どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
先日、NHKの番組『オイコノミア』で「マンガとアニメ 熱〜い現場の経済学」という特集が放送されました。お笑い芸人ピースの又吉さんが、現役アニメーターの家を訪ねてそのリアルな生活をリポートするという、なかなか民放では見られないような内容でしたよ(笑)。
現在、日本は空前のアニメブームで、制作本数や市場規模も2010年以降右肩上がり。ところが、制作現場ではある深刻な問題が起きているという。そこで又吉さんが噂の現場へ向かったところ、衝撃の事実が発覚…!というわけで本日は、番組内で取り上げられた「アニメーターの実態」を検証してみたいと思います。
まず又吉さんは、アニメ制作会社が多いことで知られる杉並区の一軒家を訪れました。そこでは、数人の若者が共同生活しており、普通の家とはちょっと様子が違う感じ。「どういう場所なんですか?」と又吉さんが尋ねると、「ここは新人アニメーターの寮なんです」とのこと。
なんと、NPO法人の支援を受け、3年前から運営している「新人アニメーター寮」だったのですよ(築47年の古い一軒家に、5人の若手アニメーターが共同で暮らしている)。しかし、部屋の中を案内してもらった又吉さんはビックリ仰天!
「え?ちょっと待って下さい!ここで生活してるんですか!?」
どうやら、もともと台所だったスペースを無理やり「部屋」として使用しているらしく、どう考えても人が暮らすには不向きです。「まさか、ここで寝たりはしないですよね?」「いえ、寝てます」「え?ここで?」と又吉さんも驚きを隠せません。
このアニメーター寮は、電気・ガス・水道・インターネット代込みで家賃が月3万円という激安物件なんですが、「台所部屋」に関しては条件が悪いためにさらに値引きされ、なんと月2万5000円という超激安設定に!
でも、いくら安いとはいえ、台所に住むってどうなのか?さすがに又吉さんも「これはもう、”ちょっと状況が悪い”ってレベルじゃないと思うんですけど…」と呆れ顔。なんせ、部屋を仕切る「壁」がないため、大きな布(カーテン?)を天井に画鋲で留めて「壁」の代わりにしているぐらいですからねえ(苦笑)。
しかし、実際にこの部屋に住んでいる人は、「アニメーターって家に帰ったら寝るだけという生活になりがちなので、寝る場所さえあれば全然平気ですよ」と全く気にしている様子はありません。
それを聞いて又吉さん、「まあ僕も若手の頃は風呂なしのアパートとかに住んでましたけど…。でも、さすがにこういう所で寝たことは…。今まで見た中で一番すごいかも…」と衝撃を受けていました(笑)。
しかし、いったいなぜここまで安い家賃の部屋に住まなければならないのでしょうか?NPO法人代表の菅原さん曰く、「仕事を始めて3年目までの新人アニメーターは、本当に”食べられない”という状況なので、生活費を抑えるために安い部屋に住むしかないんですよ」とのこと。
アニメーターは、「1枚絵を描いていくら」という単価で仕事をしてるんですが、その1枚がだいたい200円ぐらいなんです。で、新人の場合はすごく絵を描くのが早い人でも、1ヶ月に300枚描ければいい方なんですよ。そうすると、単価200円で月に300枚描いたとしても、月収は6万円にしかならないんです。なので、なかなかそれで食べていくのは難しい。
菅原さんの説明を聞いて「過酷ですね、それは…」と驚愕する又吉さん。一昨年行われた調査によると、アニメーターの1日の平均労働時間はおよそ11時間だそうです。にもかかわらず、平均年収はわずか111万円。典型的なワーキングプアじゃないですか!
「なぜそんなに賃金が低いんですか?」と又吉さんが尋ねると、「40〜50年ぐらい前は、動画マンでも家を建てたりできるほど高給取りの仕事だったようですが、時代と共にどんどんアニメの情報量が増えてきたんです。キャラクター一人の線の量が、以前に比べて3〜4倍ぐらいになった。そうなると、1枚描くのに3〜4倍の時間がかかってしまうんです」とのこと。
つまり、昔のアニメの場合は、キャラクターがシンプルだから1枚の絵を描く時間も少なく、1ヶ月に1000枚や1200枚ぐらいは普通に描けていたんですね(仮に1000枚描いたとしたら、単価が200円でも月収20万円となり、十分に生活できる)。
しかし現在は、キャラクターのデザイン自体が複雑で写実的なものが多く、ユーザー側も「綺麗でハイクオリティな作画」を求めているため、絵の密度がムチャクチャ上がっているのです。そのため、1枚仕上げるのに5時間かかることもあり、新人アニメーターは「いったい自分は何をやっているのだろう…」と自信を失ってしまうらしい(「1枚5時間」と聞いて絶句する又吉さん↓)。
お笑い芸人の場合は、そもそも仕事が無いんですよ。仕事が無いからお金が無いっていうのは、まあ分かるんですけど、アニメーターさんの場合は仕事を一生懸命しているのに、作業しているのにお金が無いっていう…大変ですよね。僕が思ってたより、ずっと大変な状況なんですね。
こういう厳しい環境で働いていたら長続きするはずもなく、「新人アニメーターの3年以内の離職率は約80%」という非常に残念な調査結果が出ており、今回の番組でインタビューを受けた人も「僕の同期は僕以外全員辞めてしまいました」と告白。
この後、番組内では「3DCGの制作現場」を取材していて、そちらの方は効率的な作業を追及し、従業員の給与も安定して支払われているのですが、その一方、手描きのアニメーターは相変わらず長時間労働で低賃金のままなんですよね。
これは今に始まったことではなく、もう何年も前からずっと言われ続けてるんですけど、一向に改善される兆しが見られません。もしかして、このまま手描きのアニメは衰退していってしまうのでしょうか?う〜ん、厳しいなあ…(-_-;)
みたいなことを考えていたら、驚きのニュースが飛び込んできました。なんと宮崎駿監督が新作長編アニメーション映画を作るために、新人アニメーターの募集を開始したそうです。ええええ〜!?
宮崎監督といえば、2013年に「体力の衰え」などを理由に長編映画制作からの引退を発表したはずですが、今回「作るに値する題材を見出したから」という理由で引退を撤回することになったらしい。しかし、数年前にジブリの制作部門は無くなったためスタッフがいません。
そこで新たにアニメーターを募集しているようなんですけど、「給与:月額20万円以上」「賞与:年2回」「交通費:全額支給」「福利厚生:社会保険完備」など、破格の好条件を提示してるんですよ。これは凄い!
なにしろ普通の新人アニメーターの場合、「給与:完全出来高制(手取り6万円以下)」「賞与:なし」「交通費:自腹」「福利厚生:なし」などが当たり前ですから、それに比べるとまさに天国みたいな環境と言えるでしょう。
まあ宮崎監督の下で働くとなれば、当然、要求されるレベルはかなり高いと思われますが、滅多にない(というか、恐らく今後二度とない)貴重な機会なので、アニメーターを目指している人にとっては朗報なんじゃないでしょうか(^_^)