現在、全国の劇場で絶賛公開中の『ブレードランナー2049』は、1982年に製作されたリドリー・スコット監督&ハリソン・フォード主演『ブレードランナー』の続編となる作品です。
”SF映画の金字塔”との呼び名も高い名作の続編となれば、必然的に引き受ける側のプレッシャーも高まると思いますが、そんな難題に敢えて挑んだのがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。
さすが超大作映画を任されるだけあって、近年話題作を連発してるんですけど、いったいどんな作風なのでしょう?というわけで本日は、そんなドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の映画をいくつかご紹介しますよ。
●『灼熱の魂』(2010年)
地元カナダでは『渦』(2001年)や『静かなる叫び』(2009年)などで高く評価されていたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、世界的に注目を集めるきっかけとなった作品です。
『灼熱の魂』は、「謎の手紙を残して突然他界した母親のルーツを探る双子の姉弟が、やがて衝撃の真相に辿り着く」という物語なんですが…
いや〜、凄い映画でした!これ、ネタバレしちゃうと台無しになってしまうので詳細は書きませんけど、まだ観てない人はぜひ何も知らない状態でご覧ください。
内容的には「母親の人生に何が起きたかを解き明かすミステリー」で、その数奇な運命を見ているだけでも飽きさせません(とにかく酷い目に遭いまくる)。
そして、最終的に主人公たちが辿り着く”恐ろしい結末”に「えええ!?まさかそんなことが…!?」と驚愕させられるでしょう。劇中に「時として、知らない方がいいこともある」というセリフが出て来ますが、映画を観終わった後で「確かにその通りだな…」と実感しました(^_^;)
●『プリズナーズ』(2013年)
ヒュー・ジャックマンとジェイク・ギレンホールが共演したサスペンス映画です。ある日、突然6歳の娘が行方不明になり、父親のケラー(ヒュー・ジャックマン)が必死に探すものの見つからない。
やがてロキ刑事(ジェイク・ギレンホール)が近所の青年アレックス(ポール・ダノ)を容疑者として拘束するが、自白も物証も得られず釈放される。
それに苛立った主人公は、愛する娘を取り戻したい一心で”越えてはいけない一線”を踏み越えてしまう…というストーリーです。
全体の構成は「娘を誘拐した真犯人を探し当てるミステリー」なんですが、最大の見どころは「モラルを逸脱した主人公の行動」と、「最終的に彼はどうなってしまうのか?」という先読み困難なドラマ展開でしょう。最後までハラハラドキドキさせられますよ(^_^)
●『複製された男』(2013年)
『プリズナーズ』に引き続いてジェイク・ギレンホール主演作品です。ただ、先の2作品と違うのは、映画を観終わっても「なるほど、そういうことだったのか!」とはならない点なんですよね(苦笑)。
大学の歴史講師アダム(ジェイク・ギレンホール)は、ある日ビデオを観ていたら自分とそっくりな俳優を見つける。気になって調べてみると、顔や声や体格に加え生年月日まで同じことが判明。
いったいなぜ、自分と全く同じ人間が存在するのか?その謎を探るうちに、やがてアダムはそれぞれの恋人や妻を巻き込みながら、想像を絶する運命をたどっていく…
みたいな感じで、非常に面白い映画ではあるんですよ。ただ、最後まで観ても意味が良くわかりません(苦笑)。「観た人によって解釈が分かれる」という意味では大変ユニークな作品と言えるでしょうね。デヴィッド・リンチの映画とかが好きな人には合うかも(^_^;)
●『ボーダーライン』(2015年)
メキシコの麻薬カルテルを殲滅すべく奮闘する女性FBI捜査官の姿を描いたサスペンス・アクション。主人公はエミリー・ブラントですが、後半からは謎のコロンビア人を演じたベニチオ・デル・トロの方が目立ってます(笑)。
また、ヴィルヌーヴ作品の中では最もアクションシーンが多いことも特徴で、特に銃撃戦の凄まじさは『ブレードランナー2049』よりも全然上でした(笑)。
最大の見どころは、メキシコ麻薬カルテルの恐ろしさをリアリティたっぷりに描き出している点でしょう。そして、最後に明かされる不気味なベニチオ・デル・トロの”目的”もお見逃しなく(^_^)
●『メッセージ』(2016年)
この映画も”ネタバレ厳禁”のためにあまり多くは語れないんですが、一つだけ言わせてもらうと、物語の冒頭シーンから”あるトリック”が仕掛けられているので、注意して観ていれば気付くかもしれません。
内容は、「ある日突然地球に飛来した巨大な宇宙船にコンタクトを試み、彼らの目的を解き明かそうとする人々の姿を描いたSF映画」です。
主人公の言語学者ルイーズ(エイミー・アダムス)には”ある秘密”が隠されてるんですけど、それは映画を観てのお楽しみ(笑)。個人的に好きな作品ですね(^_^)
というわけで、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品をいくつか取り上げてみたんですが、共通項を挙げるとすれば、どの物語にも何らかの「サプライズ」が仕掛けられていることかなと。
つまり、観客が「こういう展開になるんだろうな」と思っていたら「え?」と驚くような意外な方向へ話が進んで行く…そんな印象がヴィルヌーヴ作品には感じられました。
映画のジャンルはヒューマン・ドラマやサスペンスやSFなど、様々な種類を描いているけれど、根底には常に”謎”を解き明かそうとするミステリアスな雰囲気が漂っている。
そして同時に”生命の在り方”が描かれ、主人公たちは”謎”の解明を通じて”生命”と向き合うことを宿命付けられているのですよ。
最新作の『ブレードランナー2049』でもこのスタイルが貫かれており、主人公のK(ライアン・ゴズリング)は自らの出生の謎を解き明かすべく奔走します。まさに、それこそがドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作風なのでしょう。
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