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Channel: ひたすら映画を観まくるブログ
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君は雨宮慶太監督のSF映画『ゼイラム』を知っているか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

さて本日は、「新しく発売される映画のブルーレイを予約しようと思ったら、想定外の状況になってて驚いた」という話をしてみたいと思います。

その映画のタイトルは『ゼイラム』。ここで有権者の皆さんにお聞きしたいのは、「あの『ゼイラム』がついにブルーレイ化決定!」という情報を聞いて、「ええっ!?あの『ゼイラム』が!?」と食い付く人が、果たして世の中にどれぐらいいるのか?ということなんですよ。

『ゼイラム』っていうのは、1991年に公開された日本のSFアクション映画です。この映画を撮ったのは雨宮慶太監督で、雨宮監督と言えば、今では特撮ヒーロー番組『牙狼-GARO-』シリーズが有名ですよね(パチンコにもなったし)。その雨宮監督の劇場デビュー作が『ゼイラム』だったのですよ。

牙狼<GARO> Blu-ray BOX
バンダイビジュアル (2016-12-22)

しかしながら公開当時は全くヒットせず、一部のマニアを除いて多くの映画好きからはスルーされ、知名度的にも当然『牙狼-GARO-』には及びません。おまけに25年も前の映画であることから、「今さらブルーレイを発売したって、誰も知らないんじゃないの?」と、そんな風に思ってました。

なので「やれやれ仕方ないなー、かわいそうだから僕が一つ買ってやるか」と上から目線でリンクをポチってみたところ、いきなり「ベストセラー1位」の文字が…。ん!?どういうこと?

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驚いて「売上ランキング」的なページを確認すると、なんと日本映画の売れ筋ランキングで堂々の1位になってるじゃありませんか!いやいや、ちょっと待って!『ゼイラム』ってそんなに知名度が高かったっけ?

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僕が驚いたのはまさにこの点でして、意外な状況にビックリ仰天。『ゼイラム』という映画は、少なくとも僕の中では「低予算のマイナーな日本製特撮アクション」という認識しかなく、コアなファンはいるでしょうけど、ブルーレイがそんなに売れるほど一般的に知られていたとは思えなかったんですが…。なんでだろう?

実は「マイナーだ」と思っていたのは僕だけで、世間的には誰もが知っている超有名作品だったりするんでしょうか?僕の周りの映画ファンは、『ゼイラム』の存在すら知らなかったんだけどなあ(^_^;)

なお、知らない人のために解説すると、本作は「宇宙の刑務所を脱走した凶悪犯ゼイラムが辺境の惑星:地球へ辿り着く。そして、ゼイラムを捕えるために賞金稼ぎのイリアも地球にやって来て、壮絶なバトルを開始!しかし、その戦いに二人の地球人が巻き込まれて大変な状況に…!」という内容です。

邦画には珍しいSFアクションで、しかも主人公がエロいプロテクターに身を包んだ森山祐子(これまた微妙な知名度ですよねw)。普段は地味なマントを羽織っている彼女が、戦闘シーンになった途端、戦闘用プロテクターを蒸着し、ハンドガンやマシンガンを連射しまくり、敵のビームを素手で弾き返すという凄まじさ!

僕の知る限り、「かっこいいヒロインが様々なSF的ガジェットを駆使して宇宙からやってきた恐ろしいモンスターと対決する日本映画」っていうのは、本作以外に存在しません。海外の映画なら、ミラ・ジョヴォヴィッチのアレとか、シガニー・ウィーバーのアレとか、いくつも同系統の作品は見かけますが、邦画でこの手のジャンルムービーは滅多にないんですよねえ。

だからこそ余計に貴重なわけで、僕なんかはビデオテープの時代からソフトを買い、レーザーディスクが発売されたら迷わず買い、DVDが出たら当然のように買い、メディアが変わる毎に何度も購入してきたわけですよ。それぐらい好きな作品です。

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本作の魅力を説明すると、まず「バジェットの安さをアイデアでカバーしているところ」でしょう。なんせこの作品、当初はオリジナルビデオとして発売する予定だったため、制作費がほとんどありませんでした。途中から劇場用に変わったものの予算の規模は変わらず、なんとたったの3000万円!

しかし雨宮監督は「どんなに低予算でも自分の撮りたい映画を撮るんだ!」と決意し、様々な創意工夫で苦境を乗り切ったのです。例えば、登場人物が多すぎるとキャストの費用が増えるため、「主人公が”ゾーン”と呼ばれる特殊な空間を作り出して、そこにゼイラムを閉じ込める」という設定を考案。

こうすれば、普通の街を異空間に見立てることが出来るし、他の人間はゾーンに入れないから、主人公とゼイラムと二人の地球人という、たったの4人だけでストーリーを進めることが可能になるわけです。なんという発想!

さらに予算を節約するため、スタッフは千葉県山中のつぶれたスーパーマーケットに泊まり込み、そこの駐車場でオープン撮影を行っていたそうです。ただし、水も電気も来ていなかったので、スタッフは毎日ポリバケツを持って近所の民家まで水をもらいに行き、その水を飲んで喉の渇きを癒し、さらに顔を洗い歯を磨いていたという。

とてもプロの撮影現場とは思えないほどの貧乏ぶりに「自主制作映画並じゃん!」という声が聞こえてきそうですが、最近は大学の映画サークルでさえ、もう少しリッチな制作環境になっていることを考えると、もはや「自主制作以下」かもしれません。

ちなみに、雨宮監督の現場の悲惨さは業界では知れ渡っているらしく、『タオの月』という映画を撮影した際は、スタッフのホテル代が出なかったため、なんと近所の健康ランドに泊まって我慢したとのこと。しかし、さすがに「宴会場の大広間で全員ザコ寝」という状態が1ヶ月続いた時は、スタッフから苦情が出たそうです(当り前だw)。

タオの月 [DVD]
バンダイビジュアル (2003-10-24)

ところが、この悲惨なエピソードを聞き付けた樋口真嗣監督がなぜか興味を示し、『ガメラ3 邪神<イリス>覚醒』の京都炎上シーンを撮影する際に、「そこへ泊ってみよう!」と言い出したのですよ。状況を知っているスタッフは慌てて反対したものの、「ホテル代を節約できる」と喜ぶ制作部の勧めもあって、とうとう無謀なプランが採用されてしまいました。

こうして”悪夢の健康ランド宿泊”が再び実現!その結果、翌朝に撮影現場へやって来た樋口監督と『ガメラ3』のスタッフ達は、まだ仕事を始める前なのに早くも根こそぎ体力を奪われ、疲れ果てた表情をしていたそうです。恐るべし健康ランド!いや、健康ランドに罪はありませんが(笑)。

そんな感じで、『ゼイラム』の撮影は決して裕福とは言えない環境で行われました。にもかかわらず、出来あがった映画は、激しい銃撃戦あり、ワイヤーアクションあり、爆発シーンあり、特撮あり、ミニチュア撮影あり、ストップモーションアニメあり、特殊メイクあり、CG映像あり、オプチカル合成あり、様々なSFガジェットあり等、「どこにそんな金があったんだ?」と驚くほど豪華な内容になっているのですよ。素晴らしい!

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一般的に日本の映画は海外に比べて製作費が安く、費用がかかりそうなアクション映画やSF映画は「企画自体が通りにくい」と言われています。そんな中で『ゼイラム』は、少ない予算を最大限に有効活用するため、設定の段階から工夫を凝らし、お金をかける部分はしっかりかけて、それ以外は思い切って省くという判断を下しました。

最近、「ハリウッドは大金をかけて撮ってるんだから凄くて当たり前だ!」とか、「日本は予算が無いんだから仕方ねーだろ!」などと不満をぶちまける映画関係者が多いようですが(まあ気持ちは理解できなくもないんですが)、その一方で雨宮監督のように、少ない予算でも創意工夫で面白い映画を撮ろうと頑張ってる人もいるわけで、そういう姿を見ると「結局、やる気とセンスの問題なのでは?」という気がしなくもありません(もちろん、お金は無いよりあった方がいいけどねw)。

それから、「登場キャラが面白い」という点も本作の大きな魅力でしょう。主人公イリアとゼイラムとの戦いに巻き込まれる地球人として、神谷(蛍雪次朗)と鉄平(井田州彦)の電気屋コンビが活躍するんですが、この二人、すごくキャラが立ってるんですよ。特に蛍雪次朗さんが芸達者で、常に変なことをやらかしてくれるため、会話シーンやリアクションが抜群に面白いんですよね(この人『平成ガメラ』三部作にも出演してます)。

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さらにキャラの面白さで言うと、この映画は強いイリアと強いゼイラムが激しいバトルを繰り広げる物語なんですけど、同時に「異文化交流SF」の側面も描かれていて、最初は「弱い地球人は引っ込んでて!邪魔よ!」などとツンツンしていたイリアが、必死に戦う二人の姿を見ているうちに、「ふ〜ん…、地球人もなかなかやるじゃない」とデレるみたいな(笑)、三人の関係性が徐々に変化していくんですよ。そういう人間ドラマも見どころではないかと。

ちなみに、映画の冒頭シーンで街を歩いているイリアとぶつかる通行人役として、『ウイングマン』や『電影少女』などの漫画家:桂正和先生が出演しているのでお見逃しなく(笑)。雨宮監督とは阿佐ヶ谷美術専門学校時代の後輩にあたり、『ゼイラム』のアニメ版(『イリア THE ANIMATION』)のキャラクターデザインも務めているので要チェック。

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あとはやっぱり、ゼイラムの恐ろしさをしっかり描いている点ですね。とにかくゼイラムが強い!しかも戦闘が激しくなるにつれて、『ドラゴンボール』のフリーザ様ばりに形態を変化させるのだからたまりません。やっつけてもやっつけても姿を変えて主人公たちに襲いかかって来る、そのしつこさたるや「あと何回変身するんだよ!?」とウンザリするほどです。だが、それがいい!

その他、雨宮監督が重度のガンマニアなせいで、登場する銃火器が全てオリジナルのデザインになっており、ガンエフェクトコーディネーターとして『ゼイラム』に参加した栩野幸知さんも「日本のSF映画で、ここまで大量に架空のプロップガンを作った映画は他にない」と驚いていました。

なお、イリアが撃っているハンドガンは、当時、組み立てキットが再販されたばかりのコルト・ローマン(MGC)をベースに製作されたそうですが、コルト系はS&W系に比べてトリガーが重いので、森山祐子さんの指の力では連射ができなかったらしい。そこで、急遽現場でトリガーガードをカットし、2本指で引き金を引けるように改造したそうです。

また、低予算ムービーにしては爆発の規模が非常識に大きいところも『ゼイラム』の特徴でしょう。なんせ宇宙人の兵器で戦ってますから、破壊力が尋常じゃありません。そこら中でドッカンドッカン大爆発が巻き起こり、凄まじい迫力なんですよ。特に、鉄平が原チャリで逃げるシーンは、スタントマンじゃなくて井田州彦さん本人がバイクを運転しているのに、躊躇なく至近距離で大量の火薬を爆破!もう「頭おかしいんじゃないの?」というレベルです。

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というわけで本作は、特撮ヒロインものの雰囲気をベースにしつつ、『ターミネーター』や『エイリアン2』や『遊星からの物体X』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などの要素をうまい具合に取り入れた娯楽映画として、非常に見応えのある内容だと思いました(特に『エイリアン2』の影響が分かりやすいw)。

難点を挙げるとすれば、映像が全体的に貧乏くさいことと(まあ実際に貧乏ですからねw)、あとは森山祐子さんの演技力が多少(かなり?)気にかかる、という点でしょうか(笑)。しかし、かっこいいアクションとエロいコスチュームを堪能できると考えれば、さほど問題にはなりません。未見の方はぜひ一度ご覧ください(^_^)



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