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M・ナイト・シャマラン監督『スプリット』ネタバレ感想/解説

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■あらすじ『ある日、女子高生3人組が一人の男(ジェームズ・マカヴォイ)に拉致された。密室で目覚めた3人の少女はやがて、この男が”一人”ではないことを知る。神経質で潔癖症の青年や9歳の無邪気な少年、エレガントな女性…一人の人間の中で激しく入れ替わる分裂(スプリット)したキャラクター。そう、彼は23もの人格を持つ男だったのだ!鬼才:M・ナイト・シャマラン監督が放つ衝撃のスリラー!』


※この記事にはネタバレがあります。未見の方はご注意ください。


本日取り上げる映画は、M・ナイト・シャマラン監督の最新作『スプリット』。日本では5月12日の公開ですが、海外では1月20日に公開済みとなっており、そのためネット上では早くから様々な情報が飛び交い、うっかりそれを見てしまった人が「ネタバレだ!」と騒ぐなど、色々問題が巻き起こった問題作です(^_^;)

さすがに公開から1ヶ月以上も経過しているし、劇場での上映も終わっているのでネタバレしても怒られることはないでしょうけど、一応観ていない人への配慮として「ネタバレしてるよ!」「気を付けて!」としつこいぐらい警告させていただきます(これだけ言っとけば大丈夫やろw)。

さて、M・ナイト・シャマラン監督といえば『シックス・センス』の大ヒットによって「どんでん返しの名手」みたいに思われているところがあるかもしれませんが、シャマラン監督自身は別に「どんでん返しの名手」じゃないんですよね(観客が勝手にそういう映画を期待しているだけであって、監督本人にそういう意識はない)。

でも、映画を観る側としては『シックス・センス』のインパクトが大きすぎたために、「今回はどんな凄いオチが待ち受けているんだろう?」「もっと凄いサプライズを観たい!」という期待が高まってしまうことは避けられないでしょう。

それ故に、「観客が望むもの」と「監督が作りたいもの」の間にギャップが生じ、そのギャップが大きければ大きいほど作品の評価は下がってしまう。ここ数年のシャマラン監督は、まさにそういう状況に陥っているのではないだろうか…と個人的には思っていました。

実際、『シックス・センス』以降のシャマラン作品の興行成績はいまいちパッとしないものが多く、特に『エアベンダー』や『アフター・アース』あたりの低評価ぶりたるや、「この人なんでいまだに映画を撮り続けていられるんだろう?」「シャマランもう終わったな」など罵詈雑言の嵐。

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1億3000万ドルとか1億5000万ドルもかけた超大作映画が次々とコケ倒したため、さすがに映画会社も「これ以上シャマランに大金を使わせるのはマズい」と考えたのか、次の作品『ヴィジット』の製作費はたったの500万ドルに急降下!

『シックス・センス』の時は製作費が4000万ドルもあったのに、それから16年後の最新作では8分の1にダダ下がりしてしまったわけですよ。しかし、「いよいよシャマランも完全終了か…」と誰もが諦めかけたその時、超低予算映画『ヴィジット』がまさかのスマッシュヒットを記録しました(これは面白かったです。オススメ!)。

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こうして、ギリギリ首の皮1枚で繋がった感のあるシャマラン監督が、起死回生の一作として作り上げた映画が『スプリット』なんですよ。これは期待せざるを得ないでしょう。製作費は相変わらずの低予算(900万ドル)ですけど(笑)。

さて、そんなM・ナイト・シャマラン監督ですが、まず最初にこれまでの作品歴をざっくり振り返ってみると、1999年の『シックス・センス』から前作の『ヴィジット』まで、自ら監督した映画は全部で9本あります。

この9本の映画を僕は全部鑑賞していて、さらに脚本のみで参加した『スチュアート・リトル』や、製作・原案で参加した『デビル』、そして製作総指揮を務めた連続ドラマ・シリーズの『ウェイワード・パインズ 出口のない街』も鑑賞しました(98年の『翼のない天使』は未見)。

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そういう意味ではシャマラン映画に関しては割と観ている方……というか、むしろ「シャマラン・ファン」とすら言えるかもしれません。ところが、本物のシャマラン・ファンに話を聞くと、好きな映画の傾向にかなりの違いがあるんですよ。

例えば、僕自身は『シックス・センス』、『ヴィレッジ』、『デビル』、『ヴィジット』などが好きなんですよね。一方、シャマラン・ファンの好きな映画は、『アンブレイカブル』、『サイン』、『ハプニング』などが多かったりします。

また、世間一般のシャマラン作品に対する評価としても(あくまでもイメージですけど)、やはり『シックス・センス』が最も上位で、『アンブレイカブル』や『サイン』などはそれよりも下になると思われ、ファンとの乖離が著しい。

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つまり僕の好みは一般の人の感覚に近くて、世間でも「巧みなストーリー・テリング」とか「あっと驚く意外な結末」とか、そういうものを求めているんじゃないかなあと(ただし、一般の人もシャマラン・ファンも、『エアベンダー』だけは挙げていない模様w)。

で、『スプリット』はどっちなんだ?と言えば……シャマラン・ファンが大喜びの映画でした(苦笑)。確かに、「多重人格の誘拐犯」や「謎の施設から脱出する女子高生」など見どころもありますけど、最大のサプライズはラストのオチであり、これがもう「シャマラン・ファンでなければ絶対にわからないオチ」になってるんですよねえ。

ハッキリ書いてしまいますが、この映画は『アンブレイカブル』の続編で、ラストにブルース・ウィリス演じるデイヴィッド・ダンというキャラクターが出て来るんですよ(ダンは『アンブレイカブル』の主人公)。これを観て熱心なシャマラン・ファンは「あの映画と世界が繋がっていたのか!」と大興奮したわけです。

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しかし、『アンブレイカブル』を知らない人には何のことか全く分からないし、仮に観ていたとしても17年も昔の映画の内容を覚えているのか?と(この状況を心配した映画評論家の町山智浩氏は、「『スプリット』を観る前にシャマランの過去作品を観ておいた方がいい」とツイッターで忠告 → 「ネタバレすんな!」と非難されるハメにw)。

映画のネタバレはどこまでOKなのか?検証してみた

まあ、僕自身は幸い『アンブレイカブル』を覚えていたので「おお、凄い!」となったんですが、それでもモヤモヤしたものが残りましたねえ。なぜなら、話が完結していないからです。実はこの映画、『アンブレイカブル』シリーズの2作目という位置付で、ストーリーは次回作の『Glass』が公開されるまで完結しないんですよ。

一人だけ助かったケイシー(アニャ・テイラー=ジョイ)は、あの後どうなったのか?24番目の人格が出現したケヴィン(ジェームズ・マカヴォイ)は何をやるつもりなのか?それが一番気になるのに、本作は「ヴィランが誕生するまでの物語」だから、「次回へ続く!」みたいな感じで終了してしまうんです。

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たぶん、普通の人にとってこの映画は「いったい何が言いたいんだろう?」「意味が分からない」って感じなんじゃないでしょうか?でも、熱烈なシャマラン・ファンにとっては「俺たちはこれを待ってたんだよ!」「よくぞやってくれた!」と大興奮間違い無しなわけで、「温度差が激しすぎる」と言わざるを得ません。

一応、サスペンス映画としては良く出来ているので、ハラハラドキドキ感は十分に味わうことが出来ました(さすがシャマラン、その辺は素晴らしい)。だから「全然面白くない」ってわけじゃないんですよ。ただ、最後まで観ても「主人公の境遇は好転していないし、敵は逃げちゃったし、結局何も解決してないじゃん…」という残尿感は残りましたね(^_^;)

しかし、次回作の『Glass』にはジェームズ・マカヴォイとアニャ・テイラー=ジョイに加え、ブルース・ウィリスとサミュエル・L・ジャクソンも登場するらしいので、いよいよ本格的に「ヒーローとヴィランの対決場面」が描かれることになるのでしょう。期待して待ちたいと思います。


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