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日本のアニメが崩壊寸前?ヤバい現場にありがちな10のポイント

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先日、「日本で働いているアニメーターの多くは低賃金に苦しんでいる」「あまりにも環境が過酷なため、3年以内の離職率は8割を超えるらしい」みたいな記事を当ブログで書きました。

なぜアニメーターは貧乏なのか?ブラックすぎる実態に批判殺到!

要は、動画の工程をコストが安い海外へ外注するようになると国内の人材が育たなくなり、日本のアニメーターはどんどん減ってしまう…という悪循環に陥っているわけです。これだけなら、「今後ますますアニメが作り辛くなるだろうな〜」という程度の話でしょう。

ところが、そんな現状を無視するかのように、新作テレビアニメはどんどん増え続け、今年の10月から始まったアニメの数はなんと75本!さらに来年の1月から開始される新作も37本が予定されるなど、まさにアニメラッシュの様相を呈してるんですよ。

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(「うずらインフォ」より)

常識的に考えて、「アニメーターが不足しているのに、こんなに作品数を増やして大丈夫なの?」と誰もが疑問に感じると思いますが、案の定、ぜんぜん大丈夫じゃなかったです。それどころか、日本のアニメは今や崩壊寸前の大ピンチ!その兆候は以前から現れていました。

事の発端は今年の7月。放送を開始したばかりの『レガリア The Three Sacred Stars』というTVアニメが、わずか4話で「いったん終了させて頂きます」という公式アナウンスを発表し、シーズンの途中でいきなり中断してしまったのです。

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現在は無事に再開しているものの、ファンの間では「オンエアが始まった段階で早くもスケジュールが破綻し、現場がにっちもさっちもいかなくなったらしい」などと噂され、さらに「他のアニメもヤバいのでは?」と、その頃からすでに不穏な雰囲気が漂っていたそうです。

そしてついに、恐れていたことが起きました。10月から放送を開始したアニメ『ろんぐらいだぁす!』が、第3話で早くも「制作上の都合」により放送を延期、なんと第1話を再放送するという非常事態が勃発してしまったのです。

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しかも、1週飛ばして第4話が放送された後、またしても第5話が延期される異例の事態に!本作を担当していたアニメスタジオ「アクタス」によると、「制作スケジュールの遅れによるもの」とのことですが、短期間に2度も放送が飛んでしまうとは尋常じゃありません。

さらに、『第502統合戦闘航空団ブレイブウィッチーズ』や『夏目友人帳 伍』といった他のアニメ番組も、「制作スケジュールの遅れ」などを理由に次々と放送延期を発表。いったいなぜ、ここまで立て続けに延期や中断が発生しているのでしょうか?

あるアニメ業界関係者によると、「アニメ番組の制作本数が増え過ぎて、業界全体のキャパシティを超えつつあるからだ。今までは、少ないアニメーターが仕事を掛け持ちするなどして何とかやりくりしてきたが、それがとうとう限界に達してしまったのだろう」とのこと。

ハッキリ言って、これは「異常事態」と言わざるを得ません。確かに、今までにもスケジュールが厳しいアニメはたくさんありましたが、「放送に穴を空けることだけは絶対に避けなければ!」という作り手側の意地とプライドで、何とか納期を守ってきたのです。

たとえ作画が悪くなろうが総集編を入れようが、「何が何でも放送日に間に合わせる!」という信念を貫き、オンエアを死守してきました。それに対してアニメファンも「ああ、また総集編か。現場は今、大変なんだろうな〜」と生温かい目で見守っていたわけです。

ところが、昨今の制作現場は状況が悪化し過ぎて、スタート直後からすでにスケジュールが破綻し、もはや総集編すら流せないほどの危機的状態に陥っているらしい(さすがに3話目で力尽きたら総集編どころじゃないよなあw)。

実は(ちょっと前の話ですが)2014年に『進撃の巨人』がアニメ化された際にも、似たような”事件”が起きていました。恐ろしいことに『進撃の巨人』は、4月6日から放送を開始したにもかかわらず、4月22日の時点で早くもアニメーターの数が足りなくなったらしいのです。

その結果、なんとキャラクターデザインと総作画監督を務めた浅野恭司さんが、「どこかにアニメーターはいませんか?」「力を貸して下さい!」とツイッターで呼び掛けるという、前代未聞の事態が勃発したのですよ。

もう放送がスタートしている段階でアニメーターを募集するなんて、通常はあり得ません。幸いにもこの時は「放送に穴を空ける」という最悪の事態だけは免れました。しかし福岡放送や北海道テレビやテレビ大分では、一部が”他局と異なる内容”でオンエアされたそうです(第4話と第5話)。

その際、本来はキャラクターの全身が映っているはずのシーンが顔のアップに差し替えられていたり、作画ではなく背景がやたらと多かったり、不自然な映像になっていたようですが、これは福岡放送などの3局だけが他の局より納品日が早かったため、「未完成状態で放送せざるを得なかった」ということらしい。ギリギリやないか!

まあ、今も昔もテレビアニメのスケジュールは常にギリギリで、「放送日の前日に納品」なんてのはまだマシな方。酷い時には「当日納品」とか、「放送の2時間前納品」なんてのもあったそうです。伝説の「24時間テレビ手塚治虫アニメ」に至っては、「前半部分を放送している間に、大急ぎで後半部分のフィルムを現像していた」という信じ難い逸話まで残っているほどですから。

ただ、昨今のアニメが昔と違うのは、「ギリギリでも何とか納品できていた時代」とは異なり、「制作本数の増加」や「深刻なアニメーター不足」などによって、「オンエアに間に合わせることさえも難しくなってきている」という点でしょう。

1本だけならまだしも、2本3本と立て続けに放送延期が発生するとは、いよいよ現場が回らなくなってきている証拠ではないかと。とうとう”最終局面”に突入した感がありますねえ(もう、毎週1本アニメを放送できる状態じゃないのかも…)。

ちなみに、アニメの制作現場はどのような段階を経て修羅場と化していくのでしょうか?あくまでも個人的な印象ですけど、「万策尽きたー!」となるまでの兆候やポイントを10項目に分類し、以下にその具体例を挙げてみましたよ。


●レベル1:総集編回が入る

過去に放送した映像を再編集して新たな1話を作ってしまう技を「総集編」と呼び、アニメファンの間では主に「制作が逼迫してきた目安」にされている。ただ、総集編を作るにも”ある程度のスケジュール”が必要なので、この段階では「まだ余裕がある」と言えるかもしれない。

なお、近年は2クールの中に総集編を入れることが織り込み済みとなっているため特に問題視されないが、『ガールズ&パンツァー』の場合は1クールなのに2度も総集編をぶち込んだことで、さすがに「マジか?」とファンがザワついたそうだ。


●レベル2:「第二原画」が増える

原画・動画・第一原画・第二原画などの説明はWikipedia等を見てもらうとして(原画についての解説はコチラ)、アニメーションの制作工程において脚本、絵コンテ、レイアウトが遅れると、連鎖的にその後の工程にも支障が出る。

その結果、確保していた原画マンが他の作業を入れてしまい、リテイクが発生してもアニメーターに戻す時間がなくなり、どんどんスケジュールが切迫…という悪循環に陥ってしまうのだ。このため、最近はやたらと第二原画が目に付くケースが増えている(大量の二原撒き)。

これは「人数が多いから余裕あり」という意味ではなく、「スケジュールがヤバいから人海戦術で乗り切ろう」としている状態なのだ(本来は一人で行うのが望ましい作画監督も、時間が無い現場では総作画監督や作画監督補佐など、作監が異常に多くなる)。

まあ、「二原が増えたら即現場崩壊」ってわけでもないのだが、昔のテレビアニメは「作監一人に原画が数人」という小規模な体制で作れていたことを考えると、「こんなに大勢のアニメーターを動員しなければ間に合わない今の現場」が、いかに厳しいか分かるだろう。

●レベル3:ツイッターでアニメーターを募集する

今のところ『進撃の巨人』以外に聞いたことはないんだけど、総作画監督自らそんなことをやっている時点で、相当に追い詰められていることは間違いない(今後、こういう例が増えるかも…)。


●レベル4:監督が自腹で作り直す

海外に発注した作画が酷い仕上がりで全然使えない → 仕方なく国内のスタッフで描き直す…という流れは割と良くあるらしいが、もっとも悲惨な例は『ふしぎの海のナディア』第34話「いとしのナディア」ではないだろうか。

なんせ、韓国のアニメスタジオから戻って来た原画が目も当てられないほどメチャクチャな出来栄えで、ブチ切れた庵野秀明総監督が絵コンテごと捨ててしまったのだから。

しかし、新たに描き直す予算は全く無い。なので仕方なく、庵野監督がポケットマネーで一本丸ごと作ってしまったという。過去のフィルムの再利用・再編集で新規の絵はほとんど入っていないとは言え、まさか監督が自腹でアニメを作るとは…。

↑今見ると、これはこれで割と面白いし、これだけの映像をたった2週間で作り上げた庵野秀明は「やっぱり凄い!」と言わざるを得ない。


●レベル5:作画が崩れる

制作状況の悪化に伴い、映像のクオリティが著しく下がってしまう現象を「作画崩壊」と呼ぶ。単に「アニメーター不足」だけでなく、「スケジュールの遅延」や「海外スタジオへの発注」など、その要因は様々だが、いずれにしても現場的にはかなり危険な状況だ。

過去に作画崩壊したアニメは枚挙に暇がなく、有名な例としては『夜明け前より瑠璃色な』(第3話)と『ロスト・ユニバース』(第4話)がツートップだろう。中でも『ロスト・ユニバース』の場合は「第1話の放送時点でオープニングが未完成」という大惨事を引き起こしており、もはや「最初から破綻していた」と言った方がいいかもしれない。

●レベル6:制作進行が脱走する

以前、制作進行を主人公にした『SHIROBAKO』というアニメが話題になったが、実際の仕事はあれの数倍しんどいらしい。テレビ版『超時空要塞マクロス』では、あまりのキツさに耐えられなくなった制作進行が、会社の車を路上に乗り捨てたまま行方不明となり、その車をメカ作監の板野一郎が引き取りに行った、という凄まじい逸話が残っているほどだ(アニメ業界的には…というより人としてアウトやろw)。

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●レベル7:原画だけで撮影する

制作進行がいなくなると、現場はたちまち大混乱に陥る。作業の進捗状況を管理する人間がいなくなるからだ。その結果、原画の回収もままならず、当然、動画も上がらない。そこで原画だけを撮影したフィルム(原撮)を編集して強引に放送するという、最終手段に打って出る(色は塗っているので原撮そのままではない)。

動画が入ってないから動きがカクカクして、アニメファンからは「紙芝居のようだ」と揶揄されるが、納品が間に合わずに落とすよりはマシだ。さすがに近年は見かけないものの、過去には何度か放送事故スレスレの作画崩壊がオンエアされていたのだから恐ろしい。

↑今や伝説と化している『超時空要塞マクロス』の第11話「ファースト・コンタクト」。動画を抜いて原画だけで撮影されたアクションシーンは、当時、多くのアニメファンに衝撃を与えた(今ならネットで炎上間違いなし)。


●レベル8:作画監督がぶっ倒れて入院する

スケジュールが足りなくなり徹夜作業が続くと、やがてアニメーターの疲労はピークに達する。中でも、全ての原画をチェックする作画監督の激務は熾烈を極め、体力の限界を超えて働いた結果、病気で倒れてしまう人もいたらしい。

たとえば、『機動戦士ガンダム』の作画監督を務めた安彦良和は、第34話「宿命の出会い」の作業中にぶっ倒れて入院。診察した医者が驚いて、「こんな無理しちゃいけない!」と言ったエピソードは有名である(この時、安彦氏はアニメーターを辞めようと思い、病院のベッドで小説を書いていたという)。

優秀な作画監督の離脱によって、ただでさえ遅れ気味だった『機動戦士ガンダム』のスケジュールは壊滅状態となり、当時サンライズの第1スタジオで働いていた板野一郎や他のアニメーターたちは、安彦氏が描いた修正原画をかき集め、拡大したり縮小したりしながら懸命に制作を続けたそうだ。

しかし、そんな程度で安彦氏が抜けた穴を埋められるはずもなく、スタジオは破綻寸前の大ピンチに!最終的には、富野由悠季監督が自分で原画を描かねばならないほどに追い詰められ、現場は修羅場と化したらしい(最後まで落とさなかったのは奇跡に近い)。

ちなみに、アニメーターの板野一郎も『超時空要塞マクロス』の作監作業中は半年間も家に帰れず、血尿が出るまで働かされた挙句、血を吐いて倒れて病院に運び込まれた。しかし『マクロス』のスケジュールがギリギリで、休みたくても休めない。すると医者に”病名が山ほど書かれたカルテ”を突き付けられ、「これをあんたの上司に見せろ!それでも入院させてもらえないんだったら、俺が上司を説得しに行く!」とまで言われたそうだ。


●レベル9:未完成でもいいから納品する

いよいよ現場が切羽詰まってくると、作品のクオリティよりも何よりも、とにかくテレビ局へ納品することが最優先になる。ギリギリのタイミングで持って行ったら、向こうも内容をチェックする時間が無いので、上手くいけばそのままオンエアされるかもしれない(もう、この段階になるとそんなことしか考えられなくなっている)。例えどんな手を使おうとも、最終的に「落とさなければよかろう」なのだァァァ!

……みたいな状況が1990年代後半ぐらいまではまかり通っていたんだけど、さすがにテレビ局側も「いいかげんにしろ!」と堪忍袋の緒が切れて、あまりにも出来が酷いアニメは納品を拒否すること、そして「落としてしまった場合」は違約金と代替番組の手配料を請求すること、などを決定。現在では「未完成でもいいから納品する」技は使用禁止になっているそうだ。


●レベル10:放送に間に合わない

いわゆる「万策尽きた」という状態。世のアニメ制作者たちは皆「絶対に落としたくない!」と必死で頑張ってはいるものの、色んな事情で間に合わない、ということも現実的に起きてしまう。最近は総集編を作る余裕も無くて、第1話を再放送したり、オリジナルビデオを流したりしているようだが、それすら出来ない場合はどうなるのか?

アニメ版『愛の戦士レインボーマン』(1982年)の場合は、なんと最初の第1話目からいきなり落としてしまい、その代替えとして同じ放送枠の『超時空要塞マクロス』を2話分一気に放送するという暴挙に出た(このせいで『マクロス』のスケジュールがガタガタになる)。

また、とあるアニメでは監督と声優が急遽テレビに出演し、作品の内容を自ら解説する「特別番組」を放送するなど、「いったい制作管理はどないなっとんねん!?」と言いたくなるほど酷いアニメがいくつも存在したそうだ。

もしかすると、今の状況は単に全体の作品数が増えたから落ちるアニメも増えただけで、「昔よりも悪くなっている」とは一概に言えないのかもしれないが、いずれにしても「アニメ業界の未来は明るい」とは全く思えない(少なくともアニメーターを取り巻く環境が改善されない限りは)。果たして、日本のアニメ産業は今後どうなる?


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