どうも、管理人のタイプ・あ〜るです。
先日、ニューヨーク・タイムズ紙に「ハリウッド女優のユマ・サーマンが映画監督のクエンティン・タランティーノから酷い目に遭わされていた」という記事が掲載され、ファンの間で話題になりました。
・ユマ・サーマン、「タランティーノ監督からスタントを強要された」と告白
その内容は、『キル・ビル』(2003年)の撮影時にタランティーノ監督から車の運転を強要されたユマ・サーマンが、操作を誤り木に激突して大ケガした、というものです(後にユマと監督は和解した模様)。
まあ実際問題、映画の現場ではこういう事例が少なくないようで、「黒澤明監督が三船敏郎に向かって本物の矢を射させた(『蜘蛛巣城』)」とか、「役者にそんなヒドいことを?」と驚くような話はいくらでもあります。
もちろん、いくら撮影のためとはいえ、そういう行為はパワハラにもなりかねないのですが、「いい作品を作りたい」という監督の情熱が暴走し、結果的に俳優やスタッフに無理を強いてしまう、という事態は決して珍しくありません。
というわけで本日は、「妥協を嫌い完璧を求めた監督のこだわりによってエラい目に遭わされた女優さんたち」のエピソードを、いくつかご紹介したいと思います。
●『シャイニング』
「役者をエラい目に遭わせる映画監督」と言えば、完璧主義のスタンリー・キューブリックが有名でしょう。自分が気に入るまで何十回も同じ演技を繰り返させ、あまりのリテイク数の多さに「やってられるか!」とキレて降板した俳優もいるぐらいですから。
中でも『シャイニング』で主人公の妻を演じたシェリー・デュバルは、なんと35週間にも渡ってキューブリックから容赦ないダメ出しを受け続けたというのですから「正直キツイ」と言わざるを得ません。
しかもキューブリックはシェリーに対してリテイクを重ねるだけではなく、彼女の演技を徹底的に批判し、意図的に「彼女が現場で孤立するような雰囲気」まで作り出していたそうです(ヒドすぎる…)。
その結果、見事に彼女の壊れそうな感情を引き出し、数々の衝撃シーンをカメラに収めることに成功しました。しかし、撮影が終わる頃にはシェリー・デュバルは心身ともにボロボロに成り果て、疲弊し切っていたらしい。うわあああ…
●『悪魔のいけにえ』
本作は、人気キャラクター「レザーフェイス」を生み出したトビー・フーパー監督の有名ホラー映画です。後に続編やリメイク作品が作られるほどヒットしましたが、1作目は超低予算だったため、機材のレンタル費をケチって27時間ぶっ通しで撮影を続けるなど、役者やスタッフは大変な苦労を強いられたらしい。
当然のごとく現場では、本物の刃物を使用してケガ人が出たり、予算がないので俳優の顔に接着剤を塗って特殊メイクを施したらメイクが貼り付いて取れなくなったり、様々なアクシデントが頻発した模様。
特に女優たちの扱いは最悪で、主役のマリリン・バーンズは固いホウキで殴られて顔中アザだらけ。さらに雑巾を口に押し込まれ、激しい乱闘シーンを何度も繰り返し演じさせられ発狂寸前になったという。
また、パムを演じたテリー・マクミンは肉カギに吊るされるシーンでワイヤーが彼女の体に食い込み、激痛を訴えたらしい(劇中で泣き叫ぶ姿は演技じゃなくマジだった!?)。
●『エクソシスト』
『フレンチ・コネクション』や『恐怖の報酬』で知られるウィリアム・フリードキンも、「平気で無茶なことを要求する監督」として業界中にその名を轟かせています。中でも『エクソシスト』における傍若無人ぶりは今もなお語り草になるほど凄かった!
「悪魔のパワーによって吐く息が白くなる」というシーンを撮るため、セットに16台の大型冷却装置を取り付け、室温が0度の極寒の中、監督やスタッフたちが防寒着を着ているのに、ベッドのリンダ・ブレアは薄いパジャマだけで長時間の撮影に耐えたとか。
また、母親役のエレン・バースティンに対してはリアルな演技を求めすぎ、「娘に殴り倒されるシーン」の迫力の無さにイラついた監督は、エレンの体にワイヤーを付けて引っ張ることにしました。
ところが、打ち合わせでは軽く倒れるだけだったのに、いざ本番が始まる直前、操演係に「死ぬ気であの女を引き倒せ!」と命じ、その結果エレンは猛烈な勢いで転倒して背骨を強打。しばらく病院へ通うはめになってしまったのです。
●『ロング・キス・グッドナイト』
『ダイ・ハード2』や『クリフハンガー』のレニー・ハーリン監督が、自分の奥さん(ジーナ・デイビス)を主役に撮った超大作アクション映画です。
3階の窓からガラスを突き破って飛び降りるシーンでは、クレーンに吊るされたジーナ・デイビスが15メートル下のエアバッグへ落下したり、地上30メートルのシャフト上で格闘するなど、あらゆるアクションを本人がこなしているのだから凄すぎる!
その他、駅構内における壮絶なガンアクション、巨大な石油運搬車とヘリコプターのチェイス、さらには横転した運搬車上をサーファーのように疾走するジーナの姿など、数々の驚愕スタントがカメラに収められました。
近年、アンジェリーナ・ジョリーやシャーリーズ・セロンなど、激しいアクションを演じる女優が増えていますが、ここまで危険なシーンに挑戦した例は少ないでしょう(自分の嫁だから遠慮しなかったのかなあw)。なお、これらの撮影について共演したサミュエル・L・ジャクソンは次のように語っています。
ジーナと湖に飛び込むシーンで、実際に自分がそれをやるんだって知らされた時は、本当に信じられなかったよ。あのシーンは今までの撮影の中で、いや、これまでの人生において最も辛いことだった。気温マイナス9度の日に、氷が張った冷たい湖の水に頭まで浸かった時には、1ガロンのアイスクリームを一気に食べたように頭がガンガンしたよ。しかもテイク3まで撮ったんだからね!
ちなみに、この映画が公開された後、ジーナ・デイビスはレニー・ハーリン監督と離婚。「二度とレニーの映画には出演しないわ!」と言い放ったらしい。
●『鳥』
「サスペンス映画の神様」と称されたアルフレッド・ヒッチコック監督も、女優をエラい目に遭わせたことがありました。犠牲者(?)は名作『鳥』で主人公メラニーを演じたティッピ・ヘドレン。
追い詰められた女性の恐怖を完璧に表現するため、なんとヒッチコックは彼女に凶暴な鳥と5日間の共同生活を命じたのです。
さらに、クライマックスの部屋に閉じ込められるシーンでは撮影に一週間も費やし、鳥を彼女に括り付けてリアルな恐怖を引き出そうとしたらしい。
その結果、ティッピ・ヘドレンは撮影後に疲労と怪我で8日間も入院するはめになってしまいました。なお、彼女はこの時の状況を「人生で最悪の一週間だった」と語っているそうです。
●『バロン』
テリー・ギリアム監督といえば、『バンデッドQ』や『未来世紀ブラジル』など数々の問題作を撮ったことと、毎回何らかのトラブルを巻き起こしていることでも有名です。
ファンタジー映画『バロン』の場合は、当初予定されていた予算が2350万ドルだったのに、大幅にオーバーして4663万ドル(約52億円)に膨れ上がってしまいました。当然、現場は大パニック!
さらに予算の問題だけでなく、撮影中に次々とアクシデントに見舞われ大混乱を極めた作品でもあり、出演時に9歳だったサラ・ポーリーは、後のインタビューで当時の心境を以下のように語ったそうです。
とにかく、非常に危険な撮影だったんです。私のすぐそばで多くの大爆発が起こりました。子供だった私は、トラウマになるくらい怖かったです。物理的にとても危険で、少なくとも幾つかの傷は残りました。冷たい水の中で長時間震えたり、延々と撮影が続いたり......。とにかく酷い撮影でしたね。
●『グランド・イリュージョン』
ジェシー・アイゼンバーグが扮するマジシャンたちの活躍を描いた本作で、ヘンリー役を演じたアイラ・フィッシャーは「チェーンで縛られた状態で水槽に入れられ脱出する」という危険なシーンをスタントなしでやらされました。
ところがその撮影中、彼女の体にチェーンが絡まってしまうというアクシデントが勃発!しかしスタッフたちは「焦ってもがいている”演技”」だと思いこみ、救出のタイミングが遅れたらしい。
最終的に自力で緊急脱出用のスイッチへたどり着き、近くにいたスタントマンによって何とか救出されましが、後にアイラ・フィッシャーは以下のように語っています。
チェーンが取れなくて本当に焦っていたのに、皆は私が張り切って演技していると思っていたのよ。誰1人として実際に溺れているなんて思わなかったみたい。もうダメかと思ったわ。
●『ロアーズ』
本作は、ライオンや虎やヒョウやジャガーなど、150匹以上の野生動物と暮らす家族の姿を描いたファミリー・ドラマです。が、その撮影現場は修羅場そのもの!
今なら当然CGを使うのでしょうが、全てが本物の動物ですからねえ。そのため、常に現場ではアクシデントが起きまくり、70人以上のスタッフや俳優が撮影中にケガをしたそうです。
なんせ相手は訓練されていない動物たちなので、何が起きるか分かりません。当時、19歳だったメラニー・グリフィスは突然ライオンに襲われ、顔を50針も縫う重傷を負ったらしい。
さらに、キアヌ・リーブス主演の『スピード』で監督デビューしたヤン・デ・ボンは本作のカメラマンを務めていましたが、ライオンに頭の皮を剥がされ200針も縫ったという。怖ッ!
●『黒星風雲(THE STORY OF THE GUN)』
本作は1992年の香港アクション映画です(日本未公開)。1980年から90年代前半ぐらいまで香港映画界では女性を主役にしたアクション映画が流行っていました。
ミシェル・ヨー、ムーン・リー、シベール・フー、シンシア・カーン、ブリジット・リン、ジョイス・コウ、シンシア・ラスター(大島由加里)など、強くて美しいヒロインが人気を集めていたのです。
そんな中で、アジア人以外の白人女性アクションスターとして注目されたのがシンシア・ロスロック。そしてもう一人が、後にハリウッド版『パワーレンジャー』でピンクを演じることになるソフィア・クロフォードです。
しかし、アクションスターを目指して欧米から香港にやって来たソフィアでしたが、想像を絶する香港映画の撮影スタイルに衝撃を受けたという。
ある日、撮影中に足を骨折したソフィアは病院で手当てを受け、その日の撮影は中断されるものと思っていました。ところが再び現場へ呼び戻され、なんと監督から「撮影を続ける」と告げられたのです。
ビックリした彼女が「え?足の骨が折れてるんですけど…」と訴えたところ、「シナリオを書き直すから大丈夫だ」と言われたらしい(ウソでしょ!?)。
驚くソフィアを無視してギプスをしている足に無理やりズボンをはかせ、その上から血糊で傷のメイクをするスタッフたち。なんと「足を銃で撃たれて負傷した」というストーリーに変えてしまったのですよ!
その後、彼女は骨折した足を引きずりながら、殴られたり蹴られたり、窓ガラスを突き破って地面に落ちたり、激しいアクションを必死で演じたという(今なら大問題になるだろうなあ…)。
●『群狼大戦』
ムーン・リーとシベール・フーという、80〜90年代の香港映画界を代表する2大アクション女優が自らスタントに挑んだこの映画、悲劇はラストに起こりました。
彼女たちが窓から飛び降りようとした瞬間、すぐ後ろで大爆発!どうやら爆破のタイミングが早すぎたらしく、二人は炎に包まれてしまったのです。
この事故でムーン・リーとシベール・フーは全身に大火傷を負い、当然ながら撮影は中止に。ところが、監督は無理やり映画を完成させ、なんと事故の映像をそのまま本編に使うという暴挙に出たのです。
しかもエンディングに「二人は映画芸術の真実性を高めるため、自ら危険なシーンに挑戦し、重傷を負った。彼女たちの勇気とプロ精神に心から敬意を表したい」などとテロップまで流す鬼畜ぶり!これは本当にヒドいですよねえ(なお、幸いなことに二人とも命は助かったそうです)。
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