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実はあのセリフはアドリブだった?アニメのアフレコ現場を見た感想

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新世紀エヴァンゲリオン

新世紀エヴァンゲリオン


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、声優の榊原良子さんが「1993年に公開された劇場アニメ『機動警察パトレイバー2』に関していまだに様々な思いを抱えている」という記事を書いたところ、多くの方に読んでいただいたようで誠にありがとうございました。

内容をもの凄く大雑把に要約すると「押井守監督がアフレコ現場で”こういう感じでセリフを喋って欲しい”と指示したら、榊原さんが”この状況でそういう言い方はできない”と難色を示した」みたいな話です(詳しくはこちらの記事をご覧ください↓)。

type-r.hatenablog.com

で、この記事に対していくつか反応をいただいたんですが、その中に「アニメのアフレコって声優さんの意見は聞いてもらえないのかな?」とか、そういう反応があったんですよね。

この『パト2』の時、榊原さんは「感情を込めてセリフを言うにはあと1秒ほどの”間”が欲しい」と押井監督に要望したんですけど、現場で色々検討した結果、その意見は受け入れてもらえませんでした。

なので「たったの1秒でも変更してもらえないの?」「実写と違ってアニメは自由度が低いんだな~」などと思った人がいたようです。たしかに、実写の場合は撮影現場で役者さんが何か意見を言って、監督がそれを了承すればセリフや動きを変えることも可能です。

一方、アニメの場合は声優さんがアニメの絵に合わせて演技をするわけですから(プレスコは別として)、自分のタイミングで何でも自由に変えることはできません。そこが実写との大きな違いでしょう。ただし…

「じゃあ声優さんの意見は全く聞き入れてもらえないのか?」というと、必ずしもそうではないのです。状況によっては声優さんの意見に同意し、セリフを変えてアフレコする場合もあり得るのですよ。というわけで、ここからちょっと僕の体験談というか”昔話”をしたいと思います。

アフレコスタジオ

アフレコスタジオ

今から数十年前、当時、学校で同じクラスだったA君から「アニメのアフレコを見学しに行こう」と誘われました。今はアフレコ見学なんて簡単には出来ないのかもしれませんが、その頃はアフレコスタジオの外に人気声優を出待ちしているファンが大勢いたり、割と自由な時代だったのです。

とはいえ、もちろん僕らは勝手に押しかけたわけではなく、事前にアポイントを取った上で訪問したんですけどね(当時のA君は学校でも有名なアニメオタクで、どういう経緯で見学の話に至ったのか忘れましたが、何らかのコネクションを持っていたのでしょう)。

訪れたのは有名な新宿の某アフレコスタジオです(現在は閉鎖され、別の場所に移転しているらしい)。そこで僕たちは4~5人も入ったらいっぱいになるほどの小さな部屋に通されました。

僕たちが座る席の目の前には大きなガラス窓があって、窓の向こうの録音ブースが丸見えの状態です(当然、防音になっているはずですが、スピーカーが繋がっていたのかこちらの部屋にも収録の音声が全部聞こえるようになっていました)。

でも、これってよく考えてみると不思議な部屋ですよねえ(もともと見学者用の部屋だったのだろうか?)。ちなみに、音響監督やスタッフがいる調整室は別の場所にあったようです(見てないので分かりませんが)。

で、しばらくその部屋で待っていると、やがて声優さんたちが録音ブースに入って来ました。その時に収録していたのは超有名な人気TVアニメのアフレコで、古谷徹さんや鈴置洋孝さんや潘恵子さんなど、レジェンド級の声優さんが次々と登場!

中でも古谷さんはもの凄く陽気な方で、手に持っていたタコの足みたいな形をしたオモチャを窓ガラスにペタペタ貼り付けながら「こんにちは~!古谷で~す!」と僕たちに挨拶してくれました(あのオモチャも今考えると謎だなあw)。

そうこうしているうちに収録がスタート。まず最初に、映像を見ながら各自が自分のセリフを確認します(今はモニターですが、当時はフィルムなのでスクリーンに映写していた)。

リハーサルが終わると、いよいよ本番のアフレコが始まるんですが、ここで鈴置さんが「ちょっといいですか?」と音響監督に声をかけました。「このセリフ、少し言いにくいんで変えたいんだけど…」とのこと。

残念ながら、具体的にどんなセリフだったのか忘れてしまったんですが(なんせ数十年前のことなのでw)、たとえば「行こう!」を「行くぜ!」に変えるとか、セリフ自体の意味を変えないで言葉の語尾だけちょっと変えたいという、その程度の変更だったと思います。

そして鈴置さんからこの要望を聞いた音響監督は、調整室にいた(であろう)演出担当者と相談し、そのキャラがこういう言い方をしても違和感がないかどうか等を検討して、問題がなければ「じゃあそれでいきましょう」となるわけです。

この収録中に声優さんと音響監督とのやり取りが何度かあって、その都度「変更してもOK」とか「そこは台本通りに」などの判断が下されていました。僕はこの様子を見て「アニメのアフレコも意外と自由なんだなあ」と思ったんですよ。

基本的にアフレコを収録する段階では作画がほぼ仕上がっていて(仕上がってない場合もありますが…)、声優さんの意にそぐわないシーンがあったとしても大きな変更はほとんどできません。

しかし、台本に書いてある内容を大幅に変えず、さらに口パクの尺にうまく収まる範囲であれば、現場で臨機応変に対応することも可能なのです。もちろん全ての現場に当てはまるわけではなく、演出担当者によっては変更を認めないケースもあるでしょう。

ただ、押井守監督がTV版の『うる星やつら』を担当していた時は、メガネ役の千葉繁さんが「隙あらばアドリブをぶち込んでやろう」という考えの持ち主で、押井さんも千葉さんのそういう暴走演技を楽しんでいたらしく、台本に書いてないセリフを膨大に喋る回が結構あったとか。

また、有名な『ドラゴンボール』の「オッス、オラ悟空!」というセリフも元々は野沢雅子さんが収録中にふざけて喋った言葉だし、『新世紀エヴァンゲリオン』の綾波レイ「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」も、台本では「のりラーメン」だったセリフを林原めぐみさんがアドリブで変更した…などのエピソードもよく知られています。

新世紀エヴァンゲリオン

新世紀エヴァンゲリオン

さらに『ちびまる子ちゃん』の「後半へ続く」というナレーションも台本には書かれておらず、「CMに入る前のちょっとした”間”に何か一言入れたいな…」と考えたキートン山田さんのアドリブだったのですよ。

しかもアニメ版『ちびまる子ちゃん』は、原作にないセリフを加えたり原作のセリフを勝手に変更することが基本的に認められていないにもかかわらず、作者のさくらももこさんがこのセリフを気に入ったため例外的に許可され、今ではすっかり定番になってしまったのです(すごいですねぇ!)。

というわけで、「アニメのアフレコは台本通りに喋らなきゃいけない」「変更は一切できない」と思ってる人もいるようですが、「実は意外と自由度が高くてアドリブも多い」というお話でした(^.^)


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