どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて本日、BS12にて劇場長編アニメ『地球(テラ)へ…』が放送されます。
あらすじ「地球から2万光年離れた惑星都市で、学校に通う少年ジョミー・マーキス・シンが超能力を持つ新しい人類”ミュウ”であったことから、ミュウの指導者:ソルジャー・ブルーの遺志を受け継ぎ、まだ見ぬ地球(テラ)を目指して仲間たちと共に広大な宇宙へ旅立ってゆく…」
原作は竹宮恵子さんの同名漫画で、1977年から80年まで『月刊マンガ少年』で連載され、多くのファンから人気を博しました。
そして最終回が掲載された直後の1980年4月26日に劇場アニメ『地球へ…』が公開されたのですが、当時まず話題になったのは”豪華なキャスティング”だったそうです。
なにしろ主要キャラクターに井上純一、志垣太郎、沖雅也、秋吉久美子、薬師丸ひろ子、岸田今日子など(敬称略)有名な俳優を多数起用しているわけですから、話題にならないはずがありません。
しかも収録の際には、なんと各キャストが自分が演じるキャラクターのコスチュームを着たままアフレコしたというのだから凄すぎる(あくまでもマスコミ向けのコスプレだったようですが、宣伝効果はバッチリですねw)。
中でもフィシスを演じた秋吉久美子さんは非常に気合いが入っていて、足元まで届く長い髪のカツラをわざわざアメリカから取り寄せ、劇中同様の緑のドレスに身を包み、それらの衣装代だけで180万円もかかったそうです(スゲー!)。
ちなみに本職の声優さんも古谷徹、神谷明、石丸博也、小山茉美、増山江威子、池田昌子、塩屋翼、柴田秀勝、八奈見乗児、銀河万丈など(敬称略)非常に豪華な配役ですが意外と登場シーンが短く、特に神谷明さんは「え?これだけなの?」と出番の少なさに驚きました。
そんな劇場長編アニメ『地球(テラ)へ…』は制作スタッフも豪華で、監督には『伊豆の踊子』(1967年)やTVドラマ『傷だらけの天使』(1974年)などを手掛けた恩地日出夫。
音楽は『隠し砦の三悪人』、『用心棒』、『椿三十郎』、『天国と地獄』、『赤ひげ』など黒澤明監督の作品に数多くの楽曲を提供した佐藤勝。
脚本は金子修介監督の『咬みつきたい』や村川透監督の『聖女伝説』、TVドラマ『太陽にほえろ!』や『暴れん坊将軍』などのシナリオを担当した塩田千種。
そして主題歌は、70年代に『結婚するって本当ですか』が60万枚を売り上げる大ヒットを記録し、一躍人気のフォーク歌手グループとなったダ・カーポ。
こうして見ると、アニメ業界というより”実写作品”に関わってきた人たちが多いような気がしますが、これについて恩地日出夫監督は以下のようにコメントしています。
実写との違いということについてよく聞かれるわけですが、今回の『地球へ…』では、特に僕の今までのやり方を変えずに”映画”を作れたと思っています。実写では撮れるけれどもアニメでは撮れないというカットがありますし、逆に実写ではものすごく難しいけれど、アニメでは簡単に撮れるというカットもありますし、そういう意味では当然違いは出てくるわけですが、基本的にカット数の問題などは、これまでの僕のやり方を崩さないでやっていけました。
恩地監督は「カット数の問題などは、これまでの僕のやり方を崩さないで…」と言ってるんですけど、実はこれが本作の大きな特徴なんですね。一体どういうことか?というと…
一般的に「アニメは実写に比べてカット数が多い」と言われています。
これは要するに「ワンカットの秒数が短い」という意味なのですが、カメラを回しっぱなしにして役者の演技をじっくり撮影する実写に対し、アニメの場合はあまりワンカットが長すぎるとアニメーターの負担が大きくなってしまうため、なるべくワンカットを短くする傾向がある=「実写に比べてカット数が多い」というわけです。
ところが『地球へ…』の場合はアニメなのにカット数が極端に少なく、劇場版『銀河鉄道999』が1600カットなのに対して、たったの650カットしかありません。すなわちワンカットが非常に長いのですよ。
また恩地監督はカメラアングルにもこだわり、通常なら作画の手間を軽減するために定番の画角にするような場面でも、敢えて実写的なアングルを選択したとか。
さらに監督がこだわったのが”照明”です。当時のアニメーション表現では人物や物体の影は背景の状態に関係なく、割と記号的に付けられていました(そのため背景が明るいのにキャラの正面から光が当たるなど、不自然な描写も見受けられた)。
しかし『地球へ…』では画面に実在感と立体感を持たせるため、レイアウトの段階でワンカットごとに光源の位置を決めておき、常に照明が当たる方向を計算しながら作画していったそうです。
恩地監督は「実写とアニメの違いをあまり気にせずに作った」と語っていますが、こういう部分を見ると「極めて実写的である」とも言えるでしょう。
もちろん「ワンカットが長い」という特徴が本作の評価に影響を与えていることは間違いないでしょうし、細かくカットを割った昨今のアニメと比べると、『地球へ…』は非常に「ゆったりとした(あるいは地味な)印象」を受けるかもしれません。
ただ、広大な宇宙を舞台に繰り広げられるスケールの大きな物語を描くには、これぐらいワンカットを長く丁寧に見せた方が効果的なのかなぁ…と個人的には思いました。
また、参加したアニメーターも凄腕揃いで、作画監督の須田正己(タツノコプロ出身で『北斗の拳』や『ドラゴンボール』なども担当)を筆頭に金田伊功、兼森義則、稲野義信、ひおあきら、小松原一男など優れた原画マンがズラリ。
そしてワンカットが長い分、キャラクターの動きがとても細かく描かれており、作画も非常に滑らかなんですよね(描く方は大変だったと思いますが…w)。特に金田伊功さんが描いた終盤の戦闘シーンはスピーディかつ迫力満点で必見です!