どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
本日、金曜ロードSHOW!で宮崎吾朗監督の『ゲド戦記』が放送されます。公開時は「あの宮崎駿の息子が長編アニメを初監督!」みたいな感じで注目を集め、かなりの話題になりました。
しかも当時、月刊『サイゾー』2006年8月号に「ゲド戦記公開記念!」と題して押井守と宮崎吾朗の対談記事が掲載されたのです。
読んでみたら押井監督の鋭いツッコミが炸裂していて非常に面白く、まるで父親(宮崎駿)に対する長年の恨み辛みを息子で晴らそうとしているかのようでした(笑)。
というわけで本日は、押井守と宮崎吾朗の会話の中から一部を抜粋してご紹介しますよ(^_^)
押井守:「今回の『ゲド戦記』って”息子が父親を殺す話”でしょ?こんなアコギなことをいったい誰が企んだの?」
宮崎吾朗:「“吾朗君、やっぱり父親を殺さなきゃ!”って悪魔のように耳元でそそのかす某プロデューサーがいたんです(笑)」
押井:「なるほど(笑)。実生活でさ、自分の父親を殺したいって思ったことある?」
宮崎:「いや、ないですね」
押井:「1回も?」
宮崎:「ええ、ないです」
押井:「僕なんか、宮さんを殺したいと思ったこと、何度もあるけどね(笑)」
宮崎:「(苦笑)」
押井:「ところで今回、吾郎君が作った『ゲド戦記』のドラマの本質って何?」
宮崎:「う〜ん、なんだったんだろう……。正直に言えば、今はまだ自分が何を作ったのか、良く分からないんです。理屈として考えたことは確かにあったはずだけど、振り返ると訳がわからない。“一体僕は何を作っちゃったんだろう?”っていうのが正直な心境ですね」
押井:「1本目なんて、それが普通だよ。僕は『うる星やつら オンリー・ユー』っていう映画だったんだけど、前任の監督が逃亡しちゃった結果の、間に合わせのピンチヒッターだったのね。だから、覚悟も準備もする暇なんてなかった。演出家と2人で完成したゼロ号試写を観た時、大ショックを受けたよ。“ひでえ!これは全然映画になってない!”って。もうヤケクソになって、そのまま吉祥寺の飲み屋で朝まで飲みまくり。翌日の初号試写に大遅刻したんだよ。しかも試写室に行ったらもう始まってるわけ。監督がいないのに、なぜやるんだと(笑)。そんな頃に初めて宮さんに出会って、思いっきりボロクソに言われたんだよね(笑)」
宮崎:「僕は、押井さんよりは幸せな状況で、準備期間が2年近くあったので、初号試写はそれを確認する作業だけだと思っていたんですが……当日、来ちゃったんですよ」
押井:「宮さんが?」
宮崎:「ええ…。いきなり現場は異様な緊張状態になっちゃって、頭は真っ白で放心状態です」
押井:「それはキツイなあ(笑)」
宮崎:「いつ席を立つのかと思ってたら、アレンが“僕は父を殺したんだ!”と告白するシーンでいきなり立ち上がって…」
押井:「出て行っちゃった?」
宮崎:「…って思ったら、また戻ってきた」
押井:「それは逃げたんだよ(笑)」
この「『ゲド戦記』の初号試写を観ていた宮崎駿が突然席を立って出て行った」というエピソードは本当の話で、本人は「タバコが吸いたくなったんだ」と言ってロビーでタバコを1本吸い、すぐまた席へ戻って行ったらしい。
実は、この辺の状況は以前NHKの番組内で詳しく紹介されていて、『ゲド戦記』を観た宮崎駿さんが感想を聞かれた際、「僕は自分の子供を見てたよ」「大人になってない」「(感想は)それだけ」と憮然とした表情で答えていました。
さらに、息子の吾朗さんがアニメ監督になったことについても「次はもうないよ。まあ1本作れたからいいじゃんね。それでもう、やめた方がいい」と非常に厳しい評価を下しています。う〜む…(^_^;)
というわけで、色んなことを話し合った二人ですが、対談の最後は押井監督から吾朗さんへの「温かい(?)お言葉」で締めくくられていました。
押井:「僕が吾朗君に送れるエールがあるとしたら、“宮さんに引導を渡せ”ってこと。それは僕らの役目ではなく、やっぱり息子である吾朗君の役目であり、義務なんだよ。あのオヤジに引導を渡すっていうのは僕の長年のテーマでもあったわけだから、吾朗君には是非とも頑張ってもらいたいなと(笑)」
結果的に『ゲド戦記』は興行収入77億円の大ヒットを記録し、宮崎吾朗さんはアニメーション監督として2作目となる『コクリコ坂から』を制作、さらにNHKのテレビアニメ『山賊のむすめローニャ』を制作しました。
そして、『ゲド戦記』公開から12年経った現在、スタジオジブリでは宮崎駿さんと宮崎吾朗さんの新作を2本同時に制作しているという。
1本は、宮崎駿監督による手描きアニメ『君たちはどう生きるか』で、もう1本は息子の宮崎吾朗監督が手掛けるフルCGアニメ(タイトル未定)だそうです。ついに初の”親子同時制作”が実現!果たしてどんな映画になるのでしょうか?
なお、『コクリコ坂から』の時にも初号試写に宮崎駿さんが観に来たんですが、観終わった後はやっぱり憮然とした表情で「少しはこっちを脅かしてみろ!」と言い捨て、一方の吾朗さんも「ちくしょう、見てろよクソ親父!」と反発。海原雄山と山岡士郎みたいな親子だなあ(笑)。