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紙人形みたいなCGアニメ!『ミニパト』について解説してみた

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劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト


どうも、管理人のタイプ・あ~るです。

さて先日、当ブログにて劇場アニメ機動警察パトレイバー2 the Movieが生まれるまでのエピソードを書いたところ、「そんな裏話があったとは知らなかった!」「もう一度『パト2』を観たくなった」など多くの反響をいただき、誠にありがとうございました(前回の記事はこちら↓)。

type-r.hatenablog.com

というわけで本日は、劇場版の3作目となるWXIII 機動警察パトレイバーについて記事を書こうか…と思ったのですが、その前に『WXIII』と同時上映されたミニパトについて書いてみます。いや、『WXIII』もいい映画なんですけど、押井守監督が全く絡んでないので、先に押井さんが脚本を書いた『ミニパト』をやってしまおうかなと(笑)。

この『ミニパト』、一応は劇場アニメなんですが、かなり特殊な形態なんですよね。まず、12分~14分ぐらいの短編映画が3本で計38分なんですけど、公開時は1話・2話・3話のうち、どれか1本だけを週替わりで『WXIII』と併映する「シャッフル上映」という方式でした。

そのため、3本全てを映画館で観るには最低でも3回観に行かなければならないという、なかなかハードルの高い状況だったのです(全部で38分しかないんだから、3本まとめて上映すれば良かったのに…)。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

また内容もかなり特殊で、2~3頭身ぐらいにデフォルメされた特車二課のメンバーたちが、「厚紙で作った人形」みたいなペラペラの姿で現れ、リボルバーカノンやレイバーについてひたすら語りまくるという、何ともシュールな映像なんですよ(しかも”ストーリー”らしきものは特になし)。

さらにこの「人形劇」のように見えるアニメを作るために、スタッフは実際に紙で大量の人形を作って割り箸に貼り付け、自分で喋りながら人形を動かし(つまり”本物の人形劇”を実演!)、それをビデオに撮ってその動きを元に3DCGを作成する……という恐ろしく手間のかかる手法を採用しました。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

このような紙人形劇は「ペープサート(PAPER PUPPET THEATER)」と呼ばれ、使用した人形は頭部・胴体・腕・脚などがそれぞれ可動する仕組みになっており、「最低限の動きで最大の効果が得られるように工夫されている」とのこと。いや~、すごいですねえ!

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

もっとすごいのは、プロダクションI.Gのアニメーターの西尾鉄也さんがほぼ一人で全てのキャラを描いたことでしょう(実際の映像はCGですが、元になる絵をほとんど西尾さんが描いたため、クレジットでは”原画”ではなく”作画”となっています)。

しかも西尾さんは、第2話の絵コンテも自ら描き、なんとビデオ撮影時には自分で紙人形を操作しながらシバシゲオのセリフまで喋るという大活躍ぶり!押井監督は「まるで西尾の自主制作アニメだな」と笑っていたそうです(なお、本番では声優の千葉繁さんがアフレコしたんですけど、熱演しすぎて口の中を4カ所切ったらしいw)。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

そんな感じで、とてもアニメの制作現場とは思えないような光景なんですが、いったい何故こんな奇妙なアニメが作られたのか?というと……そう、発案者は押井守さんです(笑)。押井さんは昔からこういう「パタパタアニメ」を作りたかったらしく、「パトレイバーなら成立するだろう」と考えて実行したらしい。

ミニパト』を作ったのは、ああいうスタイルを試してみたかったのが最大の理由なんですよ。パトレイバーという枠の中でなら商品として成立するだろうと。あの形式が成立するのなら、やってみたいことがあったので、それでやってみたんですよね。 (「機動警察パトレイバークロニクル」より)

では、こういうパタパタアニメで押井さんがやってみたかったことは何かといえば、パトレイバーの世界に登場する架空の銃やロボットについて「リアリティ的にはどうなのか?」を検証することだった模様。

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

例えば第1話「吼えろ リボルバーカノン!」では、後藤隊長が出て来て「リボルバーカノンみたいな武器が実際にあったらどうなる?」「設定では口径20ミリとなっているが、どう考えてもおかしいのでこっそり37ミリに修正された」など、銃に関する知識や蘊蓄を延々と語りまくってるんですよ。

どうやら押井さん的には銃火器の設定にリアリティがないことが不満だったらしく、後に実写版の『機動警察パトレイバーを撮った時も、「37ミリ執行実包、まあ実弾のことですが、実はこれ弾頭の実径じゃない」などと『ミニパト』の続きみたいな話(エピソード2「98式再起動せよ」)を作っているのです。

しかも、『ミニパト』では「リボルバーカノンの弾頭は超大型のホローポイント弾」と説明していたのに、実写版では「弾頭のように見えるがこれは樹脂製の被帽(キャップ)で、標準装備のダブルオーバックに軟鉄製の37ミリ弾が9発装填されている(要するに散弾)」などと設定を微妙に変更してるんですよね(こだわりがすごいw)。

実写版『機動警察パトレイバー』

実写版『機動警察パトレイバー

そして第2話「あヽ栄光の98式AV!」も同様に押井監督のこだわりが炸裂しており、当時のロボットアニメを取り巻く環境をメタ的に振り返りつつ、「他のロボットアニメとの差別化」や「リアリティの追及」などを千葉繁さん演じるシバシゲオが例の調子で喋る喋るw

……とまあ、ここまではいいんですが、最後の第3話「特車二課の秘密!」はちょっとテイストが異なってるんですよ。

榊原良子さん演じる南雲しのぶが、非常に淡々としたトーンで特車二課と後藤隊長の秘密を暴露するという、一見シリアスな雰囲気を漂わせながらも彼女の口から語られるその内容は……ハゼ!

「そう、ハゼです」

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

予算不足により逼迫した特車二課の財政事情と食糧難。それを解決するために編み出された後藤隊長の起死回生の策はなんと”ハゼ”だった!という、南雲しのぶの衝撃の告白が見どころのエピソードなんですけど、押井さんからこの脚本を受け取った神山健治監督は仰天したらしい。

ウンチクものでいきましょうよって言ったのは自分だったので、ある程度は予想できてたんですが、3本目だけは正直ドギモを抜かれましたね。俺も西尾くんも口アングリって感じで(笑)。あのネタを一体どうすりゃいいんだ?って、「またもや押井さんにカマされたな」と(笑)。 DVD『ミニパト』の特典映像より

劇場アニメ『ミニパト』

劇場アニメ『ミニパト

どうやら第3話だけは神山さんも完全に想定外だったらしく、押井さんが書いた奇抜すぎる脚本をどうやってアニメ化するか、頭を抱えたそうです。ただ、「アフレコ現場では榊原良子さんがノリノリで演じていた」とのことで、かなり面白い感じに仕上がっていましたよ。

というわけで、本日は『ミニパト』をご紹介しました。いちおう劇場アニメなんですが、短編&特殊な形態ゆえに『パト1』や『パト2』など他の劇場版に比べるとあまり知られていないかもしれません。ただ、パトレイバーファン的には興味深い内容なので、機会があればぜひ一度ご覧ください。

なお、今回採用された「紙の人形劇風CGアニメーション」は、発案者である押井さんの名前から「オシメーション」と名付けられたんですけど、現在に至るまで『ミニパト』以外には採用されていないようです(^^;)

 

※追記
よく調べたら、2006年公開の立喰師列伝にこの手法が使われてましたね。ただし「絵」ではなく、演じる「人間」をデジカメで撮影し、その写真を割り箸に貼り付けて人形劇にしたもので、「スーパーライヴメーション」命名されていたようです。

 


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