世間ではリオ・オリンピックの話題で盛り上がっている中、映画館では『シン・ゴジラ』が大ヒットを記録中です。7月29日の公開から先週末8月14日までの3週間で、なんと観客動員数230万人、興業収入33億8200万円を突破するという凄まじさ!東宝では当初、最終目標を40億円程度と見込んでいたようですが、この勢いなら50億円超えは確実でしょう。
そんな『シン・ゴジラ』、すでに色んな人が内容を考察してるんですが、中でも議論の的になっているのがラストシーン。「ヤシオリ作戦」によって凍結され、活動を停止したゴジラの尻尾にカメラが近づいていくと、その先端には何やら生物らしきものの姿が…。
「アレはいったい何なんだ?」と公開直後から話題になったこのシーンに関して、多くの観客の間で検証が行われ、現在、様々な説がネット上に乱立しているそうです。というわけで本日は、その中で代表的な説をいくつか取り上げてみましたよ。
●ゴジラ増殖説
まずは、「尻尾から生まれようとしているのはゴジラではないか?」という説です。劇中では巨災対の調査分析結果から、ゴジラの「無生殖による個体増殖の可能性」が指摘され、さらに「個体が群体化し、小型化・有翼化して世界中で繁殖するかもしれない」と言及していました。
つまり、あのまま放置しておくと、尻尾の先から小さなゴジラが大量に生まれて世界中に拡散し、地球が大変なことになる、という意味ではないのか?と。今は取りあえず活動が停止しているけれど、「いつゴジラが復活するか分からないぞ!」と警告しているわけですね。
まあ、台詞で伏線も張ってあるし、娯楽映画の終わり方としては十分あり得る展開でしょう。ただ、もしこの説が正しいなら、1998年に公開されたローランド・エメリッヒ監督の『GODZILLA』(通称エメゴジ)と同じオチになってしまうんですよねえ。
エメゴジの場合は「米軍の攻撃によってゴジラは倒されるものの、その直前に卵を産んでいて、ラストは”中で何かが蠢いている卵”のアップで終わる」みたいな感じですが、シチュエーション的にはほぼ一緒なんですよ。
しかし皆さんご存じの通り、エメリッヒ版の『GODZILLA』は公開直後から批判が相次ぎ、日本だけでなく世界中のファンから酷評を受けました。しかも『ゴジラ FINAL WARS』では、X星人(北村一輝)から「やっぱりマグロ食ってるようなヤツはダメだな」とまで言われてしまう有様。そんなエメゴジと同じオチっていうのは、何だか気持ち的に釈然としないんですよねえ。
●牧悟郎が食われた説
東京湾羽田沖で発見された無人のプレジャーボート。そこで牧悟郎という教授が残した”手掛かり”が見つかります。「私は好きにした。君たちも好きにしろ」という意味深な手紙からも、ゴジラの出現と牧教授の失踪に何らかの関連があると考えて間違いないでしょう。
劇中の説明によると「牧悟郎は城南大学で統合生物学を研究していたものの、放射能関連の事故で妻を失い、それに対して日本政府が何の対応もしなかったため、失意のままアメリカへ渡り、米国エネルギー省(DOE)の依頼で放射性物質を食べる未知の生物について研究していた」とのこと。
この時、牧教授が分析していた未知の生物は「GODZILLA」というコードネームで呼ばれており、恐らくゴジラの幼体でしょう。そして彼はこの「GODZILLA」を密かに持ち出し、東京湾に遺棄したのではないか?さらに、「揃えた靴を残して姿を消す」という描写は”自殺”を暗示させ、もし海に身を投げたのなら、そのままゴジラに食われたのではないか?
つまり、尻尾の中に見える人型のようなものは、ゴジラが体内に取り込んだ人間(牧悟郎)を表してるんじゃないかと。これが「牧悟郎がゴジラに食われた説」です。そして、人間を摂取したことでゴジラの幼体に変化が起こり、短時間で急激に進化したと考えられるのではないでしょうか。
また、この説を支持している人の多くは、同時に『機動警察パトレイバー』にも言及しています。『パトレイバー』の中に「廃棄物13号」というエピソードがあって、「米軍が極秘に研究していた生物兵器が東京湾で巨大化して大暴れする」という物語が『シン・ゴジラ』に似ていると指摘(ちなみに、このエピソードは劇場アニメ化もされています)。
「廃棄物13号」では、西脇順一という博士が「ニシワキ・セル」と呼ばれる新種細胞を培養して特殊な生物を作り出すものの、研究半ばでガンで死亡。その後、栗栖敏郎博士が研究を引き継ぎ、米軍と結託して生物兵器の開発に利用します。
「廃棄物シリーズ」と名付けられた実験は成功を収めるが、実験体13号を積んだ飛行機が東京湾に墜落。西脇博士の娘の西脇冴子は、亡き父の研究成果を成就させるために海へ飛び込み、急激な成長を遂げて巨大化した13号は、ついに海から陸へ上がろうとする…というストーリーでした。
このエピソードは原作者のゆうきまさみさんが怪獣映画好きなこともあって、東京湾に怪獣が現れる様子や、政府や警察機関の対応などが非常にリアルに描かれています。こういう部分も「『シン・ゴジラ』と『パトレイバー』は似ている」と言われる理由なのかもしれません。
なお、『シン・ゴジラ』では自衛隊に防衛出動の命令が下されますが、『パトレイバー』では災害出動が要請されていました。なるほど、これなら元防衛相の石破茂さんも納得ですね(笑)。
●牧悟郎=ゴジラ説
「いや、ゴジラに食われたんじゃなくて、牧悟郎自身がゴジラになったんだよ」という説もあるようです。この説を唱えている人は根拠として、「なぜゴジラは日本を襲うのか?」という根本的な疑問を考察していました。つまり、「ゴジラが日本を襲うのは、死んだ奥さんの復讐を果たすために牧教授自身がゴジラになって東京を目指しているからだ」と。
さらに今回、ゴジラは第二形態・第三形態・第四形態と徐々に進化していく様子を見せていますが、なぜか第一形態だけが映っていません。そこでこの説では、「恐らく第一形態は牧悟郎そのものだったのではないか?」と主張しています(ちなみに牧悟郎役は岡本喜八監督なので、巨大な岡本監督が泳いでいるということに…怖ッ!)。
また、牧教授がボートに残した地図には、ゴジラの出現予想位置が書いてありました。それは牧悟郎がゴジラの行動を予想したものだと思われますが、どうして事前に予想できたのか謎なんですよね。でも「俺はゴジラになってこのルートを辿って日本へ上陸する」という牧教授の宣言だったから、と解釈すれば辻褄が合うそうです。
そして劇中では、これら牧悟郎の手掛かりを元にゴジラを倒す作戦が生み出されますが、なぜわざわざそんな手掛かりを残していったのかと言うと、「俺はゴジラになって日本を破壊する。君たちも日本を守りたければ守るがいい」というメッセージだったのでは?と。だからこそ、最期の言葉が「私は好きにした。君たちも好きにしろ」という文面だったのではないでしょうか。
●巨神兵説
庵野監督が『風の谷のナウシカ』で巨神兵の作画を担当していたことは有名ですが、それに関連して「尻尾の中に見える人型のような物体は巨神兵なのでは?」と考えている人もいるようです。確かに、口から超強力なビームを放つところは一緒、さらに宮崎駿さんの原作漫画では背中に翼を生やして空を飛んでいますから、「有翼化して世界へ飛散する」という設定とも合致します。
つまり、「あのまま尻尾から巨神兵が生まれれば、ゴジラに代わって巨神兵が東京をメチャクチャに破壊する『巨神兵東京に現わる』に繋がるのではないだろうか?」と考えたわけですね。個人的には「ゴジラと巨神兵を繋げるかなあ」と思うんですけど、説としては面白いかも。
●使徒説
使徒とは、もちろん『新世紀エヴァンゲリオン』に出て来たあの使徒です。そして、下半身から人間の足のようなものをいっぱい生やしている「第2使徒リリス」が、尻尾から人型を生やそうとしているゴジラに重なるという意見があるらしい。
ということは、凍結されたゴジラはこの後、ターミナルドグマに幽閉されて、セカンドインパクトが起きないように政府によって監視されるのでしょうか?そして汎用人型決戦兵器が製造されて、続編の『シン・ゴジラ2』ではカヨコ・アン・パタースンが巨大ロボを操縦する……う〜ん、観たいような観たくないような(笑)。
というわけで、『シン・ゴジラ』の尻尾について色々な説を取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか?なお今回取り上げた説以外にも多くの意見があって、皆さん結構真剣に考察してるというか、つくづく『シン・ゴジラ』は様々なことを考えさせる映画だなあと実感しましたよ(^_^)