どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
本日、金曜ロードSHOW!にて宮崎駿監督の『天空の城 ラピュタ』が放送されます。
内容に関しては、今さら説明の必要もないぐらい有名作品ですが、
意外と知られていない”裏設定”などがあるのをご存知でしょうか?
というわけで、本日は『天空の城 ラピュタ』にまつわるエピソードをいくつか書いてみますよ。
●フラップターを作ったのは誰?
『天空の城ラピュタ』に登場する架空の飛行装置”フラップター”。劇中ではドーラ達が使用し、見事な空中アクションを披露していますが、そもそもこのマシンを作ったのは誰なんでしょうか?
タイガーモス号には眼鏡をかけた老機関士(ハラ・モトロ)がいてメンテナンスをしているので、「このお爺さんが設計したのかな?」と思っていたのですが、どうやら違うらしい。
宮崎駿監督によると、「フラップターを作ったのは、一人の神父兼科学者だ(名前は不明)。色んな研究をしている最中、若い頃のドーラにその才能を見込まれて誘拐された。そして”あたしのために働きな!”と言われて作ったのがフラップターだ」とのこと。
当初、宮崎監督は絵コンテにもこのキャラクターを登場させ、「フラップターの発明者」「神父」「ドーラの愛人」などと描き込んでいたそうです(カトリック教徒は妻帯できないため、”愛人”という設定になったらしい。後に死亡)。
しかし、「物語の中盤でいきなり新キャラを登場させるのは良くないのでは?」と判断し、結局この絵コンテはボツになってしまいました。なお、その名残は「ドーラの部屋の小さな写真立て」の中にチラっと残っているそうです。
●ムスカ大佐の下着の色は…
『ラピュタ』と言えばムスカ大佐!今や悪役という枠を飛び越え、すっかり人気キャラになった感のあるムスカさんですが、劇中では常にカッコいいスーツを着こなし、服を脱ぐようなシーンはありません。
ところが、あるシーンで密かに下着姿が描かれていたのですよ!それは、映画の冒頭場面。大型飛行船がドーラ達に襲撃され、ムスカが通信機で軍へ連絡している時、シータが後ろから殴りつけて床に倒れる所です。
画面を見るとムスカはしっかり背広を着ていますが、実はこのシーン、ムスカの「上半身」と「背広」は別々のセルで描かれていました。
つまり、床に倒れて動かないムスカの顔は一枚の静止画で処理し、シータが飛行石を探す”衣装の部分”は別のセルを上から重ねて撮影していたのです。
その静止画の上半身に描かれていたのが、なんと薄いラクダ色の肌着を着たムスカの姿!しかもボタン付き!そこまで描き込む必要はないにもかかわらず、「しっかり色まで塗ってあった」というのだから驚きです。
通常、こういう原画は宮崎駿さんや作画監督によって修正されたりするものですが、なぜかそれらのチェックをすり抜け、動画検査も通過して「彩色の工程」まで回り、さらに仕上げの人も「見えないのに、何で塗らなきゃいけないの?」とグチることなく色を塗ってくれたのだから素晴らしい(笑)。
ちなみに『紅の豚』では、マンマユート団がジーナの歌に聞き惚れているシーンで、その中の一人が「自分の股間を握りしめる」という原画を描いた男性アニメーターがいて、女性の動画マンを困惑させたという。
幸いにもそのシーンは、上にもう一枚セルを重ねて見えなくなる部分だったので、描かずにごまかして担当のアニメーターに渡しました。
すると、そのアニメーターから「ちゃんと(股間を)握ってください」という指示書き付きの修正原画が戻って来たらしい。それを見たジブリの女性アニメーターたちは「セクハラよ!」と大笑いしていたそうです(笑)。
●ムスカと『ブレードランナー』の繋がり
ムスカ大佐の声を担当したのは俳優の寺田農さんですが、なぜ寺田さんだったのでしょうか?実は、『ラピュタ』を制作している最中、1986年4月14日に月曜ロードショーでリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』がテレビで初放送されました。
この時、ルトガー・ハウアー演じるレプリカントのリーダー:ロイ・バッティの日本語吹き替えを担当していたのが寺田農さんだったのですよ。
そして、この放送をたまたまジブリのスタッフが観ている時に宮崎監督もやって来て、「ロイ・バッティの役柄はムスカとイメージが重なる」「ムスカの声は寺田さんがいいんじゃないか?」という話になり、本当に寺田さんが起用されたらしい。
もしこの時、宮崎監督が『ブレードランナー』を観ていなかったら、ムスカの声は違う人になっていたかもしれません。そういう意味では、「運命的なキャスティング」と言えるんじゃないでしょうか。
●なぜオートモービル?
映画序盤のハイライトといえば、やはり逃げ回るパズーとシータ、それを執拗に追跡するドーラ一家のチェイスシーンでしょう。ここで活躍するのがオートモービルですが、ドーラたちはこれをどこで手に入れたのでしょうか?
タイガーモス号に重たい車を積んでいたとは思えないし、パズーたちが住んでいるスラッグ渓谷は炭坑労働者ばかりですから、手に入れるのも難しそう。
実は宮崎監督の最初のラフコンテでは、2頭立ての馬車に乗って追いかけるシーンが描かれていたそうです。しかし、馬車の作画は時間がかかるし、手間の割には効果がないと判断したらしい。
「もし馬車追跡案を採用したら、公開日までに間に合わないかも…」、そう考えた宮崎監督は馬車を諦め、オートモービルを使ったスピーディな展開に切り替えたそうです。
●「バルス」はどうして短いの?
映画のクライマックス、ムスカ大佐に追い詰められたパズーとシータは、飛行石を握った手を突き出して滅びの呪文「バルス」(閉じよ)を唱えます。
しかし、目覚めの呪文「リテ・ラトバリタ・ウルス アリアロス・バル・ネトリール」(我を助けよ、光よ蘇れ)は長いのに、どうして滅びの呪文はあんなに短いのか?とファンの間では長年疑問視されていました。
実はこれ、宮崎監督の都合だったようです。「もし最後の呪文がリテ・ラトバリタ…みたいに長かったら、唱えている間にムスカに撃たれてしまう」と考えた宮崎さんは、超短い「バルス」という呪文を採用。
「バルス!」と一言で言い切れるため、さすがのムスカ大佐も銃を撃つ間がなく、一瞬で発動してしまった…というわけです。なお、宮崎監督は他にもいくつか「ラピュタ語の呪文」を設定していたらしい。
※「レヂアチオ・ルント・リッナ」(ものみな鎮まれ)
ラピュタの周囲を覆っている巨大な雲のバリアーを解除する呪文
※「シス・テアル・ロト・リーフェリン」(失せしもの汝、姿を現わせ)
ラピュタに入るためのゲートを開く呪文
これらの呪文は準備稿に書かれていたものの、結局ボツになってしまいました。様々な呪文を駆使して活躍する魔法使いみたいなシータの姿も観てみたかったような気もするけど(笑)。
ちなみに、「バルスの語源はトルコ語の”バルシュ”で、平和を意味する言葉」という説がネット上で広まっていますが、単なる都市伝説のようです。
実際は、宮崎駿監督が影響を受けた諸星大二郎の漫画『マッドメン』に「ピジン語で”飛行機(バルス)”とは、原住民語の”ハト”の意味だ」というセリフがあり、どうやらここから「バルス」が生まれたようです(『マッドメン』のワンシーン↓)。
というわけで、『天空の城 ラピュタ』にまつわるエピソードをいくつか書いてみましたが、いかがだったでしょうか?なお、今回取り上げた裏話は『もう一つのバルス』(木原浩勝著)という本を参照させていただきました。他にも面白いエピソードが色々載っているので、『ラピュタ』好きにはオススメですよ(^_^)
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