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『チョコレート・ファイター』ネタバレ映画感想/アクション解説

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■あらすじ『舞台はタイ。日本人ヤクザと現地最大のマフィア「ナンバー8」との抗争が激化している最中、ヤクザの大物:マサシ(阿部寛)はタイ人女性ジンと恋に落ちた。だが、ジンはナンバー8の女だったため、マサシの身を案じて姿を消してしまう。やがてマサシは日本へ帰国し、ジンは一人の子供を出産。ゼン(”ジージャー”ヤーニン・ウィサミタナン)と名付けられたその少女はチョコレートとアクション映画が大好きで、一度観た技をすぐにコピーできる特殊な能力を持っていた。そんなある日、かつてジンが所属していた組織「ナンバー8」に見つかってしまう。果たしてゼンの運命は…?最愛の家族のために、そして生きるために、いまゼンの壮絶な戦いが幕を開ける…!』



どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

本日、洋画専門チャンネル「ザ・シネマ」で『チョコレート・ファイター』が放送されます。本作は、2003年にトニー・ジャー主演の『マッハ!』で衝撃的なムエタイ・アクションを世に送り出したプラッチャヤー・ピンゲーオ監督が、新たに”戦う美少女”を主人公にして作り上げた超絶アクション映画なのですよ。

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この映画でヒロインのゼンを演じたヤーニン・ウィサミタナン(愛称”ジージャー”)はそれまで全く無名の存在でしたが、本作の大ヒットによって注目を集め、いきなりトニー・ジャーと共にタイを代表する新世代のアクションスターとして全世界に名を轟かせることになったのです。

もともとジージャーは、『チョコレート・ファイター』のアクション監督(パンナー・リットグライ)が企画した『七人のマッハ!』(2004年)のオーディションを受けていて、そこでプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の目に止まり、「彼女を主人公にした映画を作ろう」と思い付いたそうです。

ところが、当初の予定では1年間ほど彼女を訓練して撮影に入る予定だったのに、トニー・ジャー主演『トム・ヤム・クン!』(2005年)の撮影が予想外に延びてしまい、さらにピンゲーオ監督が『マーキュリーマン』や『ゴースト・ナース』などのプロデュースで忙しかったため、気付けば4年間も訓練し続けるハメになってしまいました。

さて、そんな『チョコレート・ファイター』ですが、僕の大好きな映画『マッハ!』を撮ったプラッチャヤー・ピンゲーオ監督の作品なので凄いアクションがあることを期待しつつ、「でも今回は池脇千鶴に良く似た華奢な女の子が主役だから、ちょっと迫力不足かもしれないな〜」などと思ってたんですよ。

だがしかし!その考えは甘かったです。ピンゲーオ監督は相手が女の子だろうと池脇千鶴だろうと、一切の妥協を許さぬ鬼畜のような監督でした。ええ、それはもう「凄まじい!」の一言に尽きますよ。恒例の”エンディング・テロップのNG集”が、もはや笑えないレベルに達しています。

「ノーワイヤー&ノーCG」を売りにしている本作ですが、あるシーンでは俳優の体をワイヤーで固定し、背景にCGを合成していました。どうやら「ビルの3階から人間が地面に落下するシーン」をそのまま撮ろうとした時に、「待てよ、これはもしかしたら人が死ぬかもしれないな」ということにようやく気付いたらしい。

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たしかに本作のメイキングを見ると、ワイヤーを付けて飛び降りたスタントマンが地面に激突し、首にコルセットを巻いて救急車で運ばれていく映像が映っていたので、ワイヤー無しで飛んでいたら確実に死人が出ていたと思われます。

昔テレビで、「危険なアクションを成功させるコツは何ですか?」という質問に対し、「ガマンです!」と胸を張って答えるジャッキー・チェンを見てひっくり返ったことがありましたが、ここのスタッフは皆、ジャッキーの言葉を真に受けて、体を張って実践しているとしか思えません。まさに”筋金入りのアクション・バカ”と言えるでしょう。

ちなみに、昔の香港映画の現場ではビルの屋上から飛び降りるシーンを撮影する時にも、「地面にダンボールを敷くだけ」という簡素な”安全対策”しか用意してもらえなかったそうです(通常はしっかりしたエアークッションなどを使う)。

以前、『天使行動』という映画に出演した西条秀樹が、同じような条件で「ビルから飛び降りるシーンをやってくれ」と現地スタッフから頼まれたため、「全力で拒否した」とのこと。やむを得ず、別の人が秀樹の代わりに飛んだら、着地に失敗して首から背骨が飛び出ていたそうです。恐ろしすぎる!

また、他の映画ではミシェル・ヨーが、立橋の上から飛び降りて下の道路を走っているトラックの荷台にカッコ良く着地しようとしたものの、トラックのスピードが速すぎてそのまま道路に「べちゃっ」と墜落。まるでギャグマンガのようですが、実写でこれをやってしまうところが香港映画の凄さでしょう(当然の如く、ミシェルは救急車で運ばれて行きました)。

さすがに最近の香港映画は、ここまで人権を無視したヒドい撮影はやっていないようですが、もしかするとピンゲーオ監督は破天荒なアクションを撮るため、逆に”80年代の危険で豪快な香港スタイル”を再現しようとしているのかもしれませんねえ。

実際、『チョコレートファイター』を観ると、「工場や倉庫での格闘シーン」とか「近くにある道具を武器にして敵を倒す」など、『ドラゴン危機一発』や『プロジェクトA 』に影響を受けたと思われるアクションが多数登場しています。

例えば、ゼンが母親の治療費を捻出するために、製氷工場を訪ねて行って戦う場面は、まさにブルース・リーが製氷工場で死闘を繰り広げた『ドラゴン危機一発』のオマージュでしょう(ちなみに『ドラゴン危機一発』もタイで長期ロケした作品)。

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また、広い倉庫で戦う場面では、ロッカールームのドアを利用して敵を倒したり、イスや机を駆使したトリッキーなアクションなど、ジャッキー・チェンの映画でお馴染みのコミカルかつアクロバティックな戦闘スタイルを堪能できますよ。

そしてクライマックスでジージャーと戦うのは、WBC世界バンタム級王者オー・シリモンコン、韓国のムエタイ・チャンピオン:イム・スジョン、オランダの女性格闘選手ソーミア・アバハイヤなど、世界中から集められた本物の格闘家たち。これらの強敵を倒すために、ゼンはヒザ蹴り&ヒジ撃ちなどのムエタイ技を繰り出します。

さらにその後、彼女の前に最強の敵が登場!「アディダスのジャージを着た坊主頭のメガネ男子」という、一見して全く強そうに見えないこの少年、実は格闘技とブレイクダンスをミックスした「Martial Arts Trickz」という技の使い手だったのですよ。

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どのタイミングで攻撃が飛んで来るのかわからない、変幻自在な格闘スタイルに翻弄されるゼン。しかし戦っているうちに相手の戦法をマスターし、彼女も「Martial Arts Trickz」で応戦するという凄い展開に!最終的には、相手を上回る技を叩き出してゼンが勝利します。

ちなみに「Martial Arts Trick」というテクニックは実在するんですけど、この映画とは異なり、回転系の足技を中心とした派手なパフォーマンスで、なかなかカッコいい動きなんですよね。こういうアクションも観てみたいなあ。

というわけで、”ジージャー”ことヤーニン・ウィサミタナンが初主演した『チョコレート・ファイター』は、2008年に本国タイで公開されるやいなや『マッハ!』を上回る大ヒットを記録し、香港・台湾・シンガポールなどアジア各国で封切られ、さらにアメリカやヨーロッパでも公開が実現。

そして待望の日本公開も好評で(上映館数が少なかったため興行的にはイマイチでしたが)、映画評論家の江戸木純氏は「ジージャーが『チョコレート・ファイター』で世界に与えた衝撃は、間違いなくアクション・ヒロインとしては映画史上最大のものである」と絶賛していました。

この言葉通り、本作が成功した要因は明らかに主演のジージャーにあるでしょう。幼少の頃からテコンドーを習い、14歳でインストラクターを務めるほどの実力の持ち主だったからこそ、本物の格闘アクションをリアリティたっぷりに見せることが出来たわけです。

しかし、この映画以降は目立った活躍をしていないのが残念ですね(一応、『チョコレート・ソルジャー』と『チョコレート・ガール』では主演だったが、映画の出来は微妙)。2011年4月から日本でのロケを予定していた『チョコレート・ファイター2』の撮影も、東日本大震災の影響で延期(中止?)になったみたいだし。

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近年はハリウッドでも、アンジェリーナ・ジョリーやミラ・ジョヴォヴィッチのように「アクション映画で活躍する女優」が増えていますが、ジージャーみたいに「格闘技のスキルを持った女優が自らスタントまでこなす」というパターンはほとんどありません。

そういう意味でも、ジージャーの存在は「魅力的なアクション・ヒロイン」というカテゴリーにおいて極めて貴重なポジションを占めていたと思います。出来ることならぜひ再び、カッコいいアクションを見せて欲しいものですねえ。

なお、映画の終盤ではヤクザを演じる阿部寛が「日本刀で大勢の敵を切りまくる」というシーンがあるんですが、当初の脚本にはこんな場面は無かったそうです(阿部寛が殴られて終わりだった)。しかし、全ての撮影が終了してから1年半後に「やっぱり撮り直したい」と監督から連絡が来たという。

つまり撮影が完全に終わった後に、わざわざストーリーを変更してるんですね。普通の監督ならそんなことはしないし、役者の方も嫌がるはずですが、阿部さんは「1年半後に撮り直そうという、その妥協の無さに感激しました!」と喜んでタイへ飛んだそうです。エエ話やな〜(^_^)


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ジージャー衝撃のデビュー作!アクションも素晴らしい(^O^)/

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ジージャー主演第2弾で、”泥酔拳”という技を使って戦うアクション映画。内容は微妙ですがバトルはまあまあ(^_^)

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内容もアクションもだいぶ残念な感じ。ジージャーが好きな人ならどうぞ(^_^;)

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韓国のテコンドーがメインのアクション映画。タイトルやジャケットを見るとジージャーが主役のようですが主演ではありません。間違えて買わないように(-_-;)

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ジージャーとトニー・ジャー初共演!ゲスト出演ですが、『チョコレート・バトラー』よりも出番は多いです(^_^;)

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