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『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』映画感想

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■あらすじ『第二次世界大戦中の1939年。ドイツ軍と戦う連合軍は、「解読不可能」といわれる史上最強の暗号機”エニグマ”に苦しめられていた。そんな中、イギリスでは情報局MI6のもとに様々な分野の精鋭が集められ、解読チームが組織される。そこへ現れたのが天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)だった。当初、一人で勝手に奇妙なマシンを作り始め、チームの中で孤立してしまうものの、パズルの天才ジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレイ)が加わると、次第に周囲との溝も埋まっていった。やがて解読チームはまとまりを見せ始め、暗号解読まであと一歩のところまで迫っていく。果たして彼らはエニグマを攻略できるのか…?英国政府が50年間隠し続けた、一人の天才数学者の秘密と数奇な人生をサスペンスフルに描いた衝撃の伝記ドラマ!』


※この記事にはネタバレが含まれています。映画を未見の方はご注意ください。


現在、ベネディクト・カンバーバッチとマーティン・フリーマンが出演する人気ドラマシリーズの劇場版『SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁』が公開されています。英国BBCで制作されたこの番組は、有名な名探偵シャーロック・ホームズを斬新な解釈で現代に甦らせ、昔からのファンだけでなく新しいファンまで獲得しました。というわけで本日は、同じくベネディクト・カンバーバッチが主演した『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2月20日WOWOWシネマで放送)のお話ですよ。

本作は、第二次世界大戦時にドイツ軍が用いた暗号機”エニグマ”と、その解読に心血を注いだ実在の天才数学者アラン・チューリングの数奇な人生を描いた伝記ドラマです。彼はエニグマの解読に成功し、戦争を終結に導いたことで、結果的に1千万人以上の命を救ったと言われる英雄ですが、その功績は英国の機密事項として世間に一切公表されませんでした。

それどころか、戦後は同性愛の罪(風俗壊乱罪)で警察に逮捕され、裁判で有罪となり(当時のイギリスでは同性愛は違法だった)、ホルモン治療による化学的去勢を余儀なくされたという。そして女性ホルモン注射の投与を続けた結果、最終的には青酸化合物入りのリンゴをかじって死亡してしまいます(自殺と事故の両方の説あり)。

映画では、そんなアラン・チューリングの少年時代から、親友のクリストファー・マルコムに恋をする場面や、ブレッチリー・パークの政府暗号学校でエニグマの解読に従事する様子、さらに第二次世界大戦終結後、ホルモン治療の影響で別人のように変わり果てた姿までを丁寧な筆致で描き出していて、非常に興味深く観賞できました。

でも、この映画は「歴史的事実と異なっている!」という批判も多く、特にジョーン・クラークとの関係性について原作者のアンドリュー・ホッジスは「チューリングの同性愛指向をきちんと描いていない」とコメント。また、チューリングの親族は「クラークはもっと地味な女性でキーラ・ナイトレイの起用は不適切だ」と語っていたそうです(余計なお世話ではw)。

個人的には、「たとえ実話をベースにした映画であっても、面白くなるなら多少の脚色はアリじゃないの?」と考える方なんです。ただ、そんな中でもいくつか気になるシーンがありまして…。例えば、なかなか暗号が解読できなくてチューリングがクビになりそうな状況で、他の仲間たちが「彼をクビにするなら僕たちも辞めます!」とカッコよく宣言するシーンがあるんですけど、いくらなんでも現実の世界であんな青春ドラマみたいな展開はないだろうと(笑)。

それから、ようやく暗号を解読したものの、「暗号解読に成功したことがドイツ軍にバレたら、また設定を変更されてしまう」と考えたチューリングは、輸送船団を見殺しにして機密を守ろうとするんです。そして、その輸送船団に兄弟が乗っている仲間から「それでも人間か!」みたいな感じでぶん殴られるんですが、こんなことは有り得ません。

当時、ブレッチレーパークの暗号解読部隊は軍の最重要機関であり、解読された暗号は1秒でも早く知りたがっていたのです。もちろん、「こちらの成果がドイツ側にバレたら今までの苦労が水の泡だ」と考えているのはイギリス軍も同じですが、「輸送船団を助けるかどうか」は軍が判断すべき問題であって、暗号を解読した単なる数学者に口出し出来るはずがないのです。

あと、アラン・チューリングは開発した解読装置「クリストファー」を使って設定を”逆算”しようとするものの、あまりにも計算する条件が膨大すぎて、とても全部は計算し切れないと判断。そこで「何か特定のワードが含まれていないだろうか?」と考えました。もし、文章の中に毎回使われている決まった言葉があるなら、暗号化する前の文章と暗号化した後の文章を比較して、文字を変換する法則を”逆算”できるからです。

そこで調べたところ、”ある言葉”を発見します。映画では、文章の最後が毎回「ハイルヒトラー」で終わっていることに気付いた主人公が、それをきっかけに暗号の解読に成功し、「やったぞー!」と大いに盛り上がっていました。しかし実際は、ドイツ軍の各戦域で発信されていた天侯情報の中に、「天気」という言葉が毎回含まれていたことがきっかけだったようです。

本来、暗号文の中に決まった言葉を何度も使うということは、容易に元の文章を推測されてしまうため、あってはならないことなんです。つまり、アランは「エニグマの運用に関する致命的なミス」を見抜き、「クリストファー」で設定を逆算することで見事に暗号の解読に成功したのですよ。その際の言葉が「天気」では映画的にあまりカッコよくないので、意図的に変更したのでしょう(ちなみに「クリストファー」という名称も事実と異なります)。

まあ、これらの改変は映画をより盛り上げるための”脚色”ですから、いちいち批判するつもりはありません。ただ映画を観ていて、フィクションなら全く気にならないことでも、「現実に起きた出来事だ」と言われると、あまりにも行き過ぎた脚色は”過剰な演出”に見えてしまい、逆に気持ちが醒めてしまう場合があるので、なるべく控え目にしていただきたいなーと思った次第です。なお、映画自体は大変楽しめました。ベネディクト・カンバーバッチの演技も非常に良かったですよ(^_^)


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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』がアカデミー賞授賞!

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本日、第88回アカデミー賞授賞式が開催され、なんとジョージ・ミラー監督のバイオレンス・カーアクション映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』が、美術賞・衣装デザイン賞・メイクアップ&ヘアスタイリング賞・編集賞・音響編集賞・録音賞の計6部門で受賞するという快挙を成し遂げてしまいました。うわあああ!

最初、「作品賞や監督賞など10部門でノミネートされた」と聞いた時、「何かの間違いでは?」と思ったんですけど(笑)、まさか本当に受賞してしまうとは…。しかも、最多の6冠を達成するなんて本当に凄い!できれば、70歳を超えてこんな凄まじい映画を撮ったジョージ・ミラーさんに監督賞も獲ってもらいたかったんですが、さすがにそれは無理だったようです。残念(^_^;)

でもまあ、権威あるアカデミー賞で「白塗りの男たちが改造車に乗って砂漠を暴走しまくる映画」が6部門も制覇するなんてことは、この先2度と無いんでしょうねえ(笑)。そういう意味では、まさにある種の”事件”と言えるかもしれません(^_^)


『マッドマックス』はこんなに凄い映画だった!

『マッドマックス2』はこんなに凄い映画だった!

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ネタバレ感想

これはすごい!巨大ロボットが登場する実写映画18選!

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本日、土曜プレミアムでSFアクション超大作『パシフィック・リム』が放送されます。ギレルモ・デル・トロ監督が撮ったこの作品は、「巨大ロボットと巨大怪獣がものすごいバトルを繰り広げる」という、日本の子供向けアニメをそのまんま実写化したような内容で、一見すると「ずいぶん幼稚な映画だな〜」と思ってしまうかもしれません。

だがしかし!デル・トロ監督は本気でこの”幼稚な映画”の製作に取り組んだのです。1億9000万ドルという破格の予算を惜しげもなく注ぎ込み、最新のCG技術を存分に駆使して映像化された巨大ロボの数々。それはまさに、実写版の『マジンガーZ』か?それとも『ゲッターロボ』か?と我が目を疑うほどの衝撃的なインパクトで観客の度肝を抜きまくり、全国の巨大ロボ好きを熱狂させました(映画の解説記事はこちらをどうぞ↓)。

『パシフィック・リム』はなぜ凄いのか?その魅力を徹底解説!

でも、当然ながら「巨大ロボットが登場する実写映画」っていうのは『パシフィック・リム』が初めてではありません。過去にもそういった作品はいくつも作られているのです。にもかかわらず、残念なことに「巨大ロボ映画」はほとんど注目もされず、多くの観客からスルーされているのが現状なのですよ。実にもったいない!

というわけで本日は、「意外と凄い巨大ロボ映画」を独断と偏見でいくつかチョイスしてみました。「デカいロボットが出てくる」という時点で内容に不安を抱く人がいるかもしれませんが(まあ、その不安は概ね的中してるんですがw)、「へ〜、巨大ロボの映画ってこんなにあるのか」程度の”ゆる〜い感じ”で読んでいただければ幸いです。

なお、アニメのロボットまで含めると数が膨大になりすぎるので、今回は「実写映画」に限定(日本の特撮ヒーロー番組に登場する巨大ロボも同じ理由で除外しています)。また、「どれぐらいのサイズから”巨大ロボ”と定義するのか?」については個人差があると思うので、とりあえず「人間よりもかなりデカい」というアバウトな大きさで選ばせてもらいました。いわゆる”人間サイズ”のロボットは含んでいないので、悪しからずご了承ください。


●『ロボ・ジョックス』

もし、巨大ロボ好きで『ロボ・ジョックス』を知らない、あるいは観たことがない人がいるとすれば、間違いなくモグリでしょう。それぐらい、”巨大ロボ界”における本作の存在感は絶大なのです。何より素晴らしいのはロボットの質感と重量感!そして本当に巨大ロボがいるかの如きリアリティ!

それもそのはず、この映画に出てくるロボットはCGではなく、全てミニチュアの模型を使っているのですよ。しかも、人間の背丈ほどもあるデカいミニチュアを実際に砂漠へ持っていき、本物の太陽光の下で、本物の火薬を爆破させてロボット同士のバトルシーンを撮影しているのだから凄すぎる!

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あまりにもロボットの表現にこだわりすぎて費用が膨らみ、なんと製作途中で母体のエンパイア・ピクチャーズが倒産!しかしトランス・ワールド・エンタテイメントが後を引き継ぎ、2年掛かりでどうにか完成させたという逸話が残っているほど、本作の撮影はハードだったとか。そういう意味でも「巨大ロボ好きは必見の映画」と言えるでしょう。

ちなみに僕は中学生の頃にこの映画をレンタルビデオ屋で見つけて、「これはすごい!」と興奮しながら友人の山本君に見せたら鼻で笑われたという苦い思い出がありまして(笑)。まあ確かにロボット以外の映像はチープ極まりなく、お世辞にも「完成度が高い」とは言えません。

ただ、巨大ロボ好きの製作者が、ほとんど自己満足みたいな企画を強引に推し進めただけあり、「俺が見たいロボット映画はこれなんだよ!」という謎の意気込みだけはビンビン伝わってきます。人型ロボットが戦車モードに変形して砂漠を爆走するシーン等、とにかくロボットの活躍場面だけは異常にかっこいいので、興味がある方はぜひどうぞ。

なお、ロボットのデザインは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(デロリアン)や『エイリアン』(ノストロモ号)で活躍したロン・コッブが担当していますが、実は日本のロボットアニメ『戦闘メカ ザブングル』を参考にしたらしい。確かに、敵のロボットのデザインが良く似てるなあ(笑)。

●『ガンヘッド』

『機動戦士ガンダム』の製作会社:サンライズと、『超時空要塞マクロス』のデザイナー:河森正治がタッグを組み、「史上初の実写巨大ロボットムービー!」という胸が熱くなるような宣伝文句と共に大々的に公開された本作は、高さ6メートルに達する主役ロボット(ガンヘッド)の実物大模型が作られたことでも話題になりました。

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いや〜、バブルな時代だったんですねえ(笑)。今だったら絶対に通らない企画ですよコレ。実物大の巨大ロボは劇中ではほとんど映らず、多くのシーンはミニチュアで撮影されたそうですが、いずれにしても巨大ロボをこれだけ全面的にフィーチャーした実写映画はこの時点では前例がなく、それだけでも実に画期的だと思います。

●『トランスフォーマー』

ハイ、皆さんご存じトランスフォーマーです(笑)。「あれは”生きてる金属”って設定だから、ロボットというより宇宙人じゃね?」という説もあるようですが(笑)、「ロボット映画」にカテゴライズするなら間違いなく一番ヒットしている作品でしょう。出てくるロボットの数もメチャクチャ多いし、巨大ロボ好きならとりあえず押さえておくべきかなと。

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●『Gセイバー』

サンライズが「ガンダム生誕20周年記念作品」としてアメリカとコラボし、デザイナーの大河原邦男も関わった本作。「あの『機動戦士ガンダム』がついに実写化された!」と聞いて期待したファンも大勢いたんじゃないでしょうか?しかし現実は…。

一応、舞台は”宇宙世紀223年”でモビルスーツも登場し、世界観的な繋がりはあるものの、過去のアニメシリーズとの関連はほぼ皆無。当然、アムロもシャアも出て来ません。それどころか「ガンダム」という呼称すら無いのです。

主人公が乗る巨大ロボ「Gセイバー」はガンダムっぽいデザインを踏襲していて、それなりに評価されているようですが、いかんせん本編映像は”安っぽい海外ドラマ感”が漂いまくり、全体的に貧乏くさい印象になっているのは残念でした。ただ、フルCGで描かれたモビルスーツ戦はなかなかカッコ良かったですよ。

●『THE NEXT GENERATION パトレイバー』

押井守監督が作った劇場アニメ『機動警察パトレイバー』は、ジェームズ・キャメロンやギレルモ・デル・トロなど、ハリウッドの映画監督に多大な影響を与えました。本作は、そんな押井監督が自ら実写化した作品で、非常に珍しいパターンと言えるでしょう(普通はアニメ版と実写版が同じ監督になることはない)。

特に凄いのは、劇中の警察ロボット「パトレイバー(98式AVイングラム)」を、わざわざ実物大の模型を作って撮影している点ですね(フルCGの映像も併用)。しかもガンヘッドみたいに「作ってそのまま」じゃなく、専用のトレーラーに積んで、北海道から九州まで日本各地を宣伝して回ったらしい。映画のプロップを有効活用してるなあ(笑)。

なお、実写映画版の方はアニメ版『パトレイバー2』の後日譚みたいな話なので、アニメを観ていないと少しわかり難いかもしれません。でも、「アニメ版の雰囲気を忠実に実写化している」という点ではとても貴重なロボット映画なので、機会があればぜひご覧ください。

●『ロボフォース 鉄甲無敵マリア』

「香港がうっかりロボットものを作ったらこうなった」という見本みたいな映画です(笑)。内容は、サリー・イップ演じる人間型ロボット”マリア”と、敵の犯罪組織が作り上げた巨大ロボ”パイオニア1号”が激しい戦いを繰り広げるSFアクションなんですが、敵の巨大ロボが『機動戦士ガンダム』のザクそっくりなんですよ。これはアカンやろ(^_^;)

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●『カンフーサイボーグ』

『ロボフォース 鉄甲無敵マリア』のロボットは着ぐるみでしたが、最新デジタル技術を導入した本作ではフルCGのロボットがドッカンドッカン暴れまくります!印象としては「アイアンマン + トランスフォーマー」みたいな感じですかねえ。しかもかなりテタラメ成分多めの(笑)。

まず最初に人間サイズのロボットたちが登場して、自動車などの乗り物に変形するんです。それはいいんですが、自転車に変形してるヤツがいるんですよ。いやいや、部品が少なすぎるでしょ!?いくらなんでも質量を無視しすぎだよ(笑)。最後に登場する巨大ロボも、頭に”お札”を貼ってますからね。つまりキョンシー型ロボットなわけで。

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まあ、コメディ映画として見れば「こんなもんか」という感じですけど、終盤はどんどんシリアスな展開にシフトしていくので、普通に観てると前半とのギャップに頭がクラクラしてくるかもしれません(苦笑)。なお、ロボット同士のカンフー・アクションはそれなりに迫力がありますよ。

●『オーガストウォーズ』

↑この予告編を観て「ああ、トランスフォーマーのパチモンね」と思った人も多いんじゃないでしょうか?僕もそう思いました。でも違うんです。全然トランスフォーマーじゃないんですよ!いや、映画の中にはちゃんと”巨大ロボ”が出てくるんです。ただ、その”出し方”が問題でして…。

そもそもこの映画って「実話ベース」なんですよね。2008年に実際に起きた南オセチア紛争を題材にして、最前線に取り残された子供を救い出すために、若い母親が勇気を振り絞って戦場へ乗り込んでいく姿を描いた、真面目な戦争ドラマなんです。

なのに、この予告編はひどすぎる!これを見て「トランスフォーマーのパチモン」と判断した人は絶対観に行かないだろうし、逆にトランスフォーマーみたいな映画を期待した人は「なんじゃコレ?」と激怒するだろうし、誰も得しないですよ!というわけで、今までスルーしていた人も機会があればぜひ観てください。ロシア軍が全面協力した壮絶な戦闘シーンは必見です!

●『鉄人28号』

ご存じ、横山光輝の原作漫画を実写化した作品です。過去にテレビドラマ化やアニメ化はされていますが、長編映画化は本作が初めてだとか。主役ロボの鉄人28号は実物大の頭部が作られ、戦闘シーンはCGで描かれるなど、頑張って映像化しようとしている努力は見受けられます。

が、肝心の鉄人28号のビジュアルが微妙なんですよねー。実写なのにアニメチックに描かれていて実在感が薄いのですよ。以前、NTTドコモが鉄人28号でCMを作っていましたが、そっちの方がよっぽどカッコ良かったな〜と(コレね↓)。

じゃあ、この映画の見どころは?と言われると、ズバリ”役者”が凄い(ロボじゃないのかよw)。主人公の金田正太郎役に、『海を感じる時』、『紙の月』、『愛の渦』、『ぼくたちの家族』などで印象的な演技を披露し、第38回日本アカデミー賞で新人俳優賞を、第57回ブルーリボン賞で助演男優賞を受賞した池松壮亮が起用されているのです。

さらに、ヒロインは蒼井優、敵の科学者は香川照之(!)。その他、薬師丸ひろ子、川原亜矢子、中澤裕子、高岡蒼佑(現:高岡奏輔)、伊武雅刀、矢沢心、田中麗奈、妻夫木聡、阿部寛、柄本明、中村嘉葎雄、林原めぐみ(ブラックオックスの声)など、信じられないほどキャスティングが豪華なんですよ。なぜこんなに有名人が集結しているのかは全く分かりませんけど(笑)。

鉄人28号 デラックス版 [DVD]
ジェネオン エンタテインメント (2005-11-25)

●『アバター』

地球製軍用パワードスーツのAMPスーツは、操縦者の腕力を増幅(アンプリファイ=AMP)するシステムで、パイロットが腕を動かせばロボットの腕も連動するという、視覚的にも分かりやすいマシンでグッド。映画後半にマイルズ・クオリッチ大佐が大暴れするシーンも良かったですねえ。いわゆる”パワードスーツ”って、アニメや漫画ではお馴染みですけど、映画に出てくる機会は意外と少ないので貴重だと思います。

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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2012-03-16)

●『第9地区』

とにかく、クライマックスで主人公が操縦するエクソスーツがカッコいい!『アバター』のAMPスーツもいいんですが、『第9地区』のエクソスーツはデザインが素晴らしいんですよ。フルCGなのに実在感も十分あるし、ロボットの描き方が実に見事でしたねえ。

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第9地区 [Blu-ray]
ワーナー・ホーム・ビデオ (2011-04-21)

●『ゴジラ対メカゴジラ』

目から光線!指からミサイル!攻撃時には首がグルグル回転する愉快なギミック!さらにあの巨体で空を飛ぶなど、あらゆる面でかっこ良すぎるメカゴジラ。よく考えたら「巨大ロボと怪獣の戦闘」って、『パシフィック・リム』よりこっちの方がずっと早かったんですよね。ハリウッドでリメイクしてくれないかなあ。

●『ターミネーター4』

皆さんご存じ『ターミネーター』シリーズの4作目です。このシリーズは基本的に人間サイズのロボットが出てくるだけなんですが、本作は近未来が舞台になっているため、様々なバリエーションのターミネーターが登場しています。

その中で最も巨大な「ハーヴェスター」と呼ばれるロボットは、なんと全高25メートルにも達する破格のデカさ!映画では序盤であっさり壊れてしまいますが、本来ならラスボスレベルの巨大ロボですよ。つーか、なぜこいつをラスボスにしなかったんでしょうか?不思議でなりません。

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●『サイボーグ・シティ』

雑に内容を紹介すると、「奇妙な街に迷い込んだ8人の美女が、襲ってくるロボットたちと壮絶な戦いを繰り広げる」という、安〜いB級SFアクションです。ロボットを作ったのは一人のマッドサイエンティストで、この人が巨大ロボを開発してるんですよ。ただ、肝心のロボットが…

・巨大ロボ好きをアピールする悪の科学者↓

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・完成した巨大ロボ↓

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ダセえ〜!映画の公開は2009年なのに、デザインセンスが60年代で止まってる感じが逆に凄い(笑)。まあ、B級と割り切って観ればそこそこ楽しめるかな〜って感じです。8人のヒロインが披露するアクションはなかなかカッコ良かったので、そっちをメインに観てください(笑)。

●『トランスバトラー』

珍しいフィリピン製の巨大ロボ映画です。題名からしてトランスフォーマーのパチモン臭がプンプンしてますけど、中身も相当パンチが効いてますよ(笑)。DVDのパッケージにはオプティマスプライムみたいなロボットが描かれていますが、本編には1ミリたりとも出て来ません。ただ、数ある”トランスフォーマーもどき”の中では比較的マシな方ではないかなと。ヒロインが美人なところもポイント高し(笑)。

●『女子高生ロボット戦争』

内容は「2人の女子高生が一人の男子をめぐって対立する」という単なる学園ラブコメディーなのに、タイトルとパッケージから溢れ出るボンクラ感が凄まじい!誰が考えたのか知りませんが、この作品名だけで500点ぐらい上げたい心境です(笑)。なお、「ロボット戦争」と煽ってる割にはロボットはほとんど出て来ません(^_^;)

●『ヤマトタケル』

『ガンヘッド』の高嶋政宏が、日本神話のヤマトタケルを演じたファンタジー映画。この物語のクライマックスに登場するのが、ウツノイクサガミ(宇宙戦神)という全高12メートルの巨大ロボです。厳密に言うと「戦いの神様」なのですが、メタリックな外観や、頭部から発射される必殺ビーム(魔砕天照光)や、敵の攻撃を防ぐタケル・バリアー(時裂空漸波)など、その姿はどう見ても戦隊ヒーローの巨大ロボ(というより『トップをねらえ!』のガンバスターですねw)。

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●『メガ・シャーク vs グレート・タイタン』

「メガ・シャーク」というのは古代のサメ:メガロドンのことで、本作はメガ・シャークと人類の戦いを描いたシリーズ第4弾です。まあ、だいたい巨大なタコや巨大なワニと戦っていて、人類はそれに巻き込まれてる感じなんですが、今回戦う相手は巨大ロボなんですよ。

「コロッサス」という名の旧ソ連が開発した巨大ロボとメガ・シャークが戦うんですけど、その戦い方がものすごい(色んな意味で)。ちょっとだけネタバレすると、コロッサスがメガ・シャークの尻尾をつかんでブンブン振り回し、勢いをつけて手を離すと、そのまま巨大サメが宇宙まで飛んで行くんです。

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何を言っているのか分からないと思いますが、僕も何を見せられたのかよく分かりません。ありのままに起こったことを書いています(笑)。宇宙までブン投げられたサメがどうなるかっていうと、すぐに地球へ戻って来て何事も無かったかのようにまた戦いを続けるんですけどね。もう何がなんだか…。なお、コロッサスの見た目が某『進撃の巨人』に酷似していて、ますます微妙な気持ちになりました(^_^;)


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映画『ジョン・ウィック』、続編の公開日決定

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飼ってる犬を殺されたキアヌ・リーブスが、「よくも俺の可愛いワンちゃんを!」とブチ切れてマフィアを皆殺しにする映画『ジョン・ウィック』の続編が制作決定したようです。タイトルは『ジョン・ウィック:チャプター2』、全米公開日は2017年2月10日の予定だそうです。

主人公は当然キアヌ・リーブスで、ジョン・レグイザモ、イアン・マクシェーン、ブリジット・モイナハン、ランス・レディックも前作に引き続いて出演。そして新キャストとしては、『マトリックス』でキアヌと共演したローレンス・フィッシュバーンが、『マトリックス』以来17年ぶりに再共演するらしい。

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パート2の舞台はイタリア・ローマになるとのことで、前作とはまた違った印象になりそうですね。果たして今度はどんなアクションを見せてくれるのでしょうか?なお、続編の役作りのためなのか、実銃を使って本格的な射撃訓練をしているキアヌ・リーブスの姿が動画共有サイトにアップされていました。

アサルトライフル、ショットガン、ハンドガンなど、次々と銃を取り替えながら標的を撃ちまくるキアヌさんがカッコ良すぎる!『ジョン・ウィック2』のアクションも期待できそうですね〜(^_^)


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管理人のタイプ・あ〜ると申します。このブログでは、洋画・邦画・劇場用アニメなどの映画レビューの他に、映画の制作裏話やジブリアニメのマル秘エピソードなど、映画にまつわる様々な記事を書いています。以下のリンク(クリックで各ページへ移動)に、それらの記事をカテゴリー別にまとめてありますので、興味がある方はぜひご覧くださいませ(^.^)


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アニメーション


●映画の制作裏話(メイキング)

あの名作はどうやって作られたのか?等の映画製作にまつわる裏話を書いています。

コチラからどうぞ


●ジブリアニメのマル秘エピソード

宮崎駿監督や高畑勲監督など、スタジオジブリ作品に関するエピソード集です。

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●オススメ人気記事

過去に反響があった記事の一覧です。

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●オススメ映画ベスト10

「SF作品」や「ホラー作品」など、ジャンル別のオススメ映画ベスト10です。

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●その他/雑文

「あの映画の予告編ってアリなんだろうか?」とか、「あの映画の原作使用料ってどうしてこんなに安いの?」など、映画に関する疑問や気になったことを考察・検証してみた記事です。

コチラからどうぞ


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『マネー・ショート 華麗なる大逆転』ネタバレ映画感想/解説

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■あらすじ『2005年、アメリカでは空前の住宅ブームが起きていた。しかし金融トレーダーのマイケル(クリスチャン・ベイル)は、独自の理論に基づいてシミュレーションした結果、住宅市場の破綻は時間の問題だということに気づく。だが、好景気に沸くウォール街で彼の予測に耳を傾ける者など一人もいなかった。そこでマイケルは、“クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)”という金融取引で、バブル崩壊の際に巨額の保険金が入る契約を投資銀行と結ぶ。同じ頃、若き銀行家ジャレッド(ライアン・ゴズリンク)や、ヘッジファンド・マネージャーのマーク(スティーヴ・カレル)、引退した伝説のバンカー:ベン(ブラッド・ピット)もまた、バブル崩壊の予兆を敏感に察知し、ウォール街を出し抜くべく行動を開始。やがて起るリーマン・ショックで大金を手に入れたのは果たして誰か?世界中を大パニックに陥れたサブプライム・ローン危機の裏側で、密かに暗躍する4人の男たちの姿をシニカルな筆致で描いた衝撃の群像ドラマ!』



マイケル・ルイスのベストセラー・ノンフィクション『世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち』を原作とした『マネー・ショート 華麗なる大逆転』は、第88回アカデミー賞で監督賞や作品賞など計5部門にノミネートされた映画であり、最終的には脚色賞を受賞しました。

さすがアカデミー賞に取り上げられるだけあって、かなり完成度は高いです。また、クリスチャン・ベイル、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピット、マリサ・トメイ、マーゴット・ロビー、セレーナ・ゴメスなど、出演者も非常に豪華で見応えがありました。

しかしながら、映画を観た人の感想を見てみると、「難しすぎて良くわからない」「思ってたのと違う」「スッキリしない物語が嫌」など、どちらかと言えばネガティブな意見が目立つようです。僕自身は結構楽しめたんですが、こういう意見が出るのも、まあ分からなくはありません。その理由を書いてみましょう。

●難しすぎてわからない?

この映画は、2008年に起こった世界的な経済破綻「リーマン・ショック」について描かれた内容なので、劇中には難しい経済用語がバンバン出てくるんです。なので、これら経済用語の意味が分からないまま、ストーリーだけを追いかけようとしても、内容がイマイチ理解できないんですよね。

ただ、その辺の問題は作り手側も考えているらしく、劇中のキャラがいきなりカメラ(つまり観客)に向かって、「やあ!君たちちゃんとついて来てるかい?」みたいな感じで話しかけてくるんですよ。これはいわゆる「第四の壁」(舞台と観客の間に存在する境界線)を破るという演出で、最近ではアメコミ映画の『デッドプール』などでも同様のシーンが見受けられます。

割と昔から色んな映画で使われている演出なんですけど、本作では「”第四の壁”を破って登場人物が専門用語を解説してくれる」という新設設計なんですね。しかも出てくるのは美人なお姉ちゃん!

例えば、ストーリーの流れとは無関係に、いきなりバスタブに入っているマーゴット・ロビーが現れ、「は〜い、みんなサブプライム・ローンって知ってる?今から私が分かりやすく説明してあげるわよ〜♪」などと言いながら、レクチャーしてくれるんですよ。なので「おお、これはありがたい!」と一瞬思ったんですが…

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全然分かりやすくねえええ!

いや、サブプライム・ローンの説明はまだ分かるんです。でも物語が進むに従って色んな専門用語が増えまくり、それらを理解するのにとても苦労しました。しかも「美人のお姉ちゃん」という本来ならありがたいはずのシチュエーションが逆に集中力を妨げる結果となり、難しい用語解説が全く頭に入って来ません。セレーナ・ゴメスがCDOだかCDSだかの用語を説明するシーンなんて、もはやセレーナ・ゴメスの胸しか覚えてない有様ですよ(苦笑)。

「じゃあ、難しすぎてつまらない映画なのか?」っていうと、そういうわけでもないんですよね。まず、クリスチャン・ベイル、スティーヴ・カレル、ライアン・ゴズリング、ブラッド・ピットが演じるそれぞれの人物が、非常に魅力的で面白かったです。

金融トレーダーのマイケル・バーリ(クリスチャン・ベイル)は、大のヘビメタ好き&常に裸足にTシャツ・短パン姿で周囲から変人扱いされていますが、数字に関しては天才的な嗅覚を発揮し、たった一人で住宅市場の崩壊を予測しました。そして、「もし市場が崩壊したら多額の保険金を受け取れる契約」を大手銀行と結び、大儲けしようと目論んだのです。

ただし、市場が崩壊するまでは延々と保険料を支払い続けなければならないので、大変なリスクを負うわけですよ(自分が損をする)。マイケルは「必ず近いうちに崩壊するはずだ!」と信じて危険な賭けに出るのですが、銀行側は「なんてバカな客だろう」と大笑い。世の中バブル真っ盛りなのに、一人だけ”逆張り”してるのですから無理もありません。

ところが、このマイケルの動きを察知した銀行マンのジェレド・ベネット(ライアン・ゴズリンク)は「これでひと儲けできるぞ!」と考え、ヘッジファンド・マネージャーのマーク・バウム(スティーヴ・カレル)に近づき、「いい話があるんだが…」と投資を提案。「住宅市場が破綻する?そんなバカな!」と最初は信用しなかったマークですが、調査のために訪れたフロリダで衝撃的な状況を目撃します。

立派な住宅が何軒も空き家になっており、玄関先にはローンの催促状が散乱。住宅ローン業者に話を聞くと、不法移民者とかストリッパーなど、”どう考えても金を払えそうにない人々”に無理なローンを組ませて、どんどん家を買わせていたことが発覚。

「どうやって審査を通過したんだ?」と思ったら、なんと名前を書くだけ!そもそも審査なんかしていなかったのですよ。それでも低所得者たちは、「サブプライム・ローンがあれば俺も家が買えるぞ!」と喜んで住宅を購入したそうです。そのうちの一人のストリッパーから「一軒だけじゃなくてコンドミニアムも買ったわ」という話を聞いて、「払えるわけねえだろ!」と呆れ果てるマーク。あまりにも杜撰な現状を目の当たりにし、もはや市場の破綻は避けられないと理解したのでしょう。

一方、彼らと同じように「住宅市場の崩壊」を予測した若手投資家のチャーリーとジェイミーは、大手銀行などに強いコネクションを持っている伝説的な元金融マン:ベン・リカート(ブラッド・ピット)に協力を依頼し、一攫千金を狙います。ブラピの出番は少なめですが、印象的なキャラクターを堂々と演じていました。

というわけで、この映画は「それぞれの登場人物がそれぞれの思惑で行動する群像劇」であり、彼らの目線を通して「あの時、アメリカで何が起きていたのか?」を知ることができる、ある種の”実録経済ドラマ”なんですよ。なので、難しい経済用語が分からなくても十分面白いんですが、できれば事前に「リーマン・ショック」と「サブプライム・ローン」ぐらいは知っておいた方がいいかもしれません。

●思ってたのと違う?

どうも、この映画を観て「思ってたのと違う!」と感じた人が多かったようなんですけど、それはたぶん予告編やポスターなどの”宣伝”によってイメージを誘導されたからではないのかなと。『マネー・ショート 華麗なる大逆転』の予告編ってこんな感じなんですが…↓

これを見ると、「4人の男たちがそれぞれのスキルを生かし、金融システムの隙を突いて一世一代の大博打に挑む痛快ギャンブル・ムービー」みたいな感じじゃないですか?でも、全然そんな映画じゃないですからね(そもそも4人が一緒に行動する場面なんて一回も出て来ない)。

また日本版のポスターも、予告編のイメージを強調するかのような「4人が横並びで歩いているシーン」になってますが、当然こんな場面は本編にありません。つーか、この並びにブラッド・ピットが入っていること自体がおかしいんですよ。ビラピの役割は、若手投資家のチャーリー(ジョン・マガロ)とジェイミー(フィン・ウィットロック)をサポートするだけで、積極的にドラマに絡んでくるキャラじゃないんです。

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たぶん配給会社としては、『オーシャンズ11』のような「複数のスペシャリスト集団が難解なミッションに挑むクライム・サスペンス映画」を意識してたんでしょうねえ。ポスターの作りも、なんとなく『オーシャンズ11』っぽいし(笑)。ただ、『ベイマックス』の時にも感じたんですけど、「予告編による印象操作」って結局は観客の期待を裏切ることになるので、やっちゃいけないと思うんですよ。いずれにしても、こういうイメージを先に見せられたら「思ってたのと違う!」と感じても仕方ないかもしれませんね(『オーシャンズ11』のポスター、似すぎでしょw↓)。

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●スッキリしない物語?

この映画を観てスカッとした気分になれるのか?と言われたら、確かに「はい」とは言えません。『華麗なる大逆転』というスッキリしそうなサブタイトルが付いてるにもかかわらず、モヤモヤした気持ちになってしまうのはなぜなのか?

それは、主人公たちが勝利することで、何万人もの人たちが不幸になるという”辛い現実”が確定してしまうからです。普通の娯楽映画の場合なら、最後の大逆転でカタルシスを得ることができるんですが、実話ベースの本作では、倫理的な面からも爽快なラストには出来なかったのでしょう。

また、映画全体の雰囲気がコミカルな印象でテンポよく進んでいくため、なんとなく明るい結末を想像しがちなんですが、予想に反して重いラスト…というギャップに戸惑う人も多かったようです。せめて「最後に悪いヤツをやっつけたぞ!」みたいな終わり方なら、観てる人の溜飲も下がったんでしょうけどねえ。

なお、マークたちがラスベガスを訪れた際、とある料理屋で会話する場面があるんですけど、そのシーンで流れている音楽に何やら聞き覚えが…。あれ?もしかして徳永英明の「最後の言い訳」じゃない?

最初、映画を観ている誰かのスマホから流れてるのかと思ったんですが、明らかに劇中のBGMなんです。外国映画を観ていて徳永英明の歌声が聞こえてくる違和感たるや…。どうやらこの曲、このシーンに合わせて監督がわざわざ選んだみたいなんですね。「いちばん近くにいても いちばん判り合えない」という歌詞の内容が、スティーヴ・カレルの表情と絶妙なマッチング効果を果たしていて、物凄い皮肉を感じましたよ。マット・デイモンの『オデッセイ』でもBGMの歌詞とシーンの状況がシンクロする場面がありましたが、まさか徳永英明の曲を持ってくるとは…よく見つけてきたなあ(^_^;)

40歳の童貞男 無修正完全版 [DVD]
ジェネオン・ユニバーサル (2012-04-13)

スティーヴ・カレルっていうとコレを思い出してしまう(^_^;)

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『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』DVD&ブルーレイ発売決定!

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日本を含め全世界で驚異的な大ヒットを記録し、つい先日(3月25日)劇場公開を終了したばかりの『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』が、早くもDVD&ブルーレイとしてソフト化されることになったようです。発売日は5月4日!

なんで5月4日なのかと言うと、スター・ウォーズに出てくる「May the Force be with you(フォースと共にあらんことを)」という有名なセリフを「May the 4th(5月4日)」に言い換えた語呂合わせで、海外ではルーカス・フィルム公認の「スター・ウォーズの日」なんだそうです。

ちなみに5月4日っていうと日本では「みどりの日」ですが、なんと一般社団法人の日本記念日協会も、5月4日を「スター・ウォーズの日」として正式に認定しているとか。いや〜、スター・ウォーズの人気って凄いですね〜!…と思ったら、海外では4月にブルーレイを発売するらしい。オイオイ、なんで日本だけ「スター・ウォーズの日」に合わせてるんだよ!?

まあそれはともかく、あの『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』のド迫力映像を自宅で思う存分堪能できるとあれば、ファンなら買うしかないでしょう。なお、スター・ウォーズと言えば毎回豪華な映像特典が楽しみなんですが、今回も2時間超えのメイキングが収録されているようなので嬉しい限り。あまりにも分量が多すぎて、いまだにコンプリート・サーガの特典を全部観賞し切れてないんですけど、それはそれとして(^_^;)

●メイキング映像

●カットされた未公開映像


どっちやねん!?内容が似すぎてて紛らわしい映画トップ10

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本日、テレビでチャニング・テイタム主演のアクション映画『ホワイトハウス・ダウン』が放送されます(僕の感想はこんな感じ↓)。

『ホワイトハウス・ダウン』映画感想

本作の内容をざっくり説明すると、「ホワイトハウスが謎のテロリスト集団に占拠されて大混乱に陥る中、大統領たちを救うために主人公が活躍する」というアクション映画です。公開当時は「ホワイトハウスを舞台にしたダイ・ハード」という触れ込みで結構話題になりました。

ホワイトハウス・ダウン [Blu-ray]
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント (2014-01-01)

しかし、この内容を聞いて「ん?」となった人も大勢いたんじゃないでしょうか。なぜなら、『ホワイトハウス・ダウン』の日本公開は2013年の8月ですが、その直前の6月に『エンド・オブ・ホワイトハウス』という非常に良く似た内容の映画が公開されていたからです。

ちなみに『エンド・オブ・ホワイトハウス』のストーリーは、「ホワイトハウスが北朝鮮のテロリスト集団に占拠されて大混乱に陥る中、大統領たちを救うために主人公が活躍する」という内容で、あらすじだけ聞くとほぼ一緒なんですよ(笑)。

当時、両方の映画を観た僕は『ホワイトハウス・ダウン』を観ながら、「あれ?2ヶ月前にもこういう映画を観たような気がするんだけど……デジャヴ?」などと軽く混乱。まあ、観てる時はさすがに区別できるんですが、何年か経って思い出そうとした時に、「え〜と、あのエピソードはどっちの映画だったっけ?」と記憶がゴチャ混ぜになっちゃうんですよねえ。

このように、海外では「設定やストーリーが異様に酷似した映画が、なぜか同時期に公開される」という不思議な現象が起きることがあります。理由は色々あるのでしょうが、ハリウッドでは「今観客にウケる映画は何か?」ということを常にリサーチするスタッフがいて、タイムリーなトピックがあれば即座にそのネタを使ったストーリーを複数の脚本家に書かせるというシステムを取っています。

そうなると当然、同じようなことを考える人が出てきても不思議じゃないわけで、その結果、別々の映画会社から偶然良く似た内容の企画が立ち上がってしまうのでしょう(いわゆる「ネタがかぶる」ってヤツですね)。公開時期がズレていればまだいいんですが、「2013年の”ホワイトハウスがテロリストに占拠される映画”、観た?」とか聞かれたら、「どっちだよ?」と言わざるを得ません。というわけで本日は、「内容が似すぎてて紛らわしい映画」をいくつかまとめてみましたよ。


●『ダンテズ・ピーク』と『ボルケーノ』(1997年)

どちらも「火山が噴火してエラいことになる」という災害映画です。『ダンテズ・ピーク』の方は、実際に起きた「セントヘレンズ山の噴火」をモデルにしているのに対し、『ボルケーノ』の方は「ロサンゼルスで噴火が勃発」という凄い設定になっていたのが印象的でした。

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●『アルマゲドン』と『ディープ・インパクト』(1998年)

どちらも「地球に巨大隕石がぶつかりそうになったため、宇宙飛行士たちが命懸けで危険な任務に挑む」というSF映画です。『アルマゲドン』はマイケル・ベイ監督の力技的な破天荒演出が冴えまくり、『ディープ・インパクト』はミミ・レダー監督の描く繊細でドラマチックな群像劇が素晴らしかったです。正直、同じ内容でもここまで違う映画になってしまうのかと驚きました。

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●『アンツ』と『バグズ・ライフ』(1998年)

どちらも「アリを擬人化したCGアニメーション映画」です。『アンツ』がドリームワークス、『バグズ・ライフ』がディズニー/ピクサーの製作で、『アンツ』の方がやや大人向けという印象でした。

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●『レッドプラネット』と『ミッション・トゥ・マーズ』(2000年)

どちらも「火星を舞台にした宇宙SF映画」です。個人的にはブライアン・デ・パルマ監督の『ミッション・トゥ・マーズ』に期待してたんですけど、実際に観てみたら「なんじゃこりゃ?」と思うようなラストに幻滅しました。

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●『ターナー&フーチ/すてきな相棒』と『K-9/友情に輝く星』(1988年)

どちらも「犬とコンビを組むことになった警察官」というコメディ映画です。『ターナー&フーチ』はお笑い要素が強く、『K-9』はアクション要素が強い感じですね。

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●『アビス』と『リバイアサン』(1989年)

どちらも「海底の採掘基地で働く作業員たちが得体の知れない”何か”に遭遇する」という映画です。世間的には『アビス』の方が有名だと思いますが、『リバイアサン』の監督は『カサンドラ・クロス』や『ランボー/怒りの脱出』を撮ったジョージ・P・コスマトス、主演は『ロボコップ』のピーター・ウェラー、音楽は『オーメン』や『エイリアン』等のジェリー・ゴールドスミスという、非常に豪華なスタッフが揃っていて逆に意外でした。

アビス(完全版) [DVD]
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●『地獄の変異(ザ・ケイヴ)』と『ディセント』(2005年)

どちらも「地下洞窟を探検していた主人公たちが恐ろしい化け物に襲われる」というサバイバル・ホラーです。ただ、世間の評価は圧倒的に『ディセント』の方が高いようですね。『地獄の変異』も悪くはないんですが、『ディセント』の方は「探検する6人が全員女性」という点でポイントを稼いでるんでしょう(笑)。

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●『プレステージ』と『幻影師アイゼンハイム』(2006年)

どちらも「あるマジシャンのトリックを探るうちに恐ろしい真相に辿り着く」というサスペンス映画です。個人的には、『プレステージ』のラストで「そんなトリックがあっていいのか?」と悪い意味で意表を突かれてガックリきました。あれはどうなんだろう…(-_-;)

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●『スノーホワイト』と『白雪姫と鏡の女王』(2012年)

どちらも「グリム童話の白雪姫を原作としたファンタジー映画」です。そりゃ一緒の内容になるわ(笑)。なお、『スノーホワイト』の魔女をシャーリーズ・セロンが演じているため、「この世で一番美しいのは白雪姫です」という鏡のセリフに説得力がなくなったように見えるのは気のせいでしょうか?どう見ても魔女の方が美人なんだけど(^_^;)

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ジェネオン・ユニバーサル (2013-06-05)

●『はやぶさ/HAYABUSA』と『はやぶさ 遥かなる帰還』と『おかえり、はやぶさ』(2011年〜2012年)

3作品とも「小惑星探査機”はやぶさ”をめぐるドラマを描いた映画」です。全部観たんですが、個人的には『はやぶさ 遥かなる帰還』が良かったです。渡辺謙、江口洋介、夏川結衣、吉岡秀隆、石橋蓮司、藤竜也、山崎努など、出演者も豪華で見応えがありました。なお、この他にも『HAYABUSA BACK TO THE EARTH』というドキュメンタリー映画も公開されているらしい。はやぶさ映画、作りすぎだろ!

はやぶさ/HAYABUSA [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2014-11-21)


成功?失敗?アニメや漫画の実写化を4パターンに分類してみた

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先日、荒川弘の大ヒット漫画『鋼の錬金術師』が実写化されるというニュースがネット上で話題になり、「また実写化か…」「絶対に失敗すると思う」「マジでやめろ!」など、あっという間に批判的なコメントがTwitterに溢れ、ついには「#お前ら何の実写化なら喜ぶんだ」というハッシュタグがツイートされるほどの大騒ぎになった(ちなみに実写版ハガレンの出演者はこんな感じらしい↓)。

こういう騒ぎを見るたびに、「ああ、相変わらずアニメや漫画の実写化は世間に嫌われているんだな〜」と思い知らされ、微妙な気持ちになってしまうのだ。いや、もちろん僕だって自分の好きな漫画がヘンな感じに実写化されたらいい気持ちはしないと思うし、場合によっては批判もするだろう。ただ、世間の人々はどうも「実写化自体が許せない!」という風潮になってるような…。

まあ、理由は分からなくもない。今まで数多くの原作が実写化され、「やったー!あの人気漫画がついに実写化されたぞ!」と期待に胸を膨らませるものの、そのたび毎に何度も裏切られ続けてきたわけだから、「どうせ今度もダメに決まってる」と悲観的な気分になっても無理はないというか、むしろその気持ちは痛いほど分かる。

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だがしかし!本当にアニメや漫画の実写版はつまらないものばかりなのだろうか?いや、そんなことはない。「面白い実写版」も確かに存在するはずだ。ただ、全体における「アニメや漫画の実写版」の割合があまりにも多すぎて、「面白くない実写版」が面白い方を大幅に上回っているだけじゃないのかと。

そしてもう一つ、「成功と失敗を区別する基準が明確に定まっていない」という点が、評価を曖昧にしている要因なのでは?というわけで本日は、アニメや漫画を実写化した場合に多く見られる傾向について、4つのパターンに分類してみた。以下、その内訳を具体的に検証していきたい(なお、今回はアニメや漫画を実写化した場合のみで、小説やゲーム等は含みません)。


●パターンA:「原作を忠実に再現し、作品自体も面白い」

恐らく、これが一番理想的なパターンだろう。原作キャラクターのイメージにぴったりな役者をキャスティングし、原作の重要なエピソードを物語にしっかり取り入れ、世界観を完璧に映像化し、なおかつその作品自体が抜群に面白かったら、原作ファンも全員納得できるに違いない。

それどころか、「ぜひあの漫画を実写化してくれ!」とオファーが殺到するはずだ。これこそがまさに、アニメや漫画の実写版が目指すべき到達点ではないだろうか?例えば、ハリウッドでは近年アメコミの実写映画が頻繁に製作されており、かなりの確率で成功を収めている様子。

残念ながら日本では、まだこういうパターンでの成功例はないようだが、ぜひとも頑張って実現して欲しい(というより、単に僕が知らないだけかもしれないので、「あるぞ!」という場合は作品名を教えてください)。


●パターンB:「原作とは異なるが、作品自体は面白い」

キャラクターが似ていない、色んな設定が違う、ストーリーがほぼオリジナル、でも作品そのものはかなり面白い。こういうパターンはどう評価すればいいのだろう?原作ファンからすれば、「お気に入りのあのキャラが全く再現できてない!」と腹が立つのかもしれない。しかし、個人的には「これこれでアリなんじゃない?」と思う。

例えば、窪塚洋介が主演した実写版『ピンポン』は、「卓球を通して描かれる青春ドラマ」という内容自体が最高に面白く、脇を固めるキャラも魅力的で音楽もかっこいい。…という具合に全体的な完成度は非常に高いんだけど、原作ファンに言わせると再現度がイマイチらしい(う〜ん、そうかな〜?)。

また、佐藤健が主演した実写版『るろうに剣心』は、”時代劇”という日本映画定番のフィールドに、スピード感溢れる新感覚のチャンバラ活劇を組み合わせることによって、極めてハイレベルなアクション映画を作り出していた。

るろうに剣心 DVDスペシャルプライス版
アミューズソフトエンタテインメント (2014-07-02)

その反面、「武井咲の薫はミスキャスト」、「左之助と弥彦のキャラが変わりすぎ」、「あの”牙突”だけは許せない!」など、原作ファンの反発も多かったようだ。結果、「これは『るろうに剣心』の実写版ではなく、”アクションが凄い時代劇”として見れば面白い」と評するファンも大勢いたという。

他にも、『デスノート』、『ALWAYS 三丁目の夕日』、『クローズ ZERO』、『テルマエ・ロマエ』、『カイジ 人生逆転ゲーム』、『ヤッターマン』、『ライアーゲーム』など、高い評価を得ている作品はいくつか見られるものの、いずれも「原作の再現度」という点ではファンの期待を下回っているらしい。ただ…

あくまでも個人的な見解だが、こういう映画はもう”成功”ってことでいいんじゃないだろうか?いや、むしろこれを”成功”と言わなかったら、もはやアニメや漫画の実写版には”成功作品”が存在しないことになってしまうぞ。それはちょっと厳しすぎるんじゃないのかなあ。


●パターンC:「原作を忠実に再現しているが、作品自体は面白くない」

実写版『20世紀少年』のキャストが発表された時、多くのファンが「すごい!原作の特徴を完璧にとらえた見事なキャスティングだ!」と絶賛したそうだ。

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さらに監督の堤幸彦は、撮影現場に原作の単行本を持ち込み、1つ1つのシーンについて該当するページを確認しながら、キャラの配置やカメラアングルに至るまで、漫画に描かれている状況を忠実にトレースしてみせたのである。

まさに「漫画を実写化するとはこういうことだ!」と言わんばかりの素晴らしい再現度だが、そこまでして作り上げた映画が面白かったのか?と問われれば……正直微妙な感じだった。異論はあるかもしれないが、個人的にはあまり面白くなかったのである。

要は、「”面白い原作漫画”をそっくりそのまま実写化しても、必ずしも”面白い映画”になるとは限らない」ってことなのだろう。漫画は”漫画にしかできない表現方法”を駆使して物語を描いているわけで、それを単純に実写へ当てはめても”利点”が失われてしまうだけで映画として成立しない。

つまり、漫画を実写化する際には、実写映画ならではの表現方法を活かすために”チューニング”が必要なのだ。この『20世紀少年』も、原作の魅力をさらに増幅させるような要素が付加されていれば、もっと良質な映画になり得る可能性もあったのに、そこが非常に惜しまれる。

とは言え、原作ファンの中には満足した人も多かったようで、「大好きな漫画のキャラクターが実写になったらこんな風になるのか!」という喜びの方が不満点を上回っていた模様。よって、こういうパターンの場合も、原作ファンの目線で考えれば”成功”と言えるのかもしれない。


●パターンD:「原作と異なる上に、作品自体も面白くない」

アニメや漫画を実写化する際に、最もあってはならないパターンが間違いなくこれだろう。「”お前誰やねん!?”としか言いようがない残念なキャスティング」、「主要なキャラが消えている」、「不要なキャラが増えている」、「設定は改変されまくり、見たいエピソードはほぼカット」、「無理やりねじ込まれたラブシーン」、「原作とかけ離れたオリジナルストーリー」、「再現性ゼロの世界観」など…

まさに原作ファンを激怒させる要素が満載であり、さらにこの上、「作品自体が全く面白くない」となったりしたら、「何のために実写化したんだよ!」「金返せ!」と苦情が殺到しても仕方がない。恐らく、「アニメや漫画の実写化はクソだ」と思っている人の大半が、実写化に対してこのようなイメージを抱いているのだろう。

じゃあ、実際にこういうパターンはどれぐらいあるのか?と考えた場合、何といっても筆頭は『デビルマン』だ。あの映画を初めて観た時の衝撃たるや、言葉に言い表せないほど凄まじかった。あまりにも凄すぎて記憶の一部が飛んでるほどだが、「何かとてつもないものを観た」という印象だけは今でも強く残っている。

それから、トラウマ級のインパクトを観る者に与えた『ドラゴンボール:エボリューション』も、忘れ難い一作と言えよう。なんせ原作者の鳥山明ですら、「脚本やキャラクター造りは”え?”って感じはありますが」「別次元の”新ドラゴンボール”として観賞するのが正解なのかもしれません」と異例のコメントを発表したぐらいなのだから只事ではない。

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一応、鳥山さんの指示通り、別次元の”新ドラゴンボール”として観賞したんだけど、「面白い」とは全く思えないほど酷い出来栄えに呆れ返ったよ。たぶん鳥山明自身も、「別次元の”新ドラゴンボール”」と言うだけでは我慢できなかったんだろう。数年後に『ドラゴンボールZ 神と神』が公開された際、以下のように発言している。

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わざわざアニメ版のパンフレットにまで「”たぶんダメだろうな”と予想していたら本当にダメだった某国の実写映画とは大違いです!さすが日本のアニメーションは優秀なんですね!」などと嫌味なコメントを載せるぐらいだから、よっぽど頭に来ていたに違いない。

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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン (2009-07-24)

あとは『ガッチャマン』も酷かったなあ。、松坂桃李、綾野剛、鈴木亮平、剛力彩芽など、人気若手俳優を多数キャスティングしておきながら、全く原作に似せる気がない意味不明なアプローチや、設定を改変しすぎてほとんど原型を留めていないストーリー展開など、『ガッチャマン』というタイトル以外は一切ガッチャマンらしさが感じられない残念すぎるクオリティーに批判殺到。

あまりにも実写版『ガッチャマン』がダメすぎて、「実は紀里谷和明監督って意外と優秀だったんじゃね?」と2004年に公開された実写版『キャシャーン(CASSHERN)』の評価が逆に高まるという、謎の現象が起きるほどだった。

とうわけで、アニメや漫画の実写化を4つのパターンに分類してみたんだけど、確かに原作に対するリスペクトが全く感じられない映画を観ると腹が立つし、「もう実写化なんてやめてくれよ!」と言いたくなるファンの気持ちも良く分かる(実際、このブログでもいくつか批判的な記事を書いている)。

ただ、少なくともパターンBのような「良く出来ている実写版」が存在することも事実ではあるし、今後パターンAのような作品が出てくる可能性も無くはないだろう。その可能性まで否定してしまうのは、ちょっと違うような気がするのだ(数の増加に比例して、クオリティーも少しずつ上がっていってるような…って気のせいか?)。

ちなみに、実写化に対する僕のスタンスとしては、「特別に何かを期待しているわけではない」が、「完全に拒否しているわけでもない」という感じである。もちろん、今まで数多くの実写版映画を観てきて、失望も散々味わってきた。それでも懲りずに観続けているのは、やはり「自分の好きな原作が実写になった姿を確かめたい」という気持ちがあるからなのかもしれない。

昨年公開された『海街diary』や『バクマン。』は面白かったし、現在公開中の『ちはやふる』も、かなり評判がいいようだ。あとは、もうすぐ公開予定の『アイアムアヒーロー』や『テラフォーマーズ』などがどれほどの出来栄えなのか、ぜひ自分の目で確認したい。まあ、だいぶ不安な作品もあるけどね(^_^;)


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実写映画『バクマン。』はなぜ成功したのか?ネタバレ解説


日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?

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最近、とある外国人の「日本映画のレベルは本当に低い!」という発言が話題になっているらしい。英国の映画製作・配給会社の代表を務めているアダム・トレルさんによると、「以前はアジア映画の中で日本の評価が一番高かったけど、今では韓国、中国、台湾やタイなどにお株を奪われて、日本映画はレベルがどんどん下がっている。ちょっとやばいよ」とのこと。

さらに、昨年公開された実写版『進撃の巨人』を取り上げ、「日本映画の大作、例えば『進撃の巨人』はアメリカのテレビドラマっぽくて凄くレベルが低い。何でみんな恥ずかしくないの?」などと屈辱的な発言を連発し、日本映画を徹底的に批判したのである。


「レベルが本当に低い!」 英国配給会社代表、日本映画に苦言


この意見に対し、日本の映画関係者から反論があった。ツイッターに投稿されたコメントを読むと「”今の日本映画はつまらない”とか言う人間は、予算の無い現場でスタッフがどれほど頑張っているか、その苦労を知ってんのか!?」などと、かなり激怒しているらしい。

ところが、この反論を見たネットユーザーから、「現場の苦労と作品の良し悪しは関係ない」「感想や批判から逃げてるだけだろ」などの意見が相次ぎ、「日本映画側を擁護」どころか、逆に炎上する騒ぎとなってしまった。


邦画関係者「邦画をクソというな!頑張ってるんだぞ!」という意見がまさかの大炎上


世間の反応を見てみると、アダム・トレルさんの「今の日本映画はレベルが低い」という発言に対して、「そんなことはない!」との意見がある一方、「悔しいけどそれが現実」「認めざるを得ない」と考えている人も少なくないようで、かなりの議論が交わされているようだ。

僕個人の意見としては、実写映画版『進撃の巨人』を目の前に突き付けられて「恥ずかしくないの?」と問われれば、「とても恥ずかしいです…」としか言いようがないんだけど(笑)、まあそれはそれとして「昔の映画に比べてレベルが下がってる」という説には異論が無くはない。

ただ、日本映画のレベルが下がった理由として、アダムさんは「予算不足」、「製作委員会方式の弊害」、「映画評論家が作品をきちんと批判していない」などの問題点を指摘していて、「なるほど、それは確かにもっともだな」と思える部分も多い。さらに、僕はそれらの理由に加え「テレビ局の責任」もあるんじゃないかなあと感じたので、以下に詳しく書いてみる。


●映画とテレビ局の関係

まず、日本国内の歴代興行収入ランキングで「アニメを除いた実写邦画作品」を見てみると、1位は174億円を稼いだ『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』、2位は110億円の『南極物語』、3位は101億円の『踊る大捜査線 THE MOVIE』となっており、トップ3が全てフジテレビの製作となっている。

さらに、4位以下は『子猫物語』(フジテレビ)、『ROOKIES 卒業』(TBS)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(TBS)、『HERO』(フジテレビ)、『THE LAST MESSAGE 海猿』(TBS)、『花より男子ファイナル』(TBS)という具合に、実写日本映画の歴代上位はほぼテレビ局の映画で占められていることがわかる(興行の順位では宮崎アニメの圧勝だけど)。


●映画製作のきっかけはフジテレビ

では、テレビ局が映画を作るようになったのはいつからだろう?と思って調べてみたら、1969年に公開された『御用金』という時代劇が最初らしい。監督は五社英雄、出演は仲代達矢、丹波哲郎、司葉子、浅丘ルリ子、田中邦衛、夏八木勲、西村晃、東野英治郎など、豪華なスタッフが集結し、国内外で大評判になったという。

この映画を作ったフジテレビは、テレビ局として史上初となる劇場用映画製作への進出を果たし、以降の日本映画界を牽引していくことになる。その大きな転換点が、1983年に公開された『南極物語』だ。

南極物語 Blu-ray
ポニーキャニオン (2013-07-26)

「南極大陸に取り残された兄弟犬タロとジロが、1年後に越冬隊員と再会する」という実話をベースに創作されたこの映画は、国内で1200万人の観客を動員し、当時の日本映画の歴代映画興行成績(配給収入)1位を記録するなど、史上空前の大ヒットを叩き出した。

この大ヒットの要因は、フジテレビがメディアの底力をフル活用した「大規模な宣伝効果」のおかげである。フジサンケイグループの総力を結集した大々的なキャンペーンが連日のように繰り広げられ、『笑っていいとも!』を始めとしたあらゆるテレビ番組にもタロとジロが出演しまくり、視聴者から「電波の私物化だ!」とクレームが来るほどだったという。


●テレビ局の快進撃

『南極物語』の大ヒットによって「映画ビジネス」のコツを掴んだフジテレビは、『ビルマの竪琴』や『私をスキーに連れてって』など、次々とヒット作を連発する。そして、第二の転換点が1998年に公開された『踊る大捜査線 THE MOVIE』だ。

この映画は劇場オリジナル作品ではなく、テレビで放映されていたドラマシリーズを映画化したもので、「テレビ番組の映画化なんて当たるはずがない」という当時の常識を覆し、とてつもない大ヒットを記録した。これに驚いたのが他局のテレビ関係者である。「うちもやらねば!」と続々と映画に乗り出し、以降、テレビ局各社による新たな映画製作の動きが加速していったのである。

さらに、2003年には『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』が公開され、174億円という凄まじい興行成績を樹立!この大記録はいまだに破られておらず、現在もなお邦画実写作品の歴代1位に君臨し続けている。

これをきっかけとして、「テレビ局が映画界をリードする流れ」が本格的に始まった。日本テレビは『ALWAYS 三丁目の夕日』、『デスノート』、『20世紀少年』など、TBSは『世界の中心で、愛をさけぶ』、『いま、会いに行きます』、『日本沈没』など、テレビ朝日は『トリック劇場版』、『相棒 劇場版』、『男たちの大和/YAMATO』など。

各テレビ局が映画を作り、それを自社のメディアで宣伝し、多くの観客を呼び込んで大ヒット、という図式が定着していったのである。それは、これまでの「洋画が邦画よりも強い」という力関係が逆転し、完全に「邦高洋低」の時代へ突入したことを意味していた。


●テレビ局が作る映画の問題点

これだけを見てみると、「別に悪いことじゃないじゃん」って感じかもしれない。確かに、自国のコンテンツがヒットするのはいいことだし、業界全体が活気づくのも歓迎すべきことではある。しかし、実はいくつかの問題が潜んでいるのだ。

そのうちの一つが、冒頭で取り上げた「外国人の目から見るとレベルが下がっているように見える問題」だろう。こういう風に見える原因は、日本のテレビ局が作っている映画の多くが、日本人にしか分からない、あるいは日本人だけが楽しめる内容に特化しているからだと思われる。

では、なぜそんな内容になってしまうのか?テレビ局が製作する映画にヒット作が多いのは、宣伝の力も当然あるが、それだけではない。テレビ局のスタッフは、常に高い視聴率を取ることをビジネスモデル的に背負わされている。

そのため、どんな映像がウケてどんなストーリーがヒットするか、今の日本人に最適なコンテンツを日々リサーチし続けている。つまり、ヒット作を生み出すノウハウを知り尽くしているわけで、そのテレビ局的なノウハウが今の日本映画に投入されているのだ。

しかし、こういう手法で作られた映画は当然ながら海外の観客にはウケないし、面白いと思ってもらえない。日本人の琴線に触れる要素のみで構成されているため、日本の観客に対して強くアピールできる反面、海外の観客は興味を示さないし、それどころか「バイヤーに作品を買ってもらえない」という状況にすら陥っているのだ。

このような現象は、黒澤明や小津安二郎の時代にはあり得なかったことである。それ故に最近の邦画を観た外国人は「今の日本映画は…」みたいな感想になってしまうのだろう。

これに対して、「いや、ちょっと待て。俺は日本人だけど『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』を観て1ミリも面白いとは思わなかったぞ!」という人がいるかもしれないが、だったらなぜそんな映画が邦画実写映画の歴代ナンバーワンになっているのか?その理由を良く考えてもらいたい。


●『踊る大捜査線』の大ヒットがもたらした功罪

テレビ局が映画を作るようになって、日本映画は活気を取り戻した。それは間違いなく”功”だと言える。一方、”罪”の面は先に述べたように「日本の国内向けに特化してしまったこと」。そしてもう一つは、「観客の志向を大きく変えたこと」だろう。以下、日本経済新聞社の白木緑さんが『踊る大捜査線 THE MOVIE』について語ったコメントより抜粋してみる。

今の日本映画の多くは、簡単に答えが出るのものばかりです。「泣ける」とか「笑える」とか、一言で片づけられるもの。そういう、「安直な感動」とでもいうべき映画がヒットするのです。人生について深く考えさせられる映画に足を運ぼうという人は、以前より減っていると思います。『踊る大捜査線 THE MOVIE』には、観客をそんな風に口当たりの柔らかい作品に慣らしてしまった”罪”があります。


本当の”映画的興奮”とは、複雑で、噛めば噛むほど味があって、噛み切れないし飲み込めないというような作品にこそ宿ると思うのですが、今の観客は「そういうものは別にいらない」「面倒くさい」と思うようになってしまったのです。


昔は「テレビドラマみたいな映画」というのは、決して褒め言葉ではありませんでした。しかし今では、むしろ若い人たちが観たい映画の代名詞になっているのです。ここからわかるのは、観客の志向が、「すでに知っているものにお金を払う」という風に変わっているということです。 (「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」より一部抜粋)

「踊る大捜査線」は日本映画の何を変えたのか (幻冬舎新書)

幻冬舎

『踊る大捜査線 THE MOVIE』について10人の識者が語った本。肯定ばかりでなく否定的な意見もあって面白い。

このコメントを読むと、日本映画が衰退した要因は、映画を観に行く観客側にもあるんじゃないかと思えてしまう。確かに、テレビ局が作った映画のおかげで邦画の観客動員数は以前より増えた。しかし、白木緑さんによると「彼らは映画ファンではない」という。

彼らにとって映画とは、ゲームやアニメや漫画やネットやテレビと同列にある”コンテンツ”の一つで、「映画を観に行っている」という自覚が無いそうだ。たまたまテレビでやっていたドラマを劇場でもやっているから、「じゃあ観てみようか」となっただけ。つまり、”観客のリテラシー”の問題なのだ。

そしてこのことは作り手側も認識しており、『踊る大捜査線 THE MOVIE』はわざとテレビドラマと同じ方法論で作られたという。普通なら「映画らしい内容に作り変えよう!」となるところを、亀山千広プロデューサーの意向で「テレビ版と同じにする。それこそが、テレビ版のファンが求めているものであり、彼らに対するサービスなんだ!」となったそうだ(そもそもスケジュール的に映画を撮る余裕が無かったらしい)。

こうして、観客に「2時間のテレビドラマでもいいや」「むしろそれが観たい!」と思わせてしまったことが、大ヒットに繋がったと同時に日本映画のレベルが低下した一因にもなっていると思われ、実に皮肉な結果と言わざるを得ない。


●日本映画の劣化が止まらない

では、業界関係者はこのような現状をどう思っているのだろうか?「『踊る大捜査線』は日本映画の何を変えたのか」の中で、映画監督の荒井晴彦さんが「日本映画の劣化が止まらない」という凄い題名の手記を掲載していたので、以下に抜粋してみる。

『踊る大捜査線』が当たって以降、映画を作る時もテレビのスタッフを起用するようになりました。それまでは、テレビ局が映画を作る際は、出資はするけれど、撮るのは映画のスタッフにまかせるのが慣例でしたが、『踊る』以降は映画の監督じゃなくて大丈夫だということになった。「映画の監督がつまらん作家性を出すよりも、テレビのスタッフが映画もやった方がかえって当たる」というわけです。


『踊る大捜査線』以降、日本映画界は興行的に息を吹き返したと言われています。確かにスクリーン数は増えているし、洋画の比率と邦画の比率では、邦画の方が興行成績はいいようです。でもスクリーンに映っているのは映画に似たものであって、本当の映画ではない。どんなに興行成績が良くても、全体の質としては劣化していると言わざるを得ない。やはり『踊る』の大ヒット以降、どんどん作り手が劣化し、観客も劣化しています。ひどい状況です。


という具合に、荒井晴彦さんは今の日本映画界に対して「作り手も観客も劣化している」と嘆いているようだ。特に、テレビ局の人間が映画のスタッフに成り変って映画を作るようになったことを不満に感じているらしい。う〜む…

思うんだけど、「邦画を観に来る観客が増えた」と喜んでいても、実は「映画ファンの総数」は変わってないんじゃないだろうか?ただ単に、今まで映画に興味が無かった人がたくさん劇場に来ただけで、それを「大ヒットだ!」と思い込み、そういう人たちに向けて「ウケる映画」を量産しているうちにどんどんレベルが低下して…という状況なんじゃないのだろうか?

荒井晴彦さんによると、それはもはや「映画に似たものであって、本当の映画ではない」ということらしいが、「大ヒット」という甘い誘惑と引き換えに、映画にとって”大切な何か”を失ってしまったような気がするなあ。


●映画とテレビの違いとは?

さて、テレビ局が日本映画界にもたらした様々な影響について書いてきたわけだが、最後に「映画とテレビの違い」について自分なりの考えを書いてみたい。

日本のテレビ番組は「主婦が家事をしながら見ていても内容が理解できるぐらい、分かりやすくなければならない」という不文律があり、映画を作る際にも「出来るだけ分かりやすく」という原則に則っているらしい。

それ自体は別に悪いことではないと思うが、日本の映画を観ていると、登場人物が自分の心情や起きている状況を「全てセリフで説明する」という、不自然な描写が堂々と出て来てウンザリすることが多々あるのだ。正直、これは非常にツラい。

さらに、主人公が大げさな身振り手振りで演技する「過剰な芝居」や、悲しいシーンで悲しい音楽を流す「泣かせる演出」など、最近の日本映画は説明過多なんじゃないの?と思ってしまう作品がとても多い。果たして、そこまで分かりやすくする必要があるのだろうか?

私見だが、映画とは「観客に何かを考えさせるメディア」だと思う。例え意味の分かりにくいシーンがあったとしても、観賞後に皆で色々なことを話し合ったり、一生懸命考えることによって、いつまでも心に残るものだし、心に残っている限り、その映画は観た人にとって”価値がある”ということなのだ。

一方、テレビは「不特定多数の視聴者に等しく情報を提供するメディア」であるが故に、どうしても「分かりやすさ優先」になってしまう。そしてテレビ局が作った映画にもその手法が適用され、誰が観ても良く分かる内容になりやすい。でも、そういう映画って「楽しいけどすぐに忘れてしまう」パターンが多いような気がするんだよねえ。

もちろん、作品によって傾向が異なるので、「どちらが面白いか」なんてことは一概には言えない。テレビ局が作った映画にも、面白い作品はたくさんあるだろう。ただ、映画とテレビの大きな違いは、まさにそういう部分だと僕は思う。そして、だからこそ映画は面白いのだと思う。



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パクリ?『僕のヤバイ妻』と『ゴーンガール』が酷似している件

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※以下、『僕のヤバイ妻』と『ゴーンガール』のネタバレがあります。

昨夜、フジテレビで『僕のヤバイ妻』という新ドラマが放送されたんだけど、「デヴィッド・フィンチャー監督のサスペンス映画『ゴーンガール』に良く似てるなあ」、「つーかソックリじゃん!」、「パクリじゃないの?」などと話題になっているそうだ。実際にテレビを視聴した人たちも、あまりの激似ぶりに驚いている様子。

デヴィッド・フィンチャー監督の『ゴーンガール』は、作家ギリアン・フリンのミステリー小説を原作に、ベン・アフレックとロザムンド・パイクの主演映画として2014年に公開されている。内容は「一見、幸福そうに見える夫婦だったが、夫のニック(ベン・アフレック)は妻エイミー(ロザムンド・パイク)との結婚生活に疲れ、若い愛人(エミリー・ラタコウスキー)と浮気を繰り返していた。そんなある日、突然エイミーが失踪する。しかし警察が捜索を続ける中、次々とニックに不利な証拠が見つかり、とうとう事件の容疑者にされてしまった」

「さらに愛人の存在もバレて、世間から批判が殺到。ニックの家には連日大勢のマスコミが押し寄せ、全国に”妻殺しの夫”と報道されてしまう。ところが、この事件は全てエイミーが仕組んだ狂言であることが判明!夫の浮気を知った妻が計画した”自作自演の失踪劇”だったのだ…」という物語である。

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一方、フジテレビの『僕のヤバイ妻』は、「一見、幸福そうに見える夫婦だったが、夫の望月幸平(伊藤英明)は妻の真理亜(木村佳乃)との結婚生活に疲れ、若い愛人(相武紗季)と浮気を繰り返していた。そんなある日、突然真理亜が誘拐される。しかし警察が捜索を続ける中、次々と幸平に不利な証拠が見つかり、とうとう事件の容疑者にされてしまった」

「さらに愛人の存在もバレて、世間から批判が殺到。幸平の家には連日大勢のマスコミが押し寄せ、全国に”不倫夫”と報道されてしまう。ところが、この事件は全て真理亜が仕組んだ狂言であることが判明!夫の浮気を知った妻が計画した”自作自演の失踪劇”だったのだ…」という物語である。

一応、ドラマの第1話では真理亜の狂言かどうかは明らかにされておらず、無事に発見された真理亜が「ニヤリ」と笑うシーンで終わるのみ。しかし、身代金の2億円を手に入れ、「これを預かっておいて下さい」という手紙と共に共犯者と思われる男(佐々木蔵之介)に渡す場面があることから、彼女の計画と見てまず間違いないだろう。

というわけで、2つのドラマを比較してみると、設定やストーリーがほぼ同じ構成だとわかって驚いた。あまりにも似ているため、「もしかして『僕のヤバイ妻』の原作が『ゴーンガール』なのでは?」と思って調べてみたが、どうも”完全オリジナル”のストーリーらしい。

脚本を書いた黒岩勉という人は、過去に『ストロベリーナイト』や『謎解きはディナーのあとで』や『LIAR GAME』などの有名ドラマを手掛けており、自分で小説も書いている。主にミステリーや心理サスペンス系が得意なようで、本作でも緊迫感溢れるシーンが印象に残った。

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まあ、現段階では『僕のヤバイ妻』が『ゴーンガール』のパクリなのか、それとも偶然似ているだけなのか判断できかねるが、どちらにしてもシナリオが上がってきた時点で「これ『ゴーンガール』に似てないっすか?」と指摘するスタッフが一人ぐらいいなかったのかなと。そこが気になるんだよねえ。

ちなみに僕の個人的な感想を述べると、「確かに『ゴーンガール』にそっくりだが、これはこれで面白い」という感じである。特に終盤の「主人公が身代金を持ってあちこち走り回る場面」は『ゴーンガール』には無い独自のスリルを生み出していて、『ゴーンガール』を連続ドラマにしたらこういう雰囲気になるのかも…と感心させられた。

また、キャスティングも絶妙で、「妻を裏切り殺人を企てようとするものの、逆に警察から疑われてアタフタする主人公」を演じる伊藤英明が『ゴーンガール』のベン・アフレックを彷彿させる。そして何より凄いのが、木村佳乃の存在感だ。

世間の人には「夫に尽くす貞淑な妻」と思わせ、しかし裏では恐るべき計画を着実に実行するという『ゴーンガール』のロザムンド・パイクと、イメージが実に良く似ているのだ。日本でロザムンド・パイクの役をやれる女優といえば、「木村佳乃しかいないだろう」と思わせるに十分なインパクトを放っている。

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なお、『僕のヤバイ妻』の第1話は木村佳乃が発見されるシーンで終わっており、『ゴーンガール』で言えばほぼ終盤に当たる。ここから2話以降のストーリーをどのように展開させるのか、非常に気になるところだ。もしかすると『ゴーンガール』とは全然違う物語になる可能性もあるので、ぜひ続きも見てみたい。


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ちょっとしたお知らせ

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どうも!管理人のタイプ・あ〜るです。

今日はちょっとお知らせしたいことがありまして…

本日、夜11時17分から

『雨上がりの「Aさんの話」〜事情通に聞きました!』

というテレビ番組が放送されます。


『雨上がりの「Aさんの話」〜事情通に聞きました!』


この番組は雨上がり決死隊さんが司会を務める情報バラエティで、

「さまざまな業界の“裏事情”を知る“Aさん”と呼ばれる人物から、

あまり知られていない特別な裏事情を紹介する」という内容なんですね。

f:id:type-r:20160426211733j:image

で、今回のテーマは「映画」なんですけど、

先月、番組を担当している人から連絡があって

「事情通のAさんとして、協力してもらえませんか?」

と依頼されたんですよ。


正直、ビックリしました。

「まんまとビックリした」といっても過言ではありません。そして

「いやいや僕は事情通じゃないし、協力できることなんてないですよ!」

みたいな話をしたんですけど、

まあ、なんだかんだで協力させていただくことになりまして。


最終的にどんな番組になっているのか、僕も知らないんですが

「面白い映画を見分けるコツ」みたいなことをロザンの宇治原さんが解説するようなので

興味がある人はご覧になってください(関西ローカルなので東京地区は見られないかも)。


ちなみに、僕は一切出演してませんので悪しからず(^_^;)


※追記


番組を見てみたら、僕の名前が出てました!ついにテレビデビュー!

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ん……?

「1年365日毎日映画を観る映画マニア」って……

ブログのタイトルは「1年で365本ひたすら映画を観まくる」なんだけど

微妙に意味合いが変わってるような……

決して毎日観ているわけではなくて、週末にまとめて観まくって

その結果、年間トータルで365本以上になってるという意味なんだけど

まあ、細かいことはどうでもいいか(^_^;)

『僕のヤバイ妻』が『ゴーンガール』に似ている件(その2)

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先週、「フジテレビで始まった『僕のヤバイ妻』というドラマが『ゴーンガール』に似ている」という記事を書いたが、第2話を見るとますます『ゴーンガール』に似ていて愕然とさせられた。もう、完全に同じ物語である。

再度あらすじを振り返ってみると、「夫の浮気に気付いた妻が、夫に復讐するために”自作自演の失踪”を計画。夫が疑われるような証拠をわざと残し、それが原因で警察から問い詰められ、自宅にはマスコミが殺到するなど大騒ぎに…」という物語である(両方とも)。

第1話では、「行方不明になった妻が家に帰ってくる」という場面で終わっていたが、これは『ゴーンガール』でいうとほぼ終盤であり、あとは「真相を知った夫が妻と離婚しようとする」とか、それぐらいしかエピソードは残っていない。

しかし、連続ドラマはこの後もまだまだ話が続いていくので、「ここから先はオリジナルの展開になるのかな?」と思っていたら、なんと妻の犯行をプレイバックするという、『ゴーンガール』の中盤の展開をやり出した。

しかも、「妻が自分の血を抜いて床に撒き散らし、それをふき取って暴行されたように見せかける」という手口までそっくりだ。違う点は、『ゴーンガール』の妻は単独犯なのに対し、ヤバイ妻は2人の共犯者を従えた複数犯である点ぐらいだろう(他にもあるけど)。

どうやら、この後は「妻が奪った2億円を誰が手にするか?」という”争奪戦”になりそうな感じだが、さすがにもうオリジナルの展開になるよねえ。視聴率も伸び悩んでるみたいだし、果たしてどこまで面白さを維持できるか…


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テレビに出てしまいました!

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どうも!当ブログの管理人のタイプ・あ〜る(type-r)です。

皆さん、いかがお過ごしでしょうか?

先日もちょっとお知らせした件ですが、私、テレビに出てしまいました!

と言っても名前だけなんですけどね(笑)。


関西のABCテレビで毎週火曜日の夜11時17分から放送している

『雨上がりの「Aさんの話」〜事情通に聞きました!』

というテレビ番組がありまして、

その中の1コーナーで僕の名前が取り上げられたのですよ。

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雨上がり決死隊さんが司会を務めるこの情報バラエティ番組は、

「毎回さまざまな業界の“裏事情”を知っている人物から、

あまり知られていない特別な情報を聞き出して紹介する」

という内容です。


今回はテーマが「映画」になったことで僕に声が掛けられたんですが

じゃあ、どうしてそういう話になったのか、簡単に経緯を説明すると…


まず先月、とある人からメールが届きまして。読んでみると、

「大阪の朝日放送でテレビ番組を制作している○○と申します。

今度、『雨上がりの「Aさんの話」』という番組で

映画に関する特集を放送することになりました。

そこで色々なサイトを調べていたところ、

たまたまタイプ・あ〜るさんのブログを見つけたので、

企画の参考にお話を聞かせていただきたく、連絡させてもらいました」

とまあ、こんなことが書いてあったわけです。


正直、「何かの間違いでは?」と思いましたよ。

テレビ局が本当に「映画」の特集を企画しているとしても、

なぜ僕みたいな素人に相談するんだ?と。

もっと他に有名な映画通はいるんじゃないの?と。

しかし、添付されていた企画書を読むと、結構マジなやつだったんで

「むむ、これは……マジだ」と少しビビリました。

素人の映画ブログでも、長く続けてるとこういうことがあるんだなあ(^_^)


その後、担当者とメールで何度か打ち合わせをして、

企画の趣旨に合うような情報を記事化して送ったり、

最終的には担当者と直接電話で話し合ったり、

割とガッツリやり取りしたわけですよ。


今回のテーマが「良い映画を見つける方法」となっていたので

自分なりに実践していることを色々提案しました。

「ダメな映画の見分け方」とか「予告編を見る際の注意点」とか

「事前に面白そうな映画の情報を収集するコツ」とか。


そしたら、オンエアされた映像ではほとんどカットされてて

「ええええ…これだけ?」みたいな(^_^;)

○○○さんに関するエピソードを話した時は、

「それ面白いですね!ぜひやりましょう!」

てな感じでノリノリだったのになあ(苦笑)。

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しかも、せっかくロザンの宇治原さんが

「タイプ・あ〜るさんはこんな映画マニアで…」みたいに紹介してくれたのに、

たいしてお役に立てなかった感じで反省しきり。申し訳ない(-_-;)

でもまあ、テレビに名前が出る機会なんて滅多にないので、

これはこれで面白かったです。いい経験をさせてもらいました(^_^)

大泉洋主演/実写映画『アイアムアヒーロー』ネタバレ感想/評価

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■あらすじ『漫画家のアシスタントとして冴えない日々を送る35歳の鈴木英雄(大泉洋)は、ある日、徹夜仕事から帰宅したところ、”腐った死体”に成り果てた恋人(片瀬那奈)に襲われる。なんとか逃げ出した英雄だったが、すでに街中が恐ろしい怪物で溢れ返っていた。それらは“ZQN(ゾキュン)”と呼ばれ、謎の感染パニックが日本中に広まっていることが判明。化け物から逃れて富士山を目指していた英雄は、その道中で女子高生の比呂美(有村架純)と出会い、一緒に行動を共にするが、やがて彼女の身にも恐ろしい現象が起こり始めた…。花沢健吾の大ヒット・ゾンビ漫画を、「GANTZ」や「図書館戦争」シリーズの佐藤信介が迫力のバイオレンス・アクションと臨場感あふれるパニック描写で描き出す驚愕のゾンビホラー超大作!』


※この記事にはネタバレが含まれています。映画を観ていない人はご注意ください。


どうも!管理人のタイプ・あ〜るです。いよいよゴールデンウィークが始まりましたが、皆さんいかがお過ごしでしょうか?ゴールデンウィークといえば映画ですよね?というわけで、早速『アイアムアヒーロー』を観て来ましたよ(^O^)/

実は正直、観るまではそんなに期待してなかったんですよね。「なんだ、また人気漫画の実写化かよ?」と。しかも花沢健吾の原作は結構エグい描写も多いから、「どうせ忠実に実写化できるわけがない」と。「たぶんゴールデンウィークの家族連れでも楽しめるような、ゆる〜いパニック・ホラーになってんだろうな〜」と。そんな風に思ってました。が……


とんでもない!めっちゃハードなスプラッター映画だよ!

ゾンビの描写も強烈にグロくて、完全に子供が泣き出すレベル!

”ゆる〜い”どころか、全く家族連れに配慮してない!

こんな映画をゴールデンウィークに公開するなんてどうかしてる!


とまあ、こんな感じで実写映画版『アイアムアヒーロー』は、近年世間で広まっている「アニメや漫画の実写化批判」にカウンターパンチを喰らわせるような、原作ファンもゾンビ好きも狂喜乱舞の壮絶ゾンビ・ホラー映画に仕上がっていました。いや〜凄い!


●本気でゾンビ映画を作っている

何が凄いって、累計600万部を超える大人気マンガの実写化で、主演に大泉洋、ヒロインに有村架純や長澤まさみなど、大メジャーな役者をキャスティングし、韓国ロケやゾンビのメイクに破格の予算を投じて、天下の東宝が配給するという堂々たる大作映画なのに、やってることはB級ジャンルの「ゾンビ映画」ってところですよ。

今も昔も「ゾンビ映画」とは”低予算・手軽な題材”の代名詞であり、『桐島、部活やめるってよ』でも主人公はゾンビ映画を撮っていたし、『スーパー8』でも子どもたちはゾンビ映画を撮っていました。つまり、「素人でも撮れるハードルの低さ」が(作り手側から見た)ゾンビ映画の利点だったわけです。

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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2011-12-02)

このため、世界中でゾンビ映画が次々と作られ、当然、日本でも山ほど作られました。特に日本では特殊メイクにこだわる人が多いらしく、井口昇監督や西村喜廣監督の映画を観ると、だいたい「ドビューッ!」と派手に血飛沫が飛び散ったり、グチャグチャに人体が破壊されたり、そういうシーンが大量に出てきますよね。

このような「日本製ゾンビ映画」の特徴として挙げられるのが、例えば同じく日本製ホラー映画の『リング』や『呪怨』などに比べて、「陰惨なイメージを感じさせない」という点でしょう。『リング』を観た時は心底恐ろしかったのに対し、井口監督の『ロボゲイシャ』や『ゾンビアス』は(血がドバドバ溢れているのに)どこか”突き抜けた明るさ”があって、全く怖くないんです。

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この辺は恐らく、80年代に流行ったスプラッター映画の影響を受けていると思われます。当時、サム・ライミ監督やピーター・ジャクソン監督らが撮っていたその手の映画は、人体破壊の表現がエスカレートしすぎて、怖いというより”可笑しい”という領域に達していました。つまり、「頭部が破裂して脳みそが飛び散る映像」がエンターテインメントと化していたわけです。

『アイアムアヒーロー』も間違いなく”そっち系”の映画なんですけど、完全にメジャー路線で作っている点が大きな違いで、しかもメジャー向けに残酷描写をセーブするかと思いきや、逆にマイナー路線の映画よりもさらにグロく、もっと過激にスプラッター度がアップしているのだからすごすぎる!まさか手加減なしでアレを実写化するとは…(^_^;)

これって、画期的なことなんですよ。なぜなら、映画の製作規模が大きくなればなるほど「回収しなければならない金額」も増えるため、必然的に色々な制約も多くなるからです(観客動員数を増やすために残酷なシーンをカットしろ!とか)。では、どうして『アイアムアヒーロー』はここまで過激なグロ描写が可能だったのでしょう?


●テレビ局が関わっていない

佐藤信介監督によると、本作は最初からテレビ局が入らない企画だったそうです。普通、テレビが映画製作に介入すると、将来的に自社の放送枠で流すことを考慮するため、なるべく過激な表現を避けようとします。そうなると、せっかくゾンビ映画を作っても放送コードに引っ掛からないような”当たり障りのない映像”に成らざるを得ません。

ところが、テレビ局が参加しない『アイアムアヒーロー』にはそんな規制など何も無く、まさにやりたい放題!こうして、日本映画史上類を見ない残酷描写が実現したわけです。佐藤信介監督も「どうせやるならテレビドラマでは絶対に不可能な、劇場版ならではの映像表現を極めたかった」と述べている通り、R15指定でもまだ甘いのでは?と思わせるぐらい、圧倒的なバイオレンスシーンに驚愕しました。

そして、テレビ局が介入しないことで得られるもう一つのメリットは、「日本の市場に特化しなくてもいい」ということ。テレビ局主導で映画を作ると、どうしても日本人の好みに合わせた内容になりがちなんですが、『アイアムアヒーロー』はどちらかと言うと「海外市場を意識した作り」になっています。

その結果、本作はジャンル映画の祭典として知られるシッチェス・カタロニア国際映画祭で観客賞&最優秀特殊効果賞を、ポルト国際映画祭で観客賞&オリエンタルエキスプレス特別賞(優れたアジア映画に贈られる賞)を受賞。さらにブリュッセル・ファンタスティック国際映画祭でコンペティション部門のグランプリにあたるゴールデンレイヴン賞を受賞し、「世界三大ファンタスティック映画祭」を全て制覇するという前人未到の快挙を成し遂げました。素晴らしい!

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●日本映画はガラパゴス?

このように、『アイアムアヒーロー』は海外の観客にもその面白さが認められたわけですが、そもそもなぜ日本映画の多くが”日本人にしか受けない作り”になっているのかと言えば、日本の映画市場が大きすぎるからなんですよ。

日本の映画興行収入は世界的に見ても極めて巨大で、かつてはアメリカに次いで世界第2位の市場規模を誇っていました(今は中国に抜かれている)。そのため、無理に日本映画を海外に販売しなくても、国内でヒットすればそれだけで十分にビジネスとして成り立っていたのです。

韓国や香港、台湾やインドネシアなどの諸外国は市場が小さいため、自国だけでは投資した資金を回収できず、必然的に海外マーケットを考えながらの映画作りに成らざるを得ません。それに対して日本映画は、「とりあえず日本人の観客が喜ぶ映画を作っとけばOKでしょ!」みたいな感覚から抜け出せないどころか、そもそも「海外で認められる映画を作ろう」という発想すら無かったのですよ(詳しくはこちらの記事をどうぞ↓)。

日本映画のレベルが低くなったのはテレビ局のせい?

こういう状況を見て、最近では海外の映画関係者たちから「日本の映画はレベルが下がっている!」などと批判されたりしているわけですが、『アイアムアヒーロー』はそんな”ガラパゴス状態”からの脱却を図り、見事に結果を出して見せたのです。

まあ、日本の映画人口も年々減少しているし、今後は国内だけに頼らず、広く海外へ向けて映画を作っていく方向にシフトした方がいいのかもしれませんね(この件に関しては、ジェット・リョーさんのコメントが非常に的確だったので貼っておきます↓)。

●日本ならではのガンアクション

外国映画との違いをもう一つ挙げると、本作ではゾンビを倒すための武器として、刃物やボウガンなどに加えて”銃”が登場します。もちろん他の日本映画にも銃が出てくる作品はたくさんありますが、主に警察・ヤクザ・自衛隊員・犯罪者などで、一般市民が銃を持っているパターンはほとんどありません。言うまでもなく、日本では銃の所持が厳しく規制されているからです。

このため、アメリカ映画のように日常生活の延長線上で銃をバンバンぶっ放すような映画は作り辛いわけですが、本作はその弱みを逆手にとって、「主人公がなかなか銃を撃たない(撃てない)」という、日本ならではのガンアクションを編み出しているのですよ。

どういうことかと言うと、『アイアムアヒーロー』の主人公は一般市民ではあるものの、クレー射撃を趣味としていて散弾銃の所持許可を取得しています。なので、街中にゾンビが発生するという異常事態になれば、映画的には当然「撃たなきゃ!」って流れになるでしょう。

でも、鈴木英雄は真面目な性格が災いして法令を順守しようとする。つまり、銃を持っているのに撃たないんです。これは、アメリカ映画ではまずあり得ないシチュエーションで、観ているこっちは非常にストレスが溜まります。しかし、「早く撃てよ!」という不満が溜まるからこそ、耐えて耐えてついに主人公が銃でゾンビを倒した時に、とてつもないカタルシスが味わえるわけなんです。実に「日本人的なガンアクション」と言えるでしょう。


●どれぐらい忠実に実写化しているか?

さて、じゃあ実際に映画を観た感想はどうだったかといえば、まず主人公を演じた大泉洋さんが良かったです。最初、キャスティングが発表された時は「ちょっとイメージが違うんじゃないの?」と思いましたが、観てみると全く違和感なし。むしろ原作の鈴木英雄にそっくりで驚きました。顔の雰囲気とか全然似てないのに、これは不思議でしたねえ(なお、銃を構えるポーズが『レヴェナント』にそっくりw↓)。

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一方、有村架純さんや長澤まさみさんは…まあ、そんなに似てないというか、似てなくても別に問題ないというか、可愛いからOK(笑)。あと、似ているという点では中田コロリ役の片桐仁さんが(さすがにモデルだけあって)そのまんまでした(笑)。

そして内容の方は、原作の8巻ぐらいまでを2時間に圧縮しているため、エピソードの省略や多少の説明不足感は否めないものの、概ね原作を踏襲していて、腹が立つほどの大きな変更や変なアレンジはなかったかなと。「あの原作を2時間でまとめるなら、大体こうなるだろう」という許容範囲だと思います。

世間では最近、「アニメや漫画の実写化」に対して批判的な意見が高まっているようですが(まあ僕も全面的に支持しているわけではありませんが)、本作に関しては”成功作”と見なしてもいいんじゃないか?と。むしろこれを成功と言わずして、何を成功と言うのか?と。そんな感じでした。


●原作について

ちなみに僕は原作漫画を読んでいて、特に第1巻の”あの雰囲気”が好きなんですよね(読んでる人は分かると思いますが)。最初は日常の描写が淡々と続くだけで、特に何の事件も起きないんです。だから、「不甲斐ない主人公が漫画家を目指して悩み苦しむ青春ドラマかな?」と思ってたんですよ。ところが、1巻のラストでいきなり…!という驚愕の展開。

あの衝撃を、実写版ではどう再現するんだろうと思ったら、実写でもやっぱり日常風景を淡々と描いてました(笑)。35歳を過ぎても漫画家として独り立ちできない主人公に、「私はいつまで待てばいいのよ!」とキレる彼女や、編集部に漫画を持ち込んで「キャラに魅力がないんだよねえ」と批判されヘコむ姿など、ゾンビ映画とは思えぬ”普通のドラマ”がひたすら続きます。

ところが!主人公が気付かないうちに、周りでは少しずつ変化が起きていたのですよ。最初に感じたのはちょっとした違和感。それが次第に拡大して、最後はとんでもないことに…。この「ジワジワと日常が崩壊していく恐怖」をしっかり描いている点が実に素晴らしかったですねえ。

●ちょっと気になった点

さて、ここまでは主に良かったところを書いてきましたが、逆に「ここはちょっとどうかな〜」と思う部分もあるわけでして。例えば、「比呂美がキャラクターとして十分に機能していない」とか。いや、分かるんですよ。原作ではあの後、比呂美の能力が開花し、ZQN状態の視点から世界を見たり、他のZQNと意思疎通を図ったり、色々重要な役割を担うようになるんです。

だから、そこまでの展開を見れば比呂美というキャラの重要性がわかるんですが、映画版ではその前に話が終わってるから、比呂美の存在意義が薄くなってるんですよ。あの辺は無理に原作通りにしなくても、実写版独自のアレンジを加えた方が良かったのでは?と思いましたね(比呂美のバックボーンもほとんど語られないため、感情移入し難いし)。

また、ラストの大殺戮シーンは迫力があって良かったんですけど、そもそも大量のゾンビが押し寄せて来る状況を見て「うわ〜、もうダメだあ!」と絶望的な心境になる理由は、「例え銃を持っていても解決できないほどの苦境に追い込まれているから」だと思うんですよ。

それなのに、結局は銃で一匹ずつ倒していくという”全く意外性の無い方法”で非常事態を切り抜けられるのであれば、「うわ〜、もうダメだあ!」となる必要がないでしょう。しかも、機械的にズドンズドンと銃をぶっ放すだけのアクションは映像的な変化にも乏しく、見ているうちに段々と危機感が薄れてくる始末(つーか、あれだけの数とスピードでゾンビに襲われたら絶対に助からないよw)。この辺にもうちょっと工夫が欲しかったなと感じました。

あと、前半の街中がパニックになるシーンで、ZQNの群れの中に金髪のゾンビがいて「メイプル超合金のカズレーザーに似てるなあ」と思ったら本人だったという(笑)。撮影は2014年だから、「M-1グランプリ」に出る前にゾンビ役として出演していたみたいですね。でも、さすがに金髪ゾンビって目立ちすぎでしょ(^_^;)

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●色々あるけどやっぱりすごい映画だ!

この映画は、『アイアムアヒーロー』というタイトルでありながら、主人公は気が弱く臆病者で、ほとんど何の活躍もしていません。しかし、最後の最後で大切な人を守るために勇気を奮い起し、銃を手にしてゾンビの群れに立ち向かうのです。

そして、大量のゾンビをぶち殺した後、床に落ちていた帽子を拾って目深にかぶる、その姿のなんたる男らしさとカッコ良さ!この瞬間、彼は正真正銘のヒーローになったのですよ。つまり本作は、一人のダメ人間がヒーローへ生まれ変わるまでの過程を描いた成長ドラマであり、だからこそ、これだけグチャグチャでドロドロな映像にもかかわらず、ある種の”清々しさ”さえ感じさせるような爽快な映画になっているのです。

というわけで、良いところも悪いところも色々書いてきましたが、トータルすると『アイアムアヒーロー』は「アニメや漫画の実写化はつまらない」という世間の風潮など軽く吹き飛ばすような、”極めて質の高い実写化”と言えるでしょう。「漫画の実写化なんて、どーせまた原作レイプの駄作だろ?」などと考えている人にこそ観て欲しい作品です。

ただ一つ気を付けるべき点は、グロが苦手な人は要注意!ってこと。「人気俳優が出ているから観に行こうかな〜」などと軽いノリで観賞しようものなら、とんでもない目に遭いますよ!

今回、ゾンビの特殊メイクと造形を担当した藤原カクセイさんはゾンビに相当なこだわりを持っているらしく、好きなゾンビ映画を聞かれて「『サンゲリア』に決まってるじゃないか!」と即答するほどのゾンビ好きだそうです。なので、ゾンビの顔にウジ虫を這わすなど、今まで出来なかったリアルな表現をやれて大満足だったとか。

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”汚い系ソンビ”の最高峰との誉れ高い傑作ゾンビ映画

そんな藤原カクセイさんが思う存分腕を振るっただけあって、手足が千切れ、頭部が吹き飛び、内臓が溢れ出るなど、ありとあらゆるグロ表現が炸裂しまくり、撮影現場はおびただしい数の惨殺死体で足の踏み場もない状態だったらしい。あまりにも残酷描写が激しすぎて、監督の判断でやむを得ずカットされたシーンもあったそうです。えええ?まさか、カットした状態であのレベルだったなんて…。じゃあ元の映像はどんだけスゲーんだよ?

などと驚き呆れ果てるばかりなんですけど、特にクライマックスシーンの凄まじさたるや、まさに阿鼻叫喚の地獄絵図!総勢200人のエキストラがグチャグチャのゾンビに扮して猛然と襲いかかってくる場面と、その後に繰り広げられる空前絶後の人体破壊シーンは、トラウマになりそうなほどのインパクトでした。ブラッド・ピットの『ワールド・ウォーZ』にも大量のゾンビが出て来ましたが、はっきり言って「ゾンビの気持ち悪さ」では完全に本作の圧勝です。ゾンビ好きは必見!


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これは危ない!あり得ないほど危険な撮影が行われた映画10選

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先日、「映画史上最も危険な撮影が行われた13の映画」という記事がちょっと話題になっていたので読んでみた(『レヴェナント』や『マッドマックス怒りのデスロード』など、比較的新しい映画が多め)。


映画史上最も危険な撮影が行われた13の映画


これを読んで「なるほど、凄いシーンの裏側ではスタントマンやスタッフが大変な苦労をしてるんだなあ」ということが分かって感心したものの、同時に「何か足りない…」と思ってしまった。「映画史上最も危険な撮影」という割には案外そうでもない作品が混ざってたり。

つーか「危険な撮影」と言えば、やっぱり定番の”アレ”が入ってないとねえ。というわけで本日は、この記事で取り上げられていない作品をいくつかピックアップしてみましたよ。


●『プロジェクトA』

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「危険な撮影」と聞いて多くの映画ファンが思い浮かべる人物と言えば、間違いなくジャッキー・チェンだろう。『ポリス・ストーリー』では約30メートルのポールにつかまって地面まで落下し、脊椎損傷・骨盤脱臼・全身打撲の重傷。『サンダーアーム』では頭蓋骨骨折で生死の境をさまよい、『アクシデンタル・スパイ』では尾てい骨損傷で下半身不随になりかける等、まさに危険な撮影のオンパレードである。

そんな中でも最も人々の印象に残っているシーンを挙げるなら、やはり『プロジェクトA』の”時計台落下スタント”が最強ではないだろうか。高さ25メートルの時計台から落っこちて、首の骨に大変なダメージを負ってしまったジャッキーは、頸椎を損傷して身動きも出来ないほどの重傷だったにもかかわらず、なんと自ら撮り直しを要求。「気でも狂ったのか!?」と共演者のサモ・ハン・キンポーを仰天させたそうだ。

このシーンがハロルド・ロイドの『要心無用』のオマージュであることは良く知られている。しかし、『要心無用』がビルの屋上にセットを組んで高く見せていたのに対し、ジャッキーは実際に25メートルの高さから落下している点が大きな違いだ。『プロジェクトA』以降もジャッキーは撮影中に何度も死にかけ、今では「生きているのが不思議な俳優ナンバーワン」と化している。まさに命懸けの撮影と言えるだろう。

●『マッドマックス2』

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昨年公開された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』は、派手なカーアクションと斬新なスタントで多くの映画ファンの度肝を抜いた。しかしジョージ・ミラー監督によると、危険そうに見えても、実はスタジオで撮影した俳優の姿を車の運転席にCG合成するなど、安全面には十分に配慮していたらしい。

だが、1979年の1作目の『マッドマックス』では安全に配慮するような予算は無く、「スタントマンが死亡した」という噂が流れるぐらい、デンジャラスな撮影を強行していたとのこと(実際には誰も死んでないが)。さらに続編の『マッドマックス2』ではもっと危険度がアップし、カメラマンを車両の前面部分に縛り付けて猛スピードで走行する等、クレイジーな撮影が続出(あまりの恐さに、「もう一度やってくれ」と言われたカメラマンは全力で拒否したそうだ)。

中でも「バギーに突っ込んだライダーが宙を舞うシーン」が特に悲惨で、本来なら綺麗に放物線を描いてジャンプするはずだったのに、スタントマンの足がバギーに引っ掛かってクルクル回転しながら飛んで行ってしまい、股関節骨折の大惨事が勃発したのである。恐ろしい!

ジョージ・ミラー監督は「大丈夫!まだ一人も死んでないよ!」と豪語しているようだが、そういう問題じゃないだろう。なお、このシーンで重傷を負ったスタントマンのガイ・ノリスは、病院に搬送されて治療を受けた後、なんとその日の夜の撮影打ち上げパーティに松葉杖をつきながら参加していたという。不死身か!?


●『ビー・バップ・ハイスクール』シリーズ

「出演者のほとんどが本物のヤンキー」というとんでもない映画『ビー・バップ・ハイスクール』で主役を演じた清水宏次朗は、喧嘩のシーンで相手が本気で殴ってくるため(彼らに”寸止め”という概念はない)、常に撮影現場では危険な目にあいまくり、なんと3回も脳震盪を起こしたらしい。

そして「走っている電車の窓から下を流れている川に飛び込む」とか、「車椅子に縛り付けられたまま崖から落とされる」とか、信じられないような過酷なアクションを強いられ、どんどんストレスが蓄積(川へ落ちたのはスタントマンだが、水深が腰の高さぐらいしかなかったため、「ヘタしたら死ぬ」とまで言われるほど危険な撮影だった)。

このシリーズを手掛けた那須博之監督は、もともと日活ロマンポルノ『ワイセツ家族 母と娘』でデビューし、数本のポルノ映画を撮っていたが、以前から「アクション映画を撮りたい!」と切望していたらしい。このため、『ビー・バップ・ハイスクール』を依頼された時は嬉しさのあまり、次々と派手なアクションシーンを追加していったそうだ。

続編の『高校与太郎哀歌』でも、そんなアクション好きが高じてますます危険度がエスカレート。ついに監督が「トラックに乗った主人公が高さ30メートルの岸壁からダイブし、岸辺を航行中のタンカーの上に着地して大団円」みたいなアクションを撮ろう!などとメチャクチャなことを言い出し、スタッフや出演者を戦慄させた。しかし日本中のカースタントマンから拒否されたため、やむを得ず断念(出演者たちが安堵の涙を流す一方で、監督だけは残念がっていたらしい)。

さらにパート3の『高校与太郎行進曲』では、もう一人の主役の仲村トオルを(スタントマンも使わず)巨大な可動式クレーンに吊り下げて振り回すという前代未聞のアクションを強行。しかも、仲村トオルの真下では大量の火薬がドッカンドッカン火柱を上げて爆発しまくっているのだから、もはや完全に正気の沙汰ではない(爆破シーンがあることを知らされていなかった仲村トオルは、この撮影の後、人間不信に陥ったという)。

そしてシリーズ最終作『高校与太郎完結編』で、積りに積もった彼らのストレスや恨みがついに限界を超えた。ラストシーンを撮った直後、清水宏次朗が「お前も俺たちの苦しみを味わえ!」と叫んで那須博之監督を海に突き落としたのである。後に清水は当時を振り返り、「映画の撮影現場というより戦場でしたね。ほんと、死ななくて良かった、みたいな(笑)」とコメントしている。

なお、ヒロインの泉今日子役を演じた中山美穂は、共演者たちのルックスがあまりにも怖すぎて、この映画に出ることを本当に嫌がっていたという。小沢仁志に暴行されるシーンでは本気で泣き出してしまい、次回作の『高校与太郎哀歌』を撮った後、「もう二度と出たくない!」と会社側に訴えて降板してしまったのだ。どんだけ恐ろしい現場なんだよ…


●『蜘蛛巣城』

黒澤明監督の『蜘蛛巣城』は、主人公の三船敏郎が無数の矢を浴びるクライマックスが特に有名で、当初は「糸を付けた矢を何本も壁に刺しておいて、それを次々と抜いていく映像を逆再生したのでは?」と言われていたが、弓道部の部員が実際に三船敏郎めがけて矢を射ていたことが判明。あまりにも危険な撮影に、さすがの三船も思わず「俺を殺す気か!」と叫んだという。


●『トワイライトゾーン/超次元の体験』

テレビシリーズ『コンバット!』のサンダース軍曹役で人気スターになったヴィック・モローが、久々に重要な役を演じた作品。ところが、クライマックスシーンを撮影中、コントロールを失ったヘリコプターがヴィック・モロー目がけて落下。共演していた2人の子供と共にローターに巻き込まれて死亡するという不幸な事故が起きてしまった。その後、監督のジョン・ランディスは遺族から訴えられるものの、裁判で無罪になっている。


●『東方見聞録』

元々は総製作費8億円の超大作映画として企画された作品なのだが、映画会社の社長が借金返済のために4億円を使ってしまったため、実質は4億円。しかも、そのうちの3億円で巨大なオープンセットを建設し、残りは1億円になってしまった。このため、スケールの大きな作品内容に反し、現場は貧乏の極みだったらしい。

そして厳しい節約を強いられる中、重さ8キロの鎧を着たエキストラが滝つぼに落ちるシーンを撮影していたところ、そのまま水に沈んでしまい、意識不明の重体となって病院へ運ばれたが翌日死亡。遺族から訴えられた井筒和幸監督は、貯金を全て吐き出し、あちこちから借金しまくって支払ったという。

さらに劇場公開は中止され、製作会社は倒産、井筒監督は借金返済のために監督業から離れてCMやカラオケビデオの制作、バラエティ番組への出演などを余儀なくされた。なお、映画はこのままお蔵入りになるかと思われたが、1993年にビデオ発売されている。


●『クロウ 飛翔伝説』

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ジェネオン エンタテインメント (2009-06-24)

伝説的アクションスター:ブルース・リー。その息子のブランドン・リーが主演したこの映画は、撮影中に主役が死亡するという衝撃的な事故が起きたことで有名だ。「主人公が銃で撃たれるシーン」を撮影していた時、本来は空砲が込められていたはずなのに、なぜか実弾が発射され、ブランドン・リーは死んでしまう。

父親のブルース・リーも謎の死を遂げているため、「家族に呪いがかけられたのだ」とか、「事故に見せかけた暗殺だ」とか、様々な噂が飛び交ったようだが、撮影用の銃(ステージガン)を用意した銃火器業者のミスである可能性が高い。

なお、この事故によって映画の完成が危ぶまれたものの、すでに撮影済のカットから使えそうな場面を切り取って別のシーンへ貼り付けたり、未撮影の部分を代役とCGで補完するなど、苦労の末にどうにか完成までこぎ着けたという。


●『八甲田山』

明治35年に起きた実際の遭難事件を題材とした極限の人間ドラマだが、撮影現場も日本映画史に残るほどの過酷なロケだったそうだ。真冬の八甲田山は想像を絶する寒さで、耐え切れなくなった俳優が次々と脱走。「裸の兵士が凍死するシーン」を撮るために俳優を裸にしたら本当に死にかけたとか、主演の高倉健も足が軽度の凍傷になったとか、とにかく凄まじい現場だったらしい。


●『群狼大戦』

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ジャッキー・チェンの映画にも当てはまるが、1980年代の香港映画界はまさに”無法地帯”であった。スタントマンたちはより派手なアクションを極めるため、自らが体を張ったトライ&エラーを繰り返し、「6メートルの高さからダンボールの上に落ちても大丈夫だった」「じゃあ次は7メートルだ」などと、日々危険なスタントに挑み続けていたのである(人体実験かよw)。

当然、撮影現場では事故が多発しており、「2階の窓から下のクッションに落ちる予定が、勢いがつきすぎてクッションを飛び越えてしまい、地面に激突して病院送り」(『ファースト・ミッション』)とか、「8メートルの断崖から下の岩場に落下し全身を強打、そのまま激流に流されて病院送り」(『捜査官X』)など、危険なエピソードは枚挙にいとまがない。

そんな危ない香港映画の中でもズバ抜けて危険な作品が、『群狼大戦』である。ムーン・リーとシベール・フーという2大アクション女優が自らスタントに挑んだこの映画、悲劇はラストに起こった。2人が2階の窓から飛び降りた瞬間、後ろで大爆発!恐らく爆破のタイミングが早すぎたのだろう、2人は炎に包まれてしまった。

この事故でムーン・リーとシベール・フーは大火傷を負い、当然ながら撮影は中止に。ところが、映画会社は無理やり映画を完成させ、なんと事故の映像をそのまま本編に使うという暴挙に出たのである。

しかもエンディングに「ムーン・リーとシベール・フーは映画芸術の真実性を高めるため、自ら危険なシーンに挑戦し、重傷を負った。彼女たちの勇気とプロ精神に心から敬意を表したい」などとテロップまで表示する鬼畜ぶり。あまりにも非常識な対応に「ちょっと感動的な話に仕立て上げよう」という製作者の姑息な意図が透けて見えるほどだった。

●『エクソシスト』

少々意味は異なるかもしれないが、「危険な撮影現場」という繋がりで本作も入れておきたい。この映画は「悪魔にとり憑かれた少女をめぐる物語」で、公開当時は「悪魔と祓魔師(エクソシスト)の壮絶な死闘」が話題になった。しかし、撮影現場には別の悪魔がいたのである。それが監督のウィリアム・フリードキンだ。

徹底的にリアリティを追及しようとしたフリードキン監督は、セットの中に16台の業務用大型冷却装置を設置させ、室温を常時0度に保つように指示。登場人物の息が悪魔のパワーによって白くなる様子を撮影した。しかし、薄い寝間着一枚でベットに横たわる少女(リンダ・ブレア)は寒さで意識を失いそうになり、メリン神父を演じたマックス・フォン・シドーは顔が凍りついて口が開かなくなるほどだった。

また、母親役のエレン・バースティンが少女に殴り倒されるシーンでは、バースティンの体にワイヤーを取り付け、「俺が合図したら思い切り引っ張れ」とスタッフに命じている。このため、何も知らない彼女は猛烈な勢いで転倒し、背骨を強打。しばらく病院に通うはめになったらしい。

さらにフリードキン監督の奇行は撮影が進むにつれてどんどんエスカレートし、現場に拳銃やショットガンを持ち込むようになった。そして実弾が入ったそれらの銃を、撮影中に突然ぶっ放したのである!カラス神父役のジェイソン・ミラーは驚いて抗議したが全く聞き入れてもらえず、以降、役者がNGを出すたびに銃声が鳴り響いたという(現場は異様な緊張感に包まれ、その雰囲気がそのままフィルムに収められた)。

また、本作にはリアリティを増すために本物の司祭が撮影に参加している。しかしフリードキン監督は、演技が素人の司祭にも容赦なくNGを連発し、完璧な表現を求めた。そして15回目のNGを出した司祭の顔をいきなり殴り付け、そのまま撮影を続行。恐怖に震える彼の表情を見ながら、満足そうにカメラを回していたらしい。

この他、映画『エクソシスト』は出演者やスタッフが次々と謎の死を遂げたり、セットが火事で焼失したり、関係者の誰もが一度は身の危険を感じたほど、「非常に危険な撮影現場」だったのである。つーか、どう考えてもウィリアム・フリードキン監督が一番危ないだろ(笑)。


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ジャッキー・チェン自伝『永遠の少年』を読んでみた

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先日、「ジャッキー・チェン自伝『永遠の少年』」という本を読みました。ジャッキー・チェンの自伝本自体は昔から何冊も出てるんですけど、この本は最近発売されたので情報が新しく、ページ数も600ページ近くあって、載っているデータの量がハンパなく多いのが特徴です。

生まれた時の状況から始まり、サモ・ハン・キンポーやユン・ピョウたちとの出会い、苦しいスタントマン時代を経て『スネーキーモンキー 蛇拳』、『ドランクモンキー 酔拳』の大ヒットでトップスターの仲間入りを果たした頃の話など、現在に至るまでのジャッキー・チェンのエピソードを実に詳しくまとめてあるので、ファンの満足度も高いんじゃないでしょうか。

ちなみに、ジャッキー・チェンといえば危険なスタントを自ら演じていることでも有名ですけど、2007年頃にスタントマンのブルース・ロウが「ジャッキーはスタントマンを使っている」と暴露し、話題になったことがありました(ブルース・ロウはチョウ・ユンファやアンディ・ラウなどのスタントも演じている)。

この時、「え〜?ジャッキーって自分で全部のアクションをやってるんじゃなかったのかよ〜」とガッカリした人もいたようですが、実はジャッキー本人は以前からスタントマンの存在を公言していて、ファンにとっては周知の事実だったのですよ。

もちろん、危険なアクションをジャッキー自身が演じていることに偽りはありません。ただ、ジャッキーにも得意なアクションと苦手なアクションがあるらしく、「このシーンでは綺麗なハイキックを撮りたいから、俺よりもあいつの方が適任だろう」みたいな感じで、状況によっては「そのアクションを最も上手くこなせる人」に任せているんだとか。

有名な例で言うと、『サイクロンZ』でジャッキーとベニー・ユキーデが戦うシーン。ラストに回転蹴りでユキーデをキックしている人は、どう見てもジャッキーではありません(スローではっきり映っているので丸わかりw)。この人はチン・ガーロウというスタントマンで、回転系の技を得意にしていることから、このシーンに抜擢されたそうです。

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サイクロンZ [Blu-ray]
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2011-12-09)

それから、日本が舞台の『デッド・ヒート』が公開された時も、「ジャッキーよりスタントマンの方が多く映ってるぞ!」とファンの間で話題になるぐらい、スタントマンの姿が目立っていました。この映画の監督はゴードン・チャンですが、パチンコ屋のアクションシーンは時間の都合でサモ・ハン・キンポーが撮っていたため、洪家班(サホ・ハンのスタントチーム)のスタントマンが多数登場することになったらしい。

他にも「あれ?良く見たらジャッキーじゃないぞ?」とバレバレな場面はいくつもあり、多くの映画で代役を使っていることは事実でしょう。ジャッキー本人も隠すことなく、この自伝本の中で堂々と「実は時々、ロングショットでスタントマンを使っているんだ。それがバレたとしても、まあこの歳なんだから、ファンの人たちも許してくれるよね」と語っています(どうやら隠すつもりが無いらしいw)。

ただ、ジャッキー映画のスタントマンと、ハリウッド映画のスタントマンは、その”役割”が大きく異なってるんじゃないかなと。例えば、トム・クルーズのスタントマンは「主役のトム・クルーズが怪我をしないように、危険なアクションを代わりに演じる」ことが目的なのに対し、ジャッキーの場合は自分の身を守ることなど考えていません。

それよりも、蹴りや突きのモーションを画面で見た時に、「どちらの動きがカッコ良く見えるか?」、その判断基準に従ってスタントを使うか使わないか決めているそうです。『サイクロンZ』の場合も、スタントマンのキックの方がジャッキーよりもカッコ良かったので採用したとか。つまり、アクション全体のクオリティをより高いレベルへ引き上げるために、スタントマンを使っているのですよ。

基本的に、「ジャッキーが不得意なシーン」や「顔がよく見えないシーン」などはスタントマンにやってもらい、「危険だけど目立つシーン」はジャッキーがほとんど自分でやっているとのこと。それどころか、場合によっては「他の役者のスタントもジャッキーがやってしまうパターン」すらあるらしい。いや〜、凄いっす(^_^;)

その他、作品毎に気になったエピソードをいくつかご紹介。


●『プロジェクトA』

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超有名な『プロジェクトA』の「時計台からの落下スタント」は、今でも映画ファンの間で語り草になるほど凄まじいインパクトを残しました。あの時計台はオープンセットで、街の駐車場に数カ月かけて建てられたそうです。

ところが、撮影の準備を終えてから実際にジャッキーが飛び降りるまで、なんと7日間もかかったらしい。原因はジャッキーがビビッたからで、いざ頂上に立って下を見下ろすと、あまりの高さに「ダメだ!今日は調子が良くない!」と撮影を止めてしまい、これを何日も繰り返したという。

そして7日目、ついにしびれを切らしたサモ・ハン・キンポーが「いつまで待たせるんだ!」とジャッキーに怒鳴り、怒ったジャッキーが「だったらお前が撮れよ!」と逆切れ。売り言葉に買い言葉で「やってやらあ!」とサモ・ハンがカメラを回すことになり、急遽アクションシーンの撮影がスタート。

しかし、時計台の針にしがみついたジャッキーは、やっぱり怖くて手を離すことができません。やがて徐々に手に力が入らなくなり、「もうダメだ」と思った瞬間に体が落下!二枚のサンシェードを破って地面に叩き付けられました。あのシーンの表情は演技ではなく、本気で苦悶してたんですねえ。

なお、映画では本編で2パターン、エンディングのNG集で1パターン、合計3つの異なる落下テイクが使用されています。つまり、ジャッキーは3回も飛び降りたことになるわけですが、「実は1回しか飛んでない」という説があるのですよ。

これは、当時の成家班(ジャッキーのスタントチーム)に所属していたマースとダニー・チョウが「ジャッキーの代わりに飛び降りた」と証言しているからで、実際に複数のスタントマンが時計台から落ちているそうです。なので、映画のあのシーンは「スタントマンだ」と言われていたらしい。

ところが、この自伝本の中ではジャッキーが「2回飛んだ」と言ってるんですよ。1回目のテイクで首にダメージを負い、2回目のテイクで目の前が真っ白になったが、「ユン・ピョウに助け起こされながら何とかやり遂げた」と。ここで重要なのは「3回飛んだ」と言ってないところなんですね(笑)。

つまり、本編に使用された2回の落下テイクがジャッキー本人で、残りの1回がマース(あるいはダニー・チョウ)なのではないか?と。まあ、映画を制作した側としては、「3回とも全部ジャッキーがやった」ということにしていた方が都合がいいと思うんですけど、正直に「2回しか飛んでないよ」と言ってしまうところがジャッキーらしくていいですねえ(^_^)


●『ポリス・ストーリー/香港国際警察』

「高さ30メートルのポールを一気に滑り落ちるスタント」は、数あるジャッキー・チェンのアクションの中でも、いまだに伝説級のインパクトを誇っている超絶スタントです。しかも、『プロジェクトA』の「時計台落下スタント」は屋外のセットだったため、ジャッキーの決心がつくまで1週間も待つことができましたが、『ポリス・ストーリー』のショッピングモールは実在する建物。なので営業時間外のわずかなタイミングで、撮影を完了しなければなりません。

そのため、スタッフの準備ができたらすぐに所定の位置にスタンバイし、すぐに飛び降りる、という慌ただしい段取りだったそうです。しかも、現場には15台のカメラを用意し、様々なアングルからこのスタントを撮ろうと待ち構えていました。中にはハイスピードカメラも入っていたので、少しでも飛び降りるタイミングが遅ければ、フィルムが足りなくなります。

つまり、一旦上に登ったら躊躇なく飛び降りるしかないという、まさに恐怖の本番一発勝負!いかにジャッキー・チェンといえども緊張感はハンパじゃありません。そこでジャッキーは覚悟を決めるまでの時間を稼ぐため、「俺が首を振ったら、それが合図だからカメラを回してくれ」とスタッフに伝え、所定の位置に立ちました。

下を見ると凄い高さで、「うわ〜、怖えなあ…」とビビるジャッキー。するとその時、無意識に首を動かしてしまったらしく、なんと下で15台のカメラが一斉に回り出したのです!「ちょっと待て!まだ心の準備ができてないよ!」と言いたかったが、もう遅い。飛び降りるしかない!この瞬間、ジャッキーは「ヤバい。俺、死ぬかも…」と思ったそうです。

映画でこの場面を観ると、ジャッキーは何かを叫んでポールに飛び移り、電球を破壊しながら30メートルを一気に滑り降りていますが、広東語で「死ね!(シアー!)」と叫んでいたそうです(「死んだら死んでもいいさ」 → 「いっそ死んでやる!」という心境だったらしい)。

終わった時は全身怪我だらけで、両手の皮膚も完全にめくれていたとのこと。何とも凄まじいスタントですねー。しかもこの後、ボロボロになった体のまま、『ファースト・ミッション』の撮影をこなしたというのだから凄すぎる(^_^;)


●『サンダーアーム/龍兄虎弟』

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パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン (2011-11-11)

ユーゴスラビアで撮影していた時、飛び付いた木の枝が折れて頭部を岩に強打。ジャッキー・チェンは頭蓋骨骨折の重傷を負ってしまいました。すぐにでも手術をしなければ危険な状態ですが、その地域には脳外科医がいません。飛行機で移動しようにも、「脳が機内の圧力に耐えられない」と医者に止められる有様。

スタッフが大騒ぎしている間もジャッキーの耳や鼻からどんどん血が流れ出ています。まさに絶体絶命の大ピンチ!やがてジャッキーは意識を失い、不思議な体験をしたそうです。もう一人の自分が現れ、ゆっくりと歩いていくのが見えたと。その先には光の束があり、光に向かって自分自身が行こうとしている。

すると、別の自分が大声で「行くな!行くんじゃねえぞ!」と叫んでいるのが聞こえたらしい。やがて目覚めると病院のベッドの上で、すぐ側ではアラン・タムが口笛で『サンダーアーム/龍兄虎弟』の挿入歌を吹いていたという。なんと、たまたまユーゴスラビアを訪れていた脳外科医に緊急手術を依頼、無事に成功したのだそうです。これってもしかして臨死体験?危ねえええ!ギリギリじゃん(゜ロ゜;)ヒエェッ!!


●『シャンハイ・ナイト』

スタッフたちと『シャンハイ・ナイト』の企画を話し合っていた時、ジャッキーはフェイ・ウォンを出演させようと考えていました。フェイ・ウォンは中国人の歌手で、ジャッキーは彼女の歌を気に入っていたようです。そこで助監督に「今、中国ではフェイ・ウォンが大人気だ。ぜひ『シャンハイ・ナイト』に出てもらおう」と言いました。「はい、すぐに連絡を取ってみます」と返事する助監督。

しばらくして「フェイ・ウォンと連絡が取れました。こちらに来てくれるそうです」と言われたジャッキーは大喜び。「やった!フェイ・ウォンと共演できるぞ!」と待っていたものの、やって来たのは全然知らない女性でした。「私をご指名してくださって、本当にありがとうございます!」と言われたジャッキーは「あ〜、うん…」と答えるしかありません。

すぐに助監督を捕まえて、「おい!あれはフェイ・ウォンじゃないぞ!」と問い詰めるジャッキー。どうやらスタッフが勘違いしていたらしく、連れて来たのはシンガポールの女優のファン・ウォンだったのです。しかし今さら「間違えました」と言うわけにもいかず、結局そのままファン・ウォンがキャスティングされることに…。もちろん、この件についてファン・ウォンは何も知らないそうです(ヒドい話だw)。


●息子のジェイシー・チャン

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最後に子供のエピソードを。ジャッキー・チェンは若い頃から仕事で忙しく、息子のジェイシー・チャンが生まれてからもなかなか会えませんでした。しかしジェイシーが小学生の頃、「お父さんは放課後に迎えに来たことが一度もない」と言われたことをずっと気にしていたようです。それからしばらく経って、ようやく時間が出来たジャッキーは、「よし!息子を迎えに行こう!」と小学校の前で待つことに。ところが、いつまで待ってもジェイシーは出て来ません。「おかしいな」と思って確認すると、息子はとっくの昔に中学生になっていたそうです。ジャッキー…(-_-;)

『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ネタバレ感想/評価

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■あらすじ『世界の危機を何度も救ってきたスーパーヒーロー・チーム“アベンジャーズ”。しかし、その強大すぎる力は一般市民にも甚大な被害を及ぼし、彼らを国連の監視下に置くことが議論され始めた。これに対し、アイアンマンは「皆を守るためには受け入れざるを得ない」との考えを示す。一方、キャプテン・アメリカは己の信念を貫き強く反対。そんな中、ウィーンで新たなテロ事件が発生し、キャプテン・アメリカの旧友バッキーが容疑者として指名手配されてしまった。アイアンマンとの対立が深まる中、重い決断を迫られるキャプテン・アメリカ。彼らが最後に下した結論とは…!最強チーム“アベンジャーズ”が意見の対立から2つに分裂、それぞれが信じる正義を胸に秘め、敵と味方に別れて壮絶な戦いを繰り広げるさまを描いたアメコミ・アクション超大作!』



公開からかなり時間が経ってしまいましたが、ようやく『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』を観て来ました。いや〜、相変わらず派手で楽しい映画でしたねえ。本作は、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』に続くシリーズ第3弾ということで、一応”キャプテン・アメリカを主人公とした物語”の続編という位置付けです。

ところが、実際に映画を観てみると、『キャプテン・アメリカ』の続きというより、むしろ『アベンジャーズ』のパート3では?と思うぐらい、登場キャラクターが多いんですよ。人数だけじゃなくて、ストーリーの方も『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』と直接繋がっているため、全体に漂う”アベンジャーズ感”がハンパない(笑)。まあ、非常にゴージャスな映画になっていました(^_^)

ただ……『アベンジャーズ』の良さっていうのは、普段は滅多に見ることができない「ヒーローたちが一堂に集結する姿」を楽しめる、という部分が最大の特徴であり、言うなればファンにとっての「お祭り映画」なわけですよね?それを単体のヒーロー映画でやっちゃったら、せっかくの”スペシャルな感じ”が薄れてしまうというか、”ありがたみ”が無くなるような気がするんだけど…

いや、もちろん映画のスケールが大きくなるのはいいことだと思います。が、キャプテン・アメリカのシリーズの中では、前作の『ウィンター・ソルジャー』が大好きな自分としては、「今回は色んなやつが出すぎてて、ちょっとゴチャゴチャしてるなあ」という感じは否めませんでした(それでも、しっかり”キャプテン・アメリカの映画”として成立しているのが素晴らしい)。

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一方、内容の方は「ヒーローたちの戦いのとばっちりを食らって、一般市民に多大な犠牲者が出る」という、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』で描かれていた状況と同じ理由で責められるアベンジャーズの中で、事態を解決したいアイアンマンは国連の管理下に収まることを了承し、これに異を唱えるキャプテン・アメリカたちと対立する…という物語です

要するに「正義のヒーロー同士の内輪もめ」なわけですが、バットマンとスーパーマンが「なんじゃそりゃ?」と思うような理由で戦っていたのとは対照的に、キャップとアイアンマンは”戦う動機”に説得力がある。ここが大きな違いでしょう。

アイアンマンは「かつての自分は間違った判断をしていた。そのために多くの人を傷つけてしまった。だから、第3者の公正な判断が必要なんだ」と考え、自由の象徴でもあるキャプテン・アメリカは、前作で組織から裏切られた経験を踏まえ、「たとえ国連といえども万全とは限らない。自分たちの意思で決断し、行動すべきだ」と考えています。

これは「どちらの主張が正しいか?」という問題ではなく、どちらの言い分も正しいわけで、だからこそ両者は対立せざるを得ない、という流れへ自然に持っていってる。そのドラマ構成が上手いな〜と感じました。ぶっちゃけ、『バットマン vs スーパーマン』も少しは見習って欲しいぐらいですよ(笑)。

さらに、キャプテン・アメリカには「親友のバッキー・バーンズを助けたい」という思いが、そしてアイアンマンにも「自分の両親を殺したのは実は○○○○だった!」という事情がそれぞれあって、「戦うしかない」という状況をきちんと作り上げています。これなら観客も納得できるでしょう。

そして何よりも驚いたのは「決着の付け方」ですね。普通、有名なヒーロー同士が戦う場合、「どちらかが勝って終わり」というわけにはいきません(両方とも正義の味方だから)。なので、「争っていたヒーローたちの前に”共通の敵”が現れ、両者が手を組んで相手をやっつける」という共闘オチが、まあ観ている人も安心できる「お約束の展開」なわけです。

ところが!『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』はそんな『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』みたいな安易な終わり方じゃないんですよ。ネタバレになるので詳しくは書きませんが、「えええ!?そんな結末なの!?」という、”ヒーロー映画”のお約束を根底から覆すような、とんでもないラストになってるんです。いや〜、『キャプテン・アメリカ』のシリーズはこれで完結なのに、まさかこんな終わり方になるとは想定外でした(^_^;)


※以下、細かい部分について羅列しますが、ネタバレなので映画を観てない人はご注意ください


●結局のところ、本作は「バッキーのことが大好きなキャプテン・アメリカが、ひたすらバッキーを守り抜く」という映画なんですね(笑)。前作の時点ですでに”バッキー・ラブ”が全開だったキャップですが、本作では彼への愛がますます加速し、クライマックスの「2人で盾をキャッチし合いながらアイアンマンをボコボコにしばき倒す」というコンビネーションプレイで頂点に達します。

「バッキーと人類を天秤にかけたら、キャップはどっちを助けるんだろう?」と不安になるほど”バッキー・ラブ”が炸裂してますよ(笑)。そんなバッキーも「もうこれ以上、皆に迷惑をかけたくないンゴ…」と言い残し(そんなセリフはありませんがw)、冷凍カプセルに入って退場。さらにキャップも主力装備の盾を捨ててしまいました。2018年に公開される『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』では、果たしてどんな展開になるのでしょうか?

●冒頭シーンで”トニー・スタークの若い頃の姿”が出てきます。あまりにも自然なので「ロバート・ダウニー・Jrに良く似た人だなあ」と思ったら本人だったという(笑)。役者の見た目を若くするCG技術は『 ベンジャミン・バトン 数奇な人生』ですでに使われていましたが、本作ではさらに完成度が上がって、もはや実写映像と区別がつかないレベルに達していましたよ。

当然、このシーンを担当したVFXスタッフは大変な苦労を強いられ、ロバート・ダウニーJr.が若い頃に出演していた作品(『レス・ザン・ゼロ』等)を参考にしながら、トニー・スタークが登場する約4000フレームの映像を1コマずつ修正していったとか。う〜ん、気が遠くなりそう(^_^;)

●本作ではトニー・スタークの腕時計が一瞬で手の部分を覆うアーマーに変形し、リパルサーレイを発射するというシーンが出て来ます。これが非常にカッコいい!『アイアンマン3』でもリパルサーレイを発射する手袋を作ってましたが、そのうち腕時計が丸ごとアイアンマン・スーツに変形するようなアイテムを作りそうですね(ちなみに原作コミックでは、すでに腕時計だけでアイアンマンに変身しているらしい)。

●今回、初登場の新キャラ:ブラックパンサーは、見た目もアクションもカッコ良くて大満足なんですけど、何の前触れもなくいきなり変身しててちょっとびっくりしました。あのスーツはいつの間に開発したんでしょうか?もしかして、昼間はアフリカで「殿下」の仕事をやりながら、夜は私財を投じて作り上げた特殊スーツを着て街の平和を守るという、バットマンみたいな生活をしてたのかなあ?

●アントマンも今回アベンジャーズに初参戦したキャラですが、まさかあんなことになるとは…。そう、巨大化ですよ!原作コミックでも、初代アントマンのハンク・ピムが巨大化して「ジャイアントマン」になっていましたが、実写で見ると迫力が凄い。というか、完全に東映ヒーローの「巨大ロボ」的なノリじゃないですか!足元ではスパイダーマンとかが戦ってるし(笑)。もう、いっそのことレオパルドンも出しちゃってください(^_^;)

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●本作で、ついにスパイダーマンがアベンジャーズに合流!ピーター・パーカー役は歴代スパイダーマンで最も若いトム・ホランド、さらにメイおばさんも歴代メイおばさん中、最も若いマリサ・トメイになったことでファンがザワついているそうです(笑)。つーか、なんでこんなに美人になってんの?

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なお、この映画のエンディングで、スパイダーマンの新シリーズとなる『ホームカミング』の宣伝(?)もチラッとやってるんですよね。まさかディズニー映画でソニー・ピクチャーズの新作をプッシュするとは…。しかも、『ホームカミング』にはアイアンマンも登場するらしいし、いよいよ映画会社の垣根を越えたマーベル・ヒーローのクロスオーバーが始まりそうな予感。ぜひ『X-MEN』の本格参戦もお願いします!

どうして漫画やアニメの実写化が止まらないのか?

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

なんか最近の映画を見てると、ますます漫画やアニメの実写化が増えてるような気がするんですよねえ。劇場では『ちはやふる』、『アイアムアヒーロー』、『テラフォーマーズ』、『HK/変態仮面 アブノーマル・クライシス』、『少女椿』、『シマウマ』、『オオカミ少女と黒王子』、『ヒメアノ〜ル』が公開中で、来月も『高台家の人々』や『MARS〜ただ、君を愛してる〜』などが公開予定となっています。

そして夏以降も、広瀬すず主演の『四月は君の嘘』や西内まりや主演の『キューティーハニー』、2006年に公開された映画の続編となる『デスノート Light up the NEW world』が。さらについ先日、『鋼の錬金術師』の実写映画化が発表され、多くのファンに衝撃を与えたばかりだというのに、今度はなんと『ジョジョの奇妙な冒険』が実写化されるというニュースまで飛び出して何がなんだか…

「どうしてこんなに漫画やアニメの実写化が増え続けているのか?」については、以前に記事化しているのでよろしければご覧ください。↓


漫画やアニメはなぜ次々と実写化されるの?儲かるからだよ!


簡単に言うと、「安い製作コストで作れて多くの観客動員が見込める」からです。なぜ安く作れるのかと言えば、漫画を実写化する際の”原作使用料”が安いからです。その辺の事情はこちらの記事をどうぞ。↓


映画『テルマエ・ロマエ』の原作使用料はなぜ100万円なのか?


要するに「知名度の高い漫画の映画化権を安く手に入れて実写化すれば、多少内容がアレでもそれなりに客が入る」という効率的なビジネススタイルが定着してしまっているのですよ。もちろん、アレな映画ばかりじゃなくて良い作品も中にはありますが、いかんせん、これだけ数が多くなると粗製濫造は否めません。

しかも最近はネタのチョイスまで怪しい感じになってて、『ハガレン』の実写化なんて登場人物が外国人なのに、キャストが全員日本人ってどういうことだ!?とか、公開前から炎上しそうな案件が続々と上がって来てるんですよね。

実写化するならするで、「ホントに日本で実写化できるの?」という部分も含め、事前にじっくりと検討してもらいたいものです。

こち亀で爆音上映ネタが取り上げられる

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ちょっとタイミングが遅くなったんですけど、今週の『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の話を。僕は普段、全く少年ジャンプを読まないので(昔は読んでたんだけど最近は全然)知らなかったんですが、今週の『こち亀』で「映画館」のエピソードが取り上げられてるんですね。

内容は、単館系の劇場を経営している主人が「最近、お客さんが入らなくて困ってるんだよ」と両津勘吉のところへ相談に来て、「よし、わしに任せろ!」と両さんが色んなアイデアを出しまくるという、いつものようなエピソードです(笑)。

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面白いのは、起死回生の秘策として「爆音上映」を取り上げている点なんですね。爆音上映とは、簡単に言うと「通常よりも音響を効果的にセッティングした上映形態」のことです。昨年の夏に立川シネマシティで『極上爆音上映』(極爆)という公演が実施され、大人気を博したんですけど、それをネタにしてるのではないかと。

爆音上映自体は、それ以前の『パシフィック・リム』でもやっていたようですが、「『マッドマックス 怒りのデス・ロード』を最高の音響設備で上映するために数百万円するウーファーを購入した」というエピソードが話題となり、非常に多くの観客が来場しました。

さらに『怒りのデス・ロード』の後も『ガールズ&パンツァー 劇場版』が爆音上映され、こちらも大ヒット。ウーファーの重低音に魅了されたリピーターが次々と押し寄せ、劇場は大盛況だったそうです。

今回、『こち亀』で描かれているのはこの「爆音上映」なんですよ。寂れた映画館を復活させるために両さんが知り合いのオーディオマニアからスピーカーを40台以上かき集め、さらにウーファーやアンプなど、ありとあらゆる音響設備を設置。

もともと古い映画館なので、大音量で上映すると劇場全体がビリビリと揺れて迫力満点!さらに劇場の真上に線路が通っていて、電車が通過するたびに座席が振動するなど、臨場感が凄まじいことに。その結果、「アナログの体感シアターだ!」と話題になり、一気に観客が増えました。

しかし、近所の大手シネコンも負けてはいられません。「ただのボロ映画館だろ!うちは3Dだぞ!」と強気の姿勢を見せる支配人。しかし、「最近3Dメガネがうっとおしいと言われて…。3D映画の作品も頭打ちで…」とシビアな現状を指摘されると、「それを言うな…」と急に弱気になるところがリアルで面白い(笑)。3D映画ってそんな感じなのかよ(^_^;)

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漫画ではこの後、両さんのアイデアがどんどんエスカレートしていき、シネコン側が4Dの設備を導入すると、「こっちは本物の風と水だ!」と大型台風が直撃する日をわざわざ選んで「海を舞台にした映画」ばかりを上映します。古い映画館の屋根から雨漏りし、隙間風がビュンビュン入ってくる状況に「すごい迫力だ!」とお客さんは大喜び。

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さらにシネコン側がドルビーアトモスを導入したら、なんと映画館の床全体にスピーカーを敷き詰め、音が直接お客さんの体に響くようにセッティングしてしまう両さん。しかも音量は通常の10倍!映画マニアには大好評で、ネットで告知したら2秒で完売したそうです(笑)。

こうした両さんの斬新なアイデアで、つぶれかけていた映画館は見事に復活し、連日超満員になりました。まあ、最後はいつものように調子こいて大失敗してしまうんですけど(笑)、最近はうちの近所のミニシアターも閉館したり、小さな映画館がどんどん少なくなっているようなので、「映画館が活気を取り戻す話」は(例えフィクションでも)読んでいて嬉しいですねえ(^_^)

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