どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
先日、金曜ロードショーで宮崎駿監督の大ヒット映画『もののけ姫』が放送されました。
「何度目だ?」と思うぐらい繰り返し放送されているので、今更内容について語ることは特にないんですが、テレビを見ながら何となく「タタリ神のシーンは作画が大変だったんだよね〜」などとツイッターでつぶやいたら、「あのシーンってCGじゃなかったの!?」ともの凄い反応が返って来たので逆に驚きました。
『もののけ姫』の冒頭シーンに出て来るタタリ神はCGじゃなくて手描きの作画なんだけど、グニョグニョ動くヘビの動きが複雑すぎて、わずか数分のカットなのに制作期間は1年7か月!動画枚数は5300枚もかかったらしい。原画マン曰く「段々わけがわからなくなって泥沼にはまってしまった」とのこと。 pic.twitter.com/krPT7KxKZQ
— タイプ・あ〜る (@ichineneiga) 2018年10月26日
どうやら皆さん、「あんなに動きが複雑な物体を人間の手で描けるはずがない」「CGに違いない」と思っていたらしく、「こ…これが手描き…だと…?」と衝撃を受けたようです。
確かに、最近のアニメならほぼ確実にCGで作画するようなシーンでしょう。しかし、『もののけ姫』が作られたのは1997年で、宮崎駿監督作品としてはCGが本格的に導入された最初の映画になるわけです。
そのため、当時はジブリ社内に新たにCG部門を開設し、「コンピュータを使うことでどんな表現が可能になるのか?」を日々試行錯誤しながらアニメを作っていたという。
そして当初は「冒頭に登場するタタリ神をすべて3DCGで作画する」という計画もあったらしいのですよ。
しかし、実際にテスト映像を作ってジブリ内部で検討したところ、宮崎監督が「ダメだ!こんなもの使えない!」と却下。
理由は、当時のCG技術が不十分で、タタリ神のグネグネした複雑な動きをリアルに再現できなかったこと。もう一つは、3秒の映像を作るのに3か月かかるなど「制作に時間がかかり過ぎる」ということでした。
こうしてタタリ神は手描きで作画することになったのですが、実はタタリ神本体の動きが2コマなのに対し、表面の”ヘビ状紋様”の動きは1コマ作画、つまり1秒間に24枚の絵が必要だったのです。これは大変な手間だ!
そこで、少しでもアニメーターの負担を減らすために「ヘビの動きは正確に1コマ1コマ繋げなくてもいい」と決めて作業することになりました。
しかし、アニメーターの習性なのか、描いているうちにどうしても1コマ1コマの動きを繋げようとしてしまい、宮崎監督から「せっかく負担を減らそうとしてるのに、わざわざ手間がかかるような作画をするな!」と怒られたらしい。
ところが、出来上がった映像はランダムに動いている部分があったり、順序よく綺麗に流れている部分があったり、とても不規則で奇妙な動きになっていたのです。
これは意図したものではなく、完全に”偶然の産物”なんですが、「誰も見たことがない、宮崎監督も見たことがない斬新な映像が出来上がった!」とスタッフの間で大盛り上がり。結果的に『もののけ姫』を代表する名シーンの一つとなりました。
なお、このシーンの原画を担当した笹木信作さんは「宮崎監督の意図する”勢い”とか、生物感のようなものを表現するのが難しかった。常に”これでいいのか?”という不安との闘いだった」とコメント。
また、動画を担当した鶴岡耕次郎さんは「どうしても変なクセが出てしまい、インスタントラーメンみたいな形になってしまった。描いているうちに何が正解かわからなくなり、どんどん泥沼にはまっていった」とのこと。
最終的に、わずか2分10秒のシーンを仕上げるのにかかった期間は1年7か月、動画枚数は5300枚も費やされました。しかし、そこまで大変な苦労と手間暇をかけ、1枚1枚コツコツと手描きで作画したからこそ、CGと見紛うような見事な映像が完成したのでしょう。
ちなみに『もののけ姫』の制作中、ジブリではほとんどのアニメーターがこのシーンを担当することを嫌がり、「仕事が遅いやつはタタリ神を描かせるぞ!」と”罰ゲーム”みたいな扱いになっていたそうです(笑)。
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