日本に真言密教をもたらした平安時代の僧:空海。本作は、遣唐使として中国に渡った若き日の彼を主人公にした夢枕獏の小説を、チェン・カイコー監督が映画化した歴史ミステリーです。
『さらば、わが愛』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、『始皇帝暗殺』では秦の時代の宮城を再現したチェン・カイコーが本作で求めたのは、物語の舞台となる約1200年前の長安をよみがえらせることでした。
セットの建設地として選ばれたのは、中国の湖北省にある襄陽市です。元は沼地だった場所を整地して2万本もの木を植え、巨大な池を作り、堅牢な町並みが建てられたこのセットの広さは、なんと東京ドーム8個分!
基礎工事から行われた建物は、いずれも撮影用のセットとは思えぬほど頑丈に建設され、外観だけでなく内装も忠実に作り込まれており、完成までに約6年も費やしたそうです。
特に、空海が密教を授かる青龍寺のセットは、あまりにも本物そっくりに作られたため、現在は本物の寺として実際に僧侶が住んでいるらしい。すげえ!
そして今回、中国語のセリフをマスターし、空海役に挑んだ染谷将太は、撮影期間中、ホテルの部屋でも台本とにらめっこする日々だったとか。
そんな染谷さんをサポートしたのが、白楽天役のホアン・シュアン。染谷さんによれば、彼は中国語のセリフの練習に付き合ってくれ、時にはワインを届けてくれるなど、常に気遣ってくれたそうです。
また、チェン・カイコー監督の演出について「モニターの前で映像を止めたりコマ送りしながら、”振り返るタイミングをあと3コマ遅くしてほしい”と言われたこともあった」など、非常に細かい要求が多かったらしい。
阿倍仲麻呂を演じた阿部寛は「”妥協”という言葉はこの監督にはないんだな、というぐらい1カット1カットに対する情熱と時間のかけ方がすごかった。大勢のエキストラの端から端まで、監督の思いが伝わっている」と撮影時の様子を語っていました。
そんな超大作映画『空海 -KU KAI- 美しき王妃の謎』、中国では5億3千万人民元(約92億円)を超える大ヒットを記録しましたが、日本での評判はイマイチで、製作費9億7千万人民元(約150億円)を回収するのは難しいようです(^^;)