どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて先日、Twitterで「#映画の好きな裏話選手権」というハッシュタグ付きのツイートが拡散されました。
これは「映画の撮影現場で起きた興味深いエピソード」とか、”映画に関する様々なトリビア”をつぶやいたもので、映画ファンの間で盛り上がっていたようです。
例えば、『レイダース』の撮影当日にハリソン・フォードが腹痛になってしまい、インディ・ジョーンズがムチを使わず銃で敵を撃ち殺すシーンに変更されたとか、『ターミネーター2』のクライマックスでT-1000がサラ・コナーに化けるシーンはリンダ・ハミルトンの双子の妹が演じていたとか。
#映画の好きな裏話選手権
— ランボー卿@🇺🇸5/29F2 cold war (@M4Shermanto) May 17, 2021
かなり、有名だけどムチで果敢に戦う予定だったけどハリソン・フォードが腹痛だったから拳銃で一撃のシーンに変更!
ちなみに次回作ではちゃんとムチで戦うシーンがあった pic.twitter.com/Eip1qCzC5q
有名な撮影秘話から初めて聞くようなエピソードまで実に多くのトリビアが披露され(このブログでも映画のメイキング的な記事を色々書いていますが)、僕はそういう話が大好きなので、「ほほ~、まだまだ面白い裏話がいっぱいあるんだなあ」と楽しめました。
でも、実はこれらのエピソードの中には正しくないものもいくつか混じっていて、しかもかなり以前に間違いが判明しているにもかかわらず、いまだに広く信じられている話もあったりするんですよねぇ。
というわけで本日は、「有名だけど実は間違っていた映画のトリビア」をいくつかご紹介しますよ。
●『マッドマックス』の撮影で死者が出た?
荒廃した近未来の世界で繰り広げられる壮絶なカーアクションが見どころの本作は、あまりにもクラッシュシーンの迫力が凄まじいため、「撮影中にスタントマンが死亡した」との噂が流れ、日本で公開された際にもチラシやパンフレットに同様のことが書かれていました。
なので、いまだにこの噂を信じている人が多いんですけど、グース役のスティーヴ・ビズレーや元撮影スタッフなどがインタビューで否定しているし、2015年には「死んだと言われていたスタントライダー」のデイル・ベンチがイベントに参加するために来日してるんですよ。
マックスのインターセプターに追い立てられ、転倒するスターバックのスタントを演じていたのがデイル・ベンチで、映画では猛烈な勢いで後頭部にタイヤが直撃しており、どう考えても”大事故”にしか見えないのですが、本人によると「大して痛くなかった。それよりカットと同時に全スタッフが”大丈夫か!?”と物凄い形相で駆け寄って来て、そっちの方が怖かったよ(笑)」とのこと。
『マッドマックス』が公開された1970年~80年代の頃は割と大げさな宣伝が横行していて、実際はフィクションなのに「アマゾンのジャングルに向かった探検隊が原住民に襲われ、殺される様子を映したドキュメンタリー」という触れ込みで『食人族』が公開されたり、観客の恐怖心を煽るような作品が大ヒットしていました(当時は”本物”と信じている人が多かったらしく、『マッドマックス』もそういう系統に含まれていたのかもしれない)。
ちなみに続編の『マッドマックス2』も激しいカーアクションが話題となり、バイクがバギーに突っ込んで大男がクルクルと回転しながら吹っ飛んでいくシーンを見た観客は「絶対に死んでるだろ!」と衝撃を受けましたが、このスタントを演じたガイ・ノリスも生きてます(ただし大腿骨骨折の重傷を負った)。
なお、監督のジョージ・ミラーは「『マッドマックス』シリーズは危険な撮影に見えるかもしれないが、まだ一人も死者は出ていない」と豪語しているそうです(いや、ケガ人が出てるんだからダメでしょw)。
●『プレデター』にヴァン・ダムが出演している?
「映画『プレデター』には若手時代のジャン=クロード・ヴァン・ダムがプレデター役で出演している」というトリビアも映画ファンの間で有名ですが、これも正しくありません。
確かにヴァン・ダムは、製作の途中までプレデターのスーツアクターとして参加していたのですが、スーツの出来栄えが悪くて作り直しになり、「アーノルド・シュワルツェネッガーと格闘技で戦いたい」という要望も聞き入れられなかったため降板したのです。
撮影自体は行われていたようで、ヴァン・ダムがボツになる前のスーツを着てアクションするシーンも撮ったらしいのですが、プレデターのデザインが全く変わってしまったため、残念ながらそのシーンはカットされてしまいました。
ちなみに、ヴァン・ダムに代わってプレデターを演じたのがケヴィン・ピーター・ホールで、220センチという長身を活かして見事にプレデターを演じ切り、続編の『プレデター2』でもスーツアクターとして活躍したそうです(病気のため35歳で死去)。
●『ランボー』の腕の傷は本物?
シルヴェスター・スタローン主演の『ランボー』には、「追い詰められたランボーが崖から飛び降りた際に腕を負傷し、自分で傷口を縫う」というシーンがあるんですけど、映画ファンの間で長年「あの傷は本物らしい」と言われていました。
「危険なシーンの撮影中に本当に腕をケガしたスタローンが、”ジョン・ランボーの逞しさを描くいい機会だ”と考え、自ら針と糸を使って傷口を縫合した」などと”いかにもありそうなエピソード”として広まり、僕自身もずっと信じていたのですが、実はこれ、完全なガセネタだったのですよ。
北米版DVDに収録されたスタローン本人のコメントによると、「あれはポンプとチューブを取り付けた特殊メイクだ」とのことで、断崖絶壁からダイブしているのもベテランスタントマンのバディ・ジョー・フッカーだそうです。
では一体なぜこんな噂が広まったのか?というと、当時『ランボー』のプロモーションを担当したのが東宝東和で、映画を宣伝するために大げさな逸話で観客の興味を煽ろうとした可能性が…(まあ、『サランドラ』とか『メガフォース』とか色々やってましたからねぇw)。ただ、「スタローンが危険なアクションに挑んで肋骨を4本折った」というエピソードは本当らしい。
●『ダークナイト』の病院爆破シーンでトラブル発生?
映画『ダークナイト』における「病院を爆破するシーンの撮影中に機材トラブルで爆発が止まってしまうものの、ヒース・レジャーのアドリブで何とかピンチを切り抜けた」という非常に有名なエピソード。いまだに事実のように語る映画ファンもいますが、事実ではありません。
ブルーレイのメイキング映像を見ると特殊効果スーパーバイザーのクリス・コーボールドがこのシーンを詳しく解説していて、「いったん爆発が止まり、ジョーカーが驚いて振り向くと再び爆発が始まり、その後バスに乗って立ち去る」という段取りに最初からなっていたのですよ。
まあ多少はアドリブっぽい動きが入っていたのかもしれませんが、そもそも絶対にNGが許されない”一発勝負の重要なシーン”なので、本番前に12回も入念なリハーサルが行われるなど現場は異常な緊張感に包まれており、「そんな状況でアドリブなんかやってる場合じゃないだろう」と思うんですよね(笑)。
なお、ヒース・レジャーのアドリブ自体は他のシーンにいくつかあって、例えば牢屋に入れられたジョーカーがゴードン警部に向かって拍手するシーンはアドリブだそうです(ジョーカーのキャラクター造形にはヒース・レジャーのアイデアが多数取り入れられている)。
●『プロジェクトA』でジャッキーは3回落っこちた?
『プロジェクトA』といえば「高さ18メートルの時計台から落下するシーン」が有名ですが、映像をよく見ると「落下中のポーズや動きが異なる複数のテイク」を映していることが分かります。その数は、エンディングのNG集も含めて3種類。つまり、「少なくとも3回は落下シーンを撮っている」ということです。
そのため、公開当時は「あのシーンでジャッキー・チェンは3回落っこちたらしいぞ!」「マジかよ、ジャッキーすげえ!」などとファンの間で話題になりました。恐らく、今でもこの「ジャッキー3回落ち伝説」を信じている人は多いのではないでしょうか。
しかし、2019年にNHKで放送された『アナザーストーリーズ 運命の分岐点』という番組で、長年ジャッキーのスタントチーム(成家班)に席を置き、数多くの危険なスタントに挑んできたマースが「実はあの落下シーンは僕なんだよ」と衝撃告白!
マースの証言によると、「ジャッキーは1回目の落下で頸椎損傷の大怪我を負ってしまい、納得できるカットが撮れなかった。それで自分が落ちることになったんだけど、撮影の前の晩は怖くて眠れなかったよ(笑)」とのこと。
これにより、3テイクのうち1回はマースであることが判明したんですが、だとすればジャッキーは2回落ちたのか?っていうと、それも違うんですよね。
実写映画『るろうに剣心』でアクション監督を務めた谷垣健治さんによると、「当時の成家班には周潤堅(チャウヨンギン)というスタントマンがいて、彼も時計台から落ちている。あのシーンは3テイクのうち2テイクがスタントマンなんだ」とのこと。
すなわち真相は、「『プロジェクトA』の時計台落下シーンでジャッキー・チェンは1回しか落ちていない」ってことらしいのですが、谷垣さんは「でも、1回はジャッキーが自分で飛び降りてるんだから、それはもの凄いことだよ」とコメントしています(確かにそうだよなあ…)。
ちなみにこのシーン、何もない地面に直接落下しているように見えますが、深さ150センチぐらいの穴を掘ってクッション代わりのダンボール箱をギッシリ敷き詰め、その上から土をかぶせているそうです(だとしても怖いけどねw)。