞いて「えええ!?お父さんも会いたいよ!」って(笑)。夢の中で赤ちゃんはどんな女性になっていたんだろう、兄妹でどんな話をしたんだろう…などと考えていくうちに、着想したのが『未来のミライ』という物語だったんです。

 

※「ダ・ヴィンチ」2018年8月号より

 この発言を見る限り、「細田守監督のプライベートをほぼそのまんまアニメ化した」としか思えないんですけど(笑)、まあ『サマーウォーズ』にしても『おおかみこどもの雨と雪』にしても、基本的に細田監督作品は自身の実体験が元ネタになっていることは割と有名なので、その辺は別にいいでしょう。

ただ、もし本当に「自分の4歳の息子が見た夢」を元ネタにしているなら、この映画全体が「くんちゃんの見た夢」ということになり、「子供の見た夢なら何でもアリだからしょうがないよね」的な結論になってしまうのです。それってどうなのかなあ…。

ちなみに、『未来のミライ』を通じて細田守監督が今回伝えたかったことは、大きく分けて以下の2つだそうです。

1:子供と親を巡る物語は自己相似的に何世代にもわたって繰り返されており、”家族”というものは過去から連なるそれらの些細な偶然の積み重ね(奇跡)によって成り立っているのだ。

 

2:子供は、妹が生まれたら自動的に兄になるのではなく、自分自身で”兄”という役割を自覚した時に初めてアイデンティティーが確立し、”兄になる”のだ。

 非常にいいメッセージであり、映画自体も良く出来てるんですが……だとしてもやはり話が面白くない(苦笑)。いや、恐らく細田監督の表現力がハイブロウすぎて我々が付いていけてないだけなんでしょう。なので、次回作はもう少し”ゆる~い感じ”でお願いします(^^;)

庵野秀明監督の『シン・ウルトラマン』は実現するのか? → 実現した!

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庵野秀明監督とウルトラマン

庵野秀明監督とウルトラマン

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先日、「庵野秀明監督が『シン・ゴジラ』に続いて『シン・ウルトラマン』を制作するらしい」という記事がネットに流れてファンがザワつきました。

庵野さんと言えば、大学生の頃に「自分自身がウルトラマンに扮して怪獣と戦うウルトラマン映画」を自主制作で作ってしまうほどのウルトラマン好きとして知られ、『シン・ゴジラ』が大ヒットしている時から(期待も込めて)「次は『シン・ウルトラマン』だ!」などと言われていたそうです。

なので、全くあり得ない話ではないんでしょうけど、ただ「どこまでこの記事に信憑性があるのか?」という点ではいささか懐疑的だったんですよね(多くの人も「単なる飛ばし記事」として見ているようだし)。

 

ところが…

 

あることをきっかけに「あれ?コレってもしかしてマジなのでは…」と思うようになったんですよ。

そのきっかけとは、氷川竜介さんがこの『シン・ウルトラマン』の記事をリツイートしたこと。そして、「間違えました」と慌てて削除したことです。

氷川竜介さんと言えば、アニメや特撮作品などの研究家であり、当然ながらゴジラウルトラマン関連の情報に詳しく、さらに庵野監督との親交も長きに渡り、過去には対談や『ジ・アート・オブ シン・ゴジラ』のロングインタビューなども担当しているのです。

そんな氷川さんが、一般人みたいに「うっかりして」真偽不明の怪しい記事をリツイートしたりするでしょうか?氷川さんならすぐ関係者に確認を取れる立場にあるわけだし、そもそも庵野さんに直接聞けば済む話でしょう?なんか不自然なんですよねえ。

 

で、ここからは僕の推測になりますが…

 

もしかして氷川さんは『シン・ウルトラマン』の企画が水面下で密かに進行しているという情報を以前から知ってたんじゃないか?と。

知っていたからこそ、この記事を目にした瞬間、「あの企画がついに決まったのか!」と勘違いして(関係者に確認も取らずに)うっかりリツイートしてしまったのではないかと。

そして、直後に「あっ、マズい!まだ公式に発表されてなかった!」と気付いて慌ててツイ消しし、「うっかりしてました」と取り繕ったのではないか…と。コレ可能性としては結構あり得ると思います。

なぜなら氷川さんは、『シン・ゴジラ』の時も情報が解禁されるずっと前から神山健治さんが書いた「初期プロット版の脚本」を渡され、それを読んで庵野さんに様々な意見を出していたからです。なので今回も『シン・ウルトラマン』の検討用シナリオぐらいは読んでるんじゃないのかな?と。

これに対して「だとしても、極秘で進めている映画の企画内容が、そう簡単に流出したりしないだろ」と思う人がいるかもしれません。しかし、意外とこういうのって珍しくないんですよね。

例えば、数年前に週刊文春が「大人気コミック『ジョジョの奇妙な冒険』がついに実写化決定!」という記事をスッパ抜いたら、映画会社も集英社も「知りません」と否定したのに、その後「実写化決定!」と公式発表されました。

つまり、正式に決定するまでは公にできないけれど、水面下では常に多くの企画が動いていて、そういう「関係者だけが知っている情報」がうっかり外部に漏れてしまう…というパターンは実際にあるんですよ。

もし今回の件がそうだとすれば、少なくとも庵野秀明監督が『シン・ウルトラマン』を撮るという企画」自体は、何らかの形で検討されているのかもしれません。

ただ、「じゃあこの企画は実現するのか?しないのか?」っていうと現時点ではまだ分からないし、実現しなかった場合は「やはりあの記事はガセネタだったんだな」などと言われてしまうんでしょうねえ(^^;)

 

※追記
円谷プロと(株)カラーから「『シン・ウルトラマン』の制作決定」「2021年に公開予定」と正式にアナウンスされました。やっぱ氷川さん知ってたんだね(あのリツイートは”フライング”だったわけかw)。

 

シン・ゴジラ

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片渕須直監督が『この世界の片隅に』で挑戦した作画表現について

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この世界の片隅に

映画『この世界の片隅に

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

昨日、NHKで劇場アニメこの世界の片隅にが地上波初放送されました。2016年に公開された本作は、小規模上映ながらも口コミで評判が広まり、全国で異例のロングランヒットを記録。

『第40回日本アカデミー賞』で最優秀アニメーション作品賞、『第41回アヌシー国際アニメーション映画祭』では長編部門審査員賞を受賞するなど、国内外で非常に高い評価を獲得したのです。

女優の能年玲奈が “のん” に改名して初めてアニメの声優を演じたことや、製作費が足りずに監督の片渕須直さんが自腹で準備を進め、クラウドファンディングで3900万円を集めたことでも話題になった本作ですが、とにかく内容が素晴らしい!

第二次世界大戦中の広島・呉を舞台に、主人公のすずさんとその周辺の人々の日常生活を丁寧に描いた点や、片渕須直監督が徹底的に当時の状況を調べ上げ、それらを忠実に再現した風景なども高評価されました。

この世界の片隅に

映画『この世界の片隅に

そんな『この世界の片隅に』ですが、意外と「作画」については語られることが少ないんですよね。理由は恐らく、見た目が”地味”だからでしょう。

例えば、京都アニメーションの『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』や『響け!ユーフォニアム』のキャラクター、あるいは新海誠監督の『君の名は。』や『天気の子』などの美しい背景など、近年のアニメファンは「ディテールが緻密で綺麗な作画」を好む傾向にあります。

それに対して『この世界の片隅に』は、素朴でマンガチックなキャラクター(原作通り)や、比較的あっさり描かれた背景など、”作画好き”が食いつきそうな要素はあまり見当たりません。

美術監督の林孝輔さんによると、「本作の背景は淡くふんわりと、やさしい雰囲気になるよう心掛けました。肩の力を抜いて、あまり描き込まないように意識して。情報量が多すぎると画面がうるさくなってしまうんですよ。だから背景を描く時は、それっぽく見えるディテールだけを活かすなど、情報量は引き算しつつ、ちゃんと調べて描いてあることが伝わるような方向でまとめました」とのこと。

つまり、原作の世界観を再現するために意図的に画面の情報量をコントロールしていたらしいのですが、では「『この世界の片隅に』の作画は大したことがないのか?」っていうと、決してそんなことはありません。

むしろ、一見しただけでは分からないような部分に”作画的な凄さ”が盛り込まれているのですよ。その一つが「ショートレンジの仮現運動」です。

「ショートレンジの仮現運動」とはいったい何か?

その前に、アニメーションがどんな風に作られているか簡単に説明すると、まずアニメーターが動きのキーポイントになる絵を描きます(これを”原画”と呼ぶ)。

次に原画と原画の間に動きを補完する絵を描きます(これを”動画”または”中割り”と呼ぶ)。原画だけでも一応は動いて見えますが、動画を入れることでよりスムーズな動きになるため、基本的にアニメは「原画」と「動画」で構成されています。

「原画」と「動画」

「原画」と「動画」

そこで、片渕須直監督は考えました。「原画と原画の間に動画を入れれば動きがなめらかになる」「じゃあ、動画の枚数を増やせばもっと自然な動きになるのではないか?」と(以下、片淵監督の発言から引用)。

ここ何年か映像学会やアニメーション学会で「アニメーションはなぜ動いて見えるのか?」をテーマに、色んなディスカッションを重ねてきました。その結果わかってきたのは、「ショートレンジの仮現運動」と「ロングレンジの仮現運動」があるということ。

普通の日本のアニメは、中抜き(原画と原画の間に中間ポーズを描いた”中割り”を入れないこと)でパパッと動かすカッコよさがあるんですけど、それはロングレンジの仮現運動なんです。

それに対して、動き幅をもっと小さくしたショートレンジの仮現運動にすると、ロングレンジの時とは”脳の違う部位”が反応するのか、本当に動いているように見えるんですよ。

たとえば蛍光灯って100Hzから120Hzでチラついていますが、人間の目には動きがコマ送りのようには見えず、ちゃんと一連の動きとして見えますよね。それと同じことが、動き幅を小さく(ショートレンジに)していくと起きるのではないかと。

ショートレンジの仮現運動は、『マイマイ新子と千年の魔法』の時に一部で試して、PV『花は咲く』や『これから先、何度あなたと。』でも挑戦してみた手法です。本当に動いているように見えれば、すずさんたちキャラクターの存在感はとても大きなものになるし、そこからすずさんたちの生活感も生まれてくるだろうと。

なので今回は、今までだったら中なしで動かすようなところでも、執拗に中割りを入れるようにしました。その結果、カット袋の厚さとかがちょっと半端じゃなくなりました(笑)。家族全員で食事をしているカットなんて、1カットの動画枚数がすぐ300枚ぐらいになっちゃいました。


「『この世界の片隅に』公式ガイドブック」より

 「仮現運動」について補足すると、踏切の警報器のように、わずかの時差で明滅する二つの光がある時、人間は目の錯覚で光が左右に動いているように感じる場合があり、これを仮現運動といいます。

アニメのキャラが動いて見えるのは、こうした錯覚を利用しているからなのですが(実際は止まった絵を連続で表示しているだけ)、片淵監督は「絵と絵の間のレンジを詰めていけば、本当に動いて見えるに違いない」と考えたのです。

実際、『この世界の片隅に』を観てみると、多くのキャラクターが実在感を持って動いていることがわかるでしょう。片淵監督はこの”ゆったりとした動き”を通じて、すずさんたちに実在感を与えようとしていたんですね。

そしてもう一つ、監督がこだわった点が自然主義的な動作」です。

通常、アニメで日常の動きを描く場合、効率よく作画するために、ある程度「簡略化(記号化)された動き」になりがちなんですが、この映画ではそういう日常動作を省くことなく丁寧に描写してるんですよ。

例えば、家族で食事するシーンをよく見ると、「お父さんが右手で箸を掴み、お茶碗を持っている方の手で一旦箸を支えてから指で使いやすい位置に持ち替える」という細かい仕草を作画で全て再現しているのです。

実際にやってみると分かりますが、確かにこうしないと箸が正しく使えないんですよね。ただ、普通のアニメでここまで細かく描くことはまずありません。アニメーターに負担がかかるし、そもそも「無くても成立するから」です。

しかし、片淵監督は敢えて日常動作を丁寧に描くことを決断。また、「作画監督松原秀典さんが、もともと自然主義的な発想の人だったので…」と言っているように、周りのアニメーターの理解があったからこそ、ここまで緻密な作画を実現できたのでしょう。

というわけで、『この世界の片隅に』は一見すると「ほのぼのとしたマンガチックな絵」に見えますが、その裏では「ショートレンジの仮現運動」や「自然主義的な動作」など、キャラキターに実在感を与えるための様々な工夫が盛り込まれていたのです。

なので本作を観る際は、ぜひこういう部分にも注目しながらご覧ください(^.^)

 

この世界の片隅に

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『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』は『エヴァンゲリオン』だった?※ネタバレあり

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『ドラゴンクエスト ユア・ストーリー』と『エヴァンゲリオン』

ドラゴンクエストユア・ストーリー』と『エヴァ

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて現在、劇場で公開中の3DCG映画ドラゴンクエストユア・ストーリー』が(色んな意味で)話題になっているようです。

ドラゴンクエスト』と言えば、いまさら説明の必要もないほどの超有名ゲームで、1986年に第1作目がファミコンで発売されて以来、大人から子供まで絶大な人気を獲得してきました。

そんな国民的RPGドラクエが「初の映画化」となれば、ファンの期待も大いに膨らんでいたことでしょう。だがしかし!

観た人の評価は賛否両論…というより、今のところは圧倒的に「否」の意見が多数を占めている模様。その理由は、本作のクライマックスに仕掛けられた”どんでん返し”です。

詳細は省きますが、映画終盤に突然「ゲームの『ドラゴンクエスト5天空の花嫁』をベースにした物語だと思っていたら、実はゲームそのものだった」という衝撃の真相が明かされビックリ仰天!

さらにラスボスが「この世界は現実じゃない。単なるゲームなんだよ」「こんなものに夢中になってないで、早く大人になれ!」みたいなことを訴えてくるわけです。まさに観る者の意表を突きまくる超展開ですが、これを目の当たりにした多くのドラクエファンが「ふざけんな!」と激怒しているらしいのですよ。

で、映画の構造的に『LEGOムービー』との類似性を指摘する人や、あるいは『レディ・プレイヤー1』のラスト(主人公が「ゲームばかりしてないで現実世界に目を向けろよ」と語りかける)に似ている等の意見が上がっているようですが、そんな中、「これって『新世紀エヴァンゲリオン』じゃね?」という声もチラホラと…。

知っている人も多いと思いますが、『新世紀エヴァンゲリオン』は「ついに数々の謎が解明されるのか!」というファンの期待を最終回でぶち壊し、さらに劇場版でも「お前らアニメばっかり見てないで現実を見ろ!」と言わんばかりに客席の映像を映すなど、アニメ史に残るような超絶展開が話題となりました。

そういうメタ構造は、確かに『ドラゴンクエストユア・ストーリー』と似ているかもしれません。しかし、そもそも庵野秀明監督はどういう意図であのオチを提示したのでしょうか?

というわけで当時の心境を知るために、『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』(夏エヴァ)の公開後に行われた対談から、庵野監督の発言を引用してみます。

庵野 やっぱり『夏エヴァ』の作業は苦痛でしたね。あれは、自分が終わるためのものだったし、あとは付き合ってくれたスタッフがいい顔してくれればそれでいいという。この2点だけですから、お客が存在しないんですね。だから、公開後の騒ぎとかも僕にとっては何の興味もないんです。

ー それは、第三者が見ても見なくても良かったと?

庵野 良かった。興行的には大丈夫だったし、そういうことは僕にはもう一切関係なかった。

ー つまり、終わらせるというだけで完成ではなかったということ?

庵野 いや、終わることが完成でもあるんですよ。終われば良かったんです。あとは、テレビのリテイク作業は要するに後片付け。皿を片付けて棚に戻すだけですね。メインディッシュはすでに出しちゃったから、それを食うも食わないも僕にとっては関係ないんですよ。お客の前に皿を出すというのは、出した皿に関しては持てるものを全て出し切っているから、それでいいんです。

ー 客がそこで「マズイ!」と言ってガッシャ~ンとテーブルひっくり返して帰っても構わなかったと?

庵野 構わなかった。「マズい!」と貶されても「うまい!これは最高だ!」と褒められても、僕の心はもう動かない。まあ、褒められれば付き合ってくれた人たちに対しては嬉しいですけどね。それはいいことだと思います。スタッフに対する評価だから。自分自身の評価よりも、そっちの方が重要なんです。

ー 自分自身への評価は、庵野さんの上をスルスルと通り抜けていく?

庵野 僕にとって唯一の客はスタッフだったんですね。だから、スタッフがいい思いをしてくれたら、それで良かった。そこから先は存在しないんです。すごいクローズですよね。

ー 庵野さんのそういう発言に対して「プロじゃない」と言う人もいるのでは?

庵野 言わせとけばいいんですよ。その程度でしか物事を計れない人たちなんだから。

ー でも、そういう発言を聞いて「怒るか・怒らないか」を決めるラインっていうのは、わざと俺たちにひどい飯を食わそうとしているのか否か?ということだと思うんですが。

庵野 ひどい飯を出した覚えはないです。人に出す以上は、毒を混ぜるようなことはしません。出すときには、今できる中で最高級のものを、もし卵と冷や飯しかなかったら、それでできる卵チャーハンの一番いいやつを出す。その時に、それまでずっと甘いデザートばっかり食ってた人には、ちょっと塩を強くしたものを出すとか。それぐらいです。

ー TV版の『エヴァ』の最終回を見て思ったのは、「毒を混ぜられたか」ということだったんですが。

庵野 あれは、毒というよりも「そういうのを食った方がいい」ということです。

ー それは、自分も含めて?

庵野 自分も含めて。あとは、どんな皿を出しても怒るんだったら、可能な限り怒らせた方がいい。それはあるんですよ。中途半端が一番良くない。あと、同情を買いたくなかったっていうのも結構でかい。あそこで同情を買うのが一番ラクなんですよ。でも、それだけは嫌だった。同情されるぐらいなら、怒られる方がいい。それも徹底した方がいい。だから、一番客が怒るのをやる。その方が、食った方もスッキリするんです。一口食って「マズい!」って言った方が、お客としては嬉しいわけでしょう。こんなマズい飯を食わされたって、人に話題を提供できるじゃないですか。

ー そこには情動があるから。

庵野 それはコントロールだと思うんですよ。そこも含めてのものだと僕は思う。客にものを出す以上は、そこまで計算しないと。少なくとも予測は必要。あとは、確率と”客筋”みたいなものを見極めること。TV版『エヴァ』の時の客筋というのは、あれぐらいでちょうどだと。それでも足りない部分というのは、さらにその後、塩をまいて帰す。それぐらいやらないと、僕の気も済まなかったし、客の気も済まないだろうと。

そういう意味では、常に無意識にそっちのほうへ行っちゃうんですよね。猛毒を混ぜているつもりはないです。少なくとも致死量には達していない。これ以上混ぜたらマズいというのを、ギリギリ自分の中で持っていると思うんですけど。

つまらなかったのは(そういうコントロールを)超える人があまりいなかったこと。でも、予測の範疇外という人はいたし、そういうことに対してわかってくれた人も少しいてくれました。そういう人がいてくれただけで嬉しかったですね。

ー 『夏エヴァ』に関しても?

庵野 いや、『夏エヴァ』にはそういうのすらない。それは、お客さんが「おいしいです」ってイイ顔してくれた方が、もちろん嬉しいですよ。嬉しいけど、根本はもっと関係のないところまで行っちゃってるんで。わかんないだろうなあ、こういう感覚って、他の人には。やっぱり難しい。わかんないと思いますよ。

先日お会いした藤井フミヤさんも、「自分が出したアルバムは、出した後はもう聞かない」って言ってました。そういう感覚だと思うんです。アルバムを出すまでは、本当にガーッとやるだろうけど、出した後というのは、それを聞いてくれるも聞いてくれないも…。少なくとも自分ではもう聞き返さないし。それに近いです。ただ、当たった方が次が作りやすくなる。だから、当たらないよりは当たった方がいい。あとは、元は取らなければいけない。それは、お金を出してくれた人に対する最低限の礼だと思う。『エヴァ』に関しては、もう十二分に元を取っているから、もういいです。

月刊アニメージュ 1998年2月号」のインタビューより

 この庵野さんの発言を読む限り、TV版の最終回は「観ている人を徹底的に怒らせる」という意図があり、そして劇場版の『夏エヴァ』に関しては「終わらせるためにやっただけ」「客の反応には一切興味がない」という、まあ改めて「この人、ヤベえな」としか思えないんですけど(笑)。

じゃあ『ドラゴンクエストユア・ストーリー』はどうなのか?っていうと、全く違うと思うんですよ。

少なくとも山崎貴監督の方は「観客を怒らせる意図」なんて無かったはずだし、「観客の反応に興味はない」などと考えてもいなかったでしょう。むしろ問題は、「そういう意図がないのに多くの観客を怒らせてしまった」という点にあるのではないかと。

山崎監督はあのオチを映画の中で肯定的に描いています。つまり、「これを観たドラクエファンはきっと喜んでくれるに違いない」「感動してくれるに違いない」と信じてるんですよね。でも、現実は全然違った。その”感覚のズレ方”が問題なんじゃないかと。

例えば、「この映画を公開したらファンからもの凄い批判が来るかもしれない」「しかし、それでもやるんだ!」という”クリエイターとしての覚悟”や”信念”を持ってやったのならまだわかるんですが、そうじゃないってところに、庵野監督とはまた違う意味での「ヤバさ」を感じてしまいました(^^;)

 

『崖の上のポニョ』 「リサの車はマニュアルなのか?」問題を検証してみた

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崖の上のポニョ

映画『崖の上のポニョ』より

どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

先週、金曜ロードSHOW!宮崎駿監督の崖の上のポニョが放送されました。2010年の初放送時に29・8%という高視聴率をマークした本作ですが、5回目となる今回も安定した数字(12・5%)を記録した模様。

そんな『崖の上のポニョ』の放送中、SNSでは主人公の母親:リサが運転する車に注目が集まっていたようです。どうやら嵐の中を爆走するリサの軽自動車(通称リサカー)が「マニュアル仕様」ということに気付いた人たちが、「走り屋みたいだ!」「リサかっけー!」などと盛り上がっていたらしい。

崖の上のポニョ

崖の上のポニョ』を観た人のコメント

確かに、リサが車を発進させる場面は、左足でクラッチを切り、右足でアクセルを踏み込んで勢いよくダッシュしているように見えます。なので僕も以前から「リサの車はマニュアル車なんだろう」と思っていました。

ところが…

その後のシーンを注意して見ていると、シフトレバーがチラッと映るんですけど、一番上に「P」という文字が…。あれ?これってオートマじゃないの???

崖の上のポニョ

映画『崖の上のポニョ』より

気になった僕は(この映像だけではハッキリ分からないので)、宮崎駿監督が描いた『崖の上のポニョ』の絵コンテを確認してみました。すると…

「ブレーキペダルを踏ん張っていたリサの足、パッとはずしてサイドブレーキペダルを踏み込み、同時にアクセル踏み込む」と書いてるんですよ。

崖の上のポニョ

崖の上のポニョ』の絵コンテより

サイドブレーキペダルとは、手で引く「サイドブレーキ」ではなく、足で操作するタイプの、いわゆる「パーキングブレーキ」のことだと思われます。

つまり宮崎監督の指示では、リサの車のペダルは右から「アクセル」、「ブレーキ」、「サイド(パーキング)ブレーキ」となっていて、「クラッチ」がどこにも無いんですよ。

 

やっぱオートマ車じゃん!

 

要するにあのシーンは、クラッチを切ってたんじゃなくてパーキングブレーキを解除しながら車を発進させている状態」だったんですね。いや~、勘違いしてたわ(苦笑)。

というわけで、リサの激しいドライビングテクニックを見て多くの人が「マニュアル車」と思っていたようですが、どうやらオートマだったみたいです(^.^)



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