どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
先日、以下のような記事が話題になっていたので読んでみました。
・アニメ制作会社の雇用条件や賃金の実態、暴露情報が流出!非難殺到で炎上
ざっくり内容を説明すると、「ピーエーワークス(P.A.WORKS)」というアニメ制作会社に所属しているアニメーターが、自社の劣悪な雇用状態をTwitterで暴露したところ、あまりにも安い賃金や過酷な業務内容が話題となり情報が拡散。
このアニメーターは「動画」の仕事をやっていて、「原画」への昇格を目指し、日々頑張っていたそうです。ところが、昇格試験に落ち続けて3年が経過すると「机代として月に6000円会社に払うことになった」らしい(本人曰く「『才能がないやつは出ていけ』という圧力がやばい」とのこと)。
さらに、自身の収入をTwitterで公開したのですが、1ヶ月の賃金が44,139円で、そこから税金やら何やらを引かれ、なんと手取り1,477円!その3ヶ月後には「お賃金3ヶ月で67倍になった」と喜んでいるものの、控除後の支払額は67,569円でした。67万じゃなくて6万7千円ですよ!
しかも、これらをツイートした直後、「会社クビになりました。みんな、さようなら…」というつぶやきを最後に、突如アカウントが削除される事態に。どうやら会社にバレて解雇されてしまったようですが、この状況を見たネットユーザーから「ピーエーワークス」に対して批判が殺到!
元々「ピーエーワークス」は、「アニメ作りは色々大変なこともあるけれど、とても素晴らしい仕事なんですよ!」的なことをアニメで描いた『SHIROBAKO』という作品を制作していました。なので余計に、「『SHIROBAKO』で訴えていたことは何だったんだよ!」「ただのブラック企業じゃねえか!」と炎上してしまったのでしょう。
しかし、この騒ぎを知ったピーエーワークス側はすぐに以下のような謝罪文を公式サイトに掲載しました。どうやら、炎上が拡大する前に事態の収拾を図ろうとしたようです。
ところが内容を読むと、「今回、SNSに支払明細を投稿した弊社スタッフを見つけて事実確認を行った。こちらから契約を解除した事実はなく、またSNSのアカウントの削除を依頼した事実もない」とのことで、詳しい内容についてはよく分からないんですよね。
そして、これに対する世間の反応は「賃金の問題等に一切触れてないところがまさにブラック企業」「火消しに必死で何の説明にもなってない」など、ますます不信感を募らせている模様。う〜ん…
ただ、こういう批判に対して「いや、それはちょっと違う」という意見もあるようです。何が違うのかと言うと、「確かに一般的な常識から考えればピーエーワークスの賃金形態は良くないかもしれないけれど、アニメ業界の中ではかなりマシな方だ」というのですよ。
あの・・仕事したこと無いけど、PAはアニメ業界では評判の良い会社で・・
— 柳沼和良 (@yaginuma_san) 2016年11月4日
良い会社なのに、一般の人が驚く現実。
PA叩くより、アニメ業界の平均レベルを叩いて欲しい。
もっと底辺なの。
某炎上中の動画マンの件に関して既にいろんな人が言及していると思うけど、個人的な意見を…
— 鯉川 慎平 (@pei1912) 2016年11月4日
賃金の低さについては、一般的に見れば低いしブラックだと言わざるを得ないけどアニメ会社のなかでは良いほうだと思います。
なので、会社どうこうより業界全体がこれでマシとか言ってるのがヤバイ
つまり、「アニメーターの低賃金を指摘するなら、一つの会社だけを叩くのではなく、アニメ業界全体の問題として考えるべきだ」ということらしい。
実際、アニメーターの劣悪な労働環境は以前から問題視されていて、「アニメーション制作者実態調査報告書2015」によれば、業界全体の平均年収は332.8万円、最も低いのが111.3万円(動画)、最も高いのが648.6万円(監督)になるそうです。
このうち「動画」のセクションは、主に1年目の新人アニメーターが担当するんですけど、完全出来高制で、単価は1枚たったの200円なんですね(現場によっては200円以下のところもある)。
さらに、新人だから1枚描くのに時間がかかるし、失敗してリテイク(描き直し)を食らったら、その分のギャラはもらえません(あくまでも出来高制)。
なので、どんなに頑張って描きまくっても月産500枚程度が精一杯。これは昨今の「絵柄(デザイン)」にも原因があるようで、例えば『ドラえもん』とか『オバケのQ太郎』みたいな30〜40年前のシンプルな絵だったら、1枚にかかる手間は少なくても済むでしょう(実際、当時のアニメーターは1ヶ月にかなりの枚数をこなしていた様子↓)。
自分の動画時代は一番行ったのが ドラえもんで一日170枚位かなぁ。北斗の拳で行って一日45枚くらいと言えば少し現在と比較できるかな。まぁ、裏塗りがある無いでかなり手間は違うと思いますけど。
— 橋本 敬史 (@norider1965) 2016年11月4日
線の少ない作品なら動画枚数は稼げます。こぐまのミーシャという作品で僕は10時間足らずで150枚描いていた。TVシリーズのおじゃまんが山田くんで1日に100枚は楽。早く原画を描き始めたから月産では原画+動画1200が最高枚数だった。動画チェックの方は指導しながら1500枚超え。
— 上妻晋作 (@kozuma_) 2016年11月4日
東映動画TVシリーズ銀河鉄道999を三人の動画グループが1話6千枚を1か月で描いていました。動画単価は一枚120円の時代です。僕の実体験と比較しても作品によっては5倍くらい処理の多い今の動画さんの作業内容が如何に過酷か理解出来ると思います。
— 上妻晋作 (@kozuma_) 2016年11月4日
このツイートを例にとると、『銀河鉄道999』の動画を3人で1ヶ月6千枚描いていたそうです。ということは、一人当たり2千枚。当時の動画単価は1枚120円とのことなので、2,000×120円で240,000円。確かにこの金額なら、十分に生活できそうですね。
しかし、デザインがリアルで線が多く、ディテールが異常に細かい最近のアニメでは、1枚を仕上げるための時間が全然違うんですよ(非常に手間がかかるため、1日に描ける限界は20枚ぐらい)。さらに、今のアニメオタクは作画にこだわるから、必然的に絵のクオリティを上げざるを得ません。
・なんせ昔のアニメがコレで↓
・今コレですからね。200円じゃ無理だよ!↓
そうなると当然、その皺寄せがアニメーターを直撃し、1枚描くための手間や時間が膨大にかかり、月産500枚ぐらいしか上げられず、×200円として月収10万円。さらに年収120万円の中から税金やら何やらを引かれると手元に残るお金は…てな感じで「アニメーター極貧物語」の出来あがりですよ(苦笑)。
つまり、ピーエーワークスのアニメーターだけが特別に待遇が悪いわけではなく、今、アニメ制作に携わっているほとんどの動画マンが似たような低賃金で働いている、というのが実情なのです(ただし、一部のアニメスタジオでは動画も給料制になっているらしい)。
でも、こんな状況ではアニメーター生活を長く続けられるはずがなく、新人アニメーターの3年以内の離職率は、なんと80パーセントを超えているという。そして現在、動画の多くは中国・台湾・韓国・タイ・インドネシアなどの海外へ発注され、日本国内のアニメーターが減少するという「空洞化」が起こっているそうです。
こういう現状に対し、現役のアニメ関係者の中には「原画や動画の単価をもっと上げるべきだ!」と主張する人も現れているみたいですね。
私としましては2014年から原画8500円動画600円と主張させていただいています。
— ふくだのりゆき (@fukudanoriyuki) 2016年11月4日
「それちょっと無理でしょう」という声も聞こえてきますが、もうすでにTVシリーズで原画8000円、また違う会社ですが社内動画には単価500円出している所があるので可能な金額だと思っています。
おお、動画1枚600円!もしこれが実現すれば、仮に1ヶ月400枚しか描けなくても、400×600円で240,000円になりますね。税金等を引かれても手元にかなり残るから、人並みの生活ができそう。つーか、普通に考えて何でギャラのアップを要求しないのよ?って感じなんですけど、色々事情があるんでしょうねえ。
アニメーターは昔から金額を交渉し辛い空気がありますよね。
— クボヤマ エイイチ (@kuboyamama) 2016年10月29日
先輩や上手い人が安い金額で仕事してたらそれ以上の金額は貰い辛いし、制作に「皆この金額でやってるので」と言われたり。
それは今のベテランが作り上げた空気なのに、責任も取らずにお前の努力が足りないとか何様なんですかね?
う〜ん、アニメーターの低賃金問題はもう何年も前からテレビ等でも取り上げられていますが、一向に改善する兆しが見えないんですよね。にもかかわらず、アニメの制作本数だけはどんどん増え続けているというこの矛盾。果たして解決する日は来るのでしょうか(^_^;)
アニメ業界の賃金については北道先生の「プ〜ねこ」にて痛烈な風刺がされていますね. pic.twitter.com/q0YjfBHqc1
— いえなが@通勤電車内モデラー (@ienaga045) 2016年11月4日