どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて昨日、BS12 トゥエルビ「日曜アニメ劇場」にて『機動警察パトレイバー2 the Movie』が放送されたので久しぶりに観てみました。
本作は映画版第1作目(『機動警察パトレイバー the Movie』)の続編で、押井守監督の4本目の劇場用オリジナル長編作品として1993年に公開。
当時の評価は、「野明や遊馬がほとんど活躍しない」「レイバーのアクションが少なすぎる」などファンから批判は出たものの、映画自体の完成度を絶賛する声も非常に多く、現在では押井守監督の代表作の一つとして高く評価されています。
まぁ、押井監督の意向により(曰く「野明というキャラクターが理解できないし、思い入れもない」とのこと)、本作の実質的な主人公は後藤喜一や南雲しのぶになっているわけですが、それもまた魅力の一つと言えるでしょう。
ちなみに後藤喜一を演じた大林隆介さんは「主役だろうが脇役だろうがあまり関係ないんですよ、僕の場合は。押井さんからの注文も特になかったし。もう諦めてたんじゃないの?僕のことは(笑)。だから今まで通り演じてました」とのこと。
また、南雲しのぶを演じた榊原良子さんも「『パト2』は後藤さんと、竹中直人さんが演じた荒川が主役だと思っていて…。だから南雲さんが主役だとは考えてなかったです」とコメントしていました(お二人とも特に”主役”という意識はなかったみたいですねぇ)。
というわけで本日は、『機動警察パトレイバー2 the Movie』の見どころや映像に込められた監督の意図などをざっくり解説したいと思います。
●真っ白な背景
物語の冒頭、東南アジアの某国(カンボジア?)で国連軍のレイバー部隊と敵ゲリラ部隊が戦っているシーンを見ると(晴れている空なら普通は青く描くはずですが)、ほとんど真っ白に飛ばしてるんですよね。いったいなぜか?
美術監督の小倉宏昌さんによると「押井さんの要望で、コントラストをはっきりさせたいと。中途半端な色にするよりも白く飛ばしちゃった方がいいだろうと」「押井さんからは、ここは劇中の誰かが見ているシーンじゃなくて、観客に柘植行人の体験を見せるためのシーンなんだ、と言われました」とのこと。
つまりこれは柘植の心象を表しているシーンで、「目の前で起きているのに現実味がない」「本物の戦争なのに虚構に見える」ということを表現しているそうです(押井監督曰く、「現実の戦争と仮想現実は全くの等価値で、それが日本の現状なんだというところから始めたかった」とのこと)。
●リアルなメカ
非常に複雑な構造のレイバーシミュレーターを描いたのは、メカニックデザイナーの佐山義則さん。当初は別の人がデザインする予定だったのですが、諸事情で降板したため急遽依頼されたらしい。
ところが、「ちょうど仕事が一段落したタイミングだったので引き受けたら予想以上に大変で、1ヵ月以上もかかってしまった」「プレッシャーで精神的に疲弊し、胃もおかしくなってしまった」とのこと。
ちなみにこのシーン、今ならCGで描かれるでしょうけど、当時はそこまでの技術がなかったので全て手描き!作画は1作目にも参加した竹内敦志さんですが、大変だったでしょうねぇ(本作ではレイアウトも担当している)。
●あの人が声優を?
ハンガーでシゲさんに声をかける若い整備員、実はお笑いコンビ「バナナマン」の日村勇紀さんが演じています。当時の日村さんは「バナナマン」を結成する前のピン芸人で、テレビの再現ドラマに出演したり映画の脇役などを演じていましたが、本作では声優として出演。
『機動警察パトレイバー2 the Movie』では他にも航空自衛隊の「SOC/DC(作戦指揮所/防空指令所)」に出て来る自衛官などにプロの声優ではなく、敢えて素人をキャスティングし、「現実感や臨場感を強調した」とのこと。
ちなみに、日村さんは『パト2』が公開された数カ月後に相方の設楽統さんと出会い、それから間もなく「バナナマン」を結成したそうです。
●よく出て来る少女
南雲さんと一緒にエレベーターに乗り込む女の子がいるんですけど、押井監督の映画にはなぜかこういう少女がよく出て来るんですよね(『ビューティフル・ドリーマー』とか『天使のたまご』とか『攻殻機動隊』とか)。押井さん曰く、「言われて初めて気づいた」「無意識のうちに自分の娘をイメージしていたのかもしれない」とのことですが…。
●荒川のモデル
荒川茂樹というキャラクターにはモデルになった人がいて、押井監督の大学時代の知り合いだそうです。押井さんによるとアニメの荒川にそっくりな風貌らしく、「彼は昔の映画仲間で、卒業後に陸自に入って情報の仕事をしていた」とのこと。
顔も含めてほぼそのまんま。目つきが厳しくて角刈りというよりは丸刈りに近いんだけど、95%ぐらい本人の通りです(笑)。韓国とかタイとかフィリピンとか、アジアをさんざん回った男で、今はもう退役してたぶんタイにいると思うけど、『パト2』を公開したあとに会いに来た。「おお、久しぶり。観たぞ」って。
『パト2』のあと、「やって欲しい企画があるんだけど」って企画の売り込みに来たんだよ。それが”武装難民”の話で、「これからは難民の時代になるぞ。お前がやるのが一番いいよ。『パトレイバー2』をやったんだからお前がやれ」ってさ。僕もやりたくて企画書を書いたんだけど、全然誰も相手にしてくれなかった。 (「押井守監督が語る映画で学ぶ現代史」より)
ちなみに、押井監督の指示に従い荒川をデザインしたのはゆうきまさみさんで、最初から「これしかない!」というデザインが描けたためか1発でOKをもらったそうですが、荒川のメガネに関してはかなり細く設定を書いてあり、ゆうきさん曰く「漫画家になる前はメガネ屋に勤めていたものですから、ついこだわってしまって…(笑)」とのこと。
●映像をチェックする3人
ここファンの間でも人気が高いシーンですね(笑)。押井監督によると「こういう画面演出はスクリーンを見ている観客が逆に覗き込まれているという面白さがあり、カメラ目線の演技同様に妙なインパクトを生むので、個人的に大好きな手法です」とのこと。
なお、このシーンで流れているカラオケ曲「おもひでのベイブリッジ」は、前売りチケットマガジン付属のシングルCDに美桜かな子が歌ったバージョンが収録され、のちに発売されたシングルCDには劇中で使用されたカラオケ・バージョンの他に、「しのぶと喜一」(榊原良子と大林隆介)によるデュエット・バージョンも収録されています。
このデュエット・バージョンについて、大林さんは「あれはもう、僕はただふざけてただけですから(笑)。ただ榊原さんに甘えて、好き勝手にやらせてもらいました(笑)」とコメント。
一方の榊原さんは「収録のときに”大林さん、本当はもっと上手く歌えるはずなのに、なんでだろう?”って思って。でも”あ、たぶん照れてるんだ”ってすぐ気付いたんです。それでなんかお母さんみたいな気分になっちゃって(笑)。”もうちょっとしっかり歌いなさい!”みたいな感じで、収録中にそばにいたのを覚えています(笑)」と語っていました。仲がいいですねぇ(笑)。
というわけで、『パト2』についてはまだ書きたいネタはいっぱいあるんですが、ちょっと長くなりそうなのでこの辺で一旦終わります(続きは追記か、別の記事で書きたいと思いますので悪しからずご了承ください)。
※なお、大林さんと榊原さんのコメントは『機動警察パトレイバー後藤喜一×ぴあ』から引用させていただきました。