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Channel: ひたすら映画を観まくるブログ
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メナヘム・ゴーランの『キャノンフィルムズ爆走風雲録』感想

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どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。

先日、レンタルビデオ店内で映画を物色していると、気になるタイトルを発見したので観てみました。

作品名は『キャノンフィルムズ爆走風雲録』

キャノンフィルムズ?爆走?何だか良く分からないけど、勢いだけは凄そうですねえ(笑)。というわけで本日はこの「映画制作にまつわるドキュメンタリー」のお話です(完全にネタバレしてるので悪しからず)。

なお、「キャノンフィルム」で検索すると、カメラメーカーの「キヤノン」ばっかり出て来るんですが、全く関係ないのでご注意ください(^_^;)

さて「キャノン・フィルムズ(Cannon Films)」とは、1967年に設立されたキャノン・グループの一部門で、独立系の映画会社です。

規模は小さいものの、低予算かつ観客に受ける映画を製作してヒットを生み出し、80年代に入ってから新作映画を次々と公開するようになったキャノン・フィルムズは、一気にメジャーグループに迫るほどの急成長を成し遂げました。そのラインナップはこんな感じ↓


●チャック・ノリス主演作

『地獄のヒーロー』、『地獄のコマンド』、『デルタ・フォース』など

●チャールズ・ブロンソン主演作

『スーパー・マグナム』、『必殺マグナム』、『バトルガンM‐16』など

●ジャン=クロード・ヴァンダム主演作

『ブラッド・スポーツ』、『キックボクサー』、『サイボーグ』など

●ショー・コスギ主演作

『ニンジャ』、『ニンジャII / 修羅ノ章』、『デス・オブ・ザ・ニンジャ/地獄の激戦』など

●シルヴェスター・スタローン主演作

『コブラ』、『オーバー・ザ・トップ』など


個人的には非常に懐かしいというか、「午後のロードショー」辺りで放送したら喜ぶ人もいるんじゃないかと思うんですけど、ぶっちゃけ微妙なセンスだなあと(笑)。

実は、80年代のこういう雰囲気を現代風にブラッシュアップしたものが『エクスペンダブルズ』シリーズなわけで、出演者の顔ぶれがシルヴェスター・スタローン、ジャン=クロード・ヴァンダム、チャック・ノリスなのも、ある意味、キャノン・フィルムズのノリを再現してるんですね。

そんなキャノン・フィルムズの創設者:メナヘム・ゴーラン監督は、子供の頃から映画作りに目覚め、通っていた小学校で自主制作映画を上映するほどのめり込んでいたそうです。

そしてメナヘム監督には、ヨーラム・グローバスという従弟がいました。ヨーラムの父親は映画館の経営者でしたが、ある日、「息子が1日中映画館へ入り浸って困っている」とメナヘムへ相談。

ヨーラムは映画のポスターを作ったり、チラシを配ったり、映画を売ることが大好きで、6歳の頃から劇場でチケットを売っていたという。

それを聞いたメナヘム監督は、一緒に映画会社を運営しようと持ちかけます。映画の仕事を夢見ていたヨーラムは大喜びでメナヘムの元へ。

こうして、「メナヘム・ゴーラン&ヨーラム・グローバス」の名コンビが誕生!母国イスラエルで様々な映画を撮って大成功を収めた後、次に目指したのがハリウッドでした。

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はるばるロサンゼルスへやって来た二人は小さなアパートを借りて「キャノン・フィルムズ」を立ち上げ、色んな映画を企画するものの、設立間もない小さな映画会社ではなかなか実現に至りません。

そこで彼らは「質より量」の作戦を実行しました。低予算のB級映画を大量に作ったのです。しかも、他のメジャースタジオよりも何倍も早いスピードで!

通常、1本の映画を制作するには、企画から完成まで、最短でも1年以上はかかると言われています。規模の大きな映画になればなおさら時間がかかり、公開まで5〜6年を要する場合も珍しくありません。

ところが、キャノン・フィルムズは製作時間が異常に早く、『ブレイクダンス』という映画を作る際は「ブームが起きている今がチャンスだ!」と突貫作業を強行。

その結果、アイデアを思い付いてから劇場公開まで、なんとたったの3ヶ月という驚異的なスピードを叩き出し、業界関係者を唖然とさせたそうです。

また、製作費の安さも特筆すべきで、メナヘム・ゴーラン監督は「3000万ドルかけて映画を作る?まさか!」「映画1本にそんな大金を注ぎ込むなんて出来ないよ」「30本作ることは出来るけどね」などと公言し、敢えて低予算ムービーを量産しました。

さらに、作品内容も”低俗で単純明快な娯楽映画”に徹し、「銃撃戦」「大爆発」「流血」「お色気シーン」などを必ず盛り込み、多くの大衆の心を鷲掴みにしたのです。『ホステル』や『キャビン・フィーバー』のイーライ・ロス監督もその一人でした。

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「子供の頃、キャノンフィルムの映画に夢中になった。キャノンフィルムといえば銃撃戦にエロシーンにバイオレンス。まさに”ヤバイ映画の代名詞”だったね。あんな映画会社は他にないよ。ユーチューブも無い時代、僕が教わったのは、チャック・ノリスとチャールズ・ブロンソンと忍者だ(笑)」


「キャノンの映画は大半がゴミと言われてたけど、いまだに賛成できないね。タランティーノは自宅に『レッドコブラ』のフィルムを持ってて一緒に観たことがある。世界有数の監督が絶賛する映画なんだぜ?面白いに決まってるだろ!」 (イーライ・ロス監督のコメント)


やがてキャノン・フィルムズの評判が高まってくると、色んな人が興味を示し始めました。ある日、メナヘム・ゴーラン監督が奥さんとフレンチレストランで食事をしていると、若くてハンサムなウエイターが近づいて来たそうです。

両手にスープが入った皿を持った彼は「ゴーラン監督ですか?」と尋ね、本人だと確認すると、いきなり監督の頭上スレスレをキック!しかもスープを一滴もこぼさずに!そのウエイターこそ、当時無名のジャン=クロード・ヴァン・ダムでした。

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翌日、監督のオフィスに招かれたヴァン・ダムは、上着を脱いで上半身を見せ、「どうですか、この筋肉は!」と猛アピール。さらに、椅子を二つ並べて股割を披露したり、空手の型を見せたり、必死に自分を売り込んだそうです。

しかし、ゴーラン監督は「まあ、落ち着け」とヴァン・ダムを椅子に座らせ、「いいかい?私が求めているのは演技力だ。その筋肉と開脚は役に立たないよ」と不採用の理由をゆっくり説明したそうです。

でもヴァン・ダムは諦め切れず、「お願いです!何でもしますから映画に出させて下さい!」と懸命に懇願し、その場に泣き崩れました。

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すると、それを見たゴーラン監督はしばらく考え込んで、「そんなに映画に出たいのか?」「よし、俺がお前をスターにしてやる!」と断言。こうしてヴァン・ダム初主演作『ブラッドスポーツ』の出演が決まったのです。

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その後も、『地獄のヒーロー』や『スーパー・マグナム』など次々とヒット作を生み出し、ついには全米興行収入の約20%がキャノン社の売上になるほどの大躍進を遂げました。

さらにヨーロッパ全域で1000スクリーン以上の映画館を所有し、わずか50万ドルで設立した小さな会社の時価総額が、なんとたったの7年で10億ドルを突破!

ただし、映画評論家からの評価は散々で、「彼らは所詮”セールスマン”だよ」「一度も名作を生み出したことはない」と酷評されまくっていたらしい。

それを聞いたゴーラン監督は「クソ!じゃあ次は賞を獲って評価を高めてやる!」と闘志を燃やし、ジョン・ヴォイトが『暴走機関車』でゴールデン・グローブ賞の主演男優賞を受賞した時は大喜びしていたらしい。

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さらに、カンヌ国際映画祭に47作品も出品し、総額10億フランも投資するなど、世間の評価を高めようと必死になっていたそうです。

そして次にオファーしたのが、当時トップスターだったシルベスター・スタローンでした。「ギャラは600万ドルだ」と言われたゴーランは「600万は払いたくない」と拒否。「なぜだ?」と聞かれると「1000万ドル払うからだ」と答えて相手を仰天させたという。こうして作られた『オーバー・ザ・トップ』でしたが、興行成績は惨敗。

この映画の製作費は4000万ドルで、キャノン・フィルムズの映画としては破格の予算です。しかしスタローン自身も「こんな地味な映画がヒットするのだろうか?」と不安を感じていたらしい。この不安が的中し、全米では全くヒットせず、スタローン主演作品としては過去最低の成績になってしまいました(結構好きな映画なんだけど…)。

この頃から、メナヘム・ゴーランとヨーラム・グローバスとの仲がギクシャクし始めたようです。ヨーラムは資金を集めるプロでしたが、メナヘムが映画製作ですぐに使い果たしてしまうため、会社にお金が無くなっていたからです。

元々キャノン社は「低予算映画を数多く作る」ことで利益をあげていたのに、いつしか会社のイメージを良くするために大作映画を作り始めていました。そこで、銀行から多額の融資を受けてることになったんですけど、なかなかヒット作が出ず、徐々に首が回らなくなってきたのです。

このピンチを、メナヘム監督は映画を撮ることで挽回しようとしました。「20本撮ってヒットが出ないなら、あと50本撮ればいい」という謎のロジックを振りかざして。ヨーラムが「一度、映画作りを休んでじっくり考えよう」と提案するものの、メナヘムは全く聞く耳を持たず、狂ったように映画を撮り続けたのです。

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人気アメコミ映画『スーパーマン4 最強の敵』は、そんな絶望的な状況の中、起死回生の一発逆転を狙って作られたのですが、結果は大失敗!そもそもこの映画を作る時点でキャノン・フィルムズにはほとんど資金がなかったため、費用がかかるオプチカル合成を省いて安いビデオ合成で済ませるなど、徹底したコストカットを実施したそうです。

その結果、ビジュアルが全シリーズ中で最もショボくなり、1700万ドルの製作費に対して興行収入はわずか1570万ドルという大爆死状態に。会社の評価は猛烈な勢いで下がり続け、45.50ドルあった株価が、たったの1年で4.75ドルまで落ち込んでしまいました(この映画は本当にヒドいので観ない方がいいです)。

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そして、ついにヨーラム・グローバスの忍耐が限界を突破。「一生映画作りの資金集めに追われる生活を送りたくない」と訴えたところ、メナヘム監督は「だったら俺が会社を辞める!」と激怒。

周りのスタッフも説得しましたが「俺は映画を作りたいだけなんだ!」と言い残し、とうとう会社を去って行ったのです。こうして1989年、30年間を共にしてきた二人は完全に決別してしまいました。

結局、メナヘム・ゴーラン監督は「映画を作りたい」という思いが強すぎたんでしょうねえ。本当はヨーラムも彼と一緒に映画を作り続けたかったようですが、あまりにも強引なメナヘム監督に付いていけなくなったのでしょう。

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その後、ヨーラムは会社に残って事業の立て直しを進め、MGMや他の映画会社を買収するなど、活躍の場を広げていきます。一方のメナヘムは単独で映画の製作に着手するものの、取引銀行から見放され、資金集めもままならず…。

それから数年後、ヨーラムの方もその後トラブルが発生し、結局、会社を辞めて故郷のイスラエルへ戻り、新しく映画スタジオを建設。そして、メナヘムもまた、「どこで映画を作るのが一番最適か」を考え、イスラエルに戻って来たのです。

こうして二人は数年ぶりに再会。また一緒に映画を作るのかと思いきや、互いに歳を取り過ぎたようで「我々二人は完璧なコンビだった。二人で世界の映画を作った。数々の賞も受賞した。実に残念だよ」と過去を振り返り、新作映画を作ることはなかったそうです。

というわけで、このドキュメンタリーは「二人の映画好きがコンビを組んで地元で映画を作り始め、やがてハリウッドで大成功を収めるものの、その栄光は長く続かず、失敗してコンビを解消、地元へ帰り再び出会う」という物語です。

映画はそこで終わるんですが、エンディングが流れ始めると、二人が映画館で映画を観ている場面が映るんですよ。広い映画館に二人だけが並んで座って、今まで彼らが作ってきた映画を一緒に観てるんです。このシーンが良かったですねえ。

「この女優、覚えてるかい?」「もちろん」「映画を観るのは楽しいな」「あの頃は忙しすぎて映画を楽しむ余裕が無かったよ」など、ポップコーンを食べながら実に楽しそうに会話してるんです。まさに映画好きの”映画愛”が詰まった名場面と言えるでしょう。

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ちなみに、キャノン・フィルムズの映画で個人的に好きな作品は以下のような感じになります。

コブラ 日本語吹替音声追加収録版 ブルーレイ [Blu-ray]
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント (2016-09-07)

スタローン扮するマリオン・コブレッティ刑事がひたすら暴れまくる痛快アクション。なおヒロインのブリジット・ニールセンと撮影前に結婚し、撮影後に離婚したらしい(は?)

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ドルフ・ラングレンの記念すべき初主演作。ヘンテコな衣装を着て熱演するその姿に目頭が熱くなる(嘘)

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全国の巨乳好きを大興奮させたSFホラーの怪作(ただし一部貧乳マニアは除く)

まあ、キャノン・フィルムズの映画はどれも低俗で暴力的でB級テイストに満ち溢れてるんですが、それが他の映画にはない魅力だと思います(^_^)


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