どうも、管理人のタイプ・あ~るです。
昨日、NHKの連続ドラマ『なつぞら』が最終回を迎えました。見てない人のために超ざっくり内容を説明すると、「昭和30年頃、北海道で育った主人公の”なつ”は、東京に出て来てアニメスタジオ:東洋動画に入社し、女性アニメーターとして働き始め…」みたいな感じです。
「雄大な北海道で暮らす人々との絆」や、「仕事と子育ての両立」の難しさを描いたこの物語は、普段あまり知られることがない「アニメ制作の舞台裏」を見せてくれた点においても画期的で、アニメファンの間でも話題になりました。
なぜなら、主人公のなつは東映動画で実際にアニメーターとして活躍していた奥山玲子さんがモデルで、他のキャラクターも宮崎駿さんや高畑勲さんなど、それぞれ実在の人物がモデルになっていたからです。
そして彼らが手掛けたアニメーションの数々も、実際に東映動画で作られた作品が元になっており、現場で繰り広げられる様々なエピソードを通じて、視聴者にアニメ制作の苦労や素晴らしさを伝えていました。
そんな『なつぞら』が終わってしまい、「ああ、もっとこういうストーリーが見たいなあ…」との欲求を募らせているあなた。『なつぞら』以外にもありますよ!というわけで、本日は「アニメ業界で働く(またはアニメ制作に関わる)女性を描いた漫画作品」をいくつかご紹介します。
●『アニメタ!』
あらすじ「主人公の真田幸(さなだ みゆき)は、学生時代に観たTVアニメに感銘を受け、アニメーターになることを決意。そして高校卒業後、大手アニメ制作会社に動画マンとして採用されるものの、技術力不足で挫けそうになる毎日。しかし、周囲の人の励ましやアドバイスにも助けられ、徐々にスキルを身につけ始め…」
作者の花村ヤソさんは、『攻殻機動隊』や『機動警察パトレイバー』などのアニメスタジオ「プロダクションI.G」に所属していた元アニメーターで、その当時に経験した苦労話などを織り交ぜつつ漫画を描いているそうです。
動画マンになったばかりの頃は作画のスピードが遅く、1ヵ月に描ける枚数も少ないため、「どうすれば早く、綺麗な絵を描けるんだろう…」と悩みまくりますが、試行錯誤しながら頑張る主人公の姿は「成長ドラマ」の定番として共感しやすく、アニメ制作の裏側も詳しく描写されているので興味がある方はぜひご覧ください。
ちなみに、花村さんが仕事をしていたプロダクションI.Gの第9スタジオ(9スタ)では、当時『攻殻機動隊S.A.C』を制作中で、連日ひたすら絵コンテを描いている神山健治監督の姿を見て「この人いつ寝てるんだろう?」と思っていたらしい。
神山監督曰く、「あの頃は1日20時間ぐらい働いていた。飯も食わずに仕事をしていたからガリガリに痩せてたよ」とのこと。しかし(自分が痩せてるのに)、花村さんがダイエットのために豆腐ばかり食べているのを見て「金が無いのか!?」と心配して焼肉を奢ってくれたりしたそうです(いい人だなあw)。
●『アニメがお仕事!』
あらすじ「広島出身の福山イチ乃は大好きなアニメーターになる夢を諦め切れず、親の反対を押し切って上京し、弟の二太と一緒にアニメ業界で働き始めるが、様々な試練が二人を襲い…」
作者の石田敦子さんは元フリーアニメーターで、過去には『勇者特急マイトガイン』や『魔法騎士レイアース』などのキャラクターデザイン&作画監督を務めていました。
『アニメがお仕事!』は、そんな石田さんのアニメーター時代のエピソードを元に描かれてるんですけど、内容がなかなかエグいんですよ(笑)。
「動画マンは低賃金で長時間労働」っていうのは良く知られていますが、そういう現実もリアルに描いたり、アニメ業界内のイジメや嫌がらせ、社長が夜逃げしてスタジオが倒産&ギャラ未払い事件、男女のドロドロした恋愛のもつれ…など、割とヘビーな話が盛沢山!「いったいどこまでが作者の実体験なんだろう?」と思わず考えてしまいましたよ(笑)。
ちなみに石田さんは、アニメーターになりたくてカナメプロ(『プラレス3四郎』や『幻夢戦記レダ』などを制作した会社)へ自分の描いた絵を持って行った際、「ちょっと実力不足だね」と言われてしまいました。
ところが、たまたまその時カナメプロを訪れていたアニメーターの金田伊功さんが石田さんの絵を見て「入れてあげたらいいんじゃない?」と言ったために社長も了承。こうして運よくカナメプロに入社できたそうです。
後に石田さんは「もし、あの時あの場に金田さんがいなかったら、私はアニメ業界に入っていなかった。金田さんは私の恩人です」とコメント。そのため『アニメがお仕事!』にも金田さんっぽい人が出て来たり、カナメプロで一緒に仕事をしていた”いのまたむつみさん”的なキャラが登場するのも注目ポイントでしょう。
●『西荻窪ランスルー』
あらすじ「大学に合格したにもかかわらず、自分の夢を追って西荻窪のアニメ制作会社に就職した18歳の江田島咲。初めて経験する社会人生活に戸惑いながらも、アニメーターとして少しずつ成長していく…」
本作は『アニメタ!』や『アニメがお仕事!』と同じくアニメーターの日常を描いた物語なんですけど、全体的に笑えるシーンが多いのが特徴です(イメージ的には『のだめカンタービレ』とか『働きマン』に近いかも?)。
しかも、主人公が面白いというより、主人公の周りのキャラクターが個性的で、それぞれのキャラ毎に面白エピソードを盛り込んでいる点が見どころと言えるでしょう。
もちろん、アニメーターに付き物の「ギャラが安い」とか「仕事がきつい」等の悩みも描かれていますが、そういう話もシリアスになり過ぎず、ほど良いバランスで見せているので読みやすいと思います。
●『凸凹アニメーション』
あらすじ「ある日、新人アニメーター:沖口の前に現れた美人で巨乳の制作進行:篠塚さん。喜ぶ沖口だったが、篠塚さんと出会ったせいで、とんでもない修羅場へと巻き込まれていく…」
本作はなんと「週刊少年マガジン」に連載されていた”アニメ業界漫画”です。そのため、読者層に合わせて適度に「お色気シーン」や「ラブコメ要素」が盛り込まれている…にもかかわらず、内容は相当にマニアックで、「原画マン」「動画マン」「作監」「演出」「レイアウト」など専門用語がバンバン出て来るわ、アニメ制作の裏側をかなり詳しく描いているわで全く侮れません(笑)。
ただし、シナリオや絵コンテについて詳しく解説したり、原画やタイムシートの写真を撮って紙面に載せるなど、あまりにも本気で業界のことを描きすぎたせいか、ストーリーは全14話で完結。つまり「打ち切り」ってことですね…。
ラスト3話ぐらいは展開がかなりバタバタしていて、「強引にまとめようとした感」が出まくってるし、最終回は典型的な「俺たちの戦いはこれからだ!エンド」だし、正直あまり「オススメ」とは言い難いんですが、気軽に読める「アニメ業界ラブコメ」としてはそれなりに面白いかなと。
●『映像研には手を出すな!』
あらすじ「高校へ入学した浅草みどりは、アニメ作りを目論んで友人の金森さやかをアニメ研究部の見学に誘った。そこでアニメーター志望の水崎ツバメと出会い意気投合。3人で「最強の世界(映像)」を創るために動き出す!」
本作は、とある高校を舞台に3人の女子高生(浅草みどり・水崎ツバメ・金森さやか)がそれぞれの特技を生かして自主制作アニメを作る、という青春物語です。
しかし、水崎ツバメは親からアニ研に入ることを反対されているので、「なら自分たちで映像系の部を作ってしまえ!」となり、”映像研”を発足。学校から古い部室を借りて、いざアニメ作りスタート!
浅草みどりは「イメージボード」や「背景画」などの”設定”を考えることに情熱を燃やし、水崎ツバメはアニメーターを目指しているので「キャラ」や「動き」を描きたい。じゃあ、2人が組めばイケるんじゃね?みたいな感じで楽しい自主制作アニメ作りが始まるわけですよ。
ちなみに金森さやかは絵が描けないので、主に「お金」や「企画」の係になっています。まあ「プロデューサー」みたいなポジションでしょうか(でも、この3人の関係性がとても良い)。
そして本作最大の特徴は、いきなり浅草みどりの妄想が爆発して、設定として描いたプロペラや飛行機に乗って空を飛んだり、奇妙な世界を探索したり、そういう”イメージ”を見せてくれる点が非常に面白いんですよ。
ちょっと他の漫画にはあまり無いパターンで、「オリジナル性がある」というより「クセが強い」と言うべきかもしれませんが(笑)、個人的には大好きです。
●『ハックス!』
あらすじ「高校へ入学した阿佐美みよしは、新入生歓迎イベントで上映された1本の自主制作アニメに衝撃を受け、アニメーション研究部に入ることを決意。自ら作画を描き始めるが、アニメ作りはとても大変で…」
『映像研には手を出すな!』と同じく「女子高生が自主制作アニメを作る」という話なんですが、大きな特徴は「かなり詳しくアニメの作り方を描写している」という点でしょう。
3つ穴の動画用紙に絵を描くやり方や、描いた絵をどうやって撮影してアニメーションにするのか、さらに完成した動画をネットにアップする方法に至るまで、ものすごく具体的に解説してるんですよ(「素人がアニメを作るためのガイドブックじゃないの?」と思うぐらい)。
個人の”やる気”や”画力”などの条件次第ですが、「これを読めば自主制作アニメを作ることが出来る!」と言っても決して過言ではありません。アニメ作りに興味がある人はぜひどうぞ。