どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さてジェームズ・キャメロン監督といえば、シリーズ最新作『ターミネーター:ニューフェイト』の指揮を執り、現在は世界的な大ヒット映画『アバター』の続編を製作中ですが、業界関係者の間では「圧倒的な完璧主義者」として知られており、決して妥協を許さない厳しい仕事ぶりから「撮影現場の暴君」とも呼ばれているそうです。
というわけで本日は、そんなジェームズ・キャメロン監督にまつわる数々の「伝説的なエピソード」をご紹介しますよ。
●『殺人魚フライングキラー』
キャメロンの監督デビュー作にもかかわらず、「低予算・短納期・酷い脚本」という最悪な条件で撮影するはめになったため現場でトラブルが続出した問題作。
まずロケ地のジャマイカに到着すると、セットが全く出来ていないばかりか、具体的なロケ場所すら一つも決まっていないことが発覚。
キャメロンは慌てて街に飛び出ると、道路で手を振り、最初に停まった車の運転手に小遣いを渡し、1日かけてジャマイカを回って何とかロケ場所を決めた。
しかし、ロケ場所として確保したセント・アンズ湾の死体安置所に、撮影当日、本物の死体が運び込まれて大混乱!主演俳優は気分が悪くなってトイレへ駆け込み、死体を移動させようとしたらウッカリ手を滑らせ、床に落として現場が血だらけに!
当時、新米監督だったキャメロンは、出演者やスタッフが休息している間にモップとバケツを持って必死に床掃除するなど大変な苦労を強いられた。しかも、ようやく撮影が完了すると、いきなり映画会社から解雇されてしまったのだ。
フィルムを取り上げられたキャメロンは怒りと失望感を抱えたまま帰宅するが、どうしても納得できなかったため、自腹でローマまで行って映画会社の編集室へ忍び込み、数週間かけて勝手にフィルムを再編集したという。すごい執念!
なお、その間はホテルに泊まっていたのだが、やがて食べ物を買うお金もなくなったので、毎朝ルームサービスをとっている部屋の前へ行き、置いてあるトレイからロールパンを1個盗み出し、何とか食いつないでいたらしい(「ロールパンは2個あったのでバレなかった」とのこと)。
●『ターミネーター』
ローマのホテルで食費が底を尽き、飲まず食わずで体は痩せ衰え、肉体的にも精神的にも限界を超え、とうとう高熱を出して寝込んでしまったジェームズ・キャメロン。
だが、その時に見た「クロームメッキの骸骨が床を這いながら襲ってくる」という恐ろしい悪夢が、傑作『ターミネーター』を生み出すきっかけになったのである。
その後、アメリカへ戻ったキャメロンはさっそく脚本を書いて自分のエージェントに見せるものの、「こんな不愉快なアイデアはとっとと捨てて別のストーリーを考えろ」と言われたため、エージェントをクビにした。
それから約2年後、様々な映画会社に持ち込み断られ続けた『ターミネーター』の企画がついに決まり、キャメロンはワクワクしながら撮影を開始。後に、当時の様子をマイケル・ビーンは「まるでお菓子屋にやって来た子供みたいだった」と振り返っている。
ようやく自分の思い通りの映画が撮れる喜びで有頂天になったキャメロンは、撮影現場における「ありとあらゆる作業」を自ら行った。アーノルド・シュワルツェネッガー曰く、「ターミネーターがアクセルターンを決めるシーンでは、いきなり彼がバイクに飛び乗り、アクセルを全開にしてグルッと180度ターンして見せたんだ。”クレイジーな男だ!”と思ったのはその時だよ」とのこと。
●『エイリアン2』
『エイリアン2』の撮影は、ロンドンから20マイルほど離れたパインウッド・スタジオで行われた。しかし当時、パインウッドのクルーたちは映画の仕事を「単なる飯のタネ」としか考えておらず、工場で働くのと同じ感覚だったらしい。
当然ながらキャメロンとは全く考え方が合わなかった。なんせイギリス人のスタッフたちは、毎日必ず10時と2時に「お茶飲み休憩」を入れ、昼食時は全員でパブへと繰り出し、夕方5時になると撮影の途中でも平気で帰り支度を始めるのだから。
ただでさえ厳しいスケジュールなのに、周りは非協力的なスタッフばかりという最悪な状況の中、とうとうストレスが限界に達したキャメロンは、アシスタント・ディレクターと撮影監督を解雇してしまう。
ところが、これに反発した他のスタッフが全員仕事をボイコットして猛抗議。ブチ切れたキャメロンは「もう、これ以上ここで撮影は出来ない」「イギリスを引き払ってアメリカで撮る!」と20世紀フォックスに電話で直訴。
しかし、プロデューサーのゲイル・アン・ハード(後にキャメロンと結婚する)が「皆と徹底的に話し合うべきよ」と提案し、4時間にも及ぶミーティングが実施され、その結果、険悪なムードを漂わせながらも何とか撮影は続けられた。
そしてクランクアップの日、キャメロンはスタッフたちに向かって「今回は辛く厳しい撮影だった。それでも最後までやり通すことが出来たのは、”撮影が終わったらもう二度とここに戻らなくていいんだ”と自分に言い聞かせていたからだ。一生ここで過ごす君らには気の毒だけどな!」と捨て台詞を残して去って行ったらしい。
●『アビス』
『アビス』の企画は当初「実現不可能」と言われていた。なぜなら、シナリオに書かれていることを映像化するための機材やテクノロジーが、当時はほとんど存在しなかったからだ。
例えば役者を水中で撮影する場合、既存のダイビング用品では目以外のほぼ全てを覆ってしまうため、役者の顔がよく見えない。そこでキャメロンは顔全体が見えるような潜水ヘルメットをデザインし、メーカーに特注で作らせたのである。
また、水中シーンを実際に「水の中」で撮るために、未完成のまま放置されていた南カリフォルニアのチェロキー原子力発電所を買い取り、直径73メートルの巨大な原子炉格納容器に750万ガロンの水を入れ、「水中撮影用のセット」として使用した。
さらに、「グニャグニャと変形する透明な水の生物」という誰も見たことがない映像を作るために、当時はまだ試行錯誤の段階だったCG技術を積極的に活用し、全く新しい最新のビジュアルを生み出した。
こうしてキャメロンは「機材やテクノロジーが無いなら作ればいい」という考え方に従い、次々と不可能を可能にしていったのである。
一方、本作の撮影は熾烈を極め、長期間にわたる水中作業で髪が変色したり毛が抜けたり、肌が荒れたり鼻や鼻腔の感染症にかかるスタッフが続出し、ホワイトボードの「アビス」という文字を「アビュース(虐待)」に書き換える者まで現れた。
また、キャメロン自身も厳しいスケジュールをこなすために毎日必死で働きまくり、「いちいち水から上がるのは時間がもったいない」と考え、なんと1日18時間も水中に潜りっぱなしで作業を続けたのである。
さらに1秒たりとも無駄にしたくないキャメロンは、潜水マスクの中にスピーカーとマイクを取り付け、水中で作業しながら20世紀フォックスの重役と打ち合わせをするなど、「異常な仕事中毒ぶり」がどんどんエスカレートしていった。
そのため、あまりにも過酷な状況にスタッフが不満を訴えた時も「ちゃんと息が出来てるじゃないか!これ以上なにが不足なんだ!?」と怒鳴りつけるほどだったらしい。
やがて撮影が3カ月を過ぎる頃になると、スタッフだけでなく出演者たちもストレスが限界を超え、主役のエド・ハリスは1日の撮影が終わってホテルに帰る車の中で涙が止まらなくなったり、ヒロインのメアリー・エリザベス・マストラントニオは本番中に突然「私たちは動物じゃないのよッ!」と叫んで現場から出て行ったという。
そしてキャメロン自身も水中撮影に夢中になりすぎて自分のボンベに酸素がなくなっていることに気付かず、水深約10メートルのセットの底で死にかけたそうだ(なお、この時キャメロンのすぐ側にはセーフティ・ダイバーが待機していたのだが、溺れそうになっているキャメロンに全く気付かなかったため、その日の夜に解雇されたらしい)。
●『ターミネーター2』
『ターミネーター2』の最大の課題は「強敵T-1000をどうやって描くか?」ということだった。前作『アビス』でCGの可能性に驚嘆したキャメロンは、腕をナイフに変形させたり、鉄牢をすり抜けるシーンなどを次々と脚本に書き加えていったのだが、実際は「本当にこんなことが出来るのかな?」と半信半疑だったらしい。
CGの作成を依頼されたILMも前例のない映像表現に四苦八苦したようで、『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』などでアカデミー賞を受賞したデニス・ミューレンは「CG技術の発達を語る時、”こんなことは2年前なら絶対に不可能だった”という言い方をよくするが、『ターミネーター2』はもはやそんなレベルではなく、”2週間前なら絶対に不可能”というぐらいの凄まじい進化を遂げていた」とコメントしている。
撮影も相変わらず過酷を極め、1作目の『ターミネーター』で特殊メイクを担当したスタン・ウィンストンのスタッフは自宅で寝ていると明け方の4時に「今すぐT-1000の腕を持って現場へ来い!」と電話で叩き起こされ、T-1000役のロバート・パトリックは「”よし完璧!もう1回やろう!”って言うんだぜ。完璧なのにもう1回っておかしいだろ?」とキャメロンの厳しすぎる指導の様子をインタビューで告白している。
また、キャメロンは自分でカメラを回したがることでも有名で、「T-1000の操縦するヘリコプターが立体交差の下をくぐり抜けるシーン」を撮影する時、カメラマンが怖気づいて「僕にはできません」と拒否するとキャメロンはニヤリと笑い、「OK!じゃあ俺がやろう!」と嬉しそうに答え、カメラを担いでヘリに乗り込み、この危険な撮影を2回も繰り返したらしい。
●『トゥルーライズ』
『ターミネーター2』が「史上初の製作費1億ドル超えの映画」になったため、「次回作は小規模な作品にしよう」と考えたジェームズ・キャメロン。しかし、『トゥルーライズ』はまたしても製作費の最高額を更新してしまった。
なんせ、撮影初日からいきなりスケジュールをぶっちぎってしまうのだから無理もない。クランクインは「トイレでのアクション」で、脚本の段階では半ページにも満たない小さなシーンだった。なのでスケジュールも1日しか確保していなかったのだが、「セットが小さい」とキャメロンが言い出したため、全面的な改修が決定。
さらに、撮影が始まってからもキャメロンのこだわりは留まることを知らず、アクションの描写がどんどん追加・変更され、3日経っても一向に終わる気配がない。20世紀フォックスからは進行状況を問い合わせる電話が鳴りっぱなしでプロデューサーも大パニック!結局、トイレのシーンだけで5日もかかってしまったのである。
その後もスケジュールは遅れに遅れ、スタッフから苦情が殺到し、トム・アーノルドの奥さんからは「早く夫を解放して!」とクレームの電話までかかってくる有様。詐欺師の役で出演していたビル・パクストンに至っては、あまりにもスケジュールが超過しすぎて、自分の出演シーンの合間に現場を抜け出し、別の映画を丸ごと1本撮り終えて戻ってきたほどだった。
また、ワシントンDCでの撮影中にアーノルド・シュワルツェネッガーがトム・アーノルドを連れて勝手に首都見学に出かけた際は、「ポール・バーホーベンにこのクソ映画の続きを撮ってもらいたいのか!?」とキャメロン大激怒(いや、ポール・バーホーベン監督に失礼ではw)。
さらに撮影監督のラッセル・カーペンターは、現像したフィルムをキャメロンに見せたら「露出計の読み方をどこで教わってきたんだ!?」と怒鳴られたため、その直後に外へ出て奥さんに電話し、震える声で「間違いなく僕は解雇されると思う」と告げたらしい。
そんな本作で最も凄まじいシーンは、7マイル・ブリッジを舞台に繰り広げられるヘリと車のチェイスシーンだろう。時速70マイル(約112キロ)で暴走するリムジンから宙に吊り上げられるヘレン(ジェイミー・リー・カーティス)を撮るため、当初はヘリに2人のカメラマンが乗ることになっていた。
ところが、「どうしても自分で撮りたい!」という気持ちを抑え切れなくなったキャメロンは、なんとカメラマンの一人を買収し、自らカメラを担いでヘリに乗り込んだのである。しかもヘリから吊るされるのはスタントウーマンの予定だったのに、いつの間にかジェイミー本人が吊るされていた。この時の様子を、キャメロンは次のように語っている。
日没の橋の上を猛スピードでブッ飛び、大きな叫び声をあげるジェイミーを僕がカメラで狙ったんだ。とてもいい映像が撮れたよ。彼女の絶叫が演技だったのか本気だったのかは分からないけどね。
ちなみに、「妻のヘレンが夫ハリーの目の前でストリップ・ダンスをするシーン」は、脚本では姿をはっきり映さず、シルエットだけを見せるはずだった。しかし、ある日ジェイミー・リー・カーティスがキャメロンのオフィスにやって来て、「ここは踊る姿をハッキリと見せるべきよ!」と強く主張。
そしていきなりキャメロンの前で服を脱ぎ、ブラジャーとパンティだけの姿で実際にダンスを踊って見せたらしい。「わ、分かったよ、ジェイミー。それはいいアイデアだ」とドギマギしながら答えたキャメロンは、後に「映画監督の仕事っていいものだなあと心から思ったのは、あの瞬間だったかもしれない」と振り返ったそうだ。
●『タイタニック』
『トゥルーライズ』でプロデューサーを務めたピーター・チャーニンは、『タイタニック』の制作が終わった後に次のように語っている。「『トゥルーライズ』の撮影は本当に大変だった。撮影日数は延びるし、製作費は史上最高額を更新するし…。でも、『タイタニック』に比べれば幼稚園レベルだったよ」
それぐらい『タイタニック』の制作は熾烈を極めたわけで、まさに「ジェームズ・キャメロンが命を懸けて撮った映画」と言っても過言ではないだろう。なぜなら、文字通り「死にかけたこと」が何度もあるからだ。
たとえば、海底に沈んだ本物のタイタニック号を撮るためにロシアの潜水艇に乗り込んで、水深1万3000フィート(約4キロ)の深さまで10時間かけて潜り、夢中になって撮影していたら潜水艇のバッテリーが上がって動けなくなったことがあるという(この時は手動でバラストを捨てて何とか浮上できた)。
またある時は、タイタニック号のセットで撮影中に何者かが昼食のクラムチャウダーに「フェンサイクリジン(通称PCP)」という麻薬を1ポンド(約450グラム)も混入させたせいで、キャメロンを含む大勢のスタッフが幻覚症状を発症し、現場が大混乱に陥った。
しかも、激しい幻覚に襲われたスタッフの一人が、なんと手に持っていたペンをキャメロンの頭に突き刺したのである。幸い大事には至らなかったものの、刺された場所によっては命にかかわる大怪我だ(なお、この時はキャメロン自身も麻薬でラリッていたため、頭にペンを突き立てたままゲラゲラと笑っていたらしい)。
そして撮影中にも事故が頻発した。タイタニック号が沈む際に直立したデッキから大勢の乗客が落下していくシーンでは、100人を超えるスタントマンが参加したのだが、一人のスタントマンは脚を骨折し、別のスタントマンはあばら骨を骨折。
さらにケイト・ウィンスレットが浸水していく船の中を逃げるシーンでは、着ていたコートが引っ掛かり、そのまま水の中で溺れかけるというアクシデントが勃発。何とか自力で脱出したものの、この時は気丈なケイトも動揺したらしく、「もう息が残ってなくて、体が爆発するかと思ったわ。生まれて初めて撮影現場で”もうここにいたくない!”って思ったの」とコメント。
そして撮影が7カ月を超える頃になると、さすがのジェームズ・キャメロンも心身共に疲れ果て、クランクアップの日にはすでに気力も体力も残っておらず、「”神よ、今こそ天に召してくれ!今死ねるなら本望だ!”と本気で思っていた」と当時の心境を振り返っている。
こうしてキャメロンは超大作『タイタニック』を完成させた。結果、世界中で大ヒットを記録するが、この映画に全身全霊を注ぎ込んだキャメロンは、しばらく監督業から遠ざかることになる。
●『アバター』
『タイタニック』から12年後、ついにジェームズ・キャメロンの新作『アバター』が公開された。本作でキャメロンが目指したものは、「3DCGを駆使した全く新しいスタイルの映画作り」である。
現実環境での映画撮影は常に”選択肢との戦い”だ。太陽光は変化し、衣装はあるものだけに限られ、セットの大きさも決まっている。監督は限定された選択肢の中から最適なものをチョイスするしかない。しかしCGの世界では選択肢が無限にある。登場人物の配置を入れ替えることも、木々を脇へずらすことも、夕陽を注ぎ入れることも思いのままに出来るのだ。
CGを全面的に採用したことで撮影環境は激変した。俳優たちはモーション・キャプチャー用の特別な衣装を身に付け、何もない空間の中で、舞台となる架空の惑星「パンドラ」の世界を想像しながら演技しなければならない。
ただし、変わったのはセットだけではなく、キャメロンの態度や振る舞いも大きく変化していた。『タイタニック』が終わってからの十数年間に様々な経験を得たことで、かつての傍若無人ぶりは鳴りを潜め、「撮影現場の暴君」と呼ばれていた頃とは別人のように丸くなっていたのである。
もちろん、映像に対するこだわりは相変わらず凄まじく、むしろ以前よりもパワーアップしているのだが、キャメロンに怒鳴られ解雇されるスタッフはほとんどいなくなったという。
なお、グレイス博士役で『アバター』に参加したシガニー・ウィーバーは、『エイリアン2』の頃のキャメロンを思い出しながら「あなたたちは知らないでしょうけど、昔の監督はそりゃあもう凄かったのよ(笑)」と若手スタッフに”ジェームズ・キャメロンの伝説的なエピソード”の数々を楽しそうに語っていたらしい。