どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
さて昨日、NHKで『逆転人生』という番組が放送されました。これは「どん底の状態から奇跡の大逆転を成し遂げた人たちの壮絶な人生を描くドキュメンタリー」なんですが、今回取り上げられたのは成田昌隆さん(56歳)のエピソードです。
成田昌隆さん…といっても一般的にはたぶんほとんど知られていないでしょう。成田さんは現在、ハリウッド映画の特殊効果には欠かすことが出来ない超一流のVFX制作会社「ILM(インダストリアル・ライト・アンド・マジック)」で働いているCGアーティストです。
ちなみに「ILM」は、ジョージ・ルーカスが『スター・ウォーズ』を作るために自腹を切って立ち上げた特撮専門のスタジオで、フィル・ティペットやデニス・ミューレンなど優れたクリエイターを輩出し、アカデミー視覚効果賞など22のオスカーを獲得。1975年の設立以来、現在も多くの映画に影響を与え続けている老舗のスタジオです。
そんなILMに所属する成田さんは、これまで『アイアンマン』シリーズのパワードスーツや、『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』に登場する巨大メカなど、様々なデジタル映像を手掛けてきた凄腕のCGモデラーなんですが、ここに至るまでの経歴がすごいんですよ。
元々、日本の大手証券会社(勤務地はアメリカ)で働いていた成田さんは、ある日フルCGアニメ『トイストーリー』を観て「なんて素晴らしい映画なんだ!自分もCGの仕事をやりたい!」と決意し、なんと本当に会社を辞めてしまったのです。しかも脱サラした時の成田さんは45歳で、奥さんと2人の子供もいるという状況でした。ええええ…
成田さんが『トイストーリー』を観たのが32歳の時なので、そこから独学で10年以上CGの勉強をしていたことになるわけですが、それでも家族持ちの45歳の男性が”全く未経験の業界”へ飛び込んでいくのはさすがに無謀としか思えません。
案の定、会社を辞めてからCGの専門学校へ通って本格的に勉強をしたものの、ハリウッドの映画業界はレベルが高く、いくら採用試験を受けても不合格の連続だったそうです。しかし、それでも成田さんはCGモデラーになる夢を諦めず、何度も何度も履歴書を送り続け、ついに念願のVFX業界デビュー!この時、成田さんは46歳でした。
そして、ジェームズ・キャメロンが設立した特撮スタジオ「デジタル・ドメイン」に就職し、『アイアンマン3』ではアイアンスーツのCGを任され、さらにスーツだけでなく、背景の建物や高速道路など、画面に映っている全ての物体をリアルなCGで描いてみせたのです。
そんな成田さんに、やがてもっと大きな仕事が舞い込んで来ました。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』です。なんとVFXスタジオのトップに君臨するILMに就職決定!この映画で、成田さんは新型スター・デストロイヤーのCG制作を担当することになったのです。
だがしかし…
その作業は困難を極めました。なんせ劇中の新型スター・デストロイヤーは超巨大な宇宙船ですから、ちょっとやそっとのスケール感では凄さが伝わりません。そんな巨大な物体をどうやってCGで表現すればいいのか?と悩みまくり。
ところが、成田さんの”ある特技”がピンチを脱するきっかけになりました。その特技とは、プラモデル!実は成田さんは、プラモデルの大会でチャンピオンになるほどの凄腕モデラーだったのですよ。
そして『スター・ウォーズ』の宇宙船も、昔は市販のプラモデルのパーツを使ってミニチュアが作られていたのです(「キットバッシング」と呼ばれる手法)。ならば、CGで宇宙船を作る時も細かいパーツを大量に作成して貼り合わせていけば巨大感を表現できるんじゃないか…?
そう考えた成田さんは、来る日も来る日もひたすら細かいパーツを作り続け、それらを組み合わせて少しずつ新型スター・デストロイヤーの形を整えていきました。そして数カ月後、ついに完成!
そのボリュームは完全に常軌を逸しており、使用したパーツの総数はなんと25,000個!最新のスペックを誇るILMのコンピューターでさえ処理能力ギリギリのデータ容量で、ILM史上最大規模のCGモデルとなったそうです。
成田さんが作ったこの新型スター・デストロイヤーはILMのスタッフを驚愕させ、さらに他のCGスタジオや業界中でも話題となり、「すげえ日本人がいるぞ!」と一躍有名人になりました。なにしろ、カメラが寄らないと判別できないような異常に細かい部分までギッチリ作り込んでいるのだから凄まじい!
こうして成田さんは、今やハリウッドで欠かせない人材となり、映画『ハン・ソロ』ではミレニアム・ファルコン号を作ったり、最新作『スカイウォーカーの夜明け』でも活躍しているそうです。いや~、まさか46歳からCGアーティストを目指してここまで上り詰めるとは、すごいですねえ(^.^)